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霜月11月・・・



先日『源博雅の龍笛』と言うCDを購入しました。
源博雅(みなもとのひろまさ)と言う名を聞いて「ああ、『陰陽師』のね」と思い当たる方は、なかなかの平安通(笑)
小説や映画の影響で、今や安倍晴明の親友としての源博雅が有名になってしまっています。

安倍晴明はもちろん、源博雅も実在の人物。ただし、安倍晴明の親友と言う設定は小説『陰陽師』を書かれた夢枕獏さんが作り上げたものす。
では、実際の源博雅とはどういう人物なのか?と言うと・・・

醍醐天皇の皇子、兵部卿克明親王の第一皇子です。が、父である克明親王が皇位に就くことなく早死されたために、臣下に下ったそうです。
何よりも有名だったのは、優れた雅楽の演奏。
琴、笛、琵琶、篳篥(ひちりき)など、その演奏は妙極め、楽聖とまで呼ばれたほど。

盗賊に入られ、家財を盗まれてしまった時に、残された篳篥を吹いたところ、それを聞いた盗賊が感涙して、盗んだ物を全部返したと言う逸話もあります。
琵琶の名手、蝉丸法師の住む逢坂に三年間毎夜通って、琵琶の秘曲「流泉啄木」の伝授を受けた、と言う話は確か夢枕さんの小説にも登場したかと思います。

それほどの大音楽家、源博雅が残したのが龍笛譜『新撰楽譜』。現存する最古の笛譜だそうです。
CD『源博雅りの龍笛』は、すべて一本の龍笛と、何曲かは笙(しょう)も加わると言う、極めてシンプルな演奏。
全部で九曲、タイトルは難しいけれど、曲はわりと単調で似たような感じのものが多いかな(^^;
曲の難解さについては、私にはよくわからないのですが。でもロングトーンが多く、演奏技術を誇示すると言うよりは、笛の持つすばらしい音色を思う存分味わうための曲、と言う気がします。

まずは、はっとするほど澄んだ笛の音色に惹きつけられます。それは、自然のおおらかさ、宇宙の広大さによく似合う音色。
映画の1シーンではないですが、星や陰陽師の描く印の浮かぶ宇宙の闇の中に、自分もふわりと漂っているような気にさえなってきます。
なんて不思議な感覚・・・ これがいにしえの、神や鬼、さまざまな光や影と共存していた時代の音楽なのか、と。
人工の照明に邪魔されない、色濃い闇の中で聞いたら、なるほど鬼さえも涙を流すのだろう、と思わせるような音色。

それを今の時代に聴くことができるなんて、これも贅沢なことではありますね。

晩秋のひととき、音楽による心の旅も、またいいものだと思いませんか?



平成15年11月1日

                                                        

涼 


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