吟遊詩人な日々
第56回 全滅
 久しぶりにいつものところにはブラックがいた。隊長とすっかりメンバになってるイグアナも。
 本日の行き先は「北極」。そういったとき、隊長に「またかいっ(笑)」と言われちゃったけど。
 北極で訓練すると調教のスキルがおもしろいように上がるんだもん。隊長が狩りに夢中になってる間に抜いてやるもんね。
 その隊長は今日はデシートでリッチと火エレ狩りだって。ブラックは魔法をあげるから、そのあたりでうろうろするみたい。
 で、北極にいくならということでイグアナがついてくるらしい。う〜ん、ゲート出せないんだよね。そこまで魔法のスキル ないもん。あぁ、魔法もあげなきゃだめなんだ。やることいっぱいで、なにからやっていいのかわかんないよ。
 結局ねこを呼び出してつれてってもらうことにした。ホント呼び立ててごめんね、ねこ。二人に見送られ3人で北極に行く。
 それぞれ、散会して行動する。北極だと、大丈夫だしね。死んだとしてもねこがいるし、いぐあなも大丈夫でしょ。
 雪豹で訓練できるようになったので、雪豹に狙いを定めて調教する。だけどものすごく成功率が低いんだけどね。一時間に 二匹がいいところかな。
 やっと一匹の雪豹の調教に成功し、レオと名づけてつれまわすことにした。
 ところが、同じく調教にきている男性がわたしのレオの調教をしようとしてる。
 「これわたしのペットなんですけど?」
 「えっ、野生にかえってますけど?」
 が〜〜ん、動物学のスキルが低いから、命令きいてくれなかったんだ。落ち込みながら男性に向かって「動物学が低いから、 命令きいてくれないんですよ」と呟く。「僕もですよ」とお互いにため息をつく。動物学ってあがらないんだよねぇ。
 また新たな雪豹を相手に調教をしていると、ねこがわたしの元に来た。調教しつつねことおしゃべり。
 「イグアナ、どう?」一応、引率者だし、気になってます。
 「クマはちょっとアブなそうだった」
 そうなんだ。ねこ、死んだら頼むわね。(無責任発言)。
 調教はあがった?ねこに訊かれた。うん、調教はね、でも動物学がさっぱり、命令訊かなくて困るわ。
 さておしゃべりしているうちに北極での訓練時間をおえたので、久しぶりに狩りにいこうと思い付いた。
 今の時間だと、オークキャンプかなと。イグアナも来る?死ぬかもしれないけど。コワイといいつつ興味津々で行くと答える いぐあな。
 でも隊長にイグアナのことは許可をもらわなくちゃね。というわけで隊長に連絡をとる。了解を得たので、ねこにゲートを開 いてもらって、コーブの街に送ってもらう。
 ねことはここで分かれて二人でオークキャンプに出発。
 オークキャンプ前の道にエティンがいた。相手をしないで通り過ぎようと思ったら、わたしに狙いを定めたらしく追いかけられた。なんでいっつもこうかなぁ。
 とりあえずタイミングを計りつつ、逃げる。って、背中痛いぃ〜〜〜〜〜〜っ。エティンに傷つけられた傷が思いのほかキツい。
 なんでと思って、ハタと気づいた。わたし、防具つけてないような?? あぁ、着てないよ。そういえば。最近調教とか 魔法とかばっかりで狩りしてなかったから。そうだ。服装もワンピとサンダル・・・。狩りっていうよりピクニックやっ ちゅーねん。
 うわぁぁぁ。どうしよう。アタマがパニックになっているところにオークメイジの魔法攻撃よりにもよって毒。回復しな きゃと思っている間もなく、久しぶりに死んだ。イグアナが心配だけど、インディも心配だけど。とりあえずコーブに 戻って、ヒーラーに会わないと。
 ヒーラーの元に走りつつ隊長に緊急連絡をいれた。
 「死んだ」
 返事は「ぐはぁ」(笑)。ごめんなさぁ〜い。そのあと、オーク禁止。撤退命令が即発行されたのは言うまでもありません。 あぅ。
 復活して、元のところに戻る途中にゴーストのいぐあなにあった。あぁ、やっぱり死んだかぁ。心の中でお詫びしつつ、 ヒーラーの場所を説明した。急いでいってきてね。
 そして元の死んだ場所に戻ると、なんと隊長がいた。わざわざ来てくれたんだ。うれしくて、じ〜んとなってしまう。
 「イグアナも死んだの?」
 「そうみたい、全滅です」
 「ぐはぁ」とりあえず自分の荷物を回収して、イグアナの荷物の回収にかかる。
 ってなんでこんなにもってんのよ。ポーション。隊長〜、もう重量オーバですが?と言ったら、隊長もとっくに重量オーバ らしい。
 荷物をすべて回収し、動けないので、じっとしていたら。そういうときにエティンが。なんでいっつもエティン??
 で。さっき復活したとき、まだ回復まではしてなかったことに気づいたわたしは教われる前に自分を回復しようとした。 でも重い荷物でもたついてしまう。動きまで遅いのよぉ。
 で。あっさり襲われて本日2回目の「死」。うぅ。
 またコーブに戻ってヒーラーに復活してもらっていると、ヘブンから連絡がきた。だから、ヘブンに今までの経緯を簡単 に説明して、来てもらうことにした。
 キャンプに向かう森の橋でリコールで飛んできたヘブンに出会った。まず回復してもらうことにした。ゴーストから復活 した直後って、カバン携帯してないから、秘薬もないし、包帯もないし。回復手段ないんだもん。
 元のところに戻って、また自分の荷物を回収。
 復活してたイグアナにわたしが回収した荷物をかばんに入れて渡す。ちなみにかばんは緑色に染めてたタイプ。イグアナ が色付のカバンにびっくりしつつ大喜びだった。また違う色にも染めてあげるからね。
 それから、ごめんね。一番イグアナに今日言いたかったのはそれだった。初心者のイグアナをつれてきて、死なせたのはわ たしのせいだし。馬はおわびに買ってあげるからね。
 ふと見回すと隊長がいない。 ヘブンに隊長は?と訊くとそこにいるという返事。イグアナにも見えているらしい。
 わたしだけ見えてないの??
 隊長?
 隊長〜。
 た〜い〜ちょ〜。
 いくら呼んでも見えないし、現れてもくれない。うぅ。いぢわるだ。
 た〜い〜ちょ〜〜〜〜〜〜。むぅ。
 た〜い〜ちょ〜の〜ばぁ〜かぁ〜〜〜〜〜。
 案の定姿を現わす。
 「誰かなんかいってたよなぁ」というので、誰のことでしょ〜?記憶にございませぇ〜んと返事をした。
 と。「よしわかった。ぺこのことはもうしらん」
 が〜〜〜ん、あんまりだ。慌てて隊長のそばにかけよって「ごめんなさぁ〜〜い」半泣きである。
 「よし」。うぅ。口でもやっぱり勝てない。
 このやりとりを笑いながら見てたのはヘブンとイグアナ。
 まだ狩りにいくだろうヘブン達と分かれて隊長とリコールでブリテインに戻って、宿屋で休んだ。

第57回 東の森
 今日は魔法のスキルを上げる予定だった。
 だから銀行に行って、お金をおろした。ついでに預けてある荷物も整理した。わたしが銀行に預けている主なものは洋服・武器 防具・秘薬・お金。最近はこの洋服の部分が大きく占めていたりする。
 秘薬代を少し多めに持った。魔法ギルドに行く前に鍛冶屋に行くことにした。先日の土エレのときにダメになった魔法剣を修理 してもらうつもりだった。ついでに盾と、予備の剣も。
 鍛冶屋の前は相変わらずの人と炉の熱気で溢れてた。その中にいつもと同じ位置に黒い衣装を纏った女性が立っている。迷わず わたしはフェリスさんに声をかけた。修理をお願いした。あっという間に完璧に直って戻ってきた。
 反対に魔法ギルドの中は珍しく空いていた。秘薬を買い占めるチャンスと販売員に声をかけた。っが。秘薬も二種類しかなかっ たし、買い占める程の量もなかった。が〜ん。どうして毎回毎回ここって秘薬を置いてないんだろうね。
 今日の練習でかなり消費するのは今から分かってることだし。悩んだ末、リコールでムーングロウに移動した。魔法使いの街と 言われるだけあって、品物も豊富に置いてあるから。確かに秘薬は豊富にあったけれど、今日わたしが一番消費するだろう秘薬 だけが置いてなかった。がっくり。やっぱりあまり人気のない街とかのほうが意外においてあるのかなぁ。ふぅ。
 肩を落して、ブリテインに戻った。もちろんいつもの橋でみんなを待つ。でも隊長とブラックはデシートに行ってると聞いてる から、来ないと思うけれど。
 目の前にブラックが現れた。まずは挨拶をする。隊長とデシートに狩りに行ってたんじゃないのと訊くと、小休止とのこと。隊 長も戻ってきていて、銀行に寄ってるらしい。
 ブラックがこの後は魔法をあげる練習をするという。そういえばブラックって今魔法どれくらいなんだろう。ゲートも出せるし、 結構高いような気がする。
 訊くとやっぱり短期間にかなり上がってた。どうしたらそんなに上がるのか知りたかったので、訊いてみる。
 雷の攻撃魔法であげたの?そうなんだ。じゃ、わたしも今日からそれでやってみようかな。ぴょんから剣の精霊を召喚して訓練 したらいいって言われてるから、この二つでがんばってみよう。
 戻ってきた隊長とも挨拶を交わし、三人でおしゃべりする。ここで話をしているとたまに知らない人が話の輪に加わっているこ とがある。だけど、わたし達の誰もそんなことを気にしないで会話を続けちゃう。加わった本人が自ら「名前くらい訊いて」と か「誰かつっこんで」とか申告するというオチが多い。
 誰も気にしないのは、きっとメンバの誰かの知り合いなんだろうと思っているから、なんだよね。集合時間までの間、解散後、 それぞれ別なことをしているし、その間に知り合った人かも知れないでしょ?だから、増えても気にならないんだよね。
 イグアナがやってきた。ヘブンのことを開口一番に訊ねる。ヘブンをアニキと慕ってるのかな、悪いトコまで似なければいいけ ど。しっかりわたしを男と間違えた辺り、ヘブンと同じだし。かなり心配。
 だ〜か〜ら〜。どうしてこんなにかわいい格好をしてるのに間違うワケ?黒の膝上丈のノースリーブのミニワンピに、ふくらは ぎまで編み編みのサンダルに、ピンクのベレー帽。鎧着てないから、そんなにごつくはないし。そりゃあ、馬に乗ったり、モン スターと戦える程度の筋肉はついてるけど。声だって、野太くないし。大体マスクもしてない素顔を見てるでしょうに。ってヘ ブンのときと全く同じ憤り。むぅ。
 前回と同じく隊長にこのことを涙ながらに訴えた。
 ぺこはかわいいよ。
 まぁ。隊長ってば。や〜ん、うれし〜〜。両手を組んで、瞳をキラキラしてしまう。
 っが。
 「嘘」。むぅ。確かに月日の流れを感じるわ。こういう間の取り方って今までならなかったもん。
 1時間ほど立ち話をしていたけれど、そろそろ今日の予定に移らなくちゃ。隊長はデシートで狩りの続き。ブラックは北極で魔 法訓練。
 わたしも人の少ない北極で魔法の訓練をするつもりだったけど。リコールの使えないイグアナを置いていくわけにもいかないし ね。イグアナは一人で大丈夫っていうけれど、でも、やっぱりまだまだ心配だから。少なくともクマ相手にヤバい状態の戦士を 放っていけるほどじゃないもん。
 隊長の言葉を受け止めて、東の森にイグアナを連れて行くことにした。あそこは人も多いし、冒険初心者には比較的良いところ だと思う。
 ブリテインを二分するブリテイン川を渡って、東側にある森に向かう。森を抜ける道には行かず、入り口の右手の森に入る。こ こから南に降りて、「広場」とわたし達が呼ぶ海岸沿いの草原が今日の目的地。
 魔法の訓練しながら、この辺りにいるからね。危なくなったら絶対逃げること。いい?イグアナに念を押す。
 強いヤツは現れますか、なんて心配そうな顔で質問してくる。ここらへんだと、トロル、エティン、ガーゴイル、水エレくらい かな。魔法で攻撃してくるモンスターもいるから、とにかく逃げてね。
 了解と笑顔で返事をして、狩りに向かうイグアナの背中を見送るけど、う〜〜ん心配だな。視界は良好だし、危なくなったら助 けに行きますか。今日はいつでも戦闘態勢に入れる準備はしてきたから、大丈夫だし。
 とりあえずイグアナを気にかけつつ、魔法訓練に入ることにした。攻撃魔法を受けてくれそうなモンバット程度のモンスターは いない。う〜〜ん。
 エティンだ。眼が合ってしまった。案の定こっちに向かってくる。もぅ。どうしてこうモンスターに追い回されるんだろう。別 に先制攻撃をしかけたとかそういうことは全くないのに。はぅ。
 逃げ回っていては、魔法の訓練さえする時間がなくなりそうだったので、思い切ってエティン相手に雷攻撃をしかけてみた。呪 文を唱えると天から一筋の稲妻が走り、大音響と共にエティンの上におちる。かすり傷ほどもダメージなし。うぅ。やっぱりま だまだ力不足なのね〜〜。
 だけど、エティンを怒らすには充分だったらしい。あの巨大な腕がわたしの頭を狙って振り下ろされた。咄嗟に盾で防いだけれ ど、腕がじんじんする。っつ〜。そのままうしろに下がってエティンと間合いを取る。
 そして剣を引き抜いた。フェリスさんに直してもらったばかりの広刃剣。悪いけど、最初の犠牲者になってもらうからね。
 剣をかさがけに振り下ろす。インディと一身同体の動きでエティンとの距離をとりながら、攻撃を繰り返す。短時間であっさり エティンを片付け戦利品を頂いた。
 剣だとこうも簡単なのに、どうして魔法はうまくいかないのかな。とほほ。
 南に下がり、広場の海側を横切ろうとしたとき、植物性モンスターがいるのに気づいた。チャンス。これはいいかもしれない。 このモンスター相手に攻撃魔法を試す。うん、なかなか良い調子。威力が弱いので、ほとんどダメージは与えてないけど。
 訓練には丁度いいターゲットだった。ところがこのモンスターはしっかり魔法で反撃してきた。もちろん威力は格段に違う。回 復魔法を唱えつつ、攻撃魔法なんて、とてもじゃないけど、無理だったので、退散することにした。
 また違うモンスターを探しては、ダメージを与えられない攻撃魔法を唱える。それでモンスターの怒りに火を注いでは、結局剣 で倒す。我ながらよくわかんないことをしているなと思いつつ時間を過ごした。
 秘薬が切れたところで訓練を終え、イグアナの姿を探す。いた、いた。
 ところが、イグアナの様子がおかしい。呼びかけても返事がない。意識失ってる。ナニやってるんだか。
 イグアナの馬とイグアナをモンスターから守らなければ。
 と。突如、オークキャンプが広場に出現した。うそぉ!?今までそんなことなかったのに。なんで?今日に限って!?その上、 そのすぐそばに水エレ、ガーゴイルまで。なんで急にわいてくるのかなぁ。
 大量発生したオーク相手に戦うけど、とてもじゃないけど、イグアナのフォローはできなくて。ごめんね。イグアナはゴースト になっちゃいました。せめて馬だけでも守りきることにする。
 イグアナの馬を庇いながら、オークを倒す。と、イグアナが現れた。ヒーラーの元から帰ってきたんだ。
 すいませんと謝るイグアナに恐縮するのはわたしなんだけど。
 街に戻るわたしとは反対に、まだ森でがんばるというイグアナ。意外に命知らずな性格だったのね。ヘブンと似てるわ。そのう ち死にマニアになったりして。ふふ。
 イグアナに急に森がキケンになってるから、と言ったけど、怖がってる割にがんばると言い張る。なら、とにかく逃げるんだよ と言って分かれた。
 リコールで1銀前に戻ったわたしは同じくデシートから帰ってきてた隊長とともに宿屋に帰る。
 デシートでかなり訓練できたらしい隊長はとてもゴキゲンだった。うらやまし。

第58回 スキル上げ
 ちょっと早めについたにも関わらず、隊長がすでに待っていた。
 またなんかおかしな格好をしている。ホントにいつもの隊長と比べる必要もないほど怪しさ爆発である。どうみてもロビンフッ ドも裸足で逃げ出す変質者にしか見えない。本人曰く「夜の王子様」なんだそうだけど、王子様にしては品のない格好だなぁ。
 思わず正直なキモチを言ってしまったわたしって、素直だなぁ。って、隊長、クロスボウの先がわたしに向いてますけど!?
 本気みたいで、目が殺気立ってる。うわぁぁ、ヤバい。失言でした。ごめんなさぁい。謝りに謝って、許してもらった。うぅ。 怖い。
 後からやって来たざなちゃんだって、「夜の王子様」発言にかなりウケてた。フェルッカに行ったら速攻殺されるよとまでツッ コんでる。なのに。どうしてざなちゃんにはクロスボウ向けないのぉ。うぅ。扱いに差があるような気がする〜。ざなちゃんを 敵に回すと、ざなちゃんお手製の矢を作ってもらえなくなるという弱みがあるとはいえね〜。
 ところで。所用があるざなちゃんと入れ違いにやってきたラヴィが、隊長とわたしの会話を聞いて「漫才コンビ」と言ったのは なぜかなぁ。いつもこんな感じなんだけど。
 ブラックもやって来たから、しばらくおしゃべり。しばらくしてブラックは魔法訓練に移動しちゃったけどね。それでも1時間 はみんなでおしゃべりしたかな。
 わたしも今日の予定はどうしようか。う〜ん。隊長はデシートに行くんだって。最近ずっと隊長達と別行動だったし。よし、久 しぶりに一緒に行くと答えた。
 隊長に死んでも蘇生魔法できないけどいい?って、確認されちゃった。大丈夫、ラヴィは看護婦さんだし、蘇生魔法もばっちり だもん。って、ラヴィ一緒にいってくれるでしょ?
 にっこり笑顔で答えてくれた。ありがとう、ラヴィ。
 準備があるから先に行ってというラヴィを置いて、リコールで北極まで移動して、隊長と一緒に洞窟の中に入る。
 今日の相手はあのリッチじゃなくて、骨騎士。だからたぶん大丈夫だと思うんだけどなぁ。
 骨騎士のいる奥の間に到着すると先客が何人かいた。もう隊長とは顔見知りのようで、挨拶が交わされる。だから、わたしもちゃ んと挨拶しました。
 骨騎士が現れて、戦士達が群がる。とりあえず遠巻きに見守っていると、隊長が「ぺこもいれてもらい」。
 いいのかなぁ。狩りが目的じゃなくて、訓練目的できてるから、戦利品にも興味ないんだけど。
 遠慮なくどうぞ、というお言葉に混じらせてもらった。
 同じように訓練目的の人が多いようで、強い武器禁止なんだって。わざと威力のない武器で時間をかけて、骨騎士を倒している らしいの。
 強い武器は止めてくださいって、声があちこちできこえる。しまった。わたしの武器は魔法がついてる特別な剣なんだけど。そ の上予備の剣も同じく魔法の剣だったりして。う〜ん、急遽、ラヴィに普通の剣を借りる。ふぅ。
 骨騎士一体に八人ほど相手をするのに、倒すまでの時間が長い。これは骨騎士が強いんじゃなくて、弱い武器で、へろへろ戦っ てるから。だけど。当たり前だけど。とっても訓練になる。自分の剣の腕があがるのがよくわかる。攻撃。防御。まわりの人の 戦い方も目に焼き付けて覚える。
 骨騎士が出現するまでの間は魔法の訓練をした。まずは自分にむかって雷の攻撃魔法をかける。あぅ。身体を稲妻が貫く。激痛 が全身を駆ける。心臓がきしむ。痛っ。魔法と魔法耐性をあげるためとはいえ、これは効くかも。うぅ。
 今度は毒をかけてみた。このときだけは、ラヴィと隊長がすごい勢いで飛んできて、争うように解毒をかけにきた。ちょっとコ ワかった。あの、仲良く順番にしてね、とお願いした。二人とも笑ってたけど、看護婦と包帯術に燃えてる隊長だもんねぇ。仕 方ないか。でもわたしにも解毒の訓練をたまにはさせてね。
 1時間ほど訓練をした頃、とっても眠くなってきた。馬上でうとうとしてしまう。気づいたら、居眠りをしてた。
 隊長が「帰る?」と声をかけてくれたので、素直に肯く。ん。帰る。
 「あともう少し待ってくれる?」という言葉にこっくり首を縦にふって、部屋の隅で隊長を待つことにした。
 このときもしっかり居眠り。よくインディからおちなかったものだ。きっとインディが極力動かないようにしてくれたからだね。 ありがと、インディ。大好きだよ。
 みんなに挨拶して、ブリテインにリコールで飛んだ。意識が半分眠ってたので、呪文を唱えそこなりながら、だったけれど。
 宿屋に戻った途端、あっという間に眠ってしまった。ホント眠い。お休みなさ〜い。

第59回 スキル上げ
特別公開。ってほどでもないけど。ぺこ 最近のぺこです。手に持っているのは、魔法呪文書。ぴょんに買ってもらった黒のミニワンピにピンクのベレー帽がかわいいでしょ?
 ちょっと早めに宿屋を出て、東の森にやってきた。
 最近の魔法訓練で秘薬を大量に使ってるせいで、秘薬代のために貯金が見る間に減っていってる。このままだと魔法訓練そのもの が出来なくなっちゃうよ。ということで今日はお金を稼ぎに狩りに来たワケなの。
 近頃の森はなんだか物騒で、わりと強めのモンスターもよく出現するようになったし。ダンジョンよりは安全だし。ちょっとい いかな、と思ったんだよね。
 狩りに行く前に鍛冶屋でフェリスさんに修理もしてもらったし。最近ちょっと修理にマメだったりして。
 この際だからモンバットなどの弱いモンスターも倒す。なんとか今日の秘薬代分だけ稼いでブリテインに引き上げた。
 魔法ギルドに行き、秘薬を買う。幸い、客はポーション目当ての客以外いなかった。これはチャンスだ。買い占めちゃえ、と秘 薬の在庫をすべて頂くことにした。ところが、こういうときに限って、ほとんど売ってなかった。あぅ。
 リコールの巻物も1本しかないのでムーングロウまで買い出しにも行けないし。今のわたしって、片道通行しかできないもん。 行ったら行ったまま。リコールスの巻物が売ってたら必ず買うようにはしてるけれど、一巻50Gは高いわ。
 ホントはニュジェルンという街に行きたかったんだけど。吟遊詩人のギルドがあるって聞いてたから。だけど、一方通行の リコールじゃね。ブリテインに戻ってこられないんだもん。
 というわけで、また森に戻って狩り。
 東の森の南側。海沿いの高原がわたしの狩り場。わたし達の間で通称広場。先日もイグアナを案内したトコロ。
 今日の狩りは基本的には訓練を兼ねて魔法で戦う。なるべく魔法のみで戦いたいんだけど、ね。なかなか威力がないから、 結局剣を抜く羽目になってる。
 植物モンスターをみかけた。これ幸いと、魔法で攻撃する。だって動かない相手だも〜ん。
 ところがハーピーが森の影から現れた。むぅ。邪魔なハーピーを先に倒してから、植物モンスターを倒すとするか。
 ハーピーと向き合って、剣を抜いた。っが。ハーピーの後ろには、なんとエティンの姿が。げっ。いつの間にいたんだろ??
 よくみると、その更に後ろには骨男。モンバットぉ!?
 いくらなんでも一度にそんなに相手をできるわけないでしょうが。今日もやっぱり(ハーピーにすら)何もしかけていない のに、四体のモンスターに一人追いかけられる。森には他にも人がいるっていうのに、モンスターは目もくれないで、わたし を狙う。
 なぜ?なぜなの?いつもいつもぉ〜〜〜〜っ。インディ、ごめんだけど、フルスピードでお願い。インディに声をかけて、 とりあえず全力で逃げた。
 森の入り口辺りまで走り、しばらく休憩。あぁ〜。疲れた。
 ほとぼりがさめたかな、というくらいに広場に戻る。先ほどのモンスター達はいない、よかった。ふぅ。今度こそのんびり 魔法攻撃で一体ずつモンスターを倒す。
 水エレが現れた。らっき〜。お金持ってる獲物だぁ。まずはすっかりうまくなった雷の攻撃呪文を唱えた。でも。何も起こ らない。あれ??もう一度。・・・。
 げっ。秘薬切れ。仕方ない。剣を抜いて、挑む。水でできた透けた身体に魔法剣で切りつける度に水蒸気があがる。っと、 こちらのダメージも相手が相手だけに相当キツい。回復魔法を唱えようにも秘薬が切れてるし。うぅむ。困った。
 ギリギリのダメージのまま、水エレから距離をとる。じりじりと後ろに下がるわたし。もちろん水エレは、止めを刺すべく 近寄ってくる。
 これまでかな。そう思った瞬間、戦士が通りかかった。思わず叫んでしまう。
 「回復お願いできます?」無言で回復してくれた。全快。おっけ、これなら余裕で勝てる。
 魔法剣を握り直し、水エレの正面に立つ。軽く息をすいこんで、足でインディに合図を送る。
 インディが水エレ目がけて駆ける。わたしはタイミングを計りながら、剣を袈裟かけに振り下ろした。刹那、水蒸気が辺り 一面に立ち上り、水エレは消滅した。水エレのいた場所にはお金の山。ふぅ。
 回復してくれた男性にお礼を言いながら駆け寄った。
 ありがとう。助かりました。この戦利品持っていってください。あなたがいなければ、助からなかったから。
 だけど、そんなつもりじゃないから、と受け取ってくれない。それは理解ってます。
 何度もやり取りをしたけど、受け入れてくれない。
 参りました。わたしはそう言って、戦利品を自分のかばんに直した。
 わたしのその言葉で、初めてファンさんは笑顔を見せてくれた。また会ったら声を掛け合いましょうと約束して、今日は お別れした。
 疲れて歩くのが面倒だったので、リコールの巻物で街に戻った。あぁ、これでしばらく魔法でしか移動できないなぁ。

第60回 マイホーム
 今日は、これから家を買いに行きます。
 ブリタニア大陸では家を建てるには土地がかなり不足していて、土地争いまで起きているという話だったけれど。それがこの度 フェルッカに限って土地が解禁になったんだよね。
 今までみたいに宿屋に住まなくても、いいわけで。やっぱり憧れのマイホームだったりするのだ。で、貯金を叩いて、この度買 うことにしたんだ〜。
 買うのはぴょんとヘブン、そしてわたし。ちなみにわたしの分はぴょんが出資してくれるんですけどね。わたしにはお家を買う ほどの貯金はありません。とほほ。
 フェルッカに行くに当たって、ボブに護衛を頼むことになった。といってもわたしのためのボディガードなんだって。
 家を建てるためには、自力で測量をしないとダメなんだけど。その測量中に、モンスターやPKが現れたときのためにね。 ぴょんが、わたしが一番危ないからってボブに頼んでくれたみたい。二人ともありがと。
 ぴょんはそれだけじゃなくて、PKが出たときに姿を消す魔法の箱も用意してくれた。箱を空けたら、自動的に姿が消えるんだって。 すごい。 えと、ちょっと試してみてもいい?一回限りの魔法だからダメなの?ちぇっ。残念。
 ぴょんがここまで用心深くなると、とてもとても不安になった。万が一のことを考えて、大切な荷物はすべて銀行に預けて行く ことにした。お金や武器、隊長からもらった成金防具セットもね。 もしもを考えて、秘薬と魔法書。それにリコールの巻物だけは 携帯することにした。
 ぴょんが地面にフェルッカ月石を埋める。フェルッカに行くにはフェルッカ月石と呼ばれるこの特別な石がいるの。これを地面 に埋め込めば、フェルッカに続くゲートが開かれる不思議な石。
 反対にトラメルに戻るときは、トラメル月石がいるんだよ。
 最初にゲートにボブが入って、続いてわたし。
 うわぁぁぁぁぁっ。ゲートを抜けたら、目の前にエティンがいた。なんで到着地点にいるのよ?
 案の定、追い掛け回される。当たり前だけど丸腰なので、とりあえずゲートを中心にぐるぐるまわりながら逃げる。
 わたしのあとから来たヘブンとぴょんは、その光景を見て大笑い。
 笑ってないで、みんな何とかしてよ〜。「相変わらずモンスに愛される女」とかヘブンそんなこと言ってないで助けてよ。 「そういう人いるよね」とかボブも言ってないで、倒してよ。ボディガードなんでしょ?
ぴょんも笑ってばかりいないで、魔法で攻撃してよ。もぅ、もぅ、もぅ〜。うき〜〜っ。
 ゲートの周りをぐるぐる、ぐるぐる。
 ぐるぐるまわってるから、だんだん目がまわってきてるし。だけど気を抜くとエティンに追いつかれちゃうし。エティンが 「反対周り」とかを思い付かないおかげで、逃げ切れてるけど。そろそろ限界。うぅ。
 「早く倒してぇ〜〜っ」思い切り叫んだら、やっとボブとヘブンがエティンに近寄って、瞬殺してくれた。
 それならもっと早くやってくれてもいいんじゃ・・・。はぁ。フェルッカに着いた早々こんな目に遭うなんて(号泣)。
 今度はぴょんがルーンを使ってゲートを開く。着いた先はフェルッカのトリンシック。トラメルではトレジャーハンティングに 行った場所、だね。
 トリンシックは黄砂でできた城壁の美しい街。ブリテインにつぐ第2の大都市だけど、人がホントに少ないところなの。 ジャングルにはモンスターもあまりでないし、ワニくらいかなぁ。住むにはとても良いところだと思う。フェルッカでも、 この辺りは割と安全なほうらしい。
 測量をして、三人それぞれ気に入った場所に家を建てる。
 ヘブンは周りにも家が建ち並ぶ一角。ぴょんは目の前が海の崖沿い。わたしのお家は、背後が鉱山の静かな草原に。ちなみに 3人とも近所です。
 わたしのお家が二人のお家の真ん中にあたるかな。ぴょん曰く、三人のお家は、二等辺三角形の点みたいらしい。
 完成した我が家を見上げる。小さいけれど、わたしのお家。石と漆喰で出来た小さな小さなマイホーム。
 ぴょん、ありがとう。大切に住むね。
 表札に「ぺこ's House」と名づけた。あはは、そのままだ。

第61回 名前
 デシート島(通称:北極)にあるダンジョン「デシート」に来てます。ここの二階にいる骨騎士が今回のターゲット。といっても、 狩りじゃないんだけど。訓練、訓練。
 到着すると、わたしと隊長以外には一人しかいなかった。隊長とはすでに顔馴染みらしい。名前はムジュラさん。もちろん戦士。
 わたしも隊長の紹介でまずは挨拶。ぺこ、です。よろしく〜。
 「あぁ、はらぺこのぺこ、さん?」うがっ。違う〜。こんなこと言われたの初めてだ。かわいい女の子にそんな名前のつけ方する 親がどこにいるのよ。
 「オレンジペコーのぺこ、です」
 「紅茶のぺこ、だよね」隊長と二人で同時に主張した。
 話してみると三人そろって紅茶が好き。骨騎士と戦闘中だというのに、紅茶の話で盛り上がる。でも余裕があったのはムジュラさんと 隊長だけ。
 わたしは気がつけば骨騎士に重症を負わされ、逃げ回っていた。で。もうお分かりでしょ。今回もまた死にました。今回はインディも 一緒です。あはは。(最近わたしが死なないからつまらないとおっしゃる一部の読者の皆様、ご期待に応えましたぁ♪嘘です。うぅ)
 ここで死んだ場合、ダンジョンの外にある復活の神殿に行くか、ダンジョン内でヒーラーを探すしかない。でも、どっちもタイヘン だなと思う。わたしは方向音痴だから、迷っちゃうんだもん。
 そんなわけで、ぴょんに緊急呼び出しをかけた。
 「ぴょん、デシの骨騎士の部屋で死んじゃった」
 「そんなトコ行くからでしょ」とブツブツ言いながらもぴょんはちゃんと来てくれた。ありがと。ぴょん。大好き♪
 で、部屋の隅にある魔法陣から、一つ下の階に移動して、ぴょんの蘇生魔法で無事復活。荷物は隊長が回収してくれたので、こちらも 無事。
 ぴょんが「帰るよ」とゲートを開く準備を始めた。確かに今日はこのまま帰るほうがいいかな。次の予定もつまってることだし。
 隊長と入れ違いにやってきたブラックに向かって、先に帰ることを告げる。
 「ぴょんの家でお引越し祝いしますから、後で来て下さいね。準備のために先に帰りまぁす」快く承諾してくれた二人と分かれ、 ぴょんと共にブリテインの街に戻った。
 そ。今夜はぴょんのお家で引越祝いなんです。

第62回 引越祝
 フェルッカのトリンシックの街外れ。眼前の海からの風を受けて建つレンガ造りの塔。何度も言うけれど、ここがぴょんのお家。 海側に面した玄関の鍵を開けて室内に入る。
 ぴょんから合鍵を受け取る。それからセキュリティシステムに友達登録もしてもらう。これをしておかないとお家に入った時に、 侵入者として犯罪者通報されちゃう。
 三階にインディを置いて、一階に降りる。
 居間の中央には木製のテーブルと椅子のセット。テーブルの下には魔法陣模様の絨毯が敷いてあり、魔法使いのお家らしさを醸し 出してた。
 椅子に腰掛けて、目を閉じた。うなじをくすぐる海風が心地いい。
掛時計の規則正しい音だけが室内に響く。
 外で足音が聞えた。迎えに行っていたぴょん達が戻ってきたんだ。
 「おかえりなさぁ〜い」玄関を開けて、出迎えた。
 だけど隊長とぴょんしかいなかった。ブラックとはぐれてしまったんだって。かなり探したけどいなかったらしい。仕方がないけ れど、今日は三人でお祝いしよっ。奇しくも初期メンバだけでお祝い。
 トラメルのブリテインで買ってきた料理を食卓に並べる。スティック野菜、チーズ、パン、ピザ、フィッシュステーキ、そしてデ コレーションケーキ。
 隊長持参の引越祝いのお酒で乾杯。チェリオ♪
 アルコールが身体を駆け巡る。おいしい♪料理に舌鼓を打ちつつ、お酒を頂く。ほどよく酔いが回る。会話も弾んで、あっという 間に時間が過ぎていく。
 お料理も食べ終わりくつろいでいた時、ぴょんに救援呼び出しがかかった。
 酔いも手伝ってたんだと思うけれど。慌てて支度を始めるぴょんに「ぴょんは忙しい人だもんね」と口走ってしまった。呼び出さ れる度にいなくなっちゃう。
 「死んだらオレも呼び出してるしなぁ」隊長もぽつりと一言。
 「いつも一番呼び出してる人間がよく言うよ」階段のほうに歩きながら、ぴょんが苦笑混じりに呟く。
 あぅ。そういえば・・・。
 迷子になるたび迎えに来てもらってるかも。
 別の街に行って、ブリテインに帰れなくなったら、いつも迎えに来てもらってるかも。
 死んだら死んだで、必ず呼び出してるかも。
 「迷子になった時まで、ぴょんを呼び出すんじゃない」と隊長は言うけれど。
 「オレだって。昔は、馬もなくて。歩いて、他の街に移動しては、他人に訊きながらブリに帰ったんだぜ」。そんなこと言われても。
 わたし、方向音痴なんだもん。隊長だってわかってるクセに。ぷん、だ。
 ぴょんを今とても必要としている人達がいるのは真実だから。笑顔で送り出した。
 「気をつけて、いってらっしゃい」
 隊長と二人だけになった。束の間の沈黙の後、隊長がしみじみ言った。
 「二人は初めて会った頃と、変わったよね」
 「ぺこはともかく、ぴょんは立派になったな〜」
 ともかくってどういう意味なのかな、と一瞬思ったけれど口には出さなかった。
 うん。一緒に隊長についてまわってた頃が嘘みたいだ。
 今のぴょんは別人みたいで。一人前の上級魔法使いで。たくさんの人を毎日助けて。最近は若い人達の手助けもしてて。
 そんなぴょんを見つめていられることは、とてもうれしいことだけど。
 そんなぴょんがわたしのそばにいることは、とても誇らしいことだけれど。
 でも。ほんのちょっと淋しくて、切ない。
 こんな風に感じてしまうのはイケナイかな?

第63回 驚き
 東の森の中でも南側の海沿いの高原。ここはわたし達がよく利用するトコロで、「森にいるよ」といえばこの付近を指すくらいなの。 通称「広場」と呼んでます。
 わたしはさっきから広場の真中にある木の下で、魔法の訓練中。上級魔法の呪文を唱えては、失敗を繰り返してる。でもこれが訓練に なるの。ちゃんとスキルは上昇中だよ。
 あ。隊長とブラックそしてヘブンは、いつもの場所に来ることもなくデシートに行ってます。あちらも戦闘スキル訓練だと思う。
 お金を稼げそうなモンスターが通ったら、インディとともに倒しには行ったけれど。それ以外はひたすら呪文をぶつぶつ、ぶつぶつ唱 え続けてるわたし。
 たまにモンスターにジャマされることもあるけれど、調子よく訓練できてる。うふふ。あ、そうそう。ガーゴイルがいきなり襲ってき たときは、大変だったな〜。今のわたしだったら、ガーゴイルくらい全然平気なんだけどね。戦闘中に急に腕が痺れて、剣が持てなく なっちゃったの。懸命に盾で防いだけれど、それでも限界があるでしょ。丁度通りかかった女性が回復してくれなかったら、たぶん死 んでたかも。
 こうして秘薬がなくなるまで続けて。ブリテイン第2銀行に戻りました。実は待ち合わせしてるの。
 先に来て待ってた鍛冶職人修行中のまさに声をかけた。まさは、ぴょんの親戚なの。
 そのまさがわたしの家に炉を置かせてほしいというので、これから二人で行くの。やっぱりすぐ後ろが鉱山だと、こういうことになる だろうなと思ってたし。
 さて、移動しようと思ったら、ヘブンとゆいなに会った。ヘブンは一足先にデシートから帰宅したトコロだったみたい。ゆいなとはと ても久しぶりかも。なんだか白いワンピース姿がとても綺麗だ。
 あんまり久しぶりだから、忘れられてるかもってちょっと思ったけれど、大丈夫だったみたい。ゆいな、元気そうで良かった。
 折角だから二人も一緒にわが家に招待した。
 まさが炉を置いて、早速鉱石堀りを始めたり。ヘブンが魔法の訓練を始めたり。そのとき、わたしはゆいなと女の子の会話を楽しんで いた。
 そのとき。一瞬何を言われたのか理解できなかった。ホントに口をぽかんと開けて、とてもヘンな表情をしてたんじゃないかな。
 ゆいな、今、何て言ったの??
 ぴょんとゆいなが結婚って。そう聴こえた・・・

 じゃぁ。あの日、ぴょんがわたしに言った一言は何だったんだろう。
 あの日からわたしはずっと、考えていたのに。

第64回 管理人
 久しぶりにフェルッカのわたしの家に行った。自宅があるというのに、未だにトラメルの宿屋で寝泊りしてたりして。
 行ってみて、びっくりした。我が家はすっかり鍛冶職人志望の若者たちの修行場所になってたんだもの。
 玄関の前には大量の鉱石。家の中には精製されたインゴットの山。窓は開いていたけれど、それでも部屋の中は炉の熱気で茹だるような 暑さだった。 まさに頼まれて、炉を置いた時点で想像はついてたけど。
 玄関開けたら2秒で鉱山、という立地条件だもんね〜。モンスターやPKもでない(ように思える)安全なトコロに建っているから、 安心して鉱石も掘れるし。たくさん掘っても重くて持ち運べないということもないし。
 三日に一回は家にいないと腐ってしまうお家だけれど、こうしてみんなが利用してくれているおかげで、毎日リフレッシュされてるし。 そうじも行き届いて、キレイだし。
 まさがすっかりここの管理人として、管理してくれてるおかげかな。

第65回 結婚祝
 ぴょんとゆいなが結婚することになったので、みんなでお祝いをすることになった。といっても、結婚式はまだまだ先のことだけど。
 二人は新居となるフェルッカのぴょんのお家で、既に同棲中らしい。
 隊長、ブラック、ヘブンとわたしの四人で相談した結果。「新しいもの」「古いもの」「借りたもの」「青いもの」の四種類を贈る ことになった。
 新しいものを買う資金は1万G。といってもわたしは秘薬代のおかけで、そんなに貯金はない。お金を一番稼げるモンスターを探 さなくちゃ。う〜ん、う〜ん。・・・。実は思い浮かぶモンスターがいるんだけど、非常に相性が悪いというか、何度もヒドい目 に遭ってるせいか敬遠したいんだよね〜。
 だけど、ヘブンはわたしの呟きに「リッチ」とはっきり言ってくれた。ありがとぉ。やっぱりリッチなのね。
 リッチは一回に300〜400を稼げる上に、魔法の巻物なんかも持ってるし。これは魔法ギルドで売れるのよ。
 だけどね、ヘブン。わたし、「リッチロード」に三回は殺されてるし。できれば、違うトコがいいなぁ、なんて。
 もごもごを言い訳をしたけど。「大丈夫。ガードしてあげるし」ヘブンはそういうけれど、モンスター見たらすぐいなくなるじゃない? 「そんなことないよ、ぺこのこと守るし」。ホント?じゃぁ、行ってみようかな。ぴょんにお祝いしたいもん。
 とりあえず死んだときのことを考えて、いらない荷物はすべて置いていくことにして。鎧は隊長譲りの成金セットを着て。 準備おっけ。
 デシートの三階にあるリッチ部屋に到着。ほとんど人がいない。らっき〜。獲物はすべてわたしが頂き。
 早速リッチが一体現れた。ヘブンから借りた銀製の三日月刀を抜いて、リッチに切りかかった。
 ヘブン、見てないで、手伝ってよ〜。
 「がんばれ、回復してあげるから、一人で倒してみ〜」
 「一人で倒さないと、意味ないでしょ?」
 うぅ。お祝いだから、ヘブンの言い分が正しいんだけど。でもでも。
 リッチは魔法と通常攻撃の両方で襲ってくるし。魔法耐性を訓練して以前よりは多少あるけど。キツ〜〜〜い。
 かなり時間をかけてやっと一体を倒した。
 「やったじゃん。おめでとぉ」。ヘブン、ホントに見てるだけで、助けてくれなかった。回復はしてくれたけど。
 こういうやり方で何体かを倒していたとき。ヘブンが上の様子を見てくると言って、この場所を離れた。
 その瞬間、現れたリッチに殺されました。ほとんど瞬殺でした。ヘブンを呼ぶヒマもありませんでした。
 戻ってきたヘブンは笑ってましたが。さすが、ぺこ。死にマニアとまで言われたけど。
 ヒーラーさんに蘇生してもらった後、荷物をまとめてさっさとブリテインに帰りました。
 ヘブン、ガードしてくれるって言ったくせに〜。蘇生した後、泣きながら文句を言うわたし。笑いながら、ごめんごめんって 謝られても全然説得力ないし。くすん。
 でも今日は二千G稼ぎました。ノルマは、あと30体。ヘブンがそれくらい必要っていうんだもの。
 30体倒すまでに、わたし、あと何回死ぬことになるんだろ〜。