Rnの部分ベクトル空間の和・直和分解・補空間トピック一覧  〜  数学についてのwebノート

 ・定義:和空間・和2つの部分ベクトル空間の直和/補部分空間・補空間/直和分解
      多数の部分ベクトル空間の
直和/直和分解  
 ・定理:
2つの部分ベクトル空間への直和分解の必要十分条件/多数の部分ベクトル空間への直和分解の必要十分条件 

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 実
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                基底/次元
線形代数目次総目次文献一覧

定義:部分ベクトル空間の和空間・和sum 

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間   
W1n部分ベクトル空間 
W2n部分ベクトル空間 

[文献]
永田
理系のための線形代数の基礎1.5(p.33);
砂田
行列と行列式』§5.2-a(p.160)
佐武『線形代数学』V§2(p.96);
久米『数理統計学1.5(p.5)

定義

n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間W1,W2和空間・和とは、
  「
W1に属すn次元数ベクトル」と「W2に属すn次元数ベクトル」との
   
ベクトル和をすべて集めた集合
     
{ v1 + v2 | v1 W1 かつ v2 W2 }  
のこと。

記号

n部分ベクトル空間W1,W2の和空間・和を、W1W2で表す。

以上の定義により、
n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間W1,W2の和空間W1W2属す任意のn次元数ベクトルは、
Rn部分ベクトル空間W1,W2に属すn次元数ベクトルベクトル和として表せることになる。
つまり、
(xRn) (x'W1) (x''W2)xx'x'')  

定理:部分ベクトル空間の和空間の性質

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間   
W1n部分ベクトル空間 
W2n部分ベクトル空間 

[文献]
永田『
理系のための線形代数の基礎1.5(p.33);砂田『行列と行列式』§5.2-a(p.162)

本題

1. n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間W1,W2和空間W1W2)もまた、
   
Rn部分ベクトル空間。 
2. n次元数ベクトル空間Rn部分ベクトル空間W1,W2和空間W1W2)は、
   
W1W2を含む最小の『Rnの部分ベクトル空間』。  

[トピック一覧:部分ベクトル空間の和・直和]
線形代数目次総目次

 

定義:2つの部分空間の直和、補部分空間・補空間、直和分解
                    
direct sum, complementary subspace, direct sum decomposition

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間   
W1n部分ベクトル空間 
W2n部分ベクトル空間 

[文献]
砂田
行列と行列式』§5.2-b(p.165);
神谷浦井
経済学のための数学入門』§3.1.2(p.106);
永田
理系のための線形代数の基礎1.5(p.34);
柳井竹内
射影行列・一般逆行列・特異値分解 §1.2(pp.8-9):n次元数ベクトル空間のみ;
佐武『線形代数学』V§2(p.98)
久米『数理統計学1.5部分空間の和(p.5)

和空間の概念を前提した定義

n次元数ベクトル空間Rnが、
   その
部分ベクトル空間W1,W2直和direct sumに分解される」
n部分ベクトル空間W2は、
   
n部分ベクトル空間W1補部分空間・補空間complementary subspace
n部分ベクトル空間W1は、
   
n部分ベクトル空間W2補部分空間・補空間complementary subspace
とは、
  
n=W1W2  かつ W1W2={}  
が満たされることをいい、
記号
   
で表す。
また、
このかたちで
n次元数ベクトル空間Rnを表すことを、
n直和分解direct sum decompositionという。

和空間の意味に遡る定義

n次元数ベクトル空間Rnが、
   その
部分ベクトル空間W1,W2直和direct sumに分解される」
n部分ベクトル空間W2は、
   
n部分ベクトル空間W1補部分空間・補空間complementary subspace
n部分ベクトル空間W1は、
   
n部分ベクトル空間W2補部分空間・補空間complementary subspace
とは、
 ・「
W1に属すn次元数ベクトル」と「W2に属すn次元数ベクトル」との
   
ベクトル和をすべて集めた集合として
   
nを表せ、 
 
かつ 
 ・
n部分ベクトル空間W1,W2共通部分n次元零ベクトルに限られている
ということ、
すなわち、  
  
n={ v1 +v2 | v1W1 かつ v2 W2 } かつ W1W2={}  
が満たされること、
ないしは、
 ・
n次元数ベクトル空間n属す任意n次元数ベクトルが、
  
n部分ベクトル空間W1,W2ベクトル和として一意的に表せ、
 
かつ 
 ・
n部分ベクトル空間W1,W2共通部分に限られている
ということ
といってもよい。
[→佐武『線形代数学』V§2(p.98)]  

n次元数ベクトル空間nと、n部分ベクトル空間W1にたいして、W1の補空間は一意的に定まるわけではない。 
  
W1の補空間は、複数とりうる。[例:砂田『行列と行列式』§5.2-b(p.165);] 

活用例:直和が定める射影Rnの部分空間と直交補空間への直和分解

[トピック一覧:部分ベクトル空間の和・直和]
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定理:直和分解の必要十分条件

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間   
W1n部分ベクトル空間 
W2n部分ベクトル空間 

[文献]
砂田
行列と行列式』補題5.27(p.165):証明付;
永田
理系のための線形代数の基礎』定理1.5.5(p.34):証明付;
神谷浦井
経済学のための数学入門』§3.1.2定理3.1.1(p.107)
久米『数理統計学1.5(p.5)

定理

次の2つの命題は、同値
命題
P
  
n次元数ベクトル空間Rnが、n部分ベクトル空間W1W2直和分解される。
  つまり、 
 
命題
Q
  「
n部分ベクトル空間W1に属すn次元数ベクトル」と
  「
n部分ベクトル空間W2に属すn次元数ベクトル」とのベクトル和として、
   
n次元数ベクトル空間Rn属す任意のn次元数ベクトルを、
  一意的に表せること。
  つまり、
  
n次元数ベクトル空間Rnと、
  
n部分ベクトル空間W1W2が与えられているとして、
  
任意のn次元数ベクトルvnにたいして、
  ある
n次元数ベクトルv1W1, v2W2が一意的に存在して、
    
vv1 +v2   
  と表せること。

[トピック一覧:部分ベクトル空間の和・直和]
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定義:多数の部分空間の直和、補部分空間・補空間、直和分解
            
  direct sum, complementary subspace, direct sum decomposition 

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間   
W1 ,W2, , Wmn部分ベクトル空間 

[文献]
砂田
行列と行列式』§5.2-b(p.165);
永田
理系のための線形代数の基礎1.5(p.34);
神谷浦井
経済学のための数学入門』§3.1.2(p.107);
佐武
線形代数学』V§2(p.98)

 

定義

n次元数ベクトル空間Rnが、
  その
部分ベクトル空間W1 ,W2 ,,Wm直和direct sumに分解される」
とは、
    
V=W1W2Wm 
 
かつ W1(W2Wm)={}  
 
かつ W2(W1W3Wm)={}  
 
かつ W3(W1W2W4Wm)={}  
 
かつ W4(W1W2W3W5Wm)={}  
     :   
 
かつ Wk(W1Wk1Wk1Wm)={}  
     :   
 かつ 
Wm(W1Wm1)={}  
が満たされることをいい、
記号
  
で表す。
また、
このかたちで
n次元数ベクトル空間Rnを表すことを、
n直和分解direct sum decompositionという。 

[トピック一覧:部分ベクトル空間の和・直和]
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定理:直和分解の必要十分条件

舞台設定

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
Rnn次元数ベクトル空間  
W1 ,W2, , Wmn部分ベクトル空間  

[文献]
砂田『
行列と行列式』補題5.30(p.166):証明付;
永田『理系のための線形代数の基礎1.5(e)(p.35);

定理

次の2つの命題は、同値
命題
P
  
n次元数ベクトル空間Rnが、
  
n部分ベクトル空間W1,W2,,Wm直和分解される。
  つまり、 
 
命題
Q
  「
n部分ベクトル空間W1に属すn次元数ベクトル」と
  「
n部分ベクトル空間W2に属すn次元数ベクトル」と
              : 
  「
n部分ベクトル空間Wmに属すn次元数ベクトル」と
  の
ベクトル和として、
  
n次元数ベクトル空間Rn属す任意のn次元数ベクトルを、
  一意的に表せること。
  つまり、
  
n次元数ベクトル空間Rnと、
  
n部分ベクトル空間W1,W2,,Wmが与えられているとして、
  
任意のn次元数ベクトルvnにたいして、
  ある
n次元数ベクトルv1W1 , v2W2 ,, vmWm が一意的に存在して、
    
vv1 +v2++vm  
  と表せること。

[トピック一覧:部分ベクトル空間の和・直和]
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[yahoo:yoko]

(reference)
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト

ホフマン・クンツェ『
線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)
砂田利一『現代数学への入門:
行列と行列式2003年、§5.2(p.162).§5.3(p.162).
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)
佐武一郎『
線形代数学(44)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)
志賀浩二『数学
30講シリーズ:線形代数30』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(pp.85-7);14講ベクトル空間の例と基本概念(pp.88-90)
藤原毅夫『理工系の基礎数学
2線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91)
斎藤正彦『
線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2(p.249)
柳井晴夫・竹内啓『
UP応用数学選書10:射影行列・一般逆行列・特異値分解 東京大学出版会、1983年、§1.2ベクトル空間と部分空間(pp.8-9):n次元数ベクトル空間のみ。

数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1.2部分空間ならびに直和(p.107)
数理統計学のテキスト
佐和隆光『
回帰分析 朝倉書店、1979年、2.1ベクトルとベクトル空間。
久米均『
数理統計学』コロナ社、1984年、1.線形代数1.5部分空間の和(p.5)


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