n次元数ベクトル空間の定義 ― トピック一覧 
・定義:n次元数ベクトルi成分・スカラー / Rn/基本ベクトル/零ベクトル
    n次元数ベクトル空間・ベクトル和・スカラー倍/逆ベクトル 
・定理:数ベクトル空間のベクトル和の性質/数ベクトル空間のスカラー乗法の性質/数ベクトル空間はベクトル空間の一例
    零ベクトルのスカラー倍/ベクトルのスカラー0倍 

n次元数ベクトル空間関連ページ:線形結合/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元/部分ベクトル空間 
上位概念:一般のベクトル空間/一般の体上の数ベクトル空間/実ベクトル空間 
下位概念:実2次元数ベクトル空間   
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定義:実n次元数ベクトル・n次元実ベクトル・n項実ベクトル、第i成分i-th component 、スカラー
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合)  
[文献]
・『岩波数学辞典』210線形空間:A定義 例2 (p.570);
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);
・斎藤『線形代数入門』2章§1(p.31);§3(p.46);§6(p.61);
・西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26);
・佐武『線形代数学』T§1(pp.1-4);
・志賀『線形代数30講』5講(p.28);13講(p.83);14講(p.88);
・藤原『線形代数』1.1(p.4);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.103-6);
・杉浦『解析入門I』I章§4(p.33);
・グリーン『計量経済分析』2.2(p.11);2.4.1(p.22);
・草場『線形代数』2.3(p.39);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.18)。;
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.1.2(p.49)

n次元数ベクトルの具体例:実2次元数ベクトル(図解)
n次元数ベクトルの一般化1:n次元数ベクトル 
n次元数ベクトルの一般化2:実行列/体上の行列 



定義1 実数n個並べたもの 
すなわち、
実数体Rから実数v1, v2, …, vnをとって順序をつけた、n
  v= ( v1, v2, …, vn )  ただし、v1Rかつv2RかつかつvnR   
のことを、
n次元数ベクトル、n次元実ベクトル、n項実ベクトルなどという。

定義2 上記のv1ベクトルvの第1成分
上記のv2ベクトルvの第2成分
   : 
上記のvnベクトルvの第n成分
と呼ぶ。

定義3 ベクトルの成分の数をベクトルの次数という。
[西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26)]

定義4 n次元横ベクトルn項実行ベクトルとは、
( v1, v2, …, vn )のように実数を横に並べたn次元実ベクトルのこと。
n次元縦ベクトルn項実列ベクトルとは、
       
といった具合に、実数を縦に並べた実n次元ベクトルのこと。
横ベクトルと縦ベクトルの違いは、行列との演算において意味をもつ。
※縦ベクトルを、実際に縦に並べて表記する代わりに、行列の転置記号を用いて、
 横ベクトルの転置  
    t( v1, v2, …, vn ) 
 と表すことが多く見られる。
 書籍等では、
   縦ベクトルを実際に縦に並べて表すと、
   スペースを費やし、ページが増えて、印刷コストがかさむ
 といった理由から、
 webでは、テキストだけで、縦ベクトルを縦に並べて表すのは難しい、
 といった理由から、
 縦ベクトルを実際に縦に並べることを避ける傾向にある。

定義5 実数体Rからつくった上記の実ベクトルに対して、
  「実数体R」そのもの、すなわち実数スカラーと呼ぶ。

例1 n次元数ベクトルで、次数nを2としたものを、
実2次元数ベクトルと呼ぶ。
実2次元数ベクトルは、具体的には、
 実数体Rから2個の実数v1, v2をとって順序をつけた順序対 
  v= ( v1, v2 )  ただし、v1Rかつv2R  
 である。
詳細→実2次元数ベクトル(操作可能な図解つき)


例2 n次元数ベクトルで、次数nを1としたものを、
実1次元数ベクトルと呼ぶ。
実1次元数ベクトルは、具体的には、実数そのもの。 
実数体Rも、通常のベクトル和・スカラー積を定めることにより(→詳細)、ベクトル空間の定義を満たす(→詳細)。

実ベクトルの上位概念:n次元数ベクトル

ここで「実n次元数ベクトル」というときの「n次元」のは、単に、「n個並べた」という意味。
 基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。

用語が統一されていない。
・「実n次元数ベクトル」の名称を用いるテキスト→永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);
・「n項実ベクトル」の名称を用いるテキスト→斎藤『線形代数入門』2章§1(p.31); 
・「n次元実ベクトル」の名称を用いるテキスト→藤原『線形代数』1.1(p.4); 
・以上の名称の使用を回避し、実数を成分とした数ベクトルなどとしているテキスト
 →佐武『線形代数学』;志賀『線形代数30講』5講(p.28);13講(p.83);14講(p.88);   
・このように様々な名称が案出されるのは、
   単に、「実ベクトル」というと、実ベクトル空間一般のベクトルを指す可能性があるため?


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定義:ベクトルの相等

n次元数ベクトルu,vについてuv実ベクトルu, v が等しい)とは、
u, v次数が等しく、かつ、各成分の値が等しいことをいう。 
すなわち、
u( u1, u2, …, un ), v( v1, v2, …, vn )について、uvとは、
n=mかつui=vi (i=1,2,…,n)であることをいう。

[文献]
・西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26);
・杉浦『解析入門I』I章§4(p.33);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9)。
定義:Rn
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 

[文献]
岩波数学辞典』210線形空間:A定義 例2 (p.570);
永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);
杉浦『解析入門I』I章§4定義1(p.33);
佐武『線形代数学』T§1(pp.1-4);
ホフマン『線形代数学I』2.1-例1(p.29);
神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.102-6);
本部『新しい代数』5.2-Aベクトル空間(p.133);
酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.22);

Rnの具体例:R2  

定義 実数体Rからつくったn次元数ベクトル
すべて集めた集合(つまり、Rn回の直積)を、
Rnで表す。 
すなわち、
RnR×R××R
  ={ ( v1, v2, …, vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
Rnに、
ベクトル和とスカラー乗法という演算を定義したものが、
n次元数ベクトル空間
例1

R2は、実2次元数ベクトルをすべて集めた集合を指す。
実2次元数ベクトルの定義に遡れば、
 R2は、実数順序対をすべて集めた集合とも言いかえられる。
・これを直積の概念を使って、言い表せば、  
 R2とは、RR直積R×R のことである。
詳細→R2 


例2

R1は、
 実1次元数ベクトル―すなわち実数―を
 すべて集めた集合―すなわち実数体R―を指す。
R1―すなわち実数体R―も、
 通常のベクトル和・スカラー積を定めることにより(→詳細)、
 ベクトル空間の定義を満たす(→詳細)。 


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定義:零ベクトル

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合
[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9);
・佐武『線形代数学』T§1(p.2);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(p.106);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19) 。;
・戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング』2.1.2(p.49).

n次元零ベクトルの具体例:実2次元零ベクトル

定義

実数体Rにおける加法の単位元「0」をn個並べた 
      = ( 0, 0, …, 0 )   
 を、n次元の零ベクトルと呼ぶ。

確認

実数体Rにおける加法の単位元0は、当然0R 。  
したがって、=( 0, 0, …, 0 ) は、
n次元数ベクトルの定義を満たし、

Rn 

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定義:基本ベクトル
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合)   
Rnn次元数ベクトルをすべて集めた集合。
  すなわち、
  RnR×R××R
   ={ ( v1, v2, …, vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }  
[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.11);
・ 佐武『線形代数学』T§1(p.4);


n次元基本ベクトルの具体例:実2次元基本ベクトル(図解付)
本題

Rnにおける基本ベクトルとは、
次のn個の「n次元数ベクトルe1, e2,…,enのことをいう。 

 e1( 1, 0,0, …, 0 ) 
 e2( 0, 1, 0, …, 0 )    
 : 
 : 
 en-1( 0, 0, 0, …, 0, 1, 0 )    
 en( 0, 0, 0, …, 0, 0, 1 )    

つまり、 
  e1 第1成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、
第2成分n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル
  e2 第2成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、
第1成分第3成分n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル
 
 
  en-1 第(n-1)成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、
第1成分第(n−2)成分n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル
  en n成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、
第1成分第(n-1)成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル

といった具合に、
i成分だけ「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、
その他の(n-1)個の成分を「実数体Rにおける加法の単位元」0とした「実数体Rからつくった実n次元数ベクトルei (i=1,2,…,n)を、
Rnにおける基本ベクトルという。  
性質 基本ベクトルの一次結合基本ベクトルは一次独立基本ベクトルは基底をなす 

n次元基本ベクトルの具体例:実2次元基本ベクトル(図解付)

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定義:実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間・ベクトルの加法・スカラー乗法
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rn実数体Rからつくった実n次元数ベクトルをすべて集めた集合。  
   すなわち、RnR×R××R={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 


[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);;
・草場『線形代数』2.3(p.39)
・ 西村『経済数学早わかり』2章§1.2-1.3(pp.27-33);
・杉浦『解析入門I』I章§4(pp.33-4);
・ 佐武『線形代数学』T§1(pp.1-4);
・ホフマン『線形代数学I』2.1-例1(p.29);
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.102-6);
・本部『新しい代数』5.2-Aベクトル空間(p.132);
・ 酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.22);;
・ グリーン『計量経済分析』2.2(p.11);2.4.1(p.22)
・ 二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9)

n次元数ベクトル空間の具体例:
   実2次元数ベクトル空間(操作可能な図解つき) 
n次元数ベクトル空間の一般化:
   ・実ベクトル空間  
   ・一般の体上の数ベクトル空間  
   ・一般のベクトル空間 
      
       
本題 n次元数ベクトル空間n次元実ベクトル空間とは、
Kとして実数体Rを指定した場合の、K上の数ベクトル空間のこと。
すなわち、
n次元数ベクトル空間n次元実ベクトル空間とは、
集合Rnに、次の2つの演算を定義したもののこと。  
(演算1:ベクトルの加法)  
任意u(u1,u2,…,un)Rn と、任意v(v1,v2,…,vn )Rnに対して、
そのベクトル和uvを、次のように定義する。  
 uv=(u1,u2,…,un)( v1,v2,…,vn )=( u1v1, u2v2 , …, unvn ) 
  ※最右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。
(演算2:スカラー乗法)   
R任意aと、Rn任意v(v1,v2,…,vn )に対して、
そのスカラー倍avを、次のように定義する。
 av=a( v1,v2,…,vn )=( av1,av2,…,avn ) 
  ※最右辺のav1,av2,…,avnは、実数体Rに定められている乗法を指す。
例1 実2次元数ベクトル空間(操作可能な図解つき)
例2 実1次元数ベクトル空間とは、
集合R1に、次の2つの演算を定義したもの。
(演算1:ベクトルの加法)   
任意uu1 R1 と、任意vv1R1に対して、そのベクトル和uvを、次のように定義する。
 uv= u1v1= u1v1   ※最右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。
(演算2:スカラー乗法)   
R任意aと、R1任意vv1に対して、そのスカラー倍avを、次のように定義する。  
 ava v1        
※右辺のa v1は、実数体Rに定められている乗法を指す。
※実1次元数ベクトル空間を定義することそれ自体は馬鹿らしいが、
 実数体Rも、このようにベクトル和・スカラー積を定めることにより、ベクトル空間の定義を満たし(→詳細)、
 ベクトル空間として扱えるというのは、興味深い。  
ここで「n次元数ベクトル空間」というときの「n次元」は、単に、数を「n個並べた」という意味。
基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。
数を「n個並べた」ベクトルの集合に上記の演算を定義しただけの「n次元数ベクトル空間」が、
ベクトル空間になるかどうか、そのベクトル空間としての次元n次元であるかどうかは、
別に説明を要す。
n次元数ベクトル空間がベクトル空間になることの証明  
n次元数ベクトル空間のベクトル空間としての次元がn次元であることの証明 
このように定義すると、
 「任意u,vRnに対して、uvRn」「任意aR, vRnに対して、avRn」となる。
なぜなら、     
(step1)  
実数体Rの定義より、
  実数体Rは、加法, 乗法という二項演算が定められた代数系である。
 したがって、二項演算の定義から、   
  x,yRを満たす限りで任意(x,y)にたいして、x+yR, xyRが定められていることになる。 
(step2)
Rnは、{ ( v1, v2, …, vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }と定義されたから、 
  任意u(u1, u2,,un )Rnと、任意v( v1, v2, , vn )Rnに対して、 
u1, u2,,un , v1, v2, , vn Rである。  
(step3)
任意u(u1, u2,,un )Rnと、任意v( v1, v2, , vn )Rnに対して、
 step1, step2より、 u1v1, u2v2 , , unvn R となるから、 
uv=( u1v1, u2v2 , , unvn)は、
   Rnの定義:{ ( v1, v2, …, vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }
を満たす。    
(step4)
任意aRと、任意v( v1, v2, , vn )Rnに対して、
 step1, step2より、 av1, av2 , , avn R となるから、 
 av=( av1, av2 , , avn )は、
   Rnの定義:{ ( v1, v2, …, vn )v1Rかつv2RかつかつvnR }
を満たす。
n次元数ベクトル空間の上位概念:数ベクトル空間/実ベクトル空間/ベクトル空間 
・実n次元数ベクトル空間はベクトル空間の一例→詳細
実ベクトル空間n次元数ベクトル空間同型となるための条件:有限次元実ベクトル空間であること
n次元数ベクトル空間の下位概念:内積空間ノルム空間ユークリッド空間

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定義:逆ベクトル
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9);
・佐武『線形代数学』T§1(p.2);
実2次元数ベクトルの逆ベクトル

定義 v( v1, v2, , vn )Rnの逆ベクトル−vとは、
 v( v1, v2, , vn )Rnを、「−1」によってスカラー倍したもの。
 すなわち、 
  −v=(-1)v( v1, v2, , vn )( (-1)v1,(-1)v2,…,(-1)vn )( -v1,-v2,…,-vn )  

性質 任意aR, vRnに対して、avRn」だから()、  
 −v=(-1)vRn 


→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義]
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定理:実n次元数ベクトル空間におけるベクトルの加法の性質
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。   
  

 

[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9);
・ 西村『経済数学早わかり』2章§1.2(p.29);
・佐武『線形代数学』T§1(p.2);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19)



具体例:実2次元数ベクトル空間のケース
一般化:
  ・一般の体上の数ベクトル空間のケース
  ・一般の実ベクトル空間のケース 
      (実ベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)
  ・一般のベクトル空間のケース
      (一般のベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)

1. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法+は、
  「結合則:( u,v,wRn) ( ( u+v )+wu+( v+w ) )」を満たす。
2. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法と、
  Rnにおけるn次元零ベクトル= ( 0, 0, …, 0 )は、
    任意のvRn にたいして、 v+= v を満たす。
3. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法は、
    任意のvRn にたいして、 v+(v)= を満たす。 
4. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法は、
  「可換則:( u,vRn ) (uv =vu )」を満たす。 
証明1
証明2
証明3
証明4

→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義]
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定理:実n次元数ベクトル空間におけるスカラー乗法の性質
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。 

[文献]
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9);
・西村『経済数学早わかり』2章§1.2(pp.30-31);
・杉浦『解析入門I』I章§4命題4.1(p.34);
・佐武『線形代数学』T§1(p.2);
・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19);

具体例:実2次元数ベクトル空間のケース
一般化:
  ・一般の体上の数ベクトル空間のケース
  ・一般の実ベクトル空間のケース 
      (実ベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)
  ・一般のベクトル空間のケース
      (一般のベクトル空間では、性質ではなく、定義の一部)

1. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法と、
実数体R上で定義された乗法の単位元"1" は、 
     任意vRnに対して、1v=v 
を満たす。 
2. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法は、
    結合則:任意a,bRと、任意vRnに対して、(ab)v=a(bv) 
を満たす。
3. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法ベクトルの加法は、
    ベクトルに関する分配則:任意aRと、任意u,vRnに対して、a(u+v)=au+av  
を満たす。
4. n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法ベクトルの加法は、
    スカラーに関する分配則:任意a,bRと、任意vRnに対して、(a+b)v=avbv
を満たす。
証明1
証明2
証明3
証明4

→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義]
線形代数目次総目次
 
定理:実n次元数ベクトル空間は実ベクトル空間・ベクトル空間の一例である。
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。

[文献]
岩波数学辞典』210線形空間:A定義(pp.570-576);
本部『新しい代数』5.2-Aベクトル空間(p.132);
酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.22);
ホフマン『線形代数学I』2.1例1(p.29);
永田『理系のための線形代数の基礎』1.3(pp.14-6);
佐武『線形代数学』V§6(pp.114-5);
志賀『線形代数30講』13講(pp.85-7);14講(pp.88-90);
神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.105-6);
松坂『集合・位相入門』3章§5C(p.133);

本題

n次元数ベクトル空間Rnは、
実数体R上のベクトル空間(すなわち実ベクトル空間)の一具体例であり、
K上のベクトル空間の一具体例である。


なぜ?

実数体Rは、Kの一具体例である。 
n次元数ベクトル空間Rnには、
  任意u,vRnに対して、uvRn任意aR, vRnに対して、avRn 
 を一つずつ定めるベクトルの加法スカラー乗法が定められており、
 K上のベクトル空間であるための条件I-1,II-1を、
 n次元数ベクトル空間Rnは、満たしている。   
n次元数ベクトル空間Rnでは、
 n次元数ベクトル空間におけるベクトルの加法の性質と、
 n次元数ベクトル空間におけるスカラー乗法の性質の8つの条件が
 成り立っている。
 この8条件は、
 K上のベクトル空間であるための条件I-2,II-2は満たすものである。
 したがって、n次元数ベクトル空間Rnは、
 K上のベクトル空間であるための条件I-2,II-2を満たしている。 


→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義]
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定理:零ベクトルのスカラー倍
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
Rn上の零ベクトル。  
aスカラー。つまり、aR

[文献]
・佐武『線形代数学』T§1(p.3);

具体例:実2次元数ベクトル空間のケース

本題 零ベクトルスカラー倍は、すべて、零ベクトル
つまり、任意aRにたいして、a
定理:ベクトルのスカラー0倍
設定 R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間。 
  すなわち、
  Rn=R×R××R
    ={ ( v1, v2, , vn )v1Rかつv2RかつかつvnR } 
  に、ベクトルの加法スカラー乗法を定義したもの。
Rn上の零ベクトル。  
aスカラー。つまり、aR

 

[文献]
・ 佐武『線形代数学』T§1(p.3);

具体例:実2次元数ベクトル空間のケース


本題 任意n次元数ベクトルスカラー0倍は、すべて、零ベクトル
 すなわち、任意のvRn にたいして、0v  

→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義]
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(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.1-b(p.155).
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(p.83);14講ベクトル空間の例と基本概念(p.88)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、1.1ベクトルとベクトルの演算(p.4)、4.1線形空間と写像(p.91)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§1行列の定義と演算(p.31);§3(p.46);§6(p.61)第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2体(p.249)。

代数学のテキスト
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。

解析学のテキスト
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、I章§4(pp.33-4)

数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、2章線形代数§1ベクトル(pp.26-)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,1.
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、2.4基底と次元(pp.36-41)。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、1.2V定義1.2.2(p.10)。
二階堂副包『経済のための線型代数』培風館、1961年、I§1(pp.18-9)。


数理統計学のテキスト
William H. Greene(斯波・中妻・浅井訳) 『経済学体系シリーズ:グリーン計量経済分析I:改訂4版』エコノミスト社、2000年、第2章行列代数2.2行列の用語(pp.10-12);2.3行列の算法(pp.12-21)。
岩田暁一『経済分析のための統計的方法(第2版)』東洋経済新報社、1983年、12.1行列の演算(pp.269-277);12.4.2逆行列(pp.294-5)。

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