吟遊詩人な日々
第16回 探索
 目の前に隊長がいる。あぁ、森にいるんだった。今日はみんなばらばらに行動している。
 こんなところで隊長に会うなんて。隊長はブラックと狩をしていたらしいけど、モンスターに追われてはぐれちゃったらしい。
 隊長の様子がいつもと違う。服装が特に。ギモンが顔に出たんだろうか、隊長が応えてくれた。死んじゃったから。馬も一緒に。 え〜〜っと森中に響く声で絶叫するわたしに涼しい顔で話す。あぅ。ショックが強すぎて。なんといったらいいのかわからない。
 隊長はブラックを探しに北に向かうらしい。「ぺこ、どうする」と訊かれた。もちろん一緒に行きますとも。「危ないよ?」平気、 じゃないけど一緒に行くと主張して、隊長と一緒にブラック探し。
 ブラックを探して、北へ北へ。だけど全然いない。途中モンスターにも犯罪者にも出会ったけど、肝心のブラックには全然会わな い。散々探し回った。だけどいない。街に戻ったのかもしれないという隊長の言葉でブラック探索を諦め、ひきあげることにした。
 街に戻り、なぜか仕立て屋さんに向かう隊長。店から出た隊長が買ってきた品物を染料につける。そして。染めあがった品物をわ たしにくれた。それはなんと帽子だった。
 帽子はわたしの染めたワンピースと同じ色。アクアブルー。
 かぶってみ。と言われるまでもなく、かぶったわたし。かわい?ありがと〜と大喜び。
 今度は銀行に向かう隊長とともにくっついていく。ここでヘブンと合流。3人で防具屋に向かう。
 ヘブンの欲しい鎧は高くてかえないらしい。なぜかマントを着たまま裸になるヘブン。・・・あのね。隊長も大笑い。それじゃヘ ンタイだよぉ〜〜。
 宿屋に戻るという隊長。
 東の森に行くというヘブン。
 行っておいでと隊長に促され、ヘブンと森に向かう。
 森の入り口ではぴょんとまいが待っていた。
着替えるというヘブンはまた例の裸マント姿になり、まいが悲鳴をあげる。ヘブンの変態。ばかっ。面白がったヘブンがまいを追い かける。くるなぁ〜〜〜っと逃げるまい。
 わたしとぴょんはそれを傍観。いやぁ、緊張感ないね〜(笑)。
 4人で森の南側にいく。それぞれがテキトーに動くもんだから、気がついたらみんなばらばらになってた。そ、わたしも。まいと 二人だけになってた。
 そこにトロルと戦っている戦士を見かけた。声をかける。「大丈夫ですか?お手伝い要ります?」。ありがとうとの返事だったの で、参戦する。トドメを刺す直前で手を引く。ほら、最初に戦っていた方の獲物だから。
 戦士がトロルを倒した。わたしに近寄ってくる。モヒカンさんというらしい。またどこかで、そう言い残して分かれる。
 みんなどこに行ったんだろう。とりあえずみんなを探しに移動を開始する。森の中を探し回る。
 あれ。モンスターに襲われているヒト発見。加勢する。モンスターを倒したけど、でもちょっと傷を負った。
 通りがかった自称「野良ヒーラー」すけさんに傷を治療してもらう。こうして森をさまよっては治療してまわってるんだって。 ブリタニアにはいろんな方がいるようだ。
 更に探索を続ける。森に分け入り探し回る。崖のそばで立っている人が視界に入る。あれ、もしかしてさっきの。モヒカンさん?
 やっぱりそうだ、またどこかどころか。今会ってしまったけれど、いろいろお話する。
 まいが馬がほしいからと、モヒカンさんと話すわたしの元を離れた。
 モヒカンさんとしばし会話を楽しみ、またみんなを探し始める。今度は、まいも増えてるし。
 またモンスターに襲われている人を発見。通りがかっては加勢し、トドメで手を引くを繰り替えすこと数時間。
 今度は2対のトロルに襲われている二人を発見。声をかけて、加勢に入る。さっき助けた人じゃなかったっけ?確か、怪獣に襲わ れてるとき。やっぱりそうだ。2対のトロル相手に3人でがんばる。
 無事倒し終えると、2度も助けてもらってとお礼をくれた。またどこかであったら声かけてねと告げてわかれる。
 海岸線を走りつづけて、やっとみんなを発見。あら、全員一緒にいたのね。
 まいがせっかくペットにしたラバを植物性のモンスターに殺されたと泣きながら呟く。
 不意に足元にそのモンスターが現れた。敵討ちとがんばるわたし達。
 ヘブンがモンスターに襲われて死んだ。が〜ん。ヘブ〜ン。
 そこにぴょんとヒーラーのねこさんが現れて傷を治療してくれる。再びモンスターに挑んで、無事敵討ち完了。
 ふぅ〜、今日はヒト助けばかりだったような。
 初対面のねこさんと挨拶を交わす。よろしくね、ねこ。
 ちょっと疲れちゃった。みんなと別れ宿屋に戻ることに決めた。みんなはまだがんばるみたい。タフだな〜。
 ぴょんが宿まで送ってくれることになった。のんびり宿までの道を歩く。歩きながらおしゃべりする。
 宿屋に着いた。部屋の前まで来る。おやすみと言うと、ぴょんは消えちゃった。
 また明日ね。

第17回 戦士たち
 いつものように集合場所の魔法ギルド前の橋に行く。隊長が先に来ていた。
 挨拶を交わした後、昨日のことを話した。隊長が笑いながら頷く。また続きを話す。
 話が一段落ついたところで、隊長がわたしに訊ねた。武器はずっとヤリにするのか、と。あまり気にしていなかったんだけど。 長槍は両手を使うため、盾を持てないという欠点があるんです。つまりちょっと防御がおろそかになっちゃうんですね。そこを ツッコまれると、ぐ〜の音もでないの。う〜ん、じゃ、ナイフで、と応える。ナイフじゃ戦えない、と至極ごもっともなお言葉 がかえってきた。
 んと、武器は剣にかえます。はい。そして、銀行に行き、隊長が預けている剣を譲り受けた。そしてそのまま防具屋に移動し、 盾を買ってもらう。わたしって、貰ってばかりだね。とほほ。これでもお金貯めてるんだけどな。というわけで、装備完了。
 狩に向かう前にもう一度橋に戻ってみる。ほら、みんなが来てるかもしれないでしょ。 案の定、ブラックが到着。ヘブンも到 着。そしてぴょんも。今日は5人でおでかけ。
 東の森の海岸沿いを今日は行く。
 早速モンスターを発見。っと。戦っているのは、、、まい?加勢してまいを助ける。まい達どうやら先に来てたのね。
 ねこやまいが、ぴょんと間違えたというまささん。初心者(ってわたしも、だけど)ぼぶも加えた総勢9人の団体で今日は狩を することになった。
 だけどチームワークっていうの?が、ちょっとだめだめ。だったので、みんなモンスターを見るとうわぁ〜〜〜〜って走り去っ てしまう。
 隊長がぼそっと烏合の衆と呟いた。あはは。そうかも。
 わたしは、隊長とブラックにくっついて行動。モンスターに出会うと戦う。今日は水のエレメンタルやガーゴイルといった強い モンスターに遭遇するようで、戦うけど、ケッコウ苦戦。わたしのレベルではまだまだ難解な相手なの。初めての割になかなか の剣さばきだけどね。てへ。
 あちこちに散らばったみんなを気にしつつ、隊長とともに半島を南下しながらモンスターを狩る。
 ところが。とあるモンスターと戦ったとき毒にやられた隊長。みんなで解毒剤を探すけど、ない。隊長の体力がどんどん減って くる。助けたいのに、どうすればいいかわからない。
 と思った瞬間。隊長が・・・。その場にいた者はみんな声も出ない。ショック。
 隊長がゴーストになって、姿をあらわす。ずるずるを着た隊長。早くヒーラーに会わなきゃ。隊長の愛馬はゴーストの隊長のあ とを追っていく。忠馬っていうのかな。えぇ話や。うっうっ(感涙)。
 しばらくして復活した隊長が現れる。よかった。心配したんだもん。
 元気になった隊長とともに更に半島を南下する。モンスター軍団を誘導(?)してきたまさ。みんなでモンスターを次々に倒す。
 ふ〜疲れた。いったい、何匹倒したんだろう。
 今日は強いモンスターを相手にしたせいか、お金もどっさりなのだ。城を買おうと、にこにこ隊長が言う。って、前は家って言っ たのに〜。更に割高。
 120万で城は安いでしょ。と笑顔を絶やさず話す隊長。確かに安いですけど、わたしには高いです。いつ貯まることやら。
 ねこが街へのゲートを魔法で開いてくれた。ねこの魔法はホントにすごい。さすが魔法使い。
 みんなでゲートに移動する。次々ゲートに消えていく。
 街に戻って、戦利品やお金を預ける。けっこう貯まったかな。
 鍛治屋に向かった隊長とブラック、ヘブンを待ちつつ、更に小さなダンジョンに向かうというメンバと銀行の前でおしゃべりをす る。
 ダンジョンには、ねこが案内を務めてくれるらしい。
 みんなとおしゃべりしているうちに、無償に眠気が襲ってきた。さすがにいろんなモンスターを倒したけど、この睡魔には永遠に 勝てそうにない。ダンジョン行きを断り、みんなと分かれ、宿屋に向かう。
 宿屋に戻ると、入り口で、偶然隊長に会った。びっくりした。隊長もびっくりしたみたいだったけど。一緒に2階の部屋にあがる。
 部屋で少し隊長と話をした。ちょっと幸せなキモチになった。

第18回 吟遊詩人
 集合時間までの間、今日は街の中にある楽器練習場に向かった。少しでも楽器の練習をしたかったから。
 なぜかっていうと、不安になったから。わたし、狩りに行くのはいいんだけど。どう考えたって、吟遊詩人の修行からはほど遠い ような気がするんだもん。楽器だって、まだ満足に演奏できないし。
 練習場に入る。一階はキャンバスが置かれた美術フロア。音楽室は地下にある。
 まずリュートから練習を始める。調子はずれのメロディが室内に流れる。あ〜ぁ、ダメだ。本腰いれて、今日は練習だ。
 日が暮れるまで練習した。あらゆる楽器を順番に練習したため、身体中に疲労がたまってる。
 練習場を後にして、今度はロードブリティッシュ音楽堂に向かった。レンガ造りの大きな建物。重々しい扉を開け、中に足を踏み 入れる。人影はほとんどない。
 入って、左右を見回すと左右に扉がある。右側の扉に手をかける。ステージがあった。それほど大人数が入れる舞台ではない。中 規模といったところだろうか。舞台の上には楽器が無造作に置かれている。
 いいな〜。無意識のうちに舞台に上がった。置いてあるスタンドハープを爪弾く。
 あまり上手とはいえないメロディーが響き渡った。はぅ。演奏がイマイチなのに、こんなに響くなんて設備いいなぁ。がっくり。
 もっと練習しなければ。
 いつかこの場所で演奏会を開けるようにもっと練習しなきゃ。
 もっとがんばろう。

第19回 ダンジョン
 ねことおしゃべりしながら、いつもの橋でみんなを待つ。
 話をきいてびっくりしたんだけど。ねこは、なんと吟遊詩人だった。魔法使いじゃなかったの、と目を丸くするわたし。高度魔法 の使い手だからてっきり魔法使いだと思ってた。う〜ん、これって先入観だね。
 ねこの吟遊詩人のスキルを訊いてみた。うわっ、すごっ。師匠と呼んでいいですか(本気)。ねこって、魔法を操る吟遊詩人だっ たのね。素敵。
 そ、だ。師匠、吟遊詩人のスキルはどうやったら上がるんでしょう、と吟遊詩人の修行の仕方をご教授願う。答え。楽器の練習が 一番。やっぱし。そうだろうなと思ってたけど、はっきり言われると・・・。
 あんまり分かってなかったんだけど、吟遊詩人って自分は戦わずに、演奏によって、モンスターを惑わして同士討ちさせたりでき るんだって。ってわたし自分で戦ってるやん。あかんやん。だめだめ。
 あ〜ぁ。これはホントに本腰入れて練習しないと。ますます気合が入りました。
 そうそう。最近ぴょんからスペルブックをもらって、魔法の勉強も始めたの。スペルブックにはいろんな魔法が載っていて、必要 な秘薬が書かれている。わたしは、まだ習い始めたばかりだからヒールと呼ばれる回復魔法を練習中だったりして。
 その話をねこにしたところ。ねことわたしはスキルの状態が似てると言われた。ちょっとうれしかったりして。
 ところが。ねこがいうには、総合スキルは上限が決まっていて、その範囲内で各スキルを上げるらしい。わたしの場合、今7〜8 種類のスキルを上げてる。これはスキルが分散されて、すべてが中途半端に終わるキケンがあるみたい。だから5〜6種類で押さ えた方がいいんだって。はぅ。わかった。そうする、ねこ。ありがと。
 ということは。吟遊詩人のスキルと魔法のスキルに搾っちゃおっかな。戦闘スキルは上げるつもりがないんだけど、戦闘するたび に勝手にチェックされちゃうんだよね。う〜〜。困った。
 そ、だ。今日から戦闘しないで、吟遊詩人な戦い方をしたらいいんじゃないかな。うん。いいかもしれない。そうしよう。
 では、今日も狩りに行こう。と思ってたら。ねこがダンジョンへのゲートを開いてくれるというのでダンジョンに行くことになっ ちゃった。初めてのダンジョン。ドキドキ。わくわく。「冒険」ってカンジ。かっこいい。ついにわたしも冒険者なのね。故郷に いた頃、憧れの眼差しで見た勇者サマのように。きゃっ。素敵。(テンション上昇中)
 他のみんなは第2銀行に集まっているというので、そちらに移動する。ブリテインには、街の中央の第1銀行と東の森に程近い第 2銀行があって。最近は、みんな森に近い通称2銀を利用してる。
 もうすぐ2銀という道で、宿に帰る途中のブラックと出会った。
 最初はわかんなかった。だってアタマに鹿の兜を被ってるんだもん。コワい。ブラック本人も、気に入らないらしく誰かに譲ろう と思ってるらしい。
 要るって訊かれたけど、断った。なぜって?また隊長に「近くに寄ったら攻撃するぞ」とか「こっちが襲われそう」とかからかわ れるのイヤなんだってば。あ、それなら隊長に。とブラックに薦めるわたし。今度は言い返しちゃえと思ったから(笑)。それは 名案、と快くブラックは承諾してくれた。ふふん、これは楽しみが出来ちゃった。
 ブラックと分かれ、更に歩く。ここで以前の狩りで知り合ったゆい、そしてゆいなにも出会った。二人も一緒に行くことにしたの で、共に2銀に向かう。
 2銀に到着。全員揃ってる。さて準備しないとね。
 準備を終え、他のメンバを待っていると見覚えのある戦士がいた。近くに行き、声をかける。モヒカンさんはわたしを覚えてくれ てた。ちょっと楽しくおしゃべり。モヒカンさんもこれから狩りなんだって。また会ったら声かけてね。
 準備も整った。いざ、ねこの開くゲートに行こうと思ったら。自称初心者のとしが声をかけてきた。参加したい。おっけ、おっけ と気軽に応じる。
 まずは城の地下水道に移動する。そこからダンジョンへのゲートを開くんだって。
 ぴょん、ヘブン、まい、ねこ、ゆい、ゆいな、とし、来る途中に出会ったぼぶ。わたし。この大人数で初のダンジョン挑戦。
 ゲートが開き、まずはヘブンが移動開始。と思ったら、ゲートが消えちゃった。ヘブン、わたし達が行くまでに死ぬなよぉ。
 再び呪文をねこが唱え、ゲートを開く。今度は全員が移動する。ゲートはダンジョンの入り口に開いていた。
 左右二つの道がある。左は骨男のダンジョン。右はオークのダンジョン。最初は二手にわかれて行動しようと言ってたけど、結局 みんなで左の道を行く。つまり骨男のほう。
 少し歩くと、石レンガ造りの建物が見えた。中から骨男の大群がどんどん出てくる。一斉に戦闘開始。骨男を倒しつつ、建物に潜 入。奥に向かう。大きな広場になってるトコロに出た。
 そこ、かしこで戦闘が行われてる。他のパーティも沢山来てるみたい。もう個体の識別なんて無理。どれが誰かなんてわかんない。
 わたしは剣を振るいつつ、隅に場所を確保した。おっけ。竪琴を取り出す。実は、移動する前にねこから言われたことがある。楽 器を演奏して、モンスターを挑発すること。うまくいけば、同士討ちさせることができるんだって。吟遊詩人的戦闘、でしょ。
 挑発を誘う旋律を演奏し始める。失敗。なかなかうまくいかない。ねこも奏で始めた。美しい旋律が響き渡る。あっさり成功して、 同士討ちを始める骨男が出始めた。さすが師匠。わたしもがんばろ。
 数が圧倒的に違うため、倒しても倒しても沸いて出てくる。キリがない。さすがダンジョン。
 気がついたら、まい、ヘブン、ゆいが死んでた。ショック。このままだと全滅しちゃう。今回は冗談抜きで、ヤバい。
 ぴょんが撤退と大声で叫んだ。
 今度は必死の逃走劇開始。死んだ3人の荷物を拾って、逃げる。逃げる。骨男の大群が追いかけてくる。うわぁ、しんがりでぴょ んが魔法で食い止めつつ、逃げる。しんがりって重要任務だよね。
 ねこがゲートを開くために呪文を唱え始めた。ほんの少しの時間だったのに、随分長く感じる。
 まず、死んだ3人が先にゲートを通る。ゴースト姿を現わしてくれてたから、わたしにも視えた。次に残りのメンバ。
 そして。わたしの番というトコロでゲートが消えた。げっ、サイアク。ぴょんとわたしが残された。
 ぴょんがゲートを開く間、わたしが骨男の攻撃からぴょんを守る。って、あとから、あとから出てくるよぉ。
 ゲートが開いた。迷わず二人でゲートに飛び込んだ。
 ふ〜、戻ってこられた。元の地下水道。緊張が解けた。脱力。ごめんね、ぴょん。謝るわたしをぴょんが笑って許してくれた。
 地上に上がり、みんなのいるところに移動する。まい達も無事復活してた。裸のまいに骨男からの戦利品である骨の鎧を渡す。 まい文句言いまくり。裸よりマシでしょ、と説得するけど、納得してないみたいだった。そのまま仕立て屋に向かって駆け出し たもんね。
 残ったメンバで今回の戦利品を道に並べる。なんか露天商みたいだ。はっきりいって、戦利品は多い。それだけ倒したもんね。 だけど、もう二度と行きたくない。
 重い足取りのまま、宿屋に直行する。ぴょんが送ってくれた。ホントありがと。
 宿屋に着く直前でインディの機嫌が悪くなった。そういえば餌も遣らずに今日は酷使したもんね。インディ、ごめんね。謝りな がらインディに餌を遣る。でもちょっとの餌では機嫌は直りそうにないみたい。こんなに疲れてるのに、インディも今いぢわる しなくてもいいじゃん(泣)。ぴょんが微笑いながら、餌を分けてくれた。
 必死でインディのゴキゲンをとる。部屋に着いても、まだむずがってる。お願い、インディ。餌はたっぷり用意してでかけるよ うにするから。もうこんなに酷使したりしないから。今日は特別だよぉ。機嫌直して。ひたすら低姿勢でインディに向かう。
 なんとかご機嫌を直してくれたみたい。は〜、疲労倍増。
 ダンジョンなんて、こりごり。あぅ。

第20回 ゴースト
 今日も魔法ギルド前。橋のたもとにて、みんなを待つ。隊長、ブラック、ぴょん、ヘブン、まい、ねこ。いつものメンバが集まっ た。
 そして最近の定番。2銀に移動して、出発前の準備。
 待ってる間に、ぴょんからヒール魔法の方法を教わる。実はスペルブックを読んでもよくわからなかったの。得てして、こういう ことは訊くほうが早道だったりする。教わった方法で、試しにぴょんに向かって、ヒールをかけてみた。失敗。何度も練習するう ちに、ほんの少しの確率で成功するようになった。
 ぴょんが「隊長が」と言ったので、今度は隊長にかける。何度か失敗したあと成功。やったぁ。これで初級魔法使い誕生、なんて。てへ。
 全員の準備が終わり、一個所に集合する。さて。今日はどこに行くんだろ?ダンジョンは避けたいな。昨日で懲りたもの。と思っ てたのに。なんと。今回はハーピーの待つダンジョンだって。またもやスリル抜群の狩りに出かけることになっちゃった。
 昨日と同じように、ぴょんとねこがゲートを開く。順番に移動開始。さ。わたしの番だ。なぜかこういう場合、必ず順番が最後に なっちゃう。う〜む。
 移動しようと思ったら、眼前にゲートが左右に二つ。あれ?ねことぴょんが同時に開いたのかな。ま、いいか。向かって左のゲー トを選んで、くぐる。
 ゲートを抜けると一面の砂漠だった。360度視界のすべてが砂漠。先に来たはずのみんなが見当たらない。もう移動しちゃった のかな。
 ぴょんがゲートから出てきた。奇妙なことに、すぐ近くにいたパーティに謝罪している。ん、どういうこと?
 わたしってば、どうやらゲートを間違えたみたい。左側は、こちらのパーティが開いたゲートだったのね。ごめんなさい。ぴょん と。そしてパーティの方に謝った。
 ぴょんが、そのパーティに元のブリテインへのゲートを開いてほしいと依頼した。自分がやって失敗するよりは、だって。パーティ の人達は快く引き受けてくれた。開いてもらったゲートを通って、元の2銀前に戻る。
 ぴょんがもう一度ゲートを開いた。
 ところで、わたし達の近くでゴーストがさっきからうろうろしてる。姿を見せては消える、を繰り返している。ゴーストの名前は 「シグマ」さん。実は、2銀で準備している時から、わたし達の周りをうろうろしてたんだよ。なんでここにいるんだろ。早く ヒーラーに会って復活すればいいのに。
 開いたゲートをぴょんと一緒にくぐる。見渡す限りの緑の平原だった。降る雨に緑を増す美しい場所。風に乗って、草の匂いがす る。
 だけど付近には誰もいない。ハーピーのいる洞窟にもう向かった後みたいだ。みんなに追いつかなきゃね。ぴょんと二人で後方の 洞窟に向かった。
 ん?今、なんか視えた。気のせいじゃなければ、今のって。ぴょん、ぴょん。あのね、シグマさんが憑いてきたみたいなんだけど ・・・。そうみたいだね、とぴょんが苦笑まじりに首肯する。
 洞窟に入った。真っ暗。蝋燭を灯そうと思ったけれど、止めた。片手が塞がるのは危険かもしれないと考えたから。なかなか思慮 深いね、わたしってば。えっへん。
 暗闇で少しだけ目を閉じる。そしてゆっくり開く。ん。もう大丈夫。インディに声をかける。暗いけど、怖がらないでね。手綱を 慎重に捌きながら、足元に注意しつつ、前に進む。ぴょんに頼まれた秘薬も忘れないように、拾わなくちゃ。
 っと。今またなんか視えたね、ぴょん?顔を見合わせる。もしかしてシグマさん??こんな所に憑いてくるワケないでしょ、と呟 きつつ不安顔のぴょん。こんなこと言いたくないんだけど。もしかして。もしかすると。わたし達、憑かれたんじゃない?
 ぴょんと二人気づかないフリで、先を急ぐ。少し距離をおいて、シグマさんが現れ、消える。やっぱり憑かれてる。なんで〜(号 泣)。よりにもよって、こんなにムード(?)満点のところで憑かなくてもいいじゃないっ。うきぃ〜っ。気にしないフリして、 (ホントはもう気になって仕方ないんだけど)、洞窟の奥に向かって歩く。
 やっとみんなに追いついた。
 まいにシグマさんの話をする。大ウケ。そりゃないよ、まい。
 広場になったところにハーピーがたくさんいる。すごい数。まさにハーピーの巣。どうやらシグマさんは逃げちゃったみたいで、 見当たらない。ゴーストは襲われないような気がするんだけど。ほっ。ゴーストよりはハーピーの方がいいわ。
 どんどんハーピーを倒していく。珍しく調子がいい。昨日と大違いだ。戦闘のリズムも丁度いい感じ。
 結構な数を倒したので、一旦、街に戻ることになった。ねこが洞窟内でゲートを開く。
 そして。えぇ、またです。また一人取り残されました。わたしってばホントにトロい。ねこに向かって謝りつつ、グチる。ねこが 微笑いながら、「そのほうがかわいいですよ」。意味不明のフォローをいれてくれた。ありがと、うれしいフォロー。
 街に戻った。久しぶりのこの充実感。ハーピーから羽毛まで手に入れたし。ダンジョンも悪くないかも、ね。うふふ。ご機嫌のま ま、今日は宿に戻ることに決めた。
 しかし。宿に戻って急転しました。
 わたしの職業は「吟遊詩人」。これはもう周知の事実。でもね。久しぶりに確認して、びっくりした。「職人戦士」に変わってる。 大体「職人」ってナニ?「吟遊詩人」って職人なの?でもそれだったら「戦士職人」だよね。「職人戦士」だったらまるで「戦士」 が主みたいじゃない。が〜〜〜ん、あんまりだ。
 というわけで、今日で「吟遊詩人な日々」は終わりです。明日から「職人戦士な日々」を連載します(嘘です)。うっうっ(号泣)。