実ベクトル空間の線形部分空間・部分ベクトル空間の定義 : トピック一覧

部分ベクトル空間の定義  
・部分ベクトル空間であることの必要十分条件:1/2 

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実ベクトル空間関連ページ:実ベクトル空間の定義/一次結合/線形従属・線形独立/基底/次元  
実ベクトル空間の部分空間の一般化:体上のベクトル空間の部分空間   
実ベクトル空間の部分空間の具体例:Rnの部分空間    

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総目次 

定義:線形部分空間 linear subspace ・部分ベクトル空間   

【舞台設定】

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
V実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」)  
+実ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実ベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法 

【本題】

「Wが、実ベクトル空間Vの部分ベクトル空間である」とは、

 Wが実ベクトル空間Vの部分集合であって、
 なおかつ
 「実ベクトル空間Vに定められたベクトルの加法"+"とスカラー乗法」を以って「Wにおけるベクトルの加法スカラー乗法」と定義した場合に、Wが実ベクトル空間となる
ことをいう。

つまり、  
実ベクトル空間Vの部分ベクトル空間Wとは、次の4条件を満たすVの部分集合のこと

 【条件T-1】

  「Vにおけるベクトルの加法"+"」が「Wにおける二項演算」の定義を満たし、
  したがって、
  これをWにおけるベクトルの加法"+"と定義した場合に、
  Wは、この+について代数系となること。
  つまり、「Vにおけるベクトルの加法"+"」によって、
         任意u,vWに対して、それに対応するu+vWが一つずつ定まること。

 【条件T-2】
  
  Wは、「Vにおけるベクトルの加法"+"」に関して加法群(加法に関する可換群)をなすこと。

  つまり、
  -1. Vにおけるベクトルの加法"+"が、「結合則:( u,v,wW ) ( (u+v)+w=u+(v+w) )」を満たすこと。
  -2. Vにおけるベクトルの加法"+"に関して、
      零ベクトル( vW ) ( v = v かつ v = v )を満たすW」が存在すること。
  -3. Wのすべてのvに対して、
      Vにおけるベクトルの加法"+"に関するv逆ベクトルvWが存在すること。
  -4. Vにおけるベクトルの加法"+"が、「可換則:( u,v) (u+v=v+u )」を満たすこと。 

 【条件U-1】 

  「Vにおけるスカラー乗法」が、「Wにおけるスカラー乗法」の定義を満たすこと。

     つまり、「Vにおけるスカラー乗法」が、
         任意実数(実数体R)aと、Wの任意vの組に対して、
         Wのを一意的に定める演算にもなっていること。 

 【条件U-2】

   「Vにおけるスカラー乗法」が次の4条件を満たすこと。

     
-1. 任意vWに対して、1v=v  
                 ※左辺の
"1"実数体R上で定義された乗法の単位元を指す。 
     
-2. 結合則:
       
任意実数a,bR と、任意vWに対して、(ab)v=a(bv)     
     
-3. ベクトルに関する分配則:
       
任意実数aR と、任意u,vWに対して、a(u+v)=au+av  
                 ※両辺の
"+"V上の加法(→条件I-1)を指す。 
     
-4. スカラーに関する分配則: 
       
任意実数a,bR と、任意vWに対して、(a+b)v=av+bv  
       ※左辺の"+"実数体R上で定義された加法、右辺の"+"V上の加法(→条件I-1)を指す。 

【文献】

 ・『岩波数学辞典』項目210-F(p.571);
 ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.5(p.31)
 ・砂田『行列と行列式』定義5.19(p.161)
 ・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1.2(p.106)
 ・ホフマン『線形代数学I』2.2部分空間(pp.34-5)
 ・佐武『線形代数学』V§6(p.114)
 ・志賀『線形代数30講』21講(p.132):わかりやすい;
 ・藤原『線形代数』4.1(p.93):きちんとした定義なし
 ・斎藤『線形代数入門』4章§4線形部分空間(p.107)

【関連事項】

 ・部分ベクトル空間の例:一次写像の像image/部分空間の和空間
 ・部分ベクトル空間であるための必要十分条件:1/2 
 ・体上のベクトル空間の部分空間 / Rnの部分空間    


→[トピック一覧:部分ベクトル空間]
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定理:部分ベクトル空間であることの必要十分条件1


【舞台設定】

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
V実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」)  
+実ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実ベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法 

【本題】

以下の2命題は、同値
命題P:Wは、Vの部分ベクトル空間
命題Q:WはVのでない部分集合であり、
    かつ、
    任意ベクトル u,v Wと、任意スカラー実数cR に対して、
       cu+v W  

【文献】

 ・砂田『行列と行列式』定義5.19(p.162)
 ・ホフマン『線形代数学I』2.2部分空間:定理1(p.35)


【関連事項】

 ・体上のベクトル空間の部分空間のケース / Rnの部分空間のケース    



→[トピック一覧:部分ベクトル空間]
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定理:部分ベクトル空間であることの必要十分条件2


【舞台設定】

R実数体(実数をすべて集めた集合)  
V実ベクトル空間 (実数体R上の線形空間・ベクトル空間」)  
+実ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実ベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法 

【本題】

以下の2命題は、同値
命題P:Wは、Vの部分ベクトル空間
命題Q:Wが次の3条件を満たす。
 1. Wは、Vのでない部分集合
 2.任意ベクトルu,vWに対して、u+v W 
   [Wは「Vに定められているベクトルの加法」について閉じている]
 3.任意ベクトルvWとスカラーcRに対して、cvW 
   [Wは「Vに定められているスカラー乗法」について閉じている] 

※永田『理系のための線形代数の基礎』は、これを、部分ベクトル空間の定義としている。

【文献】

 ・永田『理系のための線形代数の基礎』1.5(p.31)
 ・砂田『行列と行列式』定義5.19(p.161)
 ・松坂『集合・位相入門』3章§5C(p.133)


【関連事項】

 ・体上のベクトル空間の部分空間のケース / Rnの部分空間のケース    



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(reference)


日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)

【線形代数のテキスト】

 ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.1ベクトル空間(pp.28-34)。
 砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.2(p.162).
 永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
 佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。
 志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、13講ベクトル空間へ(pp.85-7);14講ベクトル空間の例と基本概念(pp.88-90)21講線形写像の核と行列の階数(p.132):。
 藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91-)。
 斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§4線形部分空間(p.107).

【代数学のテキスト】

 本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
 酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。

【数理経済学のテキスト】

 神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。