![]() 二人が呪文を唱え始めた。ということは、隊長とブラックも魔法を覚え始めたらしい。ヒールと毒消しを覚えたと隊長がブラッ クに報告してる。わたしより上達早いんだろうな。この二人、だもんね。 今日は他のみんなは来ない雰囲気。3人で相談して、今日も狩りに向かうに決定。ただし、今回は東の森を北へ北へ。 森を抜けて、北の平原には殺人者がうろうろしてた。どうやら殺人者達のキャンプ場だったらしい。いきなり彼らは隊長に切り つけてきた。彼らを倒すとカルマが良いほうに上がるから喜んで倒す。えへへ。 3人で撃退しつつ、平原を南西のほうに移動開始。平原を抜け、鉱山を抜け、また平原を行く。 隊長とブラックが馬を止めた。眼前には洞窟。ここが今日の目的地。蜘蛛がいるダンジョン。そ、です。三日連続でダンジョン なんです。も、慣れました。 ただし、今回は今までとは違うの。なぜかっていうと、モンスターが毒を持ってるから。今まで以上に命の危険があるわけです。 洞窟内は、真っ暗。だけど見えないってほどじゃない。入ってすぐに階段がある。上りと下り。上りを選んで、進む。 蜘蛛がいた。大きい〜。蜘蛛もホントは嫌い。う〜、来るな〜と叫ぶ心とは裏腹に自ら剣を構えて蜘蛛に突進する。まずは一匹 目を剣の餌食にした。 行く手に現れる蜘蛛を倒しながら、奥に向かう。角を曲がったとき、なにかを目の端に捉えた。隊長とブラックも気がついたみ たい。馬を返す。そこには蠍がいた。大きいってもんじゃない。でかっ、ってカンジ。分かります? 3人で蠍にかかる。だけど、なぜかわたしの背後にはモンバット。 しかたなく、モンバットの相手をする。せっかく大物だったのに。モンバットってば、邪魔しないでよ〜。モンバット相手に意 外に時間をかけてしまった。倒して振り返ると、二人はとっくに蠍を片づけてた。やっぱり力量が違いすぎます。 ついでに一旦小休止。隊長からスペアリブを貰って、腹ごしらえ。美味しい〜。おなかいっぱいで、元気いっぱい。エンジンに ターボがかかった。 ここで、まいが合流した。わたし達の後を追っかけてきたらしい。まいが来てくれてうれし〜。ちなみにヘブン達はどこにいる か分からなかったから、一人で来たらしい。 洞窟の深奥。階段の手前にやってきた。この上が今回のメインステージ。毒系モンスターがうじゃうじゃいるらしいトコロ。覚 悟を決めて階段を上る。 げ。蠍やら蜘蛛やら、うじゃうじゃいる。モンスター同士で既に乱戦になってる。はっきりいってグロい。キモチ悪ぅ〜ぃ。で もこれを倒さないと帰れないもんね。がんばれ、わたし。勇気りんりん。自分を鼓舞する。 まずは、蠍相手に立ち回る。さっき相手できなかったんだもん。っが。手強くて、深手を負ってしまった。うっ。強っ。更に。 弱り目にたたり目というか。毒まで受けてしまった。うっ。 急速に意識が遠のいていく。毒のまわりが異常に早い。も、あかん。死ぬかも。力なく呟いた。4回目か〜。いさぎよく覚悟を 決める。 あれ?死なない。ちょっと元気が出たような気もする。 ん?全快。毒の影響も全くなし。あれれ?どうなってんの? ギリギリ間に合った〜と叫ぶ隊長。そ、か。隊長が解毒と回復魔法を使ってくれたんだ。命の恩人だ〜。隊長、ありがと。 大丈夫?まいも声をかけてくれる。うん。平気。隊長のおかげです。笑顔で応える。 モンスター群を倒し終え、ってわたしじゃないけど。死体の山を越えて、通り抜ける。階段があった。隊長に続いて、駆け上が る。そこは、なんと洞窟の入り口だった。つまり一周してきたのね。ということは。ダンジョン制覇と言ってもいいのかな? 今日はちょっとアブなかったなぁ。もっとスキルあげよ。 ![]() なぜか今日はモンスターに背後からいきなり狙われまくり。しかも全部大型モンスター。身の丈いったいいくらなのってくらい のモンスターばかり。 最初にトロル。その次はガーゴイル。オーク。まいには、今日は一人にならないほうがいいんじゃないと言われるし。ヘブンに は笑われるし。こっちは笑いごとじゃないってば。 特にガーゴイルは炎を吐きながら追いかけてくるから、キツかったのなんの。火傷するっちゅーねん。愛馬インディに乗って、 必死で逃げるけど、翼があるガーゴイルにはすぐ追いつかれちゃう。あぁ、もう傷だらけ。 通りがかりの方がガーゴイルを倒してくれなかったら、今ごろ間違いなくゴースト。ホントに助かりました。ありがとう。 ペットのドラゴンを使役して、あっという間にガーゴイルを倒したんだよ。さすがドラゴン。強いゾ。たくましいゾ。か〜っちょ い〜。いやん。めろめろかも。 あ〜。ここに来てから、まだ一体もモンス(と呼んでるんです)倒してないな。 まいが熊なら楽勝と勧めてくれたので、近くにいた熊を狙うことにする。モンスに追いかけられた鬱憤がたっぷり溜まってたの も手伝って、思いっきり剣を振り下ろした。 っが。めちゃめちゃ、強い。毛皮に覆われた巨体は簡単に致命傷が与えられない。その上手負いの熊の反撃のすごいのなんのっ て。更に悪いことは重なるもので、なんと熊は熊でもグリズリーだったもんだから、ストレス解消どころか、ストレス増大。生 命減少。 結局背中を向けて逃亡する羽目になっちゃった。まいがわたしを庇うようにグリズリーの前に立ち塞がって、倒してくれた。 今日って厄日? 狩りは諦めて、調教の訓練でもしよ。 ゴリラを見かけた。ここの森はゴリラまでいたのか。初めて見た。って感心してる場合じゃないって。ゴリラって密林にいるん じゃなかったっけ? でも折角だから、ゴリラ相手に挑戦。 「怖がらないで、傷つけたりしないから。君と友達になりたいんだ」あっさり成功。意外にゴリラは簡単みたい。ゴリと名づけ て、連れ回す。だけど。ウホウホうるさいわ。言うこと聞かないわ。エサ欲しがるわ。たった30分ほどであっさり野生に戻る わ。サイアク。 今日はホントに厄日かも。 ![]() 行かないほうが身の為だと思う。そう言って一度は辞退したけど、他にも仲間がいるから大丈夫というヘブンの言葉に安心し て、行くことにした。 オークキャンプはその名が示す通り亜人間のオークがうじゃうじゃいるトコロ。この東の森から南東のほうにある。右手に海 を見ながら、海岸沿いを馬で駆けていく。 月がほのかに地上を照らす。遠く近く聞こえる波の音。海から吹く優しい風。潮の匂い。風に揺れる愛馬インディのたてがみ。 蹄の音が耳に心地よく響く。なんて素敵な時間なんだろう。 海の中から波しぶきがあがり、なにかが飛び出した。イルカだ。馬を止め、イルカの近くに寄る。 宙返りをしたり、かわいい声でキュインと鳴く。かわい〜。うぉ〜、らぶり〜。しばし、イルカの曲芸を楽しむ。 この辺りの海にはイルカが棲んでたんだね。全然知らなかった。 イルカに後ろ髪を引かれながら、インディに跨り、オークキャンプに 向かって再び走り始めた。(特別挿画:KAMIU氏 "KAMIU's World") ![]() ![]() もし死んだらこのコーブの街に来ること、とヘブンが言う。う〜ん、不吉な。だけど大切なことだよね。復活したければ、ここね。 おけ。 コーブの街を通り過ぎ、右手に鉱山、左手に海が迫る細道を走り抜けた。オークキャンプの手前では、今日の仲間である。まい。 コウ。べる達が、既に待っていた。 いざ、オークの待つオークキャンプへ。と気合を入れてキャンプ内に侵入したけど、肝心のオークがいない。もう他の冒険者たちが 狩ったあとのようだ。拍子抜けするほど、モンスターの姿がない。 キャンプ内をくまなくチェックするけど、発見できない。やっと見つけたと思ったら、先客が既に相手をしてるし。 ちぇっ。大群で出てきてほし〜わ。つまんないでしょ〜。と叫んでみた。そしたら。急に湧いて出てきた。あはは。うれしいような。 哀しいような。 でもオークはそれほど強い相手じゃないから、余裕を持って戦えた。危険なトコロと聞いてたけど、これなら平気。えっへん。と油 断したところで、オークメイジに切りつけられた。サイアク。オークメイジは毒の攻撃をしかけることもあるから、かなり要注意ら しい。 突然、ねことぴょんが現れた。らっき。早速回復してもらう。 一段落着いたところで、引き上げることにした。みんなはまだがんばるらしいけど。 ゲートを開いてくれるというぴょんの申し出を相性がよくないからと断った。過去の体験がトラウマになりつつあるんです。ぴょん がかなりウケてた。きっと思い出し笑いに違いないわ。 ぴょんも今日は引き上げることにしたみたい。わたしに付合って、一緒に帰ってくれると言ってくれた。ありがと。 二人で元来た道をおしゃべりしながら歩く。ゆっくり、ゆっくり。 海に出た。またイルカがいる。やっぱりかわい〜。らぶり〜。そ、だ。調教してみよう。うふっ。われながら良いアイディアだ わ。 試したけど相手にしてもらえなかった。スキル不足!?が〜ん。 がっくりしながらぴょんに報告すると、ぴょんも同じことをやってたんだって。で、失敗(笑)。 1時間ほどかけて、見慣れた東の森に着いた。 途中、銀行によって、今日の戦利品を整理。秘薬もケッコウ集めたので、それはぴょんにプレゼントする。喜んでくれたよ。 特にフェルッカに行くための月石はね。フェルッカは、わたしの住む世界トラメルと表裏一体の関係にあるもう一つの世界。普通 には行き来できない裏世界。 同じブリタニア大陸。同じブリテインの街。だけど。街中でもモンスターや犯罪者たちが徘徊する恐ろしいトコロ。わたしなんて 一撃で殺されてしまうことは間違いない。双子世界。そこがフェルッカ。 ちょっとだけ、ぴょんに魔法の講習を受け、一緒に宿に戻った。 ![]() って、今のわたしって、自称「吟遊詩人」なんだよね。虚しい。なんか「自称」って哀しい響きがするね。あ〜ぁ。 変わっていることを期待して、職業欄に目をやる。って、えぇ!? 我が目を疑う文字が並んでる。落ち着いて。さ、もう一回じっくり見るのよ、わたし。 って、え〜〜〜〜〜〜っ!?やっぱり。間違いない。 冗談でしょ。「職人戦士」から「エキスパート戦士」に変わってるし。エキスパートを手元の辞書で引いてみる。「専門的な。 熟練者。くろうと。専門家」おいおい。戦士として更に成長してどうする、わたし。「吟遊詩人」からますます遠のいてるやん かっ。 あぁ、ヘコんだ。・・・そ、だ。集合時間。行かなきゃ。 重い足取りで恒例になってる集合場所に向かった。そこではすでに隊長が待ってた。馬が一頭増えてる。荷馬なんだって。そう いえば荷物載っけてる。 そこに久しぶりにニューが来た。うわぁ、とっても久しぶり。今ナニしてるの?ちょっとはスキルあがった?話に花が咲く。 ブラックやぴょん、ヘブン、まいもやって来て橋のたもとで賑やかなことこの上ない。おかげで気が晴れた。完全に井戸端会議。 時々、所用でどこかに消えちゃったりもするけど、それを待ちながら橋のたもとから一向に動く気配なし。 ブラックが釣り糸を垂らして、釣りを始めた。おぉ〜、大漁。って、これってなんの魚なワケ? ブラックに魚をわけてもらった。やっぱり新鮮な魚は刺身でしょ。というわけで魚をおろす。でも保存食のほうがいいかなと考え 直した。冒険中におなが空いたときに必要だもんね。 ぴょんに火をおこしてもらって、切り身をステーキにしようとした。結果。丸焦げ。あぅ〜。ブラックにまた魚を分けてもらって、 挑戦。結果。丸焦げ。あぅあぅ。3回目にしてやっと、成功。美味しそうな匂いが立ち込めた。出来上がった魚肉ステーキをブラッ クと隊長にプレゼントした。 ブラックが言うには、おいしかったみたい。よかった。 |