2変数関数の高次の偏微分

・定義:2変数関数の2 階偏導関数・第2次偏導関数/n次偏導 関数・n階偏導関数・高階偏導関数/Cn
偏 微分の順序についての性質
   ・定理/Youngの定理/Schwarzの定理 
   ・Cn級 関数のn回までの偏微分は偏微分の順序を換えても変わらない

【関連ページ】
  ・高次の微分:1変 数関数の高次の微分/2変 数関数の高次の全微分
  ・2変 数関数の偏微分:偏微分可能・偏微分係数・偏導関数の定義/微分演算子
  ・微分定義:1変 数関数の微分/2変 数関数の全微分/方向微分
  ・2変 数関数微分の応用:合成関数の微分/平均値定理・テイラーの定理/極値問題
              陰関数定理/逆関数定理/ラグランジュ未定乗数法


総目次 

定義:2階偏導関数・第2次偏導関数 


定義


2変数関数z=f (x,y)偏導関数さらにその偏導関数が存在するならば、
それらを、
2階偏導関数2次偏導関数などと呼ぶ。 
2変数関数z=f (x,y)2(2)偏導関数として、
以下の
4種を考えることができる。
  (→
これらを一定のパターンに並べたのが、Hesse行列
type-I. まず、xで偏微分して、次もxで偏微分。 
     関数
z=f (x,y)xに関する偏導関数 f x (x,y) を、 
     さらに
xで偏微分して出てきた導関数 
      
     (記法) 
       
f x x(x,y)  
         

[文献]
微分積分pp.118-119;
吹田新保『理工系の微分積分学pp.162-163.

類概念:
  
1変数関数の2(2)偏導関数

 

type-II. まず、xで偏微分して、次はyで偏微分。 
     関数
z=f (x,y)xに関する偏導関数 f x (x,y) を、 
     さらに
yで偏微分して出てきた導関数 
      
      (記法) 
        
f x y(x,y) 
          
type-III. まず、yで偏微分して、次もyで偏微分。 
      関数
z=f (x,y)yに関する偏導関数 f y (x,y) を、 
      さらに
yで偏微分して出てきた導関数 
       
      (記法) 
        
f y y(x,y)  
          
type-IV. まず、yで偏微分して、次はxで偏微分。 
     関数
z=f (x,y)yに関する偏導関数 f y (x,y) を、 
     さらに
xで偏微分して出てきた導関数 
      
      (記法) 
         
f yx(x,y)  
           




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定義:n階偏導関数・第n次偏導関数・高 階偏導関数


定義


2以上の偏導関数を総称して高階偏導関数と呼ぶ。 
(z= f (x,y)の第n(n)偏導関数の表記例)  
      
      

[文献]
吹田新保『理工系の微分積分学』pp.162-163.

類概念:
  
1変数関数のn(n)偏導関数



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定義:Cn級 Function of Class Cn


定義


関数
f (x,y)
D上でn回連続微分可能
ないし
D上で C n function of class C-n 」であるとは、 
関数
f (x,y)領域D上でn階までのあらゆる偏導関数をもち、
それらがすべて
D上 で連続であることをいう。

[文献]
吹田・新保『理工系の微分積分学』p.162.;
小平『解析入門II』pp.276-278.

※類概念:1変 数関数のCn

全微分可能との関係、偏微分の順序との関係


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偏微分の順序 

  2変数関数z=f (x,y)に、
2階偏導関数f x y , f yx がともに存在したとしても
一致するとは限らない。 
では、
一致するための十分条件とは?

[文献]
吹田・新保『理 工系の微分積分学』p.163.;
小平『解 析入門II』pp.272-276;
高橋『経 済学とファイナンスのための数学』pp.59-60
 
定理

 

ある領域Dにおいて
関数
f (x,y)偏導関数 f x (x,y) , f y (x,y)2階偏導関数 f x y (x,y) , f yx (x,y) が存在して、
f x y (x,y) , f yx (x,y) が連続
ならば、  
f x y (x,y) f yx (x,y)  が成り立つ


[文献]
小平『解析入門IIpp.272-273.


Youngの定理 

 


領域Dにおいて
関数
f (x,y)偏導関数 f x (x,y) , f y (x,y) が存在して微分可能
ならば、 
f x y (x,y) f yx (x,y)  が成り立つ。 


[文献]
小平『解析入門IIpp.273-274.
高木『解析概論p.58.

 
Schwarzの定理

 


ある
領域Dにおいて
関数
f (x,y)偏導関数f x (x,y) , f y (x,y) ,2階偏導関数 f x y (x,y)が存在して、 
  
f x y (x,y)連続ならば  
2階偏導関数f y x (x,y)も存在して、
  
f x y (x,y) f yx (x,y)  が成り立つ。


[文献]
吹田・新保『理工系の微分積分学p.163.;
小平『解析入門IIpp.273-274.

 
偏微分の順序についての結論

 

 以上の諸定理より、  
 
C n級関数f (x,y)について、n回までの偏微分は微分の順序を換えても変わらない。

 


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reference

岩波数学辞典(第三版)』. 項目333 微分法[pp.983-986]
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、pp.92-93.
小平邦彦『解析入門II』 (軽装版)岩波書店、2003年、pp.265-266。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 58.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.118-119.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.162-163.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、pp.107-110.  ただし、いきなり多次元。
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.59-60。