n次元数ベクトル空間の部分ベクトル空間の定義トピック一覧 〜 数学についてのwebノート

  ・部分ベクトル空間の定義 
  ・
部分ベクトル空間であるための必要十分条件:1/2 

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・実
n次元数ベクトル空間:n次元数ベクトル空間の定義/一次独立・一次従属/線形結合と線形独立・従属の関係/基底/次元
Rnの部分ベクトル空間:具体例/部分空間における線型独立と線型従属/部分空間の集合算/〜に張られた部分ベクトル空間/和・直和分解・補空間/部分空間の基底/部分空間の次元   
・部分ベクトル空間:
体上のベクトル空間の部分空間/実ベクトル空間の部分空間  
線形代数目次総目次 

定義:実n次元数ベクトル空間の部分ベクトル空間・線形部分空間

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間 
+n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:
      
n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法 
u, v, w n次元数ベクトル
       具体的に書くと、
u1, u2, , unRとして、u=( u1, u2, , un )n  
       具体的に書くと、
v1, v2, , vnRとして、v=( v1, v2, , vn )n  
       具体的に書くと、
w1, w2, , wnRとして、w=( w1, w2, , wn )n  
a, b スカラーa, b R    

定義

Wが、n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間である」とは、
  
1. Wn次元数ベクトル空間Rn部分集合であって、
 
なおかつ
  
2.n次元数ベクトル空間Rnに定められた
   
ベクトルの加法"+"スカラー乗法」を以って
   
Wにおけるベクトルの加法スカラー乗法」と定義した場合に、
   
W実ベクトル空間となることをいう。

[文献]
佐武
線形代数学』V§2(pp.93-99)§6(p.114);
柳井竹内
射影行列・一般逆行列・特異値分解』定義1.2(p.6);
佐和『回帰分析2.1.1(p.16);
ホフマン
線形代数学I2.26b(p.35);練習問題1;6(p.40);
布川
線形代数と凸解析』例2.1(p.34);2.2(p.35);
グリーン
計量経済分析2.4.4(p.26);
草場『線形代数2.7(pp.47);
木村『線形代数3.1一次独立(p.51);
志賀
線形代数3012(p.78); 
斎藤
線形代数入門』4章§41(pp.107-8);
高橋
経済学とファイナンスのための数学』附録A.1(p.176).] ;
戸田山田『計量経済学の基礎統計的手法の理論とプログラミング2.4.3(p.78)

このように、Rnの部分ベクトル空間は、定義上、実ベクトル空間であるから、
Rnの部分ベクトル空間にたいして、実ベクトル空間の性質をすべて適用してよい。

定義の展開―実ベクトル空間の定義に遡って 
 ※以下の定義には、条件の重複が多い。重複を省いた表現については、
      
部分ベクトル空間の必要十分条件1/部分ベクトル空間の必要十分条件2を参照。
n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間Wとは、
次の
4条件を満たすRn部分集合(つまりn次元数ベクトルをあつめた集合)のこと。

条件T-1

Rnにおけるベクトルの加法"+"」が「Wにおける二項演算」の定義を満たし、
したがって、
これを
Wにおけるベクトルの加法"+"と定義した場合に、
Wは、この+について代数系となること。
つまり、「
Rnにおけるベクトルの加法"+"」によって、
任意u,vWに対して、それに対応するu+vWが一つずつ定まること。
もっと具体的にいえば、
Wから、どんなn次元数ベクトル( u1, u2, , un ),( v1, v2, , vn )をとろうが、
それに対して、
  
( u1, u2, , un )+( v1, v2, , vn )( u1+v1 , u2+v2 , , un+vn ) 
              (右辺の
+実数体に定められている加法)
が一つずつ定まって、
  
( u1+v1 , u2+v2 , , un+vn )は、「Wに属すn次元数ベクトル」になること。
  
u,vWならば、u+vW属しu+vWの外に飛び出すことはない、
   という点がポイント 

条件T-2

Wは、「Rnにおけるベクトルの加法"+"」に関して加法群(加法に関する可換群)をなすこと。
  つまり、
  
-1. Rnにおけるベクトルの加法"+"が、
   
Wにおいて、「結合則:( u,v,wW ) ( ( u+v )+w = u+( v+w ) )」を満たすこと。
  
-2. Rnにおけるベクトルの加法"+"に関して、Wにおいて、
   
零ベクトル( vW ) ( +v = v かつ +v = v )を満たすW」が存在すること。
       
Rnにおけるベクトルの加法"+"の零ベクトルは( ,,, )だから、
        
零ベクトル=( ,,, )W属すように、Rn部分集合Wを決めなければ、
         
Wは「Rnの部分ベクトル空間」の定義を満たさない。 
  
-3. Wのすべてのvに対して、
    
Rnにおけるベクトルの加法"+"に関するvの逆ベクトルvWが存在すること。
       
Rnベクトルの加法"+"において、
        
n次元数ベクトル( v1, v2, , vn )の逆ベクトルは、( v1, v2, , vn )であるから、
        
n次元数ベクトル( v1, v2, , vn )Wとするなら、
        その
逆ベクトル( v1, v2, , vn )Wとなるように、
        
Rn部分集合Wを決めてやらなければ、
        
Wは「Rnの部分ベクトル空間」の定義を満たさない。 
  
-4. Rnにおけるベクトルの加法"+"が、Wにおいて、「可換則:( u,v ) (u+v =v+u )」を満たすこと。 

条件U-1

Rnにおけるスカラー乗法」が、「Wにおけるスカラー乗法」の定義を満たすこと。
     つまり、「
Rnにおけるスカラー乗法」が、
         「
任意実数(実数体R)a」と「W任意v」の組に対して、
         
Wを一意的に定める演算にもなっていること。 
     もっと具体的にいえば、
      
Wから、どんなn次元数ベクトル( v1, v2, , vn )をとろうが、
      
任意スカラーaR とのあいだの「Rnに定められたスカラー倍
            
( av1 , av2 , , avn ) 
      は一意的に定まり、
      
( av1 , av2 , , avn )は「Wに属すn次元数ベクトル」となること。
     
aRn, vWならば、avW属しavWの外に飛び出すことはない、という点が重要 

条件U-2

 「Rnにおけるスカラー乗法」が次の4条件を満たすこと。 
     
-1. 任意vWに対して、1v=v  
                 ※左辺の
"1"実数体R上で定義された乗法の単位元を指す。 
     
-2. 結合則:
       
任意実数a,bR と、任意vWに対して、(ab)v=a(bv)     
     
-3. ベクトルに関する分配則:
       
任意実数aR と、任意u,vWに対して、a(u+v)=au+av  
                 ※両辺の
"+"Rn上の加法(→条件I-1)を指す。 
     
-4. スカラーに関する分配則: 
       
任意実数a,bR と、任意vWに対して、(a+b)v=av+bv  
       ※左辺の
"+"実数体R上で定義された加法、右辺の"+"Rn上の加法(→条件I-1)を指す。 

Rnの部分ベクトル空間の例:Rn零部分空間斉次型連立方程式の解空間生成された部分ベクトル空間
              
有限個のベクトルと直交するベクトルの全体 
R1の部分ベクトル空間R2の部分ベクトル空間R3の部分ベクトル空間

上位概念:体上のベクトル空間の部分空間実ベクトル空間の部分空間

Rnの部分ベクトル空間であるための必要十分条件:1/2 
→これらの必要十分条件を、
Rnの部分ベクトル空間の定義とするテキストが多い。 

[トピック一覧:部分ベクトル空間]
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定理:部分ベクトル空間であることの必要十分条件1

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間 
+n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法 
u, v n次元数ベクトル
       具体的に書くと、
u1, u2, , unRとして、u=( u1, u2, , un )n  
       具体的に書くと、
v1, v2, , vnRとして、v=( v1, v2, , vn )n  
a スカラーa R    

本題

Wが「n部分ベクトル空間」の定義を満たすことは、
Wが次の命題Q1・命題Q2を満たすことと、
同値
命題
Q1WRnでない部分集合
    つまり、
Wn次元数ベクトルv=( v1, v2, , vn )nを集めた集合であって、
        
Wは、n次元数ベクトルを最低でも一個含んでいなければならない、
        ということ。
命題
Q2W属す限りで任意n次元数ベクトルu
        
任意スカラーaR との「Rnで定められたスカラー積auをとって、
     これと
任意vWとの「Rnで定められたベクトル和au+v をとると、
      
au+v W属しau+vWの外に飛び出さない。 

[文献]
佐和『
回帰分析2.1.1(p.16);
ホフマン『線形代数学I2.26b(p.35);練習問題1;6(p.40);
草場『線形代数2.7(pp.47);
木村『線形代数3.1一次独立(p.51);

命題Q2を具体的に書くと、
  |
Wから、どんなn次元数ベクトル( u1, u2, , un ), ( v1, v2, , vn )をとろうが、
  |  
任意スカラーaR とのあいだで計算した、
  |  
a( u1, u2, , un )+( v1, v2, , vn )( au1+v1 , au2+v2 , , aun+vn )  
  |              (右辺の
+実数体に定められている加法)
  |もまた
Wのなかに属しWの外に飛び出さない
となる。

「命題Q1かつ命題Q2」を論理記号等で表すと、    
    
WRn かつ Wφ  かつ ( u,v W aR )( au+v W) 

「命題Q1かつ命題Q2」を、「部分ベクトル空間の定義」とするテキストもある。

[トピック一覧:部分ベクトル空間]
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定理:部分ベクトル空間であることの必要十分条件2

設定

R実数体(実数をすべて集めた集合) 
Rnn次元数ベクトル空間 
+n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法 
u, v n次元数ベクトル
       具体的に書くと、
u1, u2, , unRとして、u=( u1, u2, , un )n  
       具体的に書くと、
v1, v2, , vnRとして、v=( v1, v2, , vn )n  
a スカラーaR    

本題

Wが「n部分ベクトル空間」の定義を満たすことは、
Wが、次の命題Q1・命題Q2・命題Q3をすべて満たすことと、
同値
命題Q1Wは、nでない部分集合
            
論理記号で表すと、WRn かつ Wφ
    つまり、
Wn次元数ベクトルv=( v1, v2, , vn )nを集めた集合であって、
        
Wは、n次元数ベクトルを最低でも一個含んでいなければならない、
        ということ。
命題Q2Wは「nに定められているベクトルの加法」について閉じている。
    つまり、
W属す限りで任意n次元数ベクトルu,v に対して、u+v W 
          
論理記号で表すと、( u,v W )( u+v W)。
 具体的に書くと、
  |
Wから、どんなn次元数ベクトルu=( u1, u2, , un ), v=( v1, v2, , vn )をとろうが、
  |  
u+v ( u1+v1 , u2+v2 , , un+vn )  (右辺の+実数体に定められている加法)
  |もまた
Wのなかに属しWの外に飛び出さない
 となる。
命題Q3Wは「nに定められているスカラー乗法」について閉じている。
    つまり、
    
W属す限りで任意n次元数ベクトルvと、任意スカラーaRに対して、
       
avW   
    
論理記号で表すと、( vW )(aR )( avW )。
 具体的に書くと、
  |
Wから、どんなn次元数ベクトルv=( v1, v2, , vn )をとろうが、
  |  
任意スカラーaR とのあいだで計算した、
  |  
av ( av1 , av2 , , avn )  
  |もまた
Wのなかに属しWの外に飛び出さない
 となる。 

[文献]
柳井竹内
射影行列・一般逆行列・特異値分解』定義1.2(p.6);
佐武
線形代数学』V§2(pp.93-99);§6(p.114);
布川
線形代数と凸解析』例2.1(p.34);2.2(p.35);
グリーン
計量経済分析2.4.4(p.26);
志賀
線形代数3012(p.78);
草場
線形代数2.7(pp.47);
斎藤
線形代数入門』4章§41(pp.107-8);

この定理が言わんとしていることは、
  「
部分ベクトル空間の定義」の条件I-1,条件II-1が成立してしまえば、 
  「
部分ベクトル空間の定義」の条件I-2,条件II-2も成立するので、 
  「
部分ベクトル空間の定義」の定義を満たすかどうかは、
   条件
I-1,条件II-1の成立の可否のみを見ればよい、
 ということ。

「命題Q1かつ命題Q2かつ命題Q3」を、「部分ベクトル空間の定義」とするテキストも多い。

[トピック一覧:部分ベクトル空間]
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[yahooo:yoko]

(reference)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『
線形代数学I』培風館、1976年、2.26b(p.35);練習問題1;6(p.40);具体例が豊富。
佐武一郎『
線形代数学(44)』裳華房、1987年、V§2(pp.93-99)§6(p.114);
志賀浩二『数学
30講シリーズ:線形代数30』朝倉書店、1988年、12R2からR3への線形写像(p.79)線形写像のKerは部分空間;21講線形写像の核と行列の階数(p.132):
斎藤正彦『
線形代数入門』東京大学出版会、1966年、4章§41(pp.107-8).
草場公邦『線形代数(増補版)』(森毅、斉藤正彦責任編集『すうがくぶっくす』2巻)朝倉書店、1999年、2.7(pp.47)
柳井晴夫・竹内啓『
UP応用数学選書10:射影行列・一般逆行列・特異値分解 東京大学出版会、1983年、§1.2定義1.2(p.6)
木村英紀『
線形代数:数理科学の基礎』東京大学出版会、2003年、3.1一次独立(p.51)
数理経済学のテキスト
布川昊
,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、例2.1(p.34);2.2(p.35);
高橋一『
経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、附録A.1(p.176)。ユークリッド空間の例。
数理統計学のテキスト
William H. Greene(斯波・中妻・浅井訳) 『経済学体系シリーズ:グリーン計量経済分析I:改訂4版』エコノミスト社、2000年、第2章行列代数2.4.4(p.27)
佐和隆光『
回帰分析 朝倉書店、1979年、2.1.1(p.16)

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