定義:1変数関数が点x0で連続

 





ビギナーのための連続定義
極限値を用いた表現 
ε-δ法による厳密な表現(考え方 / 論理にこだわって / 論理記号読下しサンプル) 
近傍概念を用いた表現

【関連】
・1変数関数についての連続性の諸概念:右連続/左連続/区分的に連続/区間での連続性/一様連続性
・《点における連続性》概念の関数一般への拡張:
 →2変数関数の点連続/n変数関数の点連続/距 離空間上の実数値関数の点連続/位 相空間上の実数値関数の点連続 
 →ベクトル値関数の点連続/距 離空間のあいだの写像の点での連続/位 相空間のあいだの写像の点での連続  
【活用例】  不定積分(積分関数)の微分   








ビギナー向け定義 ステップ1 ― ビジュアル系

・「関数fx0において連続continuous at x0」 とは、

  関数fグラフx0で切れずに繋がっているということ。[黒田p.100]

・「関数fx0で不連続discontinuous at x0」 とは、

  関数fx0で定義されていて、唯一のf (x0)が存在するのに、
  関数fグラフx0で切れていて、繋がっていないということ。

 *関数x0で連続/不連続」という二分法は、x0定義されていている関数に対してのみ適用される。
  だから、関数fx0定義されていない場合、関数fは、x0において連続とも不連続とも言えない。単なる「x0では定義されていない関数

 * したがって、「グラフx0で切れていて、繋がっていない」関数のすべてが、x0で不連続というわけではない。
  「グラフx0で切れていて繋がっていない」関数のなかには、x0定義されていない関数(これは連続とも不連続ともいえない)も混じっている。   




[文献]
  ・齋藤『日本語から記号論理へ』3章§5 (pp.141-2)
 ・黒田『微分積分』3.3.1節(p.100.)
 ・小林『微分積分読本:1変数』2章1連続関数(p.36)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分積分学の基礎理論案内』4.1.1(pp.90-91)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』5.2(p.50)


 ・本橋『新しい論理序説』5.3例5(pp.93-97)


 






【ビジュアル系定義の限界】 
 グラフの形状で「関数の連続性」を定義するのは、非常にわかりやすい。
 しかし、このように定義してしまうと、
     グラフ形状を把握できない関数へ
      「連続性」概念を適用できなくなってしまう…。[齋藤pp.142-4:具体例]
 これは、致命的。
 そういう訳で、
 グラフ形状による「関数の連続性」定義で、だいたいのイメージがつかめたら、
 下記定義へ即バージョンアップ推奨。
     






ビギナー向け定義 ステップ2 ― 日常言語の範囲内で操作的に


・「関数fx0において連続continuous at x0」 とは、
    
  関数fx0で定義されていて、f (x0) が存在し、

  xx0 に近づくと、その接近方向によらず、

  f (x)f (x0) に近づくということ。




[類概念] 右連続/左連続/区間での連続性/一様連続性
[文献]
  ・齋藤『日本語から記号論理へ』3章§5 (pp.141-2)
 ・黒田『微分積分』3.3.1節(p.100.)
 ・小林『微分積分読本:1変数』2章1連続関数(p.36)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分積分学の基礎理論案内』4.1.1(pp.90-91)


 ・本橋『新しい論理序説』5.3例5(pp.93-97)



 






【日常言語による定義の限界】 

 この「関数の連続性」定義は、普段の言葉のみで理解できるので、一見わかりやすく感じられるけれども、
 本当は、実用に耐えられない代物。
  1. 「xx0 に近づく」ことと「f (x)f (x0) に近づく」こととが、いかなる関係にあるのか、
  2. そもそも「近づく」とはいかなる事態を指すのか、
 という点が何ら明確化されていないために、
 この「連続」定義は、事態の的確な把握・伝達が求められる場面(性質の証明など)での使用に耐えられないのだ。

 そこで、
 事態の的確な把握が求められる場合、 
 上記二点を操作化した下記表現が用いられる。

 →極限値を用いた表現
   上記二点を操作的に定義してある「関数の収束」「関数の極限値」という概念を活用して「連続」を定義

 →ε-δ論法で記述した表現
   「関数の収束」「関数の極限値」の原意に遡って、ε-δ論法で上記二点を直接操作的に記述した表現
        → 考え方 / ε-δ法による厳密な表現 / 論理記号読み下しサンプル / 論理にこだわって      









1変数関数 の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関数


「連続」定義:極限値を用いた表現

・「
区間Iで 定義されている関数f
  《区間I上 の点》x0で連続continuous at x0」とは、

 【条件1】 f(x)x→x0の とき収束する

     すなわち、





    
lim
f(x)  が存在する 
xx0

 が満たされたうえで、
  
 【条件2】 その収束先が、f (x0) となる  

     すなわち、
      f(x)  f (x0) (xx0)
     ないし




   
lim
f(x)  = f (x0)  
xx0

 も満たされる

 ということ。


・「区間Iで 定義されている関数f が 《区間I上の点》x0で不連続discontinuous at x0」 とは、

 f(x)x→x0の とき収束ない 
 または




[類概念]  右連続/左連続/区間での連続性/一様連続性

[文献1] 定義域を明示。
 ・小林『微分積分読本:1変数』2章1連続関数(pp.36-7)
 ・小平『解析入門I』(p.80)
 ・笠原『微分積分学』1.5連続関数(p.29)
 ・赤『実数論講義』定義6.3.1(p.175)
 ・松坂『解析入門1』3.2-A(p.107)
 ・杉浦『解析入門I』定義5,命題6.5(pp.55-56):ベクトル値関数一般。
           極限の定義が他のテキストと異なる→注意 1(p.54)
 ・黒田『微分積分』3.3.1節(p.100.)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterY.1.Def 1.1''(p.241)
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§4(p.56)
  ・青本『微分と積分1』§1.4(c)(pp.35-6):右連続かつ左連続

[文献2] 定義域があいまい。「近くで定義されているとする」
 ・和達『微分積分』2-5連続と不連続(p.34)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』23.
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』11章(pp.108-109)




 f(x)x→x0の とき収束するけれども、その収束先はf (x0)ではない        




   
lim
f(x)  ≠ f (x0)  
xx0
 
 ということ。

1変数関数の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関数 



ε-δ法による厳密な「連続」定義 − 考え方

・「関数fx0において連続」の厳密な定義は、

 近傍概念を用いない表現であれ、近傍概念を用いた表現であれ、

 「f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》を、どのような距離εで設定しても、
     それに応じて都合のよい《x0から距離δ以内のゾーン》が実在しているので、 

   f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》を、どのような距離εで設定しても、
     それに応じて都合のよい《x0から距離δ以内のゾーン》へ実際にxを突入させることによって


          f (x)を《f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》に100%突入させることができる

  という事態を表現したもの。 

 
  →近傍概念を用いない厳密な「連続定義」
  →近傍概念を用いた厳密な「連続定義」




[文献−解析]
 ・齋藤『日本語から記号論理へ』 3章§5 (pp.144-5)
 ・小林『微分積分読本:1変数』 2章1連続関数(pp.44-45)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分 積分学の基礎理論案内』4.1.1 (pp.90-92)
[文献−論理]
 ●本橋『新しい論理序説』 5.3例5(pp.93-97)






 






・このような「関数fx0において連続」の厳密な定義のアイディアは、
 ビギナー向け連続定義を明確化したもの。


・「関数fx0において連続」のビギナー向け定義は、

  「xx0 に近づくと、f (x)f (x0) に近づく」

 だった。

 この「連続」定義は一見わかりやすいのだけれども、

 「近づく」とはいかなる事態を指すのか、という点が不明確なので、
 性質の証明等、的確な事態把握が求められる場面では、使用に耐えられないのだった。

・この弱点克服のため、「近づく」を明確化しなければならない。

 【明確化の方針】
  「近さ」を「距離」に数量化、
  「〜に近づく/近づける」を「《〜から一定距離以内のゾーン》に突入する/突入させる」というかたちに操作化せよ。

 この方針に従って、ビギナー向け「関数fx0において連続」定義を明確化してみよう。

 「xx0 に近づく」は、「xが《x0から距離δ以内のゾーン》に突入する」というかたちに、
 「f (x)f (x0) に近づく」は、「f (x)が《f (x0)から距離ε以内のゾーン》に突入する」というかたちに、
 操作化される。

 すると、
  
  ビギナー向け連続定義「xx0 に近づくと、f (x)f (x0) に近づく」

 は、

 「xが《x0から距離δ以内のゾーン》に突入すると、f (x)が《f (x0)から距離ε以内のゾーン》に突入する」
 
  というかたちに操作化される。

・これで明確になっただろうか。mmm...。なにかが足りない。

 ビギナー向け連続定義「xx0 に近づくと、f (x)f (x0) に近づく」では、
 「xx0 に近づく」と「f (x)f (x0) に近づく」との関連性が表現されている。

 この関連性が、 
 「xが《x0から距離δ以内のゾーン》に突入すると、f (x)が《f (x0)から距離ε以内のゾーン》に突入する」
 では、抜け落ちているのだ。

・ビギナー向け定義に込められた「xx0 に近づく」と「f (x)f (x0) に近づく」との関連性とは、
 いかなるものなのか?

 この関連性は、
   「近さ」を「距離」に数量化、
   「〜に近づく/づける」を「《〜から一定距離以内のゾーン》に突入する/させる」というかたちに操作化
 という方針のもとで、
 どのように明確化できるのだろうか?

・数学者たちは、「xx0 に近づくと、f (x)f (x0) に近づく」に込められた二つの接近の関連性を、

   f (x)f (x0) にどこまで近づけようとしても、その達成に好都合な《xx0への近づけ方》が実在しているので、
   f (x)f (x0) にどこまで近づけようとしても、
    その達成に好都合な《xx0への近づけ方》で実際に、xx0 に近づけることによって、
      f (x)f (x0) に100%思惑通り近づけることができる、

 という事態に精緻化した。

 そして、
  「近さ」を「距離」に数量化、
  「〜に近づく/づける」を「《〜から一定距離以内のゾーン》に突入する/させる」というかたちに操作化
 という方針のもと、

 この事態を、

 「f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》を、どのような距離εで設定しても、
       それに応じて都合のよい《x0から距離δ以内のゾーン》が実在しているので、 
   《f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》を、どのような距離εで設定しても、
     それに応じて都合のよい《x0から距離δ以内のゾーン》へ実際にxを突入させることによって、
            f (x)を《f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》に100%突入させることができる

  というかたちに操作化した。

 
  結局、「xx0 に近づくと、f (x)f (x0) に近づく」に込められた二つの接近の関連は、
  《f (x0)からの距離ε》と《x0からの距離δ》との間の、
    「どのような距離εにたいしても、それに応じて都合のよい距離δが存在して、〜を満たす」
           ε>0  δ>0 
  という関連性に明確化されたことになる。

※《f (x0)から距離ε以内の目標接近ゾーン》は、「f (x0)ε近傍」  
 《x0から距離δ以内のゾーン》は、「x0のδ近傍」と呼ばれる。    

   →ε-δ論法による連続定義:近傍概念を用いない表現
   →ε-δ論法による連続定義:近傍概念を用いた表現 










1変数関数の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関数 


ε−δ論法による厳密な「連続」定義

区間Iで 定義されている関数f
   《区間I上 の点》x0で連続であるcontinuous at x0」  とは、

どんな《正の実数》 を選んで、εに代入しても、 




[類概念] 右連続/左連続/区間での連続性/一様連続性

[文献−解析]
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§4(p.56)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterY.1.Def 1.1'(p.241)
 ・小林『微分積分読本:1変数』2章1連続関数(pp.44-45)
 ・赤『実数論講義』定義6.3.1(p.175)
 ・松坂『解析入門1』3.2-A(p.107)
 ・杉浦『解析入門I』定義5,命題6.5(p.55):ベクトル値関数一般
 ・黒田『微分積分』3.4.1節一様連続性 (p.108):極限を使った表現から導出
 ・青本『微分と積分1』§1.4(c)注意1.5.2(p.37)
 ・小平『解析入門I』§2.2a 定義2.2(p.80)
 ・和達『微分積分』2-5連続と不連続(2.28) (p.35)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』§4(T) (p.23)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』11章(p.109);13章例13.4(pp.134-5)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分 積分学の基礎理論案内』定義4.1.3 (pp.91-92)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』5.1.1(p.170)

[文献−論理]
 ●本橋『新 しい論理序説』5.3例5(pp.93-97);問題6イ:連続でない(p.96;106);問題6ロ〜:(p.96;106-7);
 ・齋藤『日本語から記号論理へ』3章§5 (pp.144-5)
 ・新井『数学は言葉』例題4.3.2.4(p.138;140)
 ・高崎金久『数理論理学入門V. 述語論理の意味論-1.4 量化子の使い方-最後の【例】





 εに代入した《正の実数に好都合な《正の実数》が少なくとも一個は存在するので、
 そのεに代入した《正の実数に好都合な《正の実数》を探し出してδに代入することによって、

   「どの《区間Iに属す実数》をxに 代入しても、fx0 は、
           『 | xx0|δならば| f(x)f (x0) |ε  』
       すなわち『 x0δxx0δならば、 f (x0)εf (x)f (x0)ε 』
       すなわち『 x ( x0δ, x0+δ)ならば、 f(x) ( f (x0)ε, f (x0)ε)   』
    を満たす」

 を成り立たせることができる

ということ。

 どういうこと?→考え方

以上を論理記号で表すと、
 
   ε>0  δ>0  xI  ( | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε)  
   ε>0  δ>0  xI  ( x0−δ<xx0+δf (x0)−ε< f (x)f (x0)+ε)  
   ε>0  δ>0  xI  ( x ( x0−δ, x0)f (x) ( f (x0)ε, f (x0)ε))   

 どう読むの?→ 読み下しサンプル 
 どういうこと?→ 考え方 / 論理にこだわって    
 別の表現は?→ 近傍概念を用いた簡潔な表現  
  →極限概念を用いた表現と同値であることの証明:杉浦『解析入門I』定義5,命題6.5(p.55):ベクトル値関数一般  

 
xx0の ときf(x)が収束する」の定義では、(0< |xx0| < δ )。
     つまり、関数の極限では、xx0を除外して考えた。[小平『解析入門I』80]


1変数関数の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関数


ε−δ論法による厳密な「連続」定義 − 論理にこだわって

変項 f , x0 を組み込んだ2項述語・2変項命題関数 

 「 fx0で連続

    * 変項 f議論領域 : あらゆる1変数実数値関数をあつめた集合
    * 変項x0議論領域 : fの定義域D

 とは、

 変項 f , x0 ,ε, δ, x  を組み込んだ5項述語・5変項命題関数
  「 | xx0| <δならば| f (x)f (x0) |<ε  」
  すなわち
  「 x ( x0−δ, x0)ならば、 f (x) ( f (x0)−ε, f (x0)+ε)   」

    * 変項 f議論領域 : あらゆる1 変数実数値関数をあつめた集合
    * 変項 x0議論領域 : fの 定義域D  
    * 変項εの議論領域 : あらゆる実 数をあつめた集合 R   
    * 変項δの議論領域 : あらゆる実数をあつめた集合 R     
    * 変項 x議論領域 : f の定義域D  

 について、

 その3変項ε,δ, x を、 ∀ε>0  ∃δ>0 ∀xD で束縛し、
   f , x0 のみを変 項として残した2項述語・2変項命題関 数  

  「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε)
  すなわち
  「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( x ( x0−δ, x0) f (x) ( f (x0)−ε, f (x0)+ε)

 のこと。

・「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε) 」  は、下記の略記。

   「 ∀ε∈ { xR | x> 0 } ∃δ∈ { xR | x> 0 } xD  ( | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε )  」
      つまり、「 ∀ε∈ (0,∞)   ∃δ∈ (0,∞) xD  ( | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε )  」  

 ないし、

   「 ε ( ε>0 δ ( δ>0 かつ xD | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε  ) )   」

・上記定義が意味しているのは、

   { xR | x> 0 } つまり (0,∞) から、どの実数を 選んで変項εに代入しても、(←意味:「∀ε>0」 「∀ε∈ { xR | x> 0}∀ε∈ (0,∞)」 の部分)

  εに代入した実数に好都合な実数が、 { xR | x> 0 } つまり (0,∞) のなかに、少なくとも一個は存在するので、
  その《εに代入した実数に好都合な実数を、 { xR | x> 0 } つまり (0,∞)か ら探し出してδに代入することによって、(←意味 「∃δ>0」 の部分)

   「どの《Dに属す実数》をxに 代入しても、fx0 は、
       『 | xx0|δならば| f(x)f (x0) |ε  』を満たす」 (←意味: | xx0|<δ | f (x)f (x0)|<ε)  )  

  を成り立たせることができる

 ということ。 




[文献]
 ●本橋『新しい論理序説』5.3例5(pp.93-97)
 ・高崎金久『数理論理学入門V. 述語論理の意味論-1.4 量化子の使い方-最後の【例】








1変数関数 の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関数 




ε−δ論法による厳密な「連続」定義 ― 論理記号読み下しサンプル


【邦文読み下しtype1】  
 「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( | xx0|<δ ⇒ | f (x)−f (x0)|<ε) 」 を、
 修飾関係にしたがわず、
 記号の順序に読み下して行く作法。

 (1)任意の〜に対し、−が存在して、

  「任意のε>0に対しδ>0が存在して、
     | xx0| <δとなるすべてのxD に対し
          | f (x)f (x0)|<εとなる」[杉浦 p.55]

  「任意のε>0に対し、あるδ>0が存在して、
     | xx0| <δを満たすすべてのxに対して
        | f (x)f (x0)|<εが成り立つ」[松坂p.107]

  「任意の正数εに対し、ある正数δ(εによって決まる)が存在して、
         | xx0| <δならば| f (x)f (x0)|<ε」[松坂p.107]


 (2)任意の〜に対し、−を選んで/とって/定めると、

  「任意の正の実数εに対応して正の実数δ(ε)を選んで
    『 | xx0| <δならば| f(x)f (x0) |<ε』 となるようにできる」[小平 p.80] 
 
  「任意に与えられた正の数εに対し、ある正の数δをとると、
    |xx0|<δ なるすべてのxに対して、| f (x)f (x0)|<εが成り立つ」 [齋藤p.145]

  「任意の正の数εにたいして、適当なδをとって、
    |xx0|<δ であるすべてのxについて、| f (x)f (x0)|<ε が成り立つ」[和達p.35]
  
  「どんな正の数εに対しても、正の数δをうまく定めると、
    |xx0|<δ であるどんなxに対しても、| f (x)f (x0)|<ε となるようにできる」[細井p.109] 

  「任意の正数εにたいして、ある正数δをとると、| f (x)f (x0)|<ε(| xx0|<δ) が成り立つ」[吹田・新保p.23]

  「任意のε>0に対し十分小さいδ>0をとれば、| f (x)f (x0)|<εが、『|xx0| <δとなるすべてのx』に対して成り立つ」[小林 p.45]

  「正の実数εをどのように指定されようとも、そのεという実数に対応して十分小さい正数δをとれば、xx0の差がこのδより小さいすべてのxについて、f (x)f (x0)の差が前もって指定された正の実数εより小さくなる。」[本橋p.94]

【邦文読み下しtype2】  
 「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( | xx0|<δ ⇒ | f (x)−f (x0)|<ε)を、
 記号の順序にしたがわず、修飾関係にしたがおうとする読み下し。
 文才がない限り、誤読のもとになるので、推奨されない[→黒田『微分積分学』§2.5.2補足説明2(p.44)]。

  「任意の正数ε>0に対して、xD|xx0|<δならば、| f (x)f (x0)|<εとなる正数δが存在する」[永倉宮岡p.170]  


【英文読み下し】
 「 ∀ε>0  ∃δ>0  ∀xD  ( | xx0|<δ ⇒ | f (x)−f (x0)|<ε) 」の英文読み下しサンプル。
  どういうわけか、xDの全称量化が省略されている。
  "for each ε>0, there exists a δ>0 such that if  | xx0|<δ and xD then | f (x)f (x0)|<ε " [Fischer p.241 ]
  "given ε, there exists δ such that if  | xx0|<δ,then  | f (x)f (x0)|<ε " [Lang p.241 ]  




[文献-解析]

 ・松坂『解析入門1』3.2-A(p.107)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterY.1.Def 1.1'(pp.240-1)
 ・杉浦『解析入門I』定義5,命題6.5(p.55):ベクトル値関数一般
 ・小平『解析入門I』§2.2a 定義2.2(p.80)
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§4(p.56)
 ・小林『微分積分読本:1変数』2章1連続関数(pp.44-45)
 ・和達『微分積分』2-5連続と不連続(2.28) (p.35)
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』§4(T) (p.23)
 ・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』11章(p.109)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』5.1.1(p.170)
 ・青本『微分と積分1』§1.4(c)注意1.5.2(p.37)

[文献-論理]
 ●本橋『新しい論理序説』5.3例5(pp.93-97)
 ・齋藤『日本語から記号論理へ』3章§5 (pp.144-5)
 ・高崎金久『数 理論理学入門V. 述語論理の意味論-1.4 量化子の使い方-最後の【例】








1変数関数 の連続定義 
トピック一覧:1変数連続関 数 


ε−δ論法による厳密な「連続」定義 ― 近傍概念を用いた表現 

区間Iで 定義されている関数f
   《区間I上 の点》x0で連続であるcontinuous at x0」  とは、 

  点 f (x0)どのε近傍Uε( f(x0) )に対してであっても、

     それに応じて、x0のδ近傍Uδ(x0)をうまく選んで、
 
       「 f ( Uδ(x0) I ) Uε( f(x0) ) 」

       を成り立たせることができる

   Uε( f(x0) )  Uδ(x0)  ( f ( Uδ(x0) I ) Uε( f(x0) ) ) 
   for each ε-neighborhood of f (x0) , there exists a δ-neighborhood of x0 such that  f ( Uδ(x0) I ) Uε( f(x0) )  [Fischer,p.240] 
   ということ、
 
 すなわち、

  任意の正の実数εに対して、それに応じて、正の実数δをうまく選ぶと、
 
        「 f ( Uδ(x0) I ) Uε( f(x0) ) 」 すなわち 「 xUδ(x0)  I ならば、 f (x) Uε( f(x0) ) 」

   を成り立たせることが出来る

        ε>0  δ>0  ( f ( Uδ(x0) I ) Uε( f(x0) ) )  
        ε>0  δ>0  ( xUδ(x0) I ならば、 f (x) Uε( f(x0) ) )  
 ということ。

  cf. 右連続/左連続

xx0 の ときf(x)が収束する」の定義との違い
     連続:任意の〜に対して、〜を満た すx0のδ近傍 Uδ(x0) が存在すること
     極限:任意の〜に対して、〜を満た すx0の除外δ近傍 U*δ(x0) が存在すること
     つまり、関数の極限では、xx0を除外して考えた。 




[文献]
 ・杉浦『解析入門I』定義5,命題6.5c(p.55):ベクトル値関数一般。近傍が定義域の部分集合になってないケースも考慮。
 ・笠原『微分積分学』1.5連続関数(p.29)
 ・Fischer, Intermediate Real Analysis, ChapterVI.1.Definition (p.240)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分 積分学の基礎理論案内』定義4.1.4 (p.92)
 ・高崎金久『数 理論理学入門V. 述語論理の意味論-1.4 量化子の使い方-最後の【例】




 


1変数関数の連続定義 
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