2変数関数の全微分可能・微分係数の定義:トピック一覧 |
・ 1点における全微分可能性・微分係数の定義:原意/数式表現1/数式表現2/数式表現3/数式表現4・1点における全微分可能性と偏微分可能性:全微分可能ならば偏微分可能/微分係数は勾配ベクトルに等しい/全微分可能と方向微分/接平面の方程式 ・1点における全微分可能性と連続性:全微分可能なら連続 ・全微分可能の十分条件 ・全微分total differential |
※ 関連ページ・2変数関数の微分定義:偏微分/高次の偏微分/方向微分/微分演算子/2階全微分/高階全微分 ・2変数関数微分の応用:合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題/陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法 ・微分以外の2変数関数の概念:2変数関数の諸属性/極限/連続/極限の性質/偏微分/方向微分/矩形上の積分/点集合上の積分 ・2変数関数以外の全微分定義:1変数関数の微分 / n変数関数の全微分/ n変数ベクトル値関数の全微分 →参考文献・総目次 |
定義: 2変数関数の点x0で微分可能differentiable・点x0における微分係数・導値differential coefficient |
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「z=f (x,y )は点 (x0,y0)で微分可能・全微分可能」とは、 z=f (x,y )が表す曲面{(x, y, z ) | z=f (x,y ) }に点(x0,y0, f (x0,y0 ))で接する平面 {(x, y, z ) | z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 ) } を定められることをいい、 この接平面の法線ベクトル(A,B,1)の 第1・第2成分からなる2次元数ベクトル(A,B)を、 「点 (x0,y0)におけるf (x,y )の導値・微分係数」と呼ぶ。 つまり、 「点 (x0,y0)におけるf (x,y )の導値・微分係数」とは、 ・z=f (x,y )が表す曲面に点(x0,y0, f (x0,y0 ))で接する平面のx軸方向への傾き と ・z=f (x,y )が表す曲面に点(x0,y0, f (x0,y0 ))で接する平面のy軸方向への傾き との組 のことである。 ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] ※z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )で表せない接平面も存在しうる。 それは、どういうときかというと…。 点 (x0,y0)で接するあらゆる平面は、 {(x, y, z ) | r(x- x0)+s(y- y0)+t (z- f ( x0,y0 ))=0} で表せる。 t≠0ならば、 平面の方程式r(x- x0)+s(y- y0)+t (z- f ( x0,y0 ))=0について、 両辺をtで割って (r/t) (x- x0)+(s/t) (y- y0)+ z- f ( x0,y0 )=0 移項して、 z =−(r/t) (x- x0)−(s/t) (y- y0)+f ( x0,y0 ) とできるので、 この平面を、z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )のかたちで表せ、 この平面の法線ベクトルを(A,B,1)かたちで表せる。 ところが、 t=0ならば、 平面の方程式r(x- x0)+s(y- y0)+t (z- f ( x0,y0 ))=0は、 r(x- x0)+s(y- y0) =0 となってしまい、zが消去されてしまうので、 z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )のかたちに変形しようがない。 |
・高木『解析概論』p. 55 ; ・吹田新保『理工系の微分積分学』6章§3U(p.164) :2変数関数; ・小形『多変数の微分積分』pp. 46-50:2変数関数。ここでの説明とは別の説明。 ・志賀『解析入門30講』25講(pp.193-5) :2変数関数; ・高橋『微分と積分2』§3.2 (p.71): 2変数関数; ・笠原『微分積分学』定義2.1(p.38);命題2.2(p.39)定義5.1(p.153):2変数関数 ・杉浦『解析入門』U§5定義1 (p.120):n変数実関数; ・杉浦『解析演習』U章§2-2.2(p. 88-9) :n変数実関数 ・『岩波数学辞典』333G全微分(p.985); ・黒田『微分積分学』8.3.2定義8.9(pp.285) :n変数実関数. ・Lang,Undergraduate Analysis,15-§2(pp.321-2); ・ルディン『現代解析学』9.10(p.207) :n変数ベクトル値関数. ・清野「多変数関数の微分」第5回(東京大学07 年度全学自由研究ゼミナール) [文献−数理経済学] ・岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.44):2変数関数 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, PartI-4-3 (p.170) :n変数ベクトル値関数. ・入谷久我『数理経済学入門』定義5.10(p.131) :n変数実関数. ・原・梶井『経済学のための数学』1.3.3全微分(p.10). |
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このように、 z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )で表せない。 ここでは、このような接平面を接平面から除外して、 z= A (x− x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )で表せる接平面のみを接平面と呼び、 z= A (x− x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 )で表せる接平面が定まることを、 微分可能と呼ぶ。 [→杉浦『解析入門』例12 (p.86)] |
[ 一般化]・2変数関数の(全)微分可能 ・多変数関数の(全)微分可能 ・ベクトル値関数の(全)微分可能 |
ということの定義は、 厳密には、次の数式で与えられる。 ※ 表現1・表現2・表現3・表現4 はどれも同じ。 ※ これらの定義は、1変数関数の微分定義2を、2変数関数へ拡張したもの。 |
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[ 表現1a−ベクトル演算・増分を用いずに] |
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「定点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)へ近づく動点(x,y)は、 { f ( x,y )−(A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 ) )}/d ( (x,y), (x0,y0) ) →0 ( (x,y)→(x0,y0) ) を満たす」 ということ。 ランダウの記号を用いて表すと、 「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)へ近づく動点(x,y)は、 f ( x,y )−( A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 ) )=o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) ) ( (x,y)→(x0,y0) ) を満たす」 となる。 * d ( (x,y), (x0,y0) ) は、 点(x,y)から点(x0,y0)へのユークリッド距離{ (x−x0)2+(y−y0)2}1/2 を表す。 |
笠原『微分積分学』定義5.1(p.153); 高橋『微分と積分2』§3.2 (p.71) ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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* この微分可能の定義は、 点( x0 , y0 )に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 「点(x,y)を点(x0,y0)に近づけたときの、 点(x,y)における《点(x0, y0, f ( x0,y0 ) )を通って、(A,B,1)を法線ベクトルとする平面A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 )》と《y= f ( x,y )》との誤差 f ( x,y )−(A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 ) ) が0に近づくスピードは、 d ( (x,y), (x0,y0) ) が0に近づくスピードよりも、速くなる」 ということを意味し、 ランダウの記号を用いて表すと、 「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 f ( x,y )−( A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 ) )=o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) ) ( (x,y)→(x0,y0) ) を満たす」 と表せる。 |
[ 表現1 b−ベクトル演算を用いずに・増分を用いて] |
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「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)へ近づく動点(x0+Δx, y0+Δy)は、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) を満たす」 ということ。 * ‖(Δx,Δy)‖ は、(Δx,Δy)のユークリッドノルム{ (Δx)2+(Δy)2}1/2 を表す。 これは、点(x0+Δx, y0+Δy)から点(x0,y0)へのユークリッド距離 d ( (x0+Δx, y0+Δy), (x0,y0) ) ={ (x0+Δx−x0)2+(y0+Δy−y0)2}1/2 に等しい。 |
入谷久我『数理経済学入門』定義5.10(p.131) :n変数実関数. ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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* この微分可能の定義は、 点( x0 , y0 )に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 「『点(x0,y0)からの増分』(Δx,Δy)を(0,0)に近づけたときの、 点(x0+Δx, y0+Δy)における《点(x0, y0, f ( x0,y0 ) )を通って、(A,B,1)を法線ベクトルとする平面A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 )》と《y= f ( x,y )》との誤差 f ( x0+Δx, y0+Δy )−(A(x0+Δx−x0) + B (y0+Δy−y0 ) + f ( x0,y0 ) )=f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) ) が0に近づくスピードは、 ‖(Δx,Δy)‖ が0に近づくスピードよりも、速くなる」 ということを意味し、 ランダウの記号を用いて表すと、 「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 f ( x0+Δx, y0+Δy )−( AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )=o ( ‖(Δx,Δy)‖ ) ( (Δx,Δy) →(0,0) ) を満たす」 と表せる。 |
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[ 表現1 c−ベクトル演算を用いて] |
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「x0に対して、ある一定の実2次元数ベクトルaが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点x0近づく動点x0+hは、 { f ( x0+h )−(a・h + f (x0) )}/‖h‖ →0 (h→0 ) を満たす」 ということ。 あるいは、 「z=f (x)は実2次元縦ベクトルx 0で(全)微分可能で、x0における微分係数は実2次元横ベクトルaである」とは、 「実2次元縦ベクトルx0に対して、ある一定の実2次元横ベクトルaが存在して、 実2次元縦ベクトルhを、h→0 とすると、 { f ( x0+h )−(ah+ f (x0) )}/‖h‖ →0 が満たされる」 ということ。 * a・hは、aとhとの内積を表す。 ahは、実2次元横ベクトルaと実2次元縦ベクトルhとの行列積を表す。 (どちらも、結果は同じとなる) +は、実2次元数ベクトル空間に定められているベクトル和を表す。 −は、実数体に定義されている引き算を表す。 0は2次元零ベクトルを表し、0は実数の0を表す。 * ‖h‖ は、hのユークリッドノルムを表す。 これは、x0+hからx0へのユークリッド距離 d ( x0+h, x0 ) =‖(x0+h)−x0‖ に等しい。 * この微分可能の定義は、前述の表現1bを、以下の要領でベクトルを使って表現しなおしたもの。 ・点(x0,y0) → 実2次元縦ベクトルx 0 ・実数A,B → 実2次元横ベクトルa ・増分(Δx,Δy) → 実2次元縦ベクトルh ・点(x0+Δx, y0+Δy) → 実2次元縦ベクトルx0+h ・AΔx + BΔy → 内積a・h または、行列積ah だから、この定義が意味するところは、表現1bとなんら変わらない。 |
杉浦『解析入門』U§5 定義1(5.4)(p.120) |
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[ 表現2a−ベクトル演算・増分を用いずに] |
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「点(x0,y0) に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)に近づく動点(x,y)は、 f (x,y ) = f ( x0,y0 ) + A(x−x0) + B (y−y0 ) + o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) ) ( (x,y)→(x0,y0) ) を満たす」 ということ。 * 恒等的に、 f ( x,y )={ f ( x0,y0 ) + A(x−x0) + B (y−y0 ) }+{f ( x,y )−( A(x−x0) + B (y−y0 ) + f ( x0,y0 ) )} だから、 [微分可能定義の表現1a] 「点(x0,y0) に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 f (x,y ) = f ( x0,y0 ) + A(x−x0) + B (y−y0 ) + o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) ) ( (x,y)→(x0,y0) ) を満たす」 が成立するならば、表現2 aも成立(恒等式最右辺に表現1を代入するかたち)。 逆に、表現2 aが成立するならば、表現2の右辺1項2項を左辺に移項すれば、 表現1aの成立がわかる。 |
笠原『微分積分学』定義5.1(p.153); 杉浦『解析演習』U章§2-2.2(p. 89); 黒田『微分積分学』8.3.2定義8.9(pp.285) 小平『解析入門U』§6.2-b(p.267):2変数関数; 加古『自然科学の基礎としての微積分』定義6.4注意1(pp.93-4):n変数関数; ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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[ 表現3a−ベクトル演算・増分を用いずに] |
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「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)に近づく動点(x,y)は、 f ( x,y )−f ( x0,y0 )=A(x−x0) + B (y−y0 ) + o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) ) ( (x,y) → (x0,y0) ) を満たす」 ということ。 * ランダウの記号o ( d ( (x,y), (x0,y0) ) )は、 「x,yの関数」のうち、 (x,y) → (x0,y0)としたときに、 「d ( (x,y), (x0,y0) )が0に近づくよりも速いスピードで0に近づく」 ものを表す。 |
岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.44):2変数関数 ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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[ 表現3b−ベクトル演算を用いずに、増分を用いて] |
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「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点(x0,y0)に近づく動点(x0+Δx , y0+Δy)は、 Δz=f ( x0+Δx , y0+Δy )−f ( x0, y0 )=AΔx+ BΔy + o ( ‖(Δx,Δy)‖ ) ( (Δx,Δy)→(0,0) ) を満たす」 ということ。 * これは、 「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 『 xをx0から「無限小の増分Δx」だけ増やし、yをy0から「無限小の増分Δy」だけ増やしたときの、f (x,y )の値の増分 Δz=f ( x0+Δx , y0+Δy )−f ( x0, y0 ) を、 (「無限小の増分Δx」の実数A倍)+(「無限小の増分Δy」の実数B倍)+(「無限小の増分(Δx,Δy)のノルム」より高次の無限小) として表せる』 ということ」 を意味する。 * ランダウの記号o ( ‖(Δx,Δy)‖ )は、 「Δx,Δyの関数」のうち、 (Δx,Δy)→(0,0)としたときに、 「‖(Δx,Δy)‖が0に近づくよりも速いスピードで0に近づく」 ものを表す。 |
・『岩波数学辞典』333G全微分(p.985):n変数関数. ・志賀『解析入門30講』25講(pp.193-5) :2変数関数; ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
[ 表現3c−ベクトル演算を用いて] |
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「x0に対して、ある一定の実2次元数ベクトルaが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、定点x0近づく動点x0+hは、 Δy=f ( x0+h )−f (x0)=a・h + o ( ‖h‖ ) ( h → 0 ) を満たす」 ということ。 あるいは、 「z=f (x)は実2次元縦ベクトルx 0で(全)微分可能で、x0における微分係数は実2次元横ベクトルaである」とは、 「実2次元縦ベクトルx0に対して、ある一定の実2次元横ベクトルaが存在して、 実2次元縦ベクトルhを、h→0 とすると、 f ( x0+h )−f (x0)=ah+ o ( ‖h‖ ) ( h → 0 ) が満たされる」 ということ。 * a・hは、aとhとの内積を表す。 ahは、実2次元横ベクトルaと実2次元縦ベクトルhとの行列積を表す。 (どちらも、結果は同じとなる) +は、実2次元数ベクトル空間に定められているベクトル和を表す。 −は、実数体に定義されている引き算を表す。 0は2次元零ベクトルを表し、0は実数の0を表す。 * ‖h‖ は、hのユークリッドノルムを表す。 これは、x0+hからx0へのユークリッド距離 d ( x0+h, x0 ) =‖(x0+h)−x0‖ に等しい。 * この微分可能の定義は、前述の表現1bを、以下の要領でベクトルを使って表現しなおしたもの。 ・点(x0,y0) → 実2次元縦ベクトルx 0 ・実数A,B → 実2次元横ベクトルa ・増分(Δx,Δy) → 実2次元縦ベクトルh ・点(x0+Δx, y0+Δy) → 実2次元縦ベクトルx0+h ・AΔx + BΔy → 内積a・h または、行列積ah だから、この定義が意味するところは、表現3bとなんら変わらない。 |
※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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[ 表現4a−ベクトル演算・増分を用いずに] |
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点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 f ( x,y )=f ( x0,y0 )+A(x−x0) + B (y−y0 ) +ε(x,y ) d ( (x,y), (x0,y0) ) と書くとき、(x,y) → (x0,y0)のとき、ε(x,y )→(0,0) を満たす ということ。 * 表現2aでランダウの記号を用いない表現の一例。 |
[ 文献]小平『解析入門U』§6.2-b(p.267); ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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[ 表現4b−ベクトル演算を用いずに・増分を用いて] |
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点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 Δz=f ( x0+Δx , y0+Δy )−f ( x0, y0 )=AΔx+ BΔy + ε(x,y ) ‖(Δx,Δy)‖ と書くとき、(Δx,Δy)→(0,0)のとき、ε(x,y )→(0,0) を満たす ということ。 |
高木『解析概論』p. 55 :2変数関数; 吹田新保『理工系の微分積分学』6章§3U(p.164) :2変数関数; ※微分係数(A,B)は勾配ベクトルに等しくなる[→定理] |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]2変数関数の点(x0, y0)での微分可能性と方向微分可能性 | ||
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z=f (x,y )は、点(x0,y0)で、任意の方向に方向微分可能。 ※ z=f (x,y )が、点(x0,y0)で、xについてもyについても方向微分可能だとしても、z=f (x,y )が点(x0,y0)で(全)微分可能とは限らない。 |
・杉浦『解析入門』U§5定理5.2 (p.121):n変数実関数。証明付。 ・高橋『微分と積分2』§3.2 定理3.14(p.74): 2変数関数; |
証明 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]2変数関数の点(x0, y0)での微分可能性と偏微分可能性、微分係数と偏微分係数 | ||
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z=f (x,y )は、点(x0,y0)で、xについてもyについても偏微分可能。 2. z=f (x,y )が点(x0,y0)で(全)微分可能ならば、点(x0,y0)における微分係数は、 点(x0,y0)における勾配ベクトル grad f (x0,y0)=(∂f (x0,y0)/∂x , ∂f (x0,y0)/∂x) に等しい。 ※ z=f (x,y )が、点(x0,y0)で、xについてもyについても偏微分可能だとしても、z=f (x,y )が点(x0,y0)で(全)微分可能とは限らない。 |
・Lang,Undergraduate Analysis, 15-§2Theorem2.1(pp.322-3):証明つき; ・志賀『解析入門30講』25講(pp.194-5) :2変数関数:証明つき; ・杉浦『解析入門』U§5定理5.2 (p.121): n変数実関数。方向微分から導出。 ・高橋『微分と積分2』§3.2 定理3.11(p.72): 2変数関数; ・高木『解析概論』p.56;小平『解析入門U』p.267; ・吹田新保『理工系の微分積分学』p.164. |
証明 |
「点(x0,y0)に対して、ある一定の実数A,Bが存在して、 どの方向からであれ、いかなる経路を通ってであれ、 定点(x0,y0)へ近づく動点(x0+Δx, y0+Δy)は、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) を満たす」 ということであった。 だから、「z=f (x,y )は点(x0,y0) で(全)微分可能で、点(x0,y0) における微分係数が(A, B)である」ならば、 (i)左右から直進して、定点(x0,y0)へ近づく動点 つまり、動点(x0+Δx, y0+Δy)にΔy=0という制限を加えて、 (x0+Δx, y0)と表される動点だけを考えた特殊ケースでも、 (ii)上下から直進して、定点(x0,y0)へ近づく動点 つまり、動点 (x0+Δx, y0+Δy) )にΔx=0という制限を加えて、 (x0, y0+Δy) と表される動点だけを考えた特殊ケースでも、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) が満たされる。 特殊ケース(i) (ii)のそれぞれにおいて、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) を具体的に展開してみよう。 |
志賀『解析入門30講』25講(pp.194-5)。 |
左右から直進して、定点(x0,y0)へ近づく動点だけを考えた特殊ケース、 つまり、 動点(x0+Δx, y0+Δy)にΔy=0という制限を加えて(x0+Δx, y0)と表される動点だけ を考えた特殊ケースでは、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) は、Δy=0だから、 { f ( x0+Δx, y0 )−(AΔx + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,0)‖ →0 ( (Δx, 0) →(0,0) ) …(1-1) となる。 ユークリッドノルムの定義より、‖(Δx,0)‖=Δx だから、 (1)は、 { f ( x0+Δx, y0 )−(AΔx + f ( x0,y0 ) )}/Δx →0 ( (Δx, 0) →(0,0) ) …(1-2) となる。 ここで2変数関数の極限(Δx, 0) →(0,0) は、 実質的には1変数の極限操作Δx→0だけをしているにすぎないから、 2変数関数の極限をとる(2)は、 { f ( x0+Δx, y0 )−(AΔx + f ( x0,y0 ) )}/Δx→0 (Δx→0) …(1-3) という1変数関数の極限に還元される。 { f ( x0+Δx, y0 )−(AΔx + f ( x0,y0 ) )}/Δx =( f ( x0+Δx, y0 )−f ( x0,y0 ) )/Δx−A であるから、 (1-3)は、 ( f ( x0+Δx, y0 )−f ( x0,y0 ) )/Δx−A →0 (Δx→0) となり、 したがって、( f ( x0+Δx, y0 )−f ( x0,y0 ) )/Δx → A (Δx→0) …(1-4) (1-4)は、 「f ( x, y ) は、点 ( x0 , y0 )で、xに関して偏微分可能であり、 点(x0 , y0 )におけるf ( x, y )の偏微分係数∂f (x0,y0)/∂xはAである」 ということの定義に他ならない。 |
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上下から直進して、定点(x0,y0)へ近づく動点だけを考えた特殊ケース、 つまり、 動点 (x0+Δx, y0+Δy) )にΔx=0という制限を加えて、(x0, y0+Δy) と表される動点だけ を考えた特殊ケースでは、 { f ( x0+Δx, y0+Δy )−(AΔx + BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(Δx,Δy)‖ →0 ( (Δx,Δy) →(0,0) ) は、Δx=0だから、 { f ( x0, y0+Δy )−(BΔy + f ( x0,y0 ) )}/ ‖(0,Δy)‖ →0 ( (0,Δy) →(0,0) ) …(2-1) となる。 ユークリッドノルムの定義より、‖(0,Δy)‖=Δy だから、 (2-1)は、 { f ( x0, y0+Δy )−(BΔy + f ( x0,y0 ) )}/Δy →0 ( (0,Δy) →(0,0) ) …(2-2) となる。 ここで2変数関数の極限(0,Δy) →(0,0) は、 実質的には1変数の極限操作Δy→0だけをしているにすぎないから、 2変数関数の極限をとる(2-2)は、 { f ( x0, y0+Δy )−(BΔy + f ( x0,y0 ) )}/Δy →0 (Δy→0) …(2-3) という1変数関数の極限に還元される。 { f ( x0, y0+Δy )−(BΔy + f ( x0,y0 ) )}/Δy =( f ( x0, y0+Δy )−f ( x0,y0 ) )/Δy−B であるから、 (2-3)は、 ( f ( x0, y0+Δy )−f ( x0,y0 ) )/Δy−B →0 (Δy→0) となり、 したがって、( f ( x0, y0+Δy )−f ( x0,y0 ) )/Δy → B (Δy→0) …(2-4) (2-4)は、 「f ( x, y ) は、点 ( x0 , y0 )で、yに関して偏微分可能であり、 点(x0 , y0 )におけるf ( x, y )の偏微分係数∂f (x0,y0)/∂yはBである」 |
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(i)左右から直進して、定点(x0,y0)へ動点(x,y)を近づけたケースから、 「f ( x, y ) は、点 ( x0 , y0 )で、xに関して偏微分可能であり、 点(x0 , y0 )におけるf ( x, y )の偏微分係数∂f (x0,y0)/∂xはAである」 ことが明らかになり、 (ii)上下から直進して、定点(x0,y0)へ動点(x,y)を近づけたケースから、 「f ( x, y ) は、点 ( x0 , y0 )で、yに関して偏微分可能であり、 点(x0 , y0 )におけるf ( x, y )の偏微分係数∂f (x0,y0)/∂yはBである」 ことが明らかになった。 つまり、 z=f (x,y )が点(x0,y0)で(全)微分可能ならば、 z=f (x,y )は、点(x0,y0)で、xについてもyについても偏微分可能であって、 点(x0,y0)における微分係数は、 点(x0,y0)における勾配ベクトル grad f (x0,y0)=(∂f (x0,y0)/∂x , ∂f (x0,y0)/∂x) に等しい。 |
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z =f (x,y )が、点(x0,y0)で、xについてもyについても偏微分可能だとしても、z=f (x,y )が点(x0,y0)で(全)微分可能とは限らない。 z=f (x,y )が、点(x0,y0)で、xについてもyについても偏微分可能なのに、(全)微分可能でない例をあげる。 |
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例 1:次の関数は、点(0,0)において、x,yについて偏微分可能なのに、(全)微分可能でない。![]() |
→吹田新保『 理工系の微分積分学』6章§3U(p.164)Lang,Undergraduate Analysis, 15-§2Theorem2.1(p.323): |
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例 2:次の関数は、点(0,0)において、x,yについて偏微分可能なのに、(全)微分可能でない。![]() |
→杉浦『 解析入門』U§5例3 (p.122) |
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例 3:次の関数は、点(0,0)において、x,yについて偏微分可能であるばかりか、あらゆる方向に方向微分可能なのに、 (全)微分可能でない。 ![]() |
→杉浦『 解析入門』U§5例4 (pp.122-3) |
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例 4:次の関数は、点(0,0)において、x,yについて偏微分可能なのに、(全)微分可能でない。f (x,y )=min{|x|,|y|} |
→笠原『 微分積分学』5.1-例1(p.154):2変数関数 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]2変数関数に点(x0, y0)で接する接平面の方程式 | ||
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z=f (x,y )が表す曲面 {(x, y, z ) | z=f (x,y )} に、 点( x0 , y0, f ( x0 , y0 ))で接する接平面の方程式は、 z=(∂f (x0,y0)/∂x ) (x−x0 )+(∂f (x0,y0)/∂y ) (y−y0 ) +f ( x0,y0 ) ※解説 この方程式で表された平面が、たしかに、 曲面 z = f ( x , y )に点( x0 , y0, f ( x0 , y0 ))で接する接平面であることは、 以下の諸点より確かめられる。 1.接点( x0 , y0, f ( x0 , y0 ))を通っている。 2.曲面のx軸方向での傾きと、この平面のx軸方向での傾きは、ともに等しい。 ※この平面をxで偏微分してみよ。 3.曲面のy軸方向での傾きと、この平面のy軸方向での傾きは、ともに等しい。 ※この平面をyで偏微分してみよ。 4.この曲面とこの平面について、 xでの偏微分係数、yでの偏微分係数の両方が、等しければ、 θ方向微分係数の計算式より、 すべての方向θについて、方向微分係数(傾き)も等しくなる。 |
・杉浦『解析入門』U§5定義2 (p.120:n変数実関数。 ・小形『多変数の微分積分』pp.55-61. ・志賀『解析入門30講』25講(pp.194-5) :2変数関数:証明つき ・高橋『微分と積分2』§3.2 定理3.11(p.72): 2変数関数; |
証明 |
z=f (x,y )が表す曲面{(x, y, z ) | z=f (x,y ) }に点(x0,y0, f (x0,y0 ))で接する平面 {(x, y, z ) | z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 ) } を定められることであった。 (全)微分可能ならば、微分係数(A,B)は勾配ベクトル grad f (x0,y0)=(∂f (x0,y0)/∂x , ∂f (x0,y0)/∂x) に等しくなるのだった[→定理]。 だから、A=∂f (x0,y0)/∂x , B=∂f (x0,y0)/∂x を、 {(x, y, z ) | z= A (x−x0 )+ B (y−y0 ) +f ( x0,y0 ) } に代入すれば、接平面が得られたことになる。 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]2変数関数の全微分total differential | ||
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点( x0 , y0, f ( x0 , y0 ))でz=f (x,y )に接する接平面 z=g(x,y) = (∂f (x0,y0)/∂x ) (x−x0 )+(∂f (x0,y0)/∂y ) (y−y0 ) +f ( x0,y0 ) のうえで、 xについての増分Δx、yについての増分Δyにたいして、 z=g(x,y)がどれだけ増減するかを示す値 Δg= g(x+Δx,y+Δy)−g(x,y) = (∂f (x0,y0)/∂x ) (x+Δx−x0 )+(∂f (x0,y0)/∂y ) (y+Δy−y0 ) +f ( x0,y0 ) −{ (∂f (x0,y0)/∂x ) (x−x0 )+(∂f (x0,y0)/∂y ) (y−y0 ) +f ( x0,y0 )} = (∂f (x0,y0)/∂x ) Δx+(∂f (x0,y0)/∂y ) Δy を「点(x0,y0)におけるf (x,y )の全微分」とよび、 d f , fx (x0,y0) dx+fy (x0,y0) dy ![]() 等で表す。 ※このように、 「点(x0,y0)におけるf (x,y )の全微分」d fは、 接平面z=g(x,y)の増分Δg= g(x+Δx,y+Δy)−g(x,y) なのであって、 z=f (x,y )そのものの増分Δf= f(x+Δx,y+Δy)−f(x,y) とは別の概念であることに注意されたい。 |
・笠原『微分積分学』定義5.2(p.154):2変数関数 ・岡田『経済学・経営学のための数学』1.6(p.45) ・高橋『微分と積分2』§3.2 (p.71): 2変数関数; [類概念] . 1変数関数の微分differential, |
※ |
z =f (x,y )が領域Dの各点で全微分可能であるとき、点( x0, y0 )∈Dにおけるz=f (x,y)の全微分 ![]() の値は、点( x0, y0 ) によって変わってくるから、領域D上の点( x0, y0 )の関数。 x0, y0をx,yと書き直した領域D上の関数 ![]() と書ける。 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]
定理:全微分可能と連続 |
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z=f (x,y )は点( x0 , y0 )で連続である。 |
・小平『解析入門U』p.267; ・吹田・新保『理工系の微分積分学』p.164. |
証明 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]
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z=f (x,y )は点( x0, y0)で全微分可能である。 とくに、C1級関数は全微分可能である。 |
・笠原『微分積分学』定理5.6(p.158):2変数関数 ・高木『解析概論』p.56; ・吹田・新保『理工系の微分積分学』p.164. ・杉浦『解析入門』U§5定理5.3 (p.123):n変数実関数。証明付。 ・高橋『微分と積分2』§3.2 定理3.15(p.75): 2変数関数; |
証明 |
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]
reference)
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年。神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.235-227..高木貞治『
解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 55.小平邦彦『
解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年 p.267-268。和達三樹『
理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.119-120.吹田・新保『
理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.164-165.杉浦光夫『
解析入門』岩波書店、1980年、pp.118-126. ただし、いきなり多次元。高橋一『
経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.60-61。高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:
微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.70-72。小林道正『
Mathematicaによる微積分』朝倉書店、1995年、pp.98-99
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[トピック一覧:2変数関数の全微分]