実ベクトル空間における線形従属・線形独立 ― トピック一覧
[数学についてのwebノート] |
||
---|---|---|
定義:一次独立・線形独立/線形独立系/一次従属・線形従属 定理:一次独立の必要十分条件/一次独立なベクトルは非零ベクトル/一次独立なベクトルの一部/有限集合の線形独立系と線形独立/ 定理:一次従属の必要十分条件 |
||
※一次独立・一次従属関連ページ: ・具体化:実n次元数ベクトル空間Rnにおける一次独立 ・一般化:体上のベクトル空間における一次独立/体上の数ベクトル空間における一次独立 ※実ベクトル空間関連ページ:実ベクトル空間の定義/部分ベクトル空間/一次結合/基底/次元 →線形代数目次・総目次・文献一覧 |
定義:有限個のベクトルの一次独立・線形独立 linearly independent | ||
---|---|---|
定義 |
「実ベクトル空間V上の有限個のベクトルv1, v2, …, vlが一次独立・線形独立である」とは、 「v1, v2, …, vlの一次結合が零ベクトルとなるのは、 これらに掛け合わせたスカラーがすべて0である場合に限られる」 すなわち、a1v1+a2v2+…+alvl=0 ⇒ a1=a2=…=al=0 これの対偶を書けば、「a1=a2=…=al=0でない」⇒a1v1+a2v2+…+alvl≠0 がみたされることをいう。 |
[文献] ・『岩波数学辞典』210線形空間:C線形結合(p.571); ・藤原『線形代数』4.2(p.94); ・斎藤『線形代数入門』4章§3(p.99) ・志賀『線形代数30講』14講(p.90); ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.10);1.3(p.16); ・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.41); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1.3(p.108); ※具体例:実n次元数ベクトル空間Rnにおける一次独立 |
設定 |
この概念は、下記舞台設定上で定義される。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V a1, a2, …, al :スカラー。 a1, a2, …, al ∈R |
|
※ | 線形独立と一次写像、線形独立と単射である一次写像、線形独立と同型写像 |
|
|
||
定理:一次独立の言い換え | ||
---|---|---|
定理 |
次の二つの命題は同値。 命題P:ベクトルv1, v2, …, vl が一次独立。 命題Q:ベクトルv1, v2, …, vl のどの一つも、残りの(l−1)個のベクトルの一次結合では表されない。 |
[文献] ・志賀『線形代数30講』14講(p.90) ※具体例:実n次元数ベクトル空間Rnにおける一次独立の言い換え |
設定 |
この定理は、下記舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V |
|
証明 |
※なぜ?→志賀『線形代数30講』14講(p.90)参照 |
定理:一次独立なベクトルはすべて非零ベクトル | ||
---|---|---|
定理 |
実ベクトル空間V上のベクトルv1, v2, …, vlが一次独立ならば、 v1≠0かつv2≠0かつ…かつvl≠0 |
[文献] ・志賀『線形代数30講』14講(p.90) ※具体例:一次独立な実n次元数ベクトルは非零ベクトル |
設定 |
この定理は、下記舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V a1, a2, …, al :スカラー。 a1, a2, …, al ∈R |
|
証明 |
・対偶「『v1≠0かつv2≠0かつ…かつvl≠0』でないならば、v1, v2, …, vlは一次独立でない」を示す。 ・仮定「『v1≠0かつv2≠0かつ…かつvl≠0』でない」とは、 v1, v2, …, vlのうち、m個(0<m≦l) が零ベクトルだということ。 v1, v2, …, vlに含まれる、このm個の零ベクトルを、vi(1),vi(2),…,vi(m) で表す。 すると、 a1, a2, …, al のai(1)以外をすべて0、ai(1)を1とおいた場合に、a1v1+a2v2+…+alvl=0が成り立つ。 ∵a1v1+a2v2+…+alvlのi(1)項目以外では、ai=0だから、aivi=0。(∵ベクトルのスカラー0倍) a1v1+a2v2+…+alvlのi(1)項目では、ai=1,aivi=0だから、aivi=0。(∵零ベクトルのスカラー倍) つまり、「a1=a2=…=al=0でない」のに、a1v1+a2v2+…+alvl=0となるので、 v1, v2, …, vlは一次独立でない。 以上で、「『v1≠0かつv2≠0かつ…かつvl≠0』でないならば、v1, v2, …, vlは一次独立でない」を示せた。 |
定理:一次独立なベクトルの部分集合 | ||
---|---|---|
定理 |
次の命題とその対偶が成り立つ。 命題:ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立ならば、 ここからm個(ただしm<l )除いた残りの(l−m)個のベクトルも一次独立。 上記命題の対偶:ベクトルv1, v2, …, vl−mが一次従属(一次独立でない)ならば、 これにm個のベクトルを付け加えた v1, v2, …, vl−m, …, vlも一次従属(一次独立でない)。 |
[文献] ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理3.1.3(p.110); ・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.41) ※具体例:一次独立な実n次元数ベクトルの部分集合 |
設定 |
この定理は、下記舞台設定上で成り立つ。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V a1, a2, …, al :スカラー。 a1, a2, …, al ∈R |
|
定義:線形独立系 | ||
---|---|---|
定義 |
「ベクトル空間Vの部分集合S(つまりVに属すベクトルの集合)が一次独立系・線形独立系であ
る」とは、 Sから、どのように、互いに異なるベクトルを有限個選んでも、 それら有限個の互いに異なるベクトルが線形独立となること。 ベクトル空間Vの部分集合Sが一次独立系・線形独立系である ことを、 単に、「Sが一次独立・線形独立である」ともいう。 |
[文献] ・砂田『行列と行列式』§5.3-b-定義5.37(p.173); ・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.41) ・松坂『集合・位相入門』3章§5C(p.134); |
設定 |
この概念は、下記舞台設定上で定義される。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) S:実ベクトル空間Vの部分集合。つまりVに属すベクトルの集合。無限個あってもよい。 |
|
※以上から、無限個のベクトルの一次独立は、決して、無限個のベクトルの一次結合によって定義されるわけではなく、無限個のベクトルから有限個のベクトルをどのように取り出しても一次独立になる、ということで、定義されるということになる。[ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.44);] ※ベクトルの有限列とベクトルの集合の違いと、一次独立・一次従属の定義の違いの関係について→[ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.48);] |
定理:ベクトルの有限集合については、線形独立系と線形独立は同じこと。 | ||
---|---|---|
定理 |
次の二つの命題は同値。 命題P:Vに属すベクトルの有限集合S={ v1, v2, …, vm }が線形独立系である。 命題Q:v1, v2, …, vmが線形独立である。 |
|
設定 |
この定理は、下記舞台設定上で成立する。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) S={ v1, v2, …, vm }:Vに属すベクトルの有限集合。 |
|
証明 |
・命題P⇒Sから全ての元{ v1, v2, …, vm }を取り出しても、{v1, v2, …, vm }は線形独立。つまり、命題Q ・命題Q⇒線形独立なベクトルの性質より、{ v1, v2, …, vm }の任意の部分集合も線形独立。つまり命題P。 |
定義:有限個のベクトルの一次従属・線形従属 linearly dependent | ||
---|---|---|
定義 |
・「実ベクトル空間V上のベクトルv1, v2, …, vlが一次従属・線形従属である」とは、 ベクトルv1, v2, …, vlが一次独立でないことをいう。 つまり、 ・「実ベクトル空間V上のベクトルv1, v2, …, vlが一次従属・線形従属である」とは、 ベクトルv1, v2, …, vlに対して、全部は0ではないスカラー a1, a2, …, al が存在して、 a1v1+a2v2+…+alvl=0 を満たすことをいう。 |
[文献] ・『岩波数学辞典』210線形空間:C線形結合(p.571); ・藤原『線形代数』4.2(p.94); ・斎藤『線形代数入門』4章§3(p.99) ・志賀『線形代数30講』14講(p.90); ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.10);1.3(p.16); ・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.41); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1.3(p.108); ※具体例:実n次元数ベクトル空間Rnにおける一次従属 |
設定 |
この概念は、下記舞台設定上で定義される。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V a1, a2, …, al :スカラー。 a1, a2, …, al ∈R |
|
||
定義:無限個のベクトルの一次従属・線形従属 linearly independent | ||
---|---|---|
定義 |
「ベクトル空間Vの部分集合S(つまりVに属すベクトルの集合)が一次従属・線形従属である」とは、 Sに属す異なるベクトルv1, v2, …, vlと、全部は0ではないスカラーa1, a2, …, al が存在して、 a1v1+a2v2+…+alvl=0 を満たすことをいう。 |
[文献] ・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元(p.41); |
設定 |
この概念は、下記舞台設定上で定義される。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) S:実ベクトル空間Vの部分集合。つまりVに属すベクトルの集合。無限個あってもよい。 |
|
||
定理:一次従属の言い換え | ||
---|---|---|
定理 |
次の二つの命題は同値。 命題P: ベクトルv1, v2, …, vlが一次従属。 命題Q: ベクトルv1, v2, …, vlの一つが、残りの(l−1)個のベクトルの一次結合として表される。 |
[文献] ・志賀『線形代数30講』14講(p.90); ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.2(p.10); ・藤原『線形代数』4.2(p.94); ・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理3.1.2(p.109):証明付; |
設定 |
この概念は、下記舞台設定上で定義される。 R:実数体(実数をすべて集めた集合) V:実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」) v1, v2, …, vl:実ベクトル空間 V上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vl ∈V a1, a2, …, al :スカラー。 a1, a2, …, al ∈R |
|
証明 | 神谷浦井『経済学のための数学入門』定理3.1.2(p.109)参照。 |
(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.3基底と次元(pp.41-9)。
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、14講ベクトル空間の例と基本概念(pp.88-90)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.3-a(p.169).
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91)。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§3基底および次元(p.99)。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。