実n次元数ベクトル空間の定義 ― トピック一覧 |
---|
・定義:実n次元数ベクトル・第i成分・スカラー / Rn/基本ベクトル/零ベクトル 実n次元数ベクトル空間・ベクトル和・スカラー倍/逆ベクトル ・定理:数ベクトル空間のベクトル和の性質/数ベクトル空間のスカラー乗法の性質/数ベクトル空間はベクトル空間の一例 零ベクトルのスカラー倍/ベクトルのスカラー0倍 |
※実n次元数ベクトル空間関連ページ:線形結合/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元/部分ベクトル空間 ※上位概念:一般のベクトル空間/一般の体上の数ベクトル空間/実ベクトル空間 ※下位概念:実2次元数ベクトル空間 ※線形代数目次・総目次 |
定義:実n次元数ベクトル・n次元実ベクトル・n項実ベクトル、第i成分i-th component 、スカラー | |||
---|---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合)
|
[文献] ・『岩波数学辞典』210線形空間:A定義 例2 (p.570); ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8); ・斎藤『線形代数入門』2章§1(p.31);§3(p.46);§6(p.61); ・西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26); ・佐武『線形代数学』T§1(pp.1-4); ・志賀『線形代数30講』5講(p.28);13講(p.83);14講(p.88); ・藤原『線形代数』1.1(p.4); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.103-6); ・杉浦『解析入門I』I章§4(p.33); ・グリーン『計量経済分析』2.2(p.11);2.4.1(p.22); ・草場『線形代数』2.3(p.39); ・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.18)。; ・戸田山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.1.2(p.49) ※実n次元数ベクトルの具体例:実2次元数ベクトル(図解) ※実n次元数ベクトルの一般化1:n次元数ベクトル ※実n次元数ベクトルの一般化2:実行列/体上の行列 | |
定義1 |
実数をn個並べたもの すなわち、 実数体Rから実数v1, v2, …, vnをとって順序をつけた、n組 v= ( v1, v2, …, vn ) ただし、v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R のことを、 実n次元数ベクトル、n次元実ベクトル、n項実ベクトルなどという。 | ||
定義2 |
上記のv1をベクトルvの第1成分、 上記のv2をベクトルvの第2成分、 : 上記のvnをベクトルvの第n成分 と呼ぶ。 | ||
定義3 |
ベクトルの成分の数をベクトルの次数という。 [西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26)] | ||
定義4 |
実n次元横ベクトル・n項実行ベクトルとは、 ( v1, v2, …, vn )のように実数を横に並べたn次元実ベクトルのこと。 実n次元縦ベクトル・n項実列ベクトルとは、 ![]() といった具合に、実数を縦に並べた実n次元ベクトルのこと。 横ベクトルと縦ベクトルの違いは、行列との演算において意味をもつ。 ※縦ベクトルを、実際に縦に並べて表記する代わりに、行列の転置記号を用いて、 横ベクトルの転置 t( v1, v2, …, vn ) と表すことが多く見られる。 書籍等では、 縦ベクトルを実際に縦に並べて表すと、 スペースを費やし、ページが増えて、印刷コストがかさむ といった理由から、 webでは、テキストだけで、縦ベクトルを縦に並べて表すのは難しい、 といった理由から、 縦ベクトルを実際に縦に並べることを避ける傾向にある。 | ||
定義5 |
実数体Rからつくった上記の実ベクトルに対して、 「実数体Rの元」そのもの、すなわち実数をスカラーと呼ぶ。 | ||
例1 |
実n次元数ベクトルで、次数nを2としたものを、 実2次元数ベクトルと呼ぶ。 実2次元数ベクトルは、具体的には、 実数体Rから2個の実数v1, v2をとって順序をつけた順序対 v= ( v1, v2 ) ただし、v1∈Rかつv2∈R である。 ※詳細→実2次元数ベクトル(操作可能な図解つき) | ||
例2 |
実n次元数ベクトルで、次数nを1としたものを、 実1次元数ベクトルと呼ぶ。 実1次元数ベクトルは、具体的には、実数そのもの。 実数体Rも、通常のベクトル和・スカラー積を定めることにより(→詳細)、ベクトル空間の定義を満たす(→詳細)。 | ||
※ |
実ベクトルの上位概念:n次元数ベクトル
| ||
※ |
ここで「実n次元数ベクトル」というときの「n次元」のは、単に、「n個並べた」という意味。 基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。 | ||
※ |
用語が統一されていない。 ・「実n次元数ベクトル」の名称を用いるテキスト→永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8); ・「n項実ベクトル」の名称を用いるテキスト→斎藤『線形代数入門』2章§1(p.31); ・「n次元実ベクトル」の名称を用いるテキスト→藤原『線形代数』1.1(p.4); ・以上の名称の使用を回避し、実数を成分とした数ベクトルなどとしているテキスト →佐武『線形代数学』;志賀『線形代数30講』5講(p.28);13講(p.83);14講(p.88); ・このように様々な名称が案出されるのは、 単に、「実ベクトル」というと、実ベクトル空間一般のベクトルを指す可能性があるため? |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定義:ベクトルの相等 | ||
---|---|---|
実n次元数ベクトルu,vについてu=v(実ベクトルu, v が等しい)とは、 |
[文献] ・西村『経済数学早わかり』2章§1.1(p.26); ・杉浦『解析入門I』I章§4(p.33); ・二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9)。 |
定義:Rn | ||
---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合)
|
[文献]
※Rnの具体例:R2 |
定義 |
実数体Rからつくった実n次元数ベクトルを すべて集めた集合(つまり、Rのn回の直積)を、 Rnで表す。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } |
|
※ |
Rnに、 ベクトル和とスカラー乗法という演算を定義したものが、 実n次元数ベクトル空間。 |
|
例1 |
・R2は、実2次元数ベクトルをすべて集めた集合を指す。 |
|
例2 |
・R1は、 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定義:零ベクトル | ||
---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合)
|
[文献] ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9); ・佐武『線形代数学』T§1(p.2); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(p.106); ・二階堂『経済のための線型代数』I§1(p.19) 。; ・戸田山田『計量経済学の基礎:統計的手法の理論とプログラミング』2.1.2(p.49). ※実n次元零ベクトルの具体例:実2次元零ベクトル |
定義 |
実数体Rにおける加法の単位元「0」をn個並べた 0= ( 0, 0, …, 0 ) を、n次元の零ベクトルと呼ぶ。 |
|
確認 |
実数体Rにおける加法の単位元0は、当然0∈R 。 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定義:基本ベクトル | ||
---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトルをすべて集めた集合。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } |
[文献] ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.11); ・ 佐武『線形代数学』T§1(p.4); ※実n次元基本ベクトルの具体例:実2次元基本ベクトル(図解付) |
本題 |
Rnにおける基本ベクトルとは、 e2=( 0, 1, 0, …, 0 ) : : en-1=( 0, 0, 0, …, 0, 1, 0 ) en=( 0, 0, 0, …, 0, 0, 1 ) |
|
つまり、 |
e1: |
第1成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、 第2成分〜第n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル |
|
e2: |
第2成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、 第1成分・第3成分〜第n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル |
|
: : |
||
en-1: |
第(n-1)成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、 第1成分〜第(n−2)成分・第n成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル |
|
en: |
第n成分が「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、 第1成分〜第(n-1)成分が「実数体Rにおける加法の単位元」0であるベクトル |
といった具合に、 第i成分だけ「実数体Rにおける乗法の単位元」1で、 その他の(n-1)個の成分を「実数体Rにおける加法の単位元」0とした「実数体Rからつくった実n次元数ベクトル」ei (i=1,2,…,n)を、 Rnにおける基本ベクトルという。 |
|
性質 |
基本ベクトルの一次結合、基本ベクトルは一次独立、基本ベクトルは基底をなす
|
※実n次元基本ベクトルの具体例:実2次元基本ベクトル(図解付) |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 | ||
定義:実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間・ベクトルの加法・スカラー乗法 | ||
---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実数体Rからつくった実n次元数ベクトルをすべて集めた集合。 すなわち、Rn=R×R×…×R={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } |
[文献] ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.8);; ・草場『線形代数』2.3(p.39) ・ 西村『経済数学早わかり』2章§1.2-1.3(pp.27-33); ・杉浦『解析入門I』I章§4(pp.33-4); ・ 佐武『線形代数学』T§1(pp.1-4); ・ホフマン『線形代数学I』2.1-例1(p.29); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1(pp.102-6); ・本部『新しい代数』5.2-Aベクトル空間(p.132); ・ 酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.22);; ・ グリーン『計量経済分析』2.2(p.11);2.4.1(p.22) ・ 二階堂『経済のための線型代数』I§1(pp.18-9) ※実n次元数ベクトル空間の具体例: 実2次元数ベクトル空間(操作可能な図解つき) ※実n次元数ベクトル空間の一般化: ・実ベクトル空間 ・一般の体上の数ベクトル空間 ・一般のベクトル空間 |
本題 |
実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間とは、 体Kとして実数体Rを指定した場合の、体K上の数ベクトル空間のこと。 すなわち、 実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間とは、 集合Rnに、次の2つの演算を定義したもののこと。 (演算1:ベクトルの加法) 任意のu=(u1,u2,…,un)∈Rn と、任意のv =(v1,v2,…,vn )∈Rnに対して、 そのベクトル和u+vを、次のように定義する。 u+v=(u1,u2,…,un)+( v1,v2,…,vn )=( u1+v1, u2+v2 , …, un+vn ) ※最右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。 (演算2:スカラー乗法) Rの任意の元aと、Rnの任意の元v =(v1,v2,…,vn )に対して、 そのスカラー倍avを、次のように定義する。 av=a( v1,v2,…,vn )=( av1,av2,…,avn ) ※最右辺のav1,av2,…,avnは、実数体Rに定められている乗法を指す。 |
|
例1 |
実2次元数ベクトル空間(操作可能な図解つき)
|
|
例2 |
実1次元数ベクトル空間とは、 集合R1に、次の2つの演算を定義したもの。 (演算1:ベクトルの加法) 任意のu= u1 ∈R1 と、任意のv=v1∈R1に対して、そのベクトル和u+vを、次のように定義する。 u+v= u1+v1= u1+v1 ※最右辺の+は、実数体Rに定められている加法を指す。 (演算2:スカラー乗法) Rの任意の元aと、R1の任意の元v=v1に対して、そのスカラー倍avを、次のように定義する。 av=a v1 ※右辺のa v1は、実数体Rに定められている乗法を指す。 ※実1次元数ベクトル空間を定義することそれ自体は馬鹿らしいが、 実数体Rも、このようにベクトル和・スカラー積を定めることにより、ベクトル空間の定義を満たし(→詳細)、 ベクトル空間として扱えるというのは、興味深い。 |
|
※ |
ここで「実n次元数ベクトル空間」というときの「n次元」は、単に、数を「n個並べた」という意味。 基底を構成するベクトルの個数として定義される「ベクトル空間の次元」とは、とりあえず無関係。 数を「n個並べた」ベクトルの集合に上記の演算を定義しただけの「n次元数ベクトル空間」が、 ベクトル空間になるかどうか、そのベクトル空間としての次元がn次元であるかどうかは、 別に説明を要す。 →実n次元数ベクトル空間がベクトル空間になることの証明 →実n次元数ベクトル空間のベクトル空間としての次元がn次元であることの証明 |
|
※ |
このように定義すると、 「任意のu,v∈Rnに対して、u+v∈Rn」「任意のa∈R, v∈Rnに対して、av∈Rn」となる。 なぜなら、 (step1) 実数体Rの定義より、 実数体Rは、加法, 乗法という二項演算が定められた代数系である。 したがって、二項演算の定義から、 x,y∈Rを満たす限りで任意の(x,y)にたいして、x+y∈R, xy∈Rが定められていることになる。 (step2) Rnは、{ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R }と定義されたから、 任意のu=(u1, u2,…,un )∈Rnと、任意のv=( v1, v2, …, vn )∈Rnに対して、 u1, u2,…,un , v1, v2, …, vn ∈Rである。 (step3) 任意のu=(u1, u2,…,un )∈Rnと、任意のv=( v1, v2, …, vn )∈Rnに対して、 step1, step2より、 u1+v1, u2+v2 , …, un+vn ∈R となるから、 u+v=( u1+v1, u2+v2 , …, un+vn)は、 Rnの定義:{ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } を満たす。 (step4) 任意のa∈Rと、任意のv=( v1, v2, …, vn )∈Rnに対して、 step1, step2より、 av1, av2 , …, avn ∈R となるから、 av=( av1, av2 , …, avn )は、 Rnの定義:{ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } を満たす。 |
|
※ |
実n次元数ベクトル空間の上位概念:数ベクトル空間/実ベクトル空間/ベクトル空間
|
|
※ |
・実n次元数ベクトル空間はベクトル空間の一例→詳細 ・実ベクトル空間が実n次元数ベクトル空間と同型となるための条件:有限次元実ベクトル空間であること |
|
※ | 実n次元数ベクトル空間の下位概念:内積空間・ノルム空間・ユークリッド空間 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定義:逆ベクトル | |||
---|---|---|---|
設定 | R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 |
[文献] ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.9); ・佐武『線形代数学』T§1(p.2); ※実2次元数ベクトルの逆ベクトル | |
定義 |
・v=( v1, v2, …, vn )∈Rnの逆ベクトル−vとは、 v=( v1, v2, …, vn )∈Rnを、「−1」によってスカラー倍したもの。 すなわち、 −v=(-1)v=( v1, v2, …, vn )=( (-1)v1,(-1)v2,…,(-1)vn )=( -v1,-v2,…,-vn ) | ||
性質 |
「任意のa∈R, v∈Rnに対して、av∈Rn」だから(∵)、 −v=(-1)v=∈Rn |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定理:実n次元数ベクトル空間におけるベクトルの加法の性質 | |||
---|---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 |
[文献] |
|
1. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法+は、 「結合則:( ∀u,v,w∈Rn) ( ( u+v )+w = u+( v+w ) )」を満たす。 |
||
2. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法+と、 Rnにおけるn次元零ベクトル0= ( 0, 0, …, 0 )は、 任意のv∈Rn にたいして、 v+0= v を満たす。 |
||
3. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法+は、 任意のv∈Rn にたいして、 v+(−v)=0 を満たす。 |
||
4. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法+は、 「可換則:( ∀u,v∈Rn ) (u+v =v+u )」を満たす。 |
||
証明1 | |||
証明2 | |||
証明3 | |||
証明4 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定理:実n次元数ベクトル空間におけるスカラー乗法の性質 | |||
---|---|---|---|
設定 | R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 |
[文献] |
|
1. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法と、 実数体R上で定義された乗法の単位元"1" は、 任意のv∈Rnに対して、1v=v を満たす。 |
||
2. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法は、 結合則:任意のa,b∈Rと、任意のv∈Rnに対して、(ab)v=a(bv) を満たす。 |
||
3. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法とベクトルの加法+は、 ベクトルに関する分配則:任意のa∈Rと、任意のu,v∈Rnに対して、a(u+v)=au+av を満たす。 |
||
4. |
実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法とベクトルの加法+は、 スカラーに関する分配則:任意のa,b∈Rと、任意のv∈Rnに対して、(a+b)v=av+bv を満たす。 |
||
証明1 | |||
証明2 | |||
証明3 | |||
証明4 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
定理:実n次元数ベクトル空間は実ベクトル空間・ベクトル空間の一例である。 | |||
---|---|---|---|
設定 | R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 |
[文献] |
|
本題 |
実n次元数ベクトル空間Rnは、 |
||
なぜ? |
・実数体Rは、体Kの一具体例である。 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 | ||
定理:零ベクトルのスカラー倍 | ||
---|---|---|
設定 |
R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 0:Rn上の零ベクトル。 a:スカラー。つまり、a∈R |
[文献] ・佐武『線形代数学』T§1(p.3); ※具体例:実2次元数ベクトル空間のケース |
本題 |
零ベクトルのスカラー倍は、すべて、零ベクトル。 つまり、任意のa∈Rにたいして、a0=0 |
定理:ベクトルのスカラー0倍 | ||
---|---|---|
設定 | R:実数体(実数をすべて集めた集合) Rn:実n次元数ベクトル空間。 すなわち、 Rn=R×R×…×R ={ ( v1, v2, …, vn )|v1∈Rかつv2∈Rかつ…かつvn∈R } に、ベクトルの加法とスカラー乗法を定義したもの。 0:Rn上の零ベクトル。 a:スカラー。つまり、a∈R |
[文献] ・ 佐武『線形代数学』T§1(p.3); ※具体例:実2次元数ベクトル空間のケース |
本題 |
任意の実n次元数ベクトルのスカラー0倍は、すべて、零ベクトル。 すなわち、任意のv∈Rn にたいして、0v=0 |
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |
(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.1-b(p.155).
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(p.83);14講ベクトル空間の例と基本概念(p.88)。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、1.1ベクトルとベクトルの演算(p.4)、4.1線形空間と写像(p.91)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§1行列の定義と演算(p.31);§3(p.46);§6(p.61)第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2体(p.249)。
代数学のテキスト
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。
解析学のテキスト
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、I章§4(pp.33-4)
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、2章線形代数§1ベクトル(pp.26-)。
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,1.
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、2.4基底と次元(pp.36-41)。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、1.2V定義1.2.2(p.10)。
二階堂副包『経済のための線型代数』培風館、1961年、I§1(pp.18-9)。
数理統計学のテキスト
William H. Greene(斯波・中妻・浅井訳) 『経済学体系シリーズ:グリーン計量経済分析I:改訂4版』エコノミスト社、2000年、第2章行列代数2.2行列の用語(pp.10-12);2.3行列の算法(pp.12-21)。
岩田暁一『経済分析のための統計的方法(第2版)』東洋経済新報社、1983年、12.1行列の演算(pp.269-277);12.4.2逆行列(pp.294-5)。
→[トピック一覧:実n次元数ベクトル空間の定義] →線形代数目次・総目次 |