2変数関数の方向微分可能・方向微分係数・導関数の定義:トピック一覧  

 ・1点における方向微分可能性・微分係数の定義:方向微分可能・方向微分係数[原意/操作化/定義1/定義2] 
 ・
1点における方向微分係数の計算公式−偏微分係数から計算可  
 ・  

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総目次

定義:2変数関数は点(x0, y0)で方向微分可能differentiable・点(x0, y0)における方向微分係数differential coefficient 


原意


y=20-x2-4y2
x= y= における
x軸プラス方向から 度方向の方向微分係数とは、
下図のピンクの切断面上で
緑の接線がもつ傾き (x軸プラス方向から°方向の増分1に対するzの増分) のこと。

[java script1.1を使用]
つまり、 2変数関数 f(x,y) (, ) における °方向微分係数は、 以下の手順で、把握できる。
1. x-y 平面上で、
    (, )から、 x軸プラス方向[上図の水色の直線]から 度だけ逆時計回りさせた方向に、
   直線を引く。
2.この直線をx-y平面に対して垂直に動かすことによって、
   「z=f(x,y)が表す曲面」 {(x,y,z) |z=f(x,y)}を 切断する[上図のピンクの平面が切断面]。 
3. 切り口に曲線が現れる[上図のピンクの曲線]。
4. 切断面のなかで、曲線に (, , f(,))で接する接線を引く[上図の緑の直線]。
5. この接線の、切断面上の傾きが、  「( , )におけるf(, )の °方向微分係数」。
   [上図の「ピンクの平面」における「緑の直線」の傾き]。


[文献−数学]
・高橋『微分と積分2』§3.2 (pp.73-4): 2変数関数;
・笠原『
微分積分学5.13(p.157): 2変数関数
・小形『
多変数の微分積分pp. 51-53:2変数関数。
・杉浦『
解析入門』U§3定義1 (p.107)n変数m値ベクトル値関数;
・黒田『
微分積分学8.3.3定義8.10(pp.287) n変数実数値関数;.
Lang,Undergraduate Analysis,15-§2-application(p.325): n変数実数値関数directional derivative;
・清野「多変数関数の微分」3/4
[文献−数理経済学]
・高橋一『
経済学とファイナンスのための数学5.2V方向微分(p.149) n変数実関数.
de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists, PartI-4-2-Definition2.1 (pp.163-4) n変数実数値関数.

[一般化]
・多変数関数の方向微分
・ベクトル値関数の方向微分

     

操作化

[原意の操作化]
2変数関数f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数は、以下の手順で、操作化される。
1. xy 平面上で、
 
(x0, y0)から、x軸プラス方向からθ度だけ逆時計回りさせた方向に、
 新たな座標軸
tを設定[上図の水色の直線]
 なお、
t≧0のみを考え、t<0は考えないことにする。
 
t座標の0は、(x, y)座標の(x0, y0)を表し、
 
t座標の1は、(x, y)座標の(x0+cosθ, y0+ sinθ)を表し、
 一般に、
t座標のt (>)は、(x, y)座標の(x0+ t cosθ, y0+t sinθ)を表す。
2. t-z平面で、f (x,y )のグラフを切断する。
3.切断面に現れる曲線のグラフは、当然、t-z平面上にあるので、。
 この曲線を、
1変数関数z=φ(t)f ( x0+ t cosθ, y0+ t sinθ)と表せる。 
4.f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」とは、
  「切断面
[t-z平面]のなかで、曲線z=φ(t)に、t=0で接する接線の傾き」であって、 
  「
t =0におけるz=φ(t)右微分係数」として表せる。  

5. 「t =0におけるz=φ(t)右微分係数」は、
  二様に操作化されることから、
  「
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」も
  二様に操作化される。
   
  
[操作化1] → 定義1   
  「
t =0におけるz=φ(t)右微分係数」を、
    

  というかたちに操作化した場合、
  
1変数関数z=φ(t)f ( x0+ t cosθ, y0+ t sinθ) だから、
  「
t =0におけるz=φ(t)右微分係数」は、
    
 
  となるので、
  
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」は、  
   
 
 と表せることがわかる。

  
[操作化2] → 定義2   
  「
t =0におけるz=φ(t)右微分係数A」を、
  「点
t =0に対して、ある一定の実数Aが存在して、 
      
φ( t )−(φ() +A(t−0) )=o ( t−0)  (t +) 
      すなわち、
      
φ( t )−(φ() +At )=o (t)  (t +) 
   を満たす」
   というかたちに操作化した場合、 
   
1変数関数z=φ(t)f ( x0+ t cosθ, y0+ t sinθ) だから、
   
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」は、  
      
f ( x0+ t cosθ, y0+ t sinθ)−(f ( x0, y0 )+At )=o (t)  (t +) 
   と表せることがわかる。

 
     

   


定義
1


[角度θで方向を指定する場合の方向微分の定義−ベクトルを使わない表現]

f (x,y )(x0, y0)において角度θ方向に微分可能である」
 とは、
 
1変数関数φ(t)=f (x0+t cosθ, y0+t sinθ) について、
 
t =0における右微分係数 
   すなわち、
   有限な
右極限値
    

    
 
 が存在することをいう。

f (x,y )(x0, y0)において角度θ方向に微分可能であるとき、
 「
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」 
 とは、
 
1変数関数φ(h)=f (x0+h cosθ, y0+h sinθ) についての、
 
h =0における右微分係数 
   すなわち、
   有限な
右極限値
    

    
 
 のことをいう。

[文献−数学]
・笠原『微分積分学5.13(p.157): 2変数関数
・小形『
多変数の微分積分pp. 51-53:2変数関数。

 


[角度θで方向を指定する場合の方向微分の定義−ベクトル表現]

z=f (x)2次元数ベクトルx 0において角度θ方向に微分可能」とは、
 
2次元数ベクトル e(θ)=( cosθ, sinθ) にたいして、
 有限な
右極限値
  
  
 が存在することをいう。
  
* hは実数、 
   
he(θ)は、2次元数ベクトルe(θ)スカラー倍
   
x0+he は、x0h eとのベクトル和を表す。 

z=f (x)2次元数ベクトルx 0において角度θ方向に微分可能であるとき、
 「
x0におけるz=f (x)e方向微分係数」とは、
 
e(θ)=( cosθ, sinθ) にたいする有限な右極限値
  
  
 のことを指す。
  
* hは実数、 
   
he(θ)は、2次元数ベクトルe(θ)スカラー倍
   
x0+he は、x0h eとのベクトル和を表す。 
   
x0におけるz=f (x)e方向微分係数」を、
 
e=( cosθ, sinθ) を用いて、
   
De(θ) f (x0)
 と表す。 

[文献−数学]
・黒田『微分積分学8.3.3定義8.10(pp.287) n変数実数値関数;.

     

     
 

[単位ベクトルで方向を指定する場合の方向微分の定義]
角度θの代わりに、単位ベクトルを用いて方向を指定して、
方向微分を定義することもできる。
z=f (x)2次元数ベクトルx 0においてe方向に微分可能」とは、
 
2次元単位ベクトル e=( e1 , e2) にたいして、
 有限な
右極限値
  
  
 が存在することをいう。
  
* hは実数、 
   
heは、2次元単位ベクトルeスカラー倍
   
x0+ h e は、x0h eとのベクトル和を表す。
  
* e=( e1 , e2 ) 方向とは、
     
x-y平面上の直線{(x, y ) | x=x0+t e1 かつ y=y0+t e2 かつ t≧0} 
   の方向を表す。

z=f (x)2次元数ベクトルx 0においてe方向に微分可能であるとき、
 「
x0におけるz=f (x)e方向微分係数」とは、
 
2次元単位ベクトル e=( e1 , e2 )にたいする有限な右極限値
  
 
 のことを指す。
  
* hは実数、 
   
heは、2次元単位ベクトルeスカラー倍
   
x0+ h e は、x0h eとのベクトル和を表す。 
  
* e=( e1 , e2 ) 方向とは、
     
x-y平面上の直線{(x, y ) | x=x0+t e1 かつ y=y0+t e2 かつ t≧0} 
   の方向を表す。

x0におけるz=f (x)e方向微分係数」を、
   
De f (x0)
 と表す。 

[文献−数学]
・黒田『微分積分学8.3.3定義8.10(pp.287) n変数実数値関数;.
・高橋『微分と積分2』定理3.14 (p.74): 2変数関数;

 



   

定義2

・「f (x,y )(x0, y0)θ方向微分可能であって、
  
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数A
とは、
 
f ( x0+ t cosθ, y0+ t sinθ)−(f ( x0, y0 )+At )=o (t)  (t +) 
が満たされることをいう。

・「z=f (x)2次元数ベクトルx 0においてe方向に微分可能であって、
  
x0におけるz=f (x)e方向微分係数A
 とは、
 
2次元単位ベクトル e=( e1 , e2) にたいして、
  
f ( x0+ te )−(f ( x0 )+At )=o (t)  (t +) 
 が満たされることをいう。
  
* teは、2次元単位ベクトルeスカラー倍を表し、
   
x0+ te は、x0teとのベクトル和を表す。 
x0におけるz=f (x)e方向微分係数」を、
   
De f (x0)
 と表す。 

[文献]

 



→[トピック一覧:2変数関数の方向微分]
総目次

 

定理:方向微分係数の計算公式 偏微分係数から計算可能

     
 

[角度θで方向を指定された方向微分係数の場合−ベクトルを使わない表現]

2変数関数f (x,y )(x0, y0)において全微分可能ならば
2変数関数f (x,y )は、(x0, y0)で、任意の角度θ方向に方向微分可能で、
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」は、 
  
f x ( x0, y0 ) cosθ+ f y (x0, y0 ) sinθ
となる。


[文献−数学]
・高橋『微分と積分2』定理3.14 (p.74): 2変数関数;
・笠原『
微分積分学5.13(p.157): 2変数関数
・小形『
多変数の微分積分pp. 52:2変数関数。
・黒田『
微分積分学8.3.3定理8.11(pp.288) n変数実数値関数;.
・志賀『解析入門3025(p.195) :2変数関数;
・『岩波数学辞典333G全微分(p.985):2変数実関数.

     

 

[角度θで方向を指定された方向微分係数の場合−ベクトルを使う表現]

2変数関数f (x,y )(x0, y0)において全微分可能ならば
2変数関数f (x,y )は、(x0, y0)で、任意の角度θ方向に方向微分可能で、
f (x,y )(x0, y0)におけるθ方向微分係数」は、
  
grad f (x0,y0)f x ( x0, y0 ), f y (x0, y0 ) e(θ)=( cosθ, sinθ) との内積 
     
grad f (x0,y0) e(θ)  
  となる。
つまり、
De(θ) f (x0,y0)grad f (x0,y0) e(θ)


[文献−数学]
・小形『多変数の微分積分pp. 53:2変数関数。
・杉浦『
解析入門』U§5定理5.2 (p.121)n変数実数値関数;
・黒田『
微分積分学8.3.38.54(pp.289) n変数実数値関数;

[一般化]
・多変数関数の方向微分
・ベクトル値関数の方向微分

 

[単位ベクトルで方向を指定された方向微分係数の場合]

2変数関数f (x,y )(x0, y0)において全微分可能ならば
2変数関数f (x,y )は、(x0, y0)で、任意e方向に方向微分可能で、
f (x,y )(x0, y0)におけるe方向微分係数」は、
  
grad f (x0,y0)f x ( x0, y0 ), f y (x0, y0 ) e との内積 
     
grad f (x0,y0) e  
  となる。
つまり、
De(θ) f (x0,y0)grad f (x0,y0) e