Rock Listner's Guide To Jazz Music


Stan Getz


Stan Getz Plays

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1952/12/12, 19

[1] Stella By Starlight
[2] Time On My Hands
[3] 'Tis Autumn
[4] The Way You Look Tonight
[5] Lover Come Back To Me
[6] Body And Soul
[7] Stars Fell On Alabama
[8] You Turned The Tables On Me
[9] Thanks For The Memory
[10] Hymn Of The Orient
[11] These Foolish Things
         (Remind Me Of You)
[12] How Deep Is The Ocean
Stan Getz (ts)
Jimmy Raney (g)
Duke Jordan (p)
Bill Crow (b)
Frank Isola (ds)
年代的に言うと56年からのハードバップ以降のジャズがどうやら僕の感覚に合っているらしい。というのもビ・バップ世代のジャズはソロを取る人のパフォーマンスにその魅力を依存していて、ロックから流れてきた僕にとってはグループとしての音楽表現に重点が移ったハードバップ以降のジャズの方が楽しめる。このアルバムは、そんな僕が好きな時期よりも古い52年の録音で、ゲッツ以外の演奏者は完全に脇役という構造はビ・バップ的、しかし、ビ・バップの刺激的な演奏とは真逆の滑らかに歌うゲッツのテナーがなんとも心地よい。他のアルバムではそれなりにブローしているゲッツだけれど、このアルバムではひたすらソフトかつスムーズ、速いパッセージを吹いてもその心地良さが失われないところに他に得がたい魅力がある。そうかといって売れ線を狙ったムード・ミュージックでもなくちゃんとテナーが歌っているところが素晴らしい。レスター・ヤングよりも洗練されているところも聴きやすい理由。テナー・サックスは豪放で激しいプレイヤーが人気だけれど、こんなテナーの味わいも格別。(2006年8月5日)

Getz/Gilberto  -  Stan Getz/Joao Gilberto

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1963/3/18,19

[1] The Girl From Ipanema
[2] Doralice
[3] P'ra Machcar Meu Coracao
   (To Hurt My Heart)
[4] Desafinando
[5] Corcovado
[6] So Danco Samba (Jazz Samba)
[7] O Grande Amor
[8] Vivo Sonhando
Stan Getz (ts)
Joao Gilberto (g, vo)
Antonio Carlos Jobin (p)
Tommy Williams (b)
Milton Banama (per)
Astrud Gilberto (vo)
定番中の定番、名盤中の名盤、ボサノヴァと言えばこのアルバム。しかし、激しいジャズやロックを好む僕にとっては食指が伸びない1枚だった。しかし、どうにも疲れていて落ち着く音楽が聴きたくなり、ふとこのアルバムが思い浮かんだ。ジャズを聴き始めた頃に読んだガイドブックにはもちろん掲載されていたけれど、ジャズを聴き始めて7年以上経ってからようやく入手。実は子供のころに父が良く聴いていたアルバムで、雰囲気はわかっていた。果たして自発的に聴いてみると期待通り、いや期待以上に心に沁み入るリラクゼーション・ワールド。そう思えるようになったのは、後厄を迎えるまでに歳をとったからということではあるんだけれど、こういう音楽を楽しめるようになったのなら歳を取るのも悪くないと思える。素朴なギターと淡々としたジョアン・ジルベルトの歌を軸に、ゲッツのスカしたテナーが絶妙にマッチ。出番が少ないだけに控え目な色気がより印象深いアストラッド・ジルベルトの歌声がまた出色。CDの時代にはあり得ない34分足らずの収録時間が、通して聴いて心地よく感じるのにまたちょうど良い長さ。すべてクリード・テイラーの計算が導いたもので、名盤中の名盤と評されるのも当然の完成度とクオリティだと誰もが納得できる。ちなみに、ブラジル人にとってボサノヴァは洗練され過ぎていて自分たちの音楽だという親近感をあまり抱いていないのだとか。でも、だからこそ世界中で広く親しまれているんでしょう。(2009年12月5日)

Stan Getz & Bill Evans

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1964/5/5, 6

[1] Night And Day
[2] But Beautiful
[3] Funkallero
[4] My Heart Stood Still
[5] Melinda
[6] Grandfather's Waltz
[7] Carpetbagger's Theme
[8] Wnew Theme Song
[9] My Stood Still (alt take)
[10] Grandfather's Waltz (alt take)
[11] Night And Day (alt take)
Stan Getz (ts)
Bill Evans (p)
Ron Carter
   (b [1]-[3][7][8][11])
Richard Davis
   (b [4]-[6][9][10])
Elvin Jones (ds)
白人のジャズ・ジャイアンツとして名高い2人の競演。ゲッツもエヴァンスもクール、洗練というイメージがあり相性もピッタリではないかと事前に想像する通り、両者の競演は成功している。しかし、僕が事前に想像していたのはクールで洗練されたイメージでのマッチングで、その実体はまったく想定外の快活な演奏。一聴してゲッツとわかるスムーズなトーンでありながら、サウンドは力強く、これがまたカッコいい。力強さを引き出す根源はエルヴィンで、激しさはそれほどでなくとも手数は多く、そのグルーヴィなドラムは力いっぱい叩いていないにもかかわらず強烈な存在感を放っている。タイプのまったく異なるベース2人は、サポート役に徹しており、通して聴いて違和感がない。エヴァンスの演奏はイメージと大きく外れてはいなかったとはいえ、そんな周囲のムードと同様に軽快で、リリカルな面やダークな面は控えめ。そんな軽妙なピアノでも一瞬のプレイにハッとさせるものがあってこんなヘルシーなエヴァンスも悪くないと思える。特にチャーミングで少し憂いを帯びたイントロの[6]はエヴァンスならでは。録音後 9年も経ってから発売されたのはエヴァンスとゲッツがそのデキに納得していなかったからと言われているけれど、一期一会の顔ぶれによる爽やかな好演集として楽しめる。(2007年1月21日)

Sweet Rain

曲:★★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1967/3/21 [1]-[3]
1967/3/30 [4]-[6]

[1] Litha
[2] O Grande Amor
[3] Sweet Rain
[4] Con Alma
[5] Windows
Stan Getz (ts)
Chick Corea (p)
Ron Carter (b)
Grady Tate (ds)
60年代の中盤はボサ・ノヴァの人になってしまったスタン・ゲッツがジャズに回帰しはじめた時期のアルバム。[2]で「Getz/Gilbert」の曲を再演していはいるものの、全体的に引き締まった硬質なジャズになっている。チック・コリアの瑞々しいピアノ([1][5]はチック作)、ステディで小刻みなテイトのドラムとロン・カーターのメロディアスなベースという当時最新のトレンドに乗ったサウンドの新鮮さが魅力。ゲッツでさえもこの時代にはコルトレーンの影響から逃げることはできず、かつてと比べるとシリアスなムードが漂うものの、アート・ペッパーのような変わりようではなく、スムーズで洗練されたフレーズはそのまま。50年代のゲッツは、その素晴らしいフレージングに魅力を感じつつも、音楽としてオーソドックスで軽すぎると考える向きにはこの時代のゲッツが好適。定番アルバムで聴けるリラクゼーション溢れる音楽とは一味違う世界で、ゲッツを味わえる。(2018年12月25日)

Captain Marve

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1972/3/3

[1] La Fiesta
[2] Five Hundred Miles High
[3] Captain Marvel
[4] Times Lie
[5] Lush Life
[6] Day Waves

bonus track
[7] Crystal Silence
[8] Captain Marvel
[9] Five Hundred Miles High
Stan Getz (ts)
Chick Corea (elp)
Stanley Clarke (b)
Tony Williams (ds)
Airto Moreira (per)
有名スタンダード[5]を除くとすべてチック・コリア([6][7]はネヴィル・ポーターとの共作)のオリジナル、チックがエレピを弾き、他のメンツがスタンリー・クラーク、アイアート・モレイラと来ればリターン・トゥ・フォーエヴァーそのもの。そこにトニー・ウィリアムスがドラムというスペシャル感がダメ押しされる。トニーはゲッツを押しのける厚かましさを微塵も見せないわきまえた演奏に徹しているとはいえ、そのキレとスピード感は隠しようもなく、リターン・トゥ・フォーエヴァーよりもこちらの方が良いと見る人もいるのではないかと思えるくらい、演奏は良い。それはしかし、ゲッツのリーダー・アルバムとしてはどうかという観点では微妙で、ゲッツらしいフレーズを紡ぎつつもジョー・ファレルの代役であるかのように聴こえてしまうところが少々残念なところ。有名スタンダードの[5]に一番ゲッツらしさが、他の曲でも静かなパートでらしさが見えるとはいえ、グループとして表現される音楽は、他のメンバーによるリターン・トゥ・フォーエヴァーの世界そのもの。ゲッツのリーダー・アルバムとしては、という意味で評価するとこのようになってしまう。(2019年6月2日)