Rock Listner's Guide To Jazz Music


John Coltrane(56-58)


Tranesition

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★
トレーン入門度:★
評価:★★☆
[Recording Date]
1956/3/2 [1]-[4]
1956/4/20 [5]-[7]
1956/9/21 [8]-[11]

[1] Trane's Blues
[2] Dexterity
[3] Stablemates
[4] Eastbound
[5] Trane's Strain
[6] High Step
[7] Nixon, Dixson and Yates Blues
[8] Omicron
[9] Nita
[10] We Six
[11] Just For The Love
[1]-[4]
John Coltrane (ts)
Kenny Drew (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)

[5]-[7]
John Coltrane (ts)
Curtis Fuller (tb)
Peppar Adams (bs)
Roland Alexander (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)

[8]-[11]
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts
Kenny Burrell (g))
Horace Silver (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
知名度も実力もなかったころの若きコルトレーンは、ポール・チェンバースのリーダー・アルバムである「Chambers Music」「Jazz In Transition」「Whims Of Chambers」のセッションに参加している。これらのアルバムのコルトレーン参加曲だけを、レーベルを越えて集約したのがこのディスク。初期コルトレーンの初々しい演奏を77分弱ビッチリ収録。チェンバースのリーダー・アルバムの中には入手困難なものもあるため、コルトレーン・フリークにはありがたくも手っ取り早いコンピレーション。[1]-[4] はコルトレーンのみのワン・ホーン編成で、もちろん後の演奏のような凄みはないものの一生懸命、何かを模索しているかのような感じのようなものは感じることができる。[5]-[7] は、バリトン・サックスとトロンボーンを加えた3管編成で、名声を確立する前のメンツとあって実に初々しい演奏が聴ける。中でもフラーのトロンボーンは既に「ポスト J.J.ジョンソン」としての存在感があるし、低音楽器に囲まれた中でコルトレーンの高音を駆使したテナーがよりシャープに響く。[8]-[11] は若干後の録音で、安定したプレイを聴かせるバードがいること、コルトレーンも進化を遂げていること、バレルが良いスパイスになっていることなどから完成度は最も高い。チェンバース自身は音楽家としての特別なものを持っていたタイプではなかったので、結果的には全体を通してブルースが多く、オーソドックスなハード・バップに終始してるのは当然のこと。共演者も若く、その初々しさを楽しむ企画盤と言える。(2006年11月12日)

Mating Call

曲:★★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★★
トレーン入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1956/11/30

[1] Mating Call
[2] Grind
[3] Soultrane
[4] On A Misty Night
[5] Romans
[6] Super Jet
John Coltrane (ts)
Tadd Dameron (p)
John Simmons (b)
Philly Joe Jones (ds)
作・編曲者として活躍していたタッド・ダメロンの珍しいスモール・コンボでの録音。そのパートナーには、当時マイルス・グループにいたとはいえ、まだ評価が高かったとは言えないコルトレーンが選ばれた。経緯はわからないけれど新人によるワン・ホーン編成とはずいぶん思い切った発想。すべてダメロンの書き下ろし曲による親しみやすいハード・バップ。バラードやブルースをバランスよく配して聴きやすい。ピアニストとしてのダメロンはテクニック云々を語るタイプではなく明快かつシンプルでこれまた聴きやすく、[5] ではモンクのような演奏も心地よく聴かせる。しかし、ここでの主役はなんと言ってもコルトレーン。録音は2回目のマラソン・セッションの1ヵ月後という、まだまだこれからという時期だったにもかかわらず、その表現の進歩は目覚しい。ワン・ホーンという構成での録音は恐らく初めての経験だったと思われるものの、マイルス・グループのときよりも伸び伸びと演奏している。もちろん後年の演奏に比べると拙い部分があるけれど、やや高い音域で音数が多いあのスタイルの芽生えを聴くことができるし、バラードの [3] では既に立派な表現力を見せていることから、初期コルトレーンのファンなら是非押さえておきたいアルバム。(2006年6月4日)

The Cats

曲:★★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★☆
トレーン入門度:★★☆
評価:★★★
[Recording Date]
1957/4/18

[1] Minor Mishap
[2] How Long Has
           This Been Going On?
[3] Eclypso
[4] Solacium
[5] Tommy's Time
Idrees Sulieman (tp)
John Coltrane (ts)
Kenny Burrel (g)
Tommy Flanagan (p)
Doug Watkins (b)
Louis Hayes (ds)
フラナガン/コルトレーン/バレル名義のアルバムながら、[2] を除いてトミー・フラナガンが作曲、その [2] はピアノ・トリオによる演奏という構成であることから、事実上のリーダーがフラナガンであることは明白。内容は典型的
なハード・バップ。モンクとの共演で知られるシュリーマンのトランペットは中高音を使ったちょっと古いスタイル。反対に耳に残るのはバレルのギターと堅実かつ柔軟性に富むリズム・セクション。コルトレーンの演奏はこの時期相応のレベルでもちろん悪くないけれど、人数が多いだけに出番はやや少ないのでトレーン目的で買うとガッカリするかも。ジャム・セッション風録音が多いプレスティッジの作品にあって、まとまりを感じるのは、やはりフラナガンがリーダーシップを取っていたからでしょう。気軽にコルトレーンを楽しめる好盤。(2006年6月4日)

Dakar

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
コルトレーン入門度:★
評価:★★☆
[Recording Date]
1957/4/20

[1] Dakar
[2] Mary's Blues
[3] Route 4
[4] Velvet Scene
[5] Witches Pit
[6] Cat Walk
John Coltrane (ts)
Cecil Payne (bs)
Pepper Admas (bs)
Mal Waldron (p)
Doug Watkins (b)
Art Taylor (ds)
バリトン・サックス2本を相手に、ハード・バップ・スタイルでコルトレーンのシャープなテナーを味わいましょうという企画のアルバム。そういう意味では、セッションの寄せ集め的なアルバムが多いプレスティッジのアルバムとしては狙いがハッキリしていてわかりやすい。コルトレーンが孤高の世界を目指す前の段階だからこそできた企画でもある。作り込まれた印象はなくとも、似たような顔ぶれが多いプレスティッジのアルバムの中では一味違っていてそれなりに価値がある。ただし、コルトレーンの自作曲はなく、ソロもそれほど多くないため、リーダー・アルバムという感じはしない。(2009年11月7日)

Coltrane(Prestige)

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
トレーン入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1957/5/31

[1] Bakai
[2] Violet For Your Furs
[3] Time Was
[4] Straight Street
[5] While My Lady Sleeps
[6] Chronic Blues
Johnnie Splawn (tp)
John Coltrane (ts)
Sahib Shihab (bs)
Red Garland (p)
Mal Waldron (p)
Paul Chambers (b)
Albert Heath (ds)
ジャズ界では才能溢れる逸材は20代前半からリーダー・アルバムを吹き込む人が少なくないし、リー・モーガンのように10代から一線で活躍、初録音がリーダー・アルバムという人までいる。それを考えると、数多くのサイドメン録音経験を積んで、30歳で初のリーダー・アルバムをやっと吹き込む機会を得たコルトレーンはいかにも遅い。おかげでマイルス・デイヴィスと同じ1926年生まれということをときどき忘れそうになる。そんな晩成型のジャズ・マンが頂点に上りつめる過程を追うこともコルトレーンの楽しみ方のひとつ。さて、その本作。曲によってメンバーが異なっていて、[2][3] がワン・ホーンのカルテット、他の曲がセクステットという構成。自身のオリジナル曲 [4][6] も収録し、プレスティッジの特徴であるジャム・セッション風の散漫さは比較的少ない。ガーランドの魅力が出ている [2][3] に、そして全編で上下音域を自在に操って味のあるベースを聴かせるチェンバースが好サポート。[1] の不気味なテーマをはじめ、60年代以降の重いコルトレーン・ミュージックに通じるところなどに、自己の音楽を表現しようという意思が感じられる。(2006年6月4日)

Lush Life

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
トレーン入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1957/5/31 [1]-[3]
1957/8/16 [5]
1958/1/10 [4]

[1] Like Someone In Love
[2] I Love You
[3] Trane's Slo Blues
[4] Lush Life
[5] I Hear A Rhapsody
Donald Byrd (tp [4])
John Coltrane (ts)
Red Garland (p [4] [5])
Earl May (b [1]-[3])
Paul Chambers (b [4] [5])
Art Taylor (ds [1]-[3])
Louis Hayes (ds [4])
Albert Heath (ds [5])
3つのセッションから成るアルバム。[5] は録音日とメンツから「Coltrane(Prestige)」のときのもの。[4] のセッションは以降付き合いの多いメンバーとのもので後の「The Last Trane」「The Believer」に分散収録されている。このアルバムの聴きどころは、コルトレーンにしては珍しいピアノレス・トリオ編成である [1]〜[3] 。締まった雰囲気の中でトレーンのテナーが一段と映える。スタンダードの [1] は、のんびりと適度に軽快な演奏をされることが多いけれど、ここではほとんどベースとのデュオによって、スロー・テンポでシリアスなムード漂う演奏になっており、極めてコルトレーン的な重みを以って表現されている。[4] ではガーランドの美しいピアノとコルトレーンのバラード演奏の素晴らしさ、魅力が全開。全体的にゆったりした曲が多いものの、表現力を深め、成長著しいコルトレーンはこの時点で既に十分聴き応えがある演奏をしている。通して聴いても飽きが来ない初期の推奨盤。(2006年6月4日)

The Last Trane

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
トレーン入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1957/8/16 [2]
1958/1/10 [1] [4]
1958/3/26 [3]

[1] Lover
[2] Slowtrane
[3] By The Numbers
[4] Come Rain Or Come Shine
Donald Byrd (tp [1] [4])
John Coltrane (ts)
Red Garland (p except [2])
Earl May (b [2])
Paul Chambers
           (b except [2])
Art Taylor (ds [2] [3] )
Louis Hayes (ds [1] [4])
これも3つのセッションから成るアルバム。[1] [4] は「Lush Life」と「The Believer」にも収録されている曲と同じ日のセッションから。[2] は「Lush Life」のピアノレス・セッションのうちの1曲。[3] は「Settin' The Pace」のアウト・テイク。コルトレーンがアトランティックに移籍したあと、残っていた音源を小出しにしていたプレスティッジが最後に出したアルバム故にこのタイトルになっている。冒頭 [1] から、アップテンポの曲でコルトレーンの早吹き全開。一転して [2] はピアノレス・トリオのブルース。[3] もスロー・ブルースでこちらはガーランドが活躍、そして [4] の有名スタンダードで終わるという構成。[4] をコルトレーンが録音したのは知っている限りこれだけ。冒頭のテーマはコルトレーンのみ、最後のテーマはバードのみで締める一風変わった構成で、ゆったりとした仕上がりが心地よい。いわゆる寄せ集めアルバムで特筆することはないけれど、この時期の演奏であれば一定レベルは保証されている。(2006年6月4日)

Traneing In

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
トレーン入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1957/8/23

[1] Traneing In
[2] Slow Dance
[3] Bass Blues
[4] You Leave Me Breathless
[5] Soft Lights And Sweet Music
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
プレスティッジ時代のアルバムには珍しく1日だけのセッションで構成されていることから統一感がある。この時代、意外とワン・ホーン・カルテットの作品は少なく、そういう意味では貴重かも。名義が「With Red Garland Trio」となっていることもあってか、ガーランドが目立つ中、この頃のコルトレーンは自己を確立しはじめた時期とあって演奏も快調そのもの。そして音数はますます増加傾向に。特に [5] は当時のコルトレーンが目指していた高速フレーズのお披露目会といった様相。そして [4] で得意のバラードも入れてバランスにも抜かりなし。演奏じたいはこの時代そのもののハード・バップで、このメンツから予想される以上の音楽ということはなく、やや地味な感が否めないのは事実。堅調な4人組を気軽に楽しむアルバム。(2006年6月4日)

Blue Train

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
トレーン入門度:★★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1957/9/15

[1] Blue Train
[2] Moment's Notice
[3] Locomotion
[4] I'm Old Fashioned
[5] Lazy Bird
[6] Blue Train (alt take)
[7] Lazy Bird (alt take)
Lee Morgan (tp)
John Coltrane (ts)
Curtis Fuller (tb)
Kenny Drew (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
プレスティッジと専属契約を結んでいた時期に、どういうわけだかワン・ショットで吹き込まれた唯一のブルーノート・リーダー作品。この録音の2週間前にソニー・クラークの「Sonny's Crib」で既に3管編成を経験済みで、それがヒントになったのか、以前からそういうアイディアを持っていたのか定かではないものの、いずれにしろ本人の意思でメンバーを選んで好きなように製作したアルバムとされている。曲も [4] を除いてコルトレーンの書き下ろしで、アレンジもしっかりとしていることから、プレスティッジの諸作と異なるワン・アンド・オンリーのムードを発散しており、周到に準備して録音に臨んだことが伺える。コルトレーン自身、この時期のスタイル=音符詰め込みスタイルにおける完成度の高い演奏を聴かせているし、フラーも見せ場十分。ちなみにフラーはこのセッションをヒントにジャズテットの結成を考えたのだとか。チェンバースは堅実でフィリー・ジョー・ジョーンズは荒さこそ控えめながらルーズなリズムを繰り出してマイ・ペース。思えばハード・バップ時代のコルトレーンのリーダー・アルバムと言えばピアニストはレッド・ガーランドばかり故にケニー・ドリューという選択も新鮮。そしてなんといってもリー・モーガンのブリリアントなトランペットが光る。ここでの演奏はモーガンのキャリアの中でも屈指のデキ。特に [5] のテーマ。力まずに軽く、そして伸びやかに響くトランペットを聴くと粋という言葉はこういうときのために存在するんだと言いたくなるほど。フロント3人ともにアップ・テンポもブルースもバラードもハイ・レベルでこなす実力者揃いな
だけに、どの曲も聴きどころ満載だし、何よりもコルトレーンが57年の時点で音楽家としても十分に素晴らしかったことを証明する屈指の傑作。オリジナル重視で一般的な有名曲がないだけに超初心者には少し入りにくいかもしれないけれど、何度か聴けばその素晴らしさがきっと分かるはずだし、同時期のプレスティッジのアルバムとの完成度の差も実感できると思う。(2006年6月4日)
僕は基本的にボーナス・トラックにはあまり興味を示さない方で、オランダ盤の5曲入りを所有していたんだけれど、RVG エディションを追加購入。音はわずかに良くなっているかなあという程度でよほど良い再生環境でもなければ聞き分けは難しいでしょう。ブルーノートは録音前にリハーサルをさせることから演奏が固まっているためにボーナス・トラックと正式採用テイクとの差がほとんどわからないものが多いんだけれど、この2曲は聴いてすぐに違いがわかる。特に [6] はテンポ感(あくまでも「感」)が少し速めで、ドリューのピアノ・ソロ部こそ同じ(本採用テイクをそのまま流用)ながら、コルトレーン、モーガン、フラーのアドリブ・パートはかなり違う。[7] も最初のモーガンの独奏テーマは同じメロディでもニュアンスが違うし、フロント・ラインのアドリブ・パートは結構違っている。2曲とも全体にラフなフィーリングで完成度では明確にワンランク落ちるけれど、オリジナルを聴き込んだ人にはそのラフさ加減が新鮮。これがマスター・テイクだったとしても聴き手はきっと満足していたのではないかとも思う。それでも、完成度を高めた演奏を目指し、それを実現させたことで僕らはより素晴らしい演奏に触れることができている。当たり前のように聴いていたマスター・テイクは作り手の情熱によって生まれたということを、この別テイクを聴いて改めて実感する。(2007年11月26日)
ハイレゾ音源をHDtracksからダウンロードして聴いてみた。入手したのは 96KHz/24bit の音源。同時にリリースされたブルーノートの音源と比べると CD との差は小さい。楽器の定位やバランスもほとんど変化なし。それでも全体に僅かに音質向上が見られ、ある程度のオーディオ機材で聴けば、音場の広がりに満足を得られる(2012年8月4日)

The Complete Kraft Sessions

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
トレーン入門度:★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1957/Oct [9]-[15]
1957/Dec [1]-[8]

[1] Pristine
[2] Tippin'
[3] Midriff
[4] Ain't Life Grand
[5] The Outer World
[6] El Toro Valiente
[7] The Kiss Of No Return
[8] Late Date
[9] Deo-X
[10] For Minors Only
[11] Right Down Front
[12] Sweet Sakeena
[13] For Miles And Miles
[14] Krafty
[15] Late Spring
[1] [2]
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Walter Bishop Jr. (p)
Junior Mance (b)
Art Blakey (ds)

[3]-[8]
Donald Byrd (tp)
Idrees Sulieman (tp)
Bill Hardman (tp)
Ray Copeland (tp)
Melba Liston (tb)
Frank Rehak (tb)
Jimmy Cleveland (tb)
Sahib Shihab (as)
Bill Graham (as)
John Coltrane (ts)
Al Cohn (ts)
Bill Slapin (bs)
Walter Bishop Jr. (p)
Wendel Marshall (b)
Art Blakey (ds)

[9]-[15]
Bill Hardman (tp)
Johnny Griffin (ts)
Sam Dockery (p [9])
Jinior Mance (p except [9])
Spankly Debrest (b)
Art Blakey (ds)
コルトレーンとアート・ブレイキーの競演というのは非常に少なく、僕の記憶ではコルトレーンとしては脇役的参加だったジョニー・グリフィンの「A Blowin' Session」くらいしか思い当たらない。このアルバムは、そんな両者が競演したセッション2つを収録したもの。[1] の軽快なハード・バップ、[2] のコテコテのスロー・ブルースを聴くと、ジャズ・メッセンジャーズにコルトレーンが参加したような感じ。実際、他のセッションも含めて本来はブレイキー名義の録音と言われているようだけれど、John Coltrane with Art Blakey という名義とジャケットを理由にここで紹介している。その [1] [2] 、いかにもブレイキーというリズムに、57年のコルトレーンらしい音数の多いフレーズが乗っかるのだからたまらない。[2] は、渋い曲でドナルド・バードのプレイが光っているところもいい。合わせて13分弱しかないけれど、この2曲こそがこの CD の聴きどころで、このメンツでの演奏をもっと聴きてみたいと思わせる。同日録音となる [3]-[8] はビッグ・バンド編成となるため、「2人の競演」感は薄くなるものの、ブレイキーのドラムとコルトレーンのテナーは聴けばすぐにそれとわかる個性があるし、いかにもビッグ・バンドというスウィンギーな演奏が心地良くて楽しめる。個人的にはビッグ・バンドという形態が、コルトレーンやブレイキーの個性を際立たせるとは思わないんだけれど、いつもと違うフォーマットで楽しめるという意味で、聴いてみると結構新鮮。[9]-[15] はコルトレーンとは関係ない音源で、要は低迷期のジャズ・メッセンジャーズの録音。演奏は平均的ながら、ビル・ハードマンとジョニー・グリフィンのフロントラインをはじめ、意外と悪くない。CD全体としては、音楽的には特別見るべきものはないものの、コルトレーン、ブレイキーにとっての番外編的演奏を収めたマニアックな音源集として楽しめる。(2007年9月15日)

At Carnegie Hall

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
トレーン入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1957/11/29

[1] Monk's Mood
[2] Evidence
[3] Crepuscule
[4] Nutty
[5] Epistrophy
[6] Bye-Ya
[7] Sweet And Lovely
[8] Blue Monk
John Coltrane (ts)
Thelonious Monk (p)
Ahmed Abdul-Malik (b)
Shadow Wilson (ds)
コルトレーンがモンクのグループに在籍していたときに残されていたライヴが2005年にいきなりCD化されてマニアは狂喜した。なにしろ、マイルス・グループにいたころはヘタクソと言われていたコルトレーンが長足の進歩を遂げたのは、モンクと活動を共にしてきた57年にあるとされていて、しかしその肝心な音源がほとんどなかったんだから。スタジオ録音には「Thelonious Monk With John Coltrane」というアルバムがあるとはいえ、コルトレーンがソロを取っているのはわずか3曲とあってはマニアがこの発掘に狂喜したのも無理はない。しかもモノラルとはいえ音質が良い。マイケル・カスクーナよ、またしてもありがとう。もちろん、ここで聴けるモンクのピアノは予測不能なフレージングで個性全開。コルトレーンの演奏はシーツ・オブ・サウンド完成一歩手前でも既に聴き応えがあり、2人の競演を聴くのにこれ以上のアルバムはないと思える。ただし、コルトレーンの扱いはあくまでも with であって、個性を十分発揮しているとは僕には思えないし、この2人のマッチングがそれほど良かったとも思わない。実は僕はモンクの良さがわからない。モンクが作った曲には素晴らしいものが沢山あるし、個性的なピアノにもハッとさせられるんだけれども、モンク自身が自分で率いたグループの音楽となるとどうにもピンと来なくて「Brilliant Corners」なんて気持ち悪いとしか感じない。お偉いジャズ評論家風に言うとモンクのユーモアが理解できないということなんでしょう。(2006年11月18日)

The Believer

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
トレーン入門度:★★★★☆
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1958/1/10 [1] [2]
1958/12/26 [3]

[1] The Believer
[2] Nakatani Serenade
[3] Do I Love You
      Because You're Beautiful
Donald Byrd (tp [1] [2])
Freddie Hubbard (tp [3])
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Louis Hayes (ds [1] [2])
Art Taylor (ds [3] )
[1][2] は「Lush Life」と「The Last Trane」にも収録されているセッションから。[3] のセッションは「Stardust」「Bahia」にも収録されているコルトレーンにとってのプレスティッジ最終セッションからで若きフレディ・ハバードが参加している。[1] からイキのいい演奏。簡単なテーマのあと、バードのソロを引き継ぐコルトレーンは入りからゾクゾクさせ、シーツ・オブ・サウンドの大洪水を撒き散らす。さらに引き継ぐガーランドのピアノが持ち味を存分に出したソロを展開して、思わず身を乗り出さずにはいられない好演奏。[2]もノリが良く、コルトレーンは吹きに吹きまくる。[3] はリラックスしたバラードでその美しい旋律に安心して身を委ねることができる。ハバードはまだまだという感じでも、同時期のコルトレーンと競演していたトランペット奏者の中ではやはり光るものがある。わずか3曲、トータル30分、しかもあまり話題にならない作品ではあるけれど、ハード・バップのフレーズからはみ出しはじめたコルトレーンの素晴らしいプレイを楽しめる裏名盤。(2006年6月4日)

Soultrane

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★
トレーン入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1958/2/7

[1] Good Bait
[2] I Want To Talk About You
[3] You Say You Care
[4] Theme For Ernie
[5] Russian Lullaby
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
プレスティッジ時代の代表作としてガイドブックに良く掲載されているアルバムで、僕もこの時期でワン・ホーンということであればコレを勧める。曲調がバラエティに富んでバランスが良いこと、後に重要なレパートリーになった [2] が入っていること、シーツ・オブ・サウンドの全盛期を満喫できること、ガーランドはじめバックもノリが良いこと、適度なリラクゼーションがあること、58年2月7日のみのセッション(他の曲が残されていない)で統一感があることなどを理由に挙げることができる。特に[5]は、ガーランドのダイナミックなイントロから一転、シーツ・オブ・サウンドを炸裂させてカデンツァまで一気に吹ききる文字通り息詰まるようなスリルが味わえる名演。(2006年6月4日)

Kenny Burrell & John Coltrane

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
トレーン入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1958/3/7

[1] Sreight Trane
[2] I Never Knew
[3] Lyresto
[4] Why Was I Born?
[5] Big Paul
John Coltrane (ts)
Kenny Burrell (g)
Tommy Flanagan (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds)
所有している CD の背扉には「With」 John Coltrane と書いてある。実際、バレルのカラーが強いと言われればそんなような気もする一方、メンバーを見ればコルトレーン縁の人たちというアルバム。ギターとテナーの組み合わせは音域の相性が良く、よくあるパターンではあるけれどコルトレーンが絡むとやはりちょっと雰囲気が違う。コルトレーンはもちろんこの時期相応の「高め音程の音数勝負」的フレーズを多用しているし、バレルもジャズ・ギターの王道的なプレイで持ち味が良く出ている。フラナガンの存在によってガーランドのような泥臭さがやや抑えられた良質のハード・バップになっているところは、この時期のコルトレーンのアルバムの中では新鮮。コルトレーンがソロを吹いているときと、バレルがソロ・パートを弾いているときでは雰囲気がガラッと変わることもあって、この2人の相性が良いとはあまり思えないけれど、そんな二人の貴重な一期一会のセッションを楽しむ作品とも言える。尚、[4] は珍しい2人のデュオによる3分少々のバラード演奏で、アップ・テンポの曲が多い構成のこのアルバムにあって異彩を放っていてひとつのハイライトになっている。(2006年6月4日)

The Complete Mainstream 1958 Session

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★
トレーン入門度:★
評価:★★★
[Recording Date]
1958/3/13 (Disc 1)
1958/5/13 (Disc 2 [1]-[3][8][9])
1958/6/29 (Disc 2 [4]-[7][10])

Disc 1
[1] Wells Fargo
[2] West 42nd Street
[3] E.F.F.P.H.
[4] Rhodamagnetics
[5] Snuffy
[6] Countdown
[7] Wells Fargo (alt take)
[8] Countdown (alt take)
[9] Rhodamagnetics (alt take)

Disc 2
[1] B.J.
[2] Anedac
[3] Once In A While
[4] Dial Africa
[5] Oomba
[6] Gold Coast
[7] Tanganyika Strut
[8] B.J. (alt take)
[9] B.J. (alt take)
[10] Dial Africa (alt take)
Disc 1
Wilbur Harden (flhrn)
John Coltrane (ts)
Tommy Flanagan (p)
Doug Watkins (b)
Louis Hayes (ds)

Disc 2
Wilbur Harden (tp, flhrn)
John Coltrane (ts)
Curtis Fuller (tb)
Howard Williams (p [1]-[3][8][9])
Tommy Flanagan (p [4]-[7][10])
Alvin Jackson (b)
Art Taylor (ds)  
一般人でも名前くらいは聞いたことがあるジョン・コルトレーンのブランド力は大きく、本来はリーダー・アルバムとして製作されたものではないのに、コルトレーン名義でリリースされている音源というのがいくつかある。この2枚組もそんな中のひとつ。実際にはトランペットのウィルバー・ハーデンのアルバムで、曲も Disc 1 はすべてハーデンのオリジナル、Disc 2もハーデンとCardenという人の共作が中心となっており、音楽的にもハーデンが主導している。また、コルトレーンのスペースが特別優遇されて用意されているわけではなく、それなのにコルトレーン名義であることに対して「まったくねえ」と文句のひとつでも言いたくなるところ。でも、6月29日のセッションにやや前衛的な一面があることを除けば基本的には非常にオーソドックスなハード・バップであり、ハーデンの色というのが特別あるわけでもないこともあって、上り調子のコルトレーンが一番目立つ結果となっているので50年代のコルトレーンが好きな人なら聴いておいてもいいかもしれない。他のメンバーも一流どころが揃っていて、特にトミー・フラナガンとカーティス・フラーとの競演はそれほど多くないから、リーダー・アルバムとは少し毛色が違うセッションとしても楽しめる。それにしても主役のハーデンのトランペットはプロとしては少々頼りなく、一流とは言い難い。それでもこれだけのメンバーが集まり、オリジナル中心のセッションが持てた理由はよくわからないけれど、この程度の演奏ができる人は他にもたくさんいたんじゃないかと思えるレベルである。その頼りないトランペットのおかげで、コルトレーンのソロに入ったときに、緊張感が一気に高まるという効果をもたらしているのは、皮肉ではあるけれど聴きどころになっている。音楽的には6月29日のセッションがコルトレーンには一番ハマッている。実はそのややダークなセッションの中心となっている Disc 2  [6][7] の曲はフラーの手によるものというのもハーデンの影の薄さを印象付けることになってしまっている。なにしろ、CDによって名前が Hardin になっていたり Harden になっていたり、それはそれはぞんざいな扱いになっていて、ここまで来るとさすがに気の毒な感じもする。(2011年7月30日)

Settin' The Pace

曲:★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★
トレーン入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1958/3/26

[1] I See Your Face Before Me
[2] If There Is Someone
              Lovelier Than You
[3] Little Melonae
[4] Rise And Shine
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
可憐なガーランドのピアノから始まる [1] は、いきなりしっとりとしたバラード。夜に落ち着いてジャズでも聴こうかというときに実にしっくりと来る。コルトレーンのテナーもガーランドのピアノもすっと心に染み入ってくる。[2] は、ミドルテンポでのんびりしたノリのリラクゼーション溢れる演奏。こういう曲でも音数多めのコルトレーン、、しかしロリンズとはまた違うおおらかさが良い。[3] は、この時期マイルスも良く取り上げたジャッキー・マクリーンの曲で、テーマが終わるとしばらくはガーランド・トリオによる演奏になり、お馴染みの手法で見せ場を作る。そこからコルトレーンが切れ込んで、音符数こそが命かのようなソロを展開。この頃からだんだん長いソロを取るようになってくる。14分に及ぶこの [3] が一番の聴きどころ。アップ・テンポの [4] は曲そのもののムードもあってか、どことなくのんびりした感じで、そこでも繰り出すシーツ・オブ・サウンドは激しさだけが魅力ではないことをアピール。「Soultrane」から1ヵ月半後、同じメンバーによる録音でありながら曲も演奏も地味なアルバムだけれど、このメンツなら安心して聴ける。ワン・ホーンでリラックスしたセッションの演奏を楽しむにはなかなか良い作品。尚、この日のセッションは1曲だけ「The Last Trane」に収録されている。(2006年6月10日)

Black Pearls

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
トレーン入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1958/5/23

[1] Black Pearls
[2] Lover Come Back To Me
[3] Sweet Saphire Blues
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
これも典型的なプレスティッジのセッション。今回はドナルド・バードを迎えてのクインテット編成。もうちょっと腰を落ち着かせた演奏も聴かせてよ、とグチのひとつでも言いたくなるほどコルトレーンとバードで音符詰め込み競争に興じている。17分にも及ぶ [3] を含めて、アップ・テンポの軽快な曲ばかりでノリの良さで押し通してもらいたいという人にはお勧め。プレスティッジのアルバムでバラードが入っていないのは実は珍しく、でも個人的にはそれがちょっと物足りない。演奏そのものは全員好調で特にバードのデキが良い。(2006年6月11日)

Standard Coltrane

曲:★★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★☆
トレーン入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1958/7/11

[1] Don't Take Your Love From Me
[2] I'll Get By
    (As Long As I Have You)
[3] Spring Is Here
[4] Invitation
Wilbur Hardin (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds)
コルトレーンはプレステッジ時代の最後のセッションとして、58年7月11日と12月26日にレコーディングを行う。このアルバムは7月11日からのもので、ウィルバー・ハーディンという聴きなれないトランペッターがいること、ドラマーにジミー・コブが初めて起用されているのが特徴。ハーディンの演奏は特に耳を惹くような演奏でもなく、正直なところ線が細くて頼りない。いきなりバラードからはじまるこのアルバム、時に音数を多くしながらも情感たっぷり吹き上げるコルトレーンに聴き惚れる。その後は適度にノリの良い曲が続く。サックスの音を生々しく捉えた録音により、落ち着いた中にも鋭いフレーズを交えたコルトレーンの演奏がより引き立っている。そしてラストに必殺の吹きまくりバラード [4] が。バラードに良い演奏が山ほどあるコルトレーンにあってこの曲は屈指の名演。スローで定石どおり控えめに支えるバックにテナーだけで曲を支配する。このような演奏を嫌う人もいるかもしれないけれど、ただのムード・ミュージックに陥らないアグレッシヴかつ張り詰めた緊張を伴うバラードというのは他のプレイヤーでは聴くことができない表現。魂を込めた演奏とはこういうもののことを言うのでしょう。(2006年6月11日)

Stardust

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
トレーン入門度:★★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1958/7/11 [1] [3]
1958/12/26 [2] [4]

[1] Stardust
[2] Time After Time
[3] Love Thy Neighbor
[4] Then I'll Be Tired Of You
Wilbur Hardin (tp [1] [3])
Freddie Hubbard (tp [4])
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds [1] [3])
Art Taylor (ds [2] [4])
プレステッジ最後のセッションから、58年7月11日と12月26日のものを半分ずつ収録。このアルバムも冒頭からバラードで、じんわり、そしてしっとりとジャズの世界へと導く構成。[2] もソフトでスローな曲。ワン・ホーンでの演奏をたっぷり味わえる。[3] はちょっとテンポ・アップ。リラクゼーションに満ちた曲ながらも、ここでは得意の早吹きフレーズでスリルも感じさせる。トランペット、ピアノ、ベースとソロを回していくうちに、最初の緊張感が薄れていくのが面白い。[4] もバラード。それにしても、プレスティッジお別れセッションはバラードが多く、リラックスした演奏が多い。それでも、BGM に成り下がらず、しっかりとした聴き応えがあるものになっているのは、コルトレーンのテナーから発するシャープな音色に負うところが大きい。インパルスの超有名盤「Ballards」よりも、この時期のセッションのバラード演奏の方が断然素晴らしいと思う。(2006年6月11日)

Bahia

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
トレーン入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1958/7/11 [1] [2] [5]
1958/12/26 [3] [4]

[1] Bahia
[2] Goldsboro Express
[3] My Ideal
[4] I'm A Dreamer (Aren't We All)
[5] Something I Dread Last Night
Wilbur Hardin (tp [3] [4])
Freddie Hubbard (tp [5])
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (ds [3] [4])
Art Taylor (ds [1] [2] [5])
コルトレーンのプレステッジ最終セッションは、1曲を除き、このアルバムと「Standard Coltrane」「Stardust」に収録されている。それら2枚がバラードやスロー・テンポの曲が中心であるのに対して、このアルバムはアップ・テンポの曲が多め(3曲)に収められているのが特徴。[1] はなにやらエキゾチックなムードで、コルトレーンが高速フレーズを、しかも速いだけでなくインパルス時代にも通じる不気味なメロディで展開。[2] は、やはり高速フレーズを放つトレーンとアート・テイラーの熱い掛け合いが延々と続く。のんびりムードのバラード [3] を挟んだあと、[4] は軽快に。ハーディンのトランペットは、なんというかヘナヘナした音色で硬質なコルトレーンのテナーとの落差があまりにも大きい。コルトレーンの引き立て役以上の存在にはなっていないところがいいのか悪いのか判断に迷う。ロマンチックなガーランドのピアノに導かれて始まる [5] は、これまたバラードの屈指の名演。これをもってプレスティッジでのセッションは幕を閉じる。(2006年6月11日)

Coltrane Time

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★
トレーン入門度:★
評価:★
[Recording Date]
1958/10/23

[1] Shifting Down
[2] Just Friends
[3] Like Someone In Love
[4] Double Clutching
Kenny Dorham (tp)
John Coltrane (ts)
Cecil Taylor (p)
Chuck Israel (b)
Louis Hayes (ds)
興味深いメンバーによるコルトレーン名義のアルバム。しかし、その実態は若きセシル・テイラーのリーダー作。この頃のセシル・テイラーはまだハジける前ということもあって後年ほどヒステリックではない。とはいえ、もちろん普通のピアニストとはまったく感性が異なっていて、モンクを前衛的にしたかのような演奏を終始展開。明らかに周囲から浮いている。曲はブルースやスタンダードといったオーソドックスなものばかりで 、誰が一番合っていないかと言えばリーダーのテイラー。コルトレーンは、トレーンらしさが出た演奏を聴かせているけれど、一番いい味を出しているのはケニー・ドーハム。では、ドーハムの持ち味に身を委ねてオーソドックスな演奏を楽しもうかと思うと妙なピアノがなんとも鬱陶しくて集中できない。セシル・テイラーのリーダー作で、ケニー・ドーハムが一番持ち味を出しているなんて妙でしょう?そう、ハッキリ言って失敗作、失敗企画。妙味を楽しむことすら僕には厳しい。こんなアルバムがこんなタイトルで、こんなジャケットで売られているジャズの世界も結構ビジネスありきだなあと思ってしまう。(2006年6月11日)