〜が張るRnの部分ベクトル空間トピック一覧  〜  数学についてのwebノート

 ・定義:〜を含む最小の部分ベクトル空間/〜が張る部分空間/両者の一致

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定義:〜を含む最小の部分ベクトル空間

舞台
設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2, , vll個のn次元数ベクトル
       具体的に書くと、
       
v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n ) n  
       
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n ) n  
          :            :    
       
vl1, vl2, , vlnRとして、vl=( vl1, vl2, , vln ) n 
       したがって、
v1, v2, , vl n 。
       なお、個数
lが有限個であること、
       個数
lが、nnと等しくなくてもよいことに注意。
v1, v2, , vl l個のn次元数ベクトルv1, v2, , vl からなる集合。  
       つまり、
v1, v2, , vl   
 
           = ( v11, v12, , v1n ) , ( v21, v22, , v2n ) , , ( vl1, vl2, , vln )
       これは、
n次元数ベクトル空間Rn部分集合となるが、
          必ずしも、
n部分ベクトル空間とはならない。

[文献]

ホフマン
線形代数学I2.2部分空間:定理2(p.37);

永田
理系のための線形代数の基礎1.5(p.32);

本題

v1, v2, , vl を含む最小の「n部分ベクトル空間とは、
任意の v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」に含まれる v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」のこと。
つまり、
Wが、 v1, v2, , vl を含む最小の『n部分ベクトル空間である」とは、
 
Wが、以下の3条件を満たすこと。
  条件
1: W v1, v2, , vl であること。
  条件
2: Wが『n部分ベクトル空間』であること(その必要十分条件)。  
  条件
3: 任意の『n部分ベクトル空間Wに対して、
        
W v1, v2, , vl   WW  
       が成立すること。 
      すなわち、
      「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」をすべて集めた集合系Цで表すと、
         (
WЦ)(WW)   

噛み砕いた説明

Step1. v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」として、いろいろなものが考えられるが、
   そのすべてを考えるとしよう。
   これら、様々な「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」を、
    
W1,W2,W3,W4,…と名づけることにする。
            つまり、
Wiは『n部分ベクトル空間』であって、 v1, v2, , vl Wi  
Step2. Wが、 v1, v2, , vl を含む最小のn部分ベクトル空間』である」とは、
     ・
Wが「 v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」であって、
            つまり、
Wは『n部分ベクトル空間』であって、
                
v1, v2, , vl W  
     ・
WW1 , WW2 , WW3 , WW4 ,… を満たす
     ことをいう。 

例:〜から生成された部分ベクトル空間

これは〜が張る部分空間と一致する(→理由

※類概念:

〜を含む最小のσ加法族 

※上位概念

体上のベクトル空間における「〜を含む最小の部分ベクトル空間」実ベクトル空間における「〜を含む最小の部分ベクトル空間」  

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総目次

定義:〜が張る部分空間、〜によって張られる部分空間

舞台
設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2, , vll個のn次元数ベクトル
       具体的に書くと、
       
v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n ) n  
       
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n ) n  
          :            :    
       
vl1, vl2, , vlnRとして、vl=( vl1, vl2, , vln ) n 
       したがって、
v1, v2, , vl n 。
       なお、個数
lが有限個であること、
       個数
lが、nnと等しくなくてもよいことに注意。
v1, v2, , vl l個のn次元数ベクトルv1, v2, , vl からなる集合。  
     つまり、
v1, v2, , vl   
          = ( v11, v12, , v1n ) , ( v21, v22, , v2n ) , , ( vl1, vl2, , vln )
        これは、
n次元数ベクトル空間Rn部分集合となるが、
            必ずしも、
n部分ベクトル空間とはならない。 

[文献]

砂田
行列と行列式』§5.2(p.162)

ホフマン
線形代数学I2.2部分空間(p.37);

松坂
集合・位相入門3章§5C(p.133);

本題

n次元数ベクトルの集合 v1, v2, , vl が張る部分空間とは、
あらゆる「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」の共通部分
記号《
v1, v2, , vl》で表す
つまり、「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」をすべて集めた集合系Цとおくと、
 《
v1, v2, , vl》≡Ц  

性質0

n次元数ベクトルの集合 v1, v2, , vl が張る部分空間」は、
n部分ベクトル空間』の定義を満たす。
 ※なぜ?→
証明 

性質1

「〜が張る部分空間」は、〜から生成された部分ベクトル空間に一致する。

性質2

「〜が張る部分空間」は、〜を含む最小のベクトル空間に一致する。(→理由

[トピック一覧:〜が張る部分ベクトル空間]
総目次

定理:「〜を含む最小の部分ベクトル空間」と、「〜が張る部分ベクトル空間」は一致する。

舞台
設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2, , vll個のn次元数ベクトル
       具体的に書くと、
       
v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n ) n  
       
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n ) n  
          :            :    
       
vl1, vl2, , vlnRとして、vl=( vl1, vl2, , vln ) n 
       したがって、
v1, v2, , vl n 。
       なお、個数
lが有限個であること、
       個数
lが、nnと等しくなくてもよいことに注意。
v1, v2, , vl l個のn次元数ベクトルv1, v2, , vl からなる集合。  
        つまり、
v1, v2, , vl   
             = ( v11, v12, , v1n ) , ( v21, v22, , v2n ) , , ( vl1, vl2, , vln )
        これは、
n次元数ベクトル空間Rn部分集合となるが、
            必ずしも、
n部分ベクトル空間とはならない。
Ц:「
v1, v2, , vl を含むRn部分ベクトル空間』」をすべて集めた集合系
W v1, v2, , vl を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』  
v1, v2, , vl》: v1, v2, , vl が張るRnの部分ベクトル空間 

[文献]
砂田
行列と行列式
§
5.2補題5.23の議論の骨格から(p.163)

本題

v1, v2, , vl を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』Wと、
v1, v2, , vl が張るRnの部分ベクトル空間」《v1, v2, , vl》は一致する。

証明

W0v1, v2, , vlかつv1, v2, , vlW0を示せばよい。
Step1: 
・「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」をすべて集めた集合系Цとおく。
・「
v1, v2, , vl を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』Wは、
 「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」である。
         ∵「
Sを含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』」の定義 
 したがって、
WЦ       …(1-1) 
・《
v1, v2, , vl》の定義より、《v1, v2, , vl》=Ц   …(1-2) 
集合系の積集合の性質より、任意WЦにたいして、W(Ц) …(1-3)  
(1-3)(1-2)を代入すると、  
   
任意WЦにたいして、Wv1, v2, , vl》 …(1-4) 
 となる。 
(1-1)(1-4)より、W0v1, v2, , vl》 
以上によって、
W0v1, v2, , vl》は示された。   
Step2: 
・「
v1, v2, , vl を含むn部分ベクトル空間』」をすべて集めた集合系Цとおく。
・「
v1, v2, , vl を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』Wは、
     (
WЦ )( WW )   …(2-1) 
 を満たす。 ∵「
v1, v2, , vl を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』」の定義 
 したがって、
集合系の積集合の性質より、(2-1)のもとで、
     
ЦW   …(2-2) 
 が成立する。
 《
v1, v2, , vl》=Ц (∵《v1, v2, , vl》の定義) を用いて、(2-2)を書きかえると、
 《
v1, v2, , vlW 
以上によって、《
v1, v2, , vlW は示された。    

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総目次

(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト

ホフマン・クンツェ『
線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)
砂田利一『現代数学への入門:
行列と行列式2003年、§5.2(p.162).
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)
佐武一郎『
線形代数学(44)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)
志賀浩二『数学
30講シリーズ:線形代数30』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(pp.85-7);14講ベクトル空間の例と基本概念(pp.88-90)
藤原毅夫『理工系の基礎数学
2線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91)
斎藤正彦『
線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2(p.249)


数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)

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