Rock Listner's Guide To Jazz Music


Joshua Redman


Mood Swing

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
レッドマン入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1994/3/8-10

[1] Sweet Sorrow
[2] Chill
[3] Rejoice
[4] Faith
[5] Alone In The Morning
[6] Mischief
[7] Dialogue
[8] The Oneness Of Two
[9] Past In The Present
[10] Obsession
[11] Headin' Home
Joshua Redman (ts)
Brad Mehldau (p)
Chiristian McBride (b)
Brian Brade (ds)
新世代のテナー・サックス奏者として、ブランフォード・マルサリスと並んで注目されていた初期の代表作。今思うと凄いメンバーがサイドを固めていて、曲、演奏共に非常にレベルが高いことに疑いはない。現代の若手が揃っているだけに内容は多彩で、ムーディな曲から、オーソドックスなフォービート・ジャズ、フュージョン風バラード、軽いラテン・タッチ、部分的にはフリー・ジャズ的なものまでと非常に幅が広い。それにもかかわらず散漫な印象は皆無で1曲ずつしっかり作り込まれた印象を受ける。一方で、少々真面目すぎて窮屈、弾けるような勢いがないという側面もあり、すぐに耳に残るような解りやすさにはやや欠けるのも事実。それでも90年代のアコースティック・ジャズとして、クオリティは高く、今聴いても色褪せてはいない。(2006年11月18日)

Spilit Of The Moment : Live At The Village Vanguard

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
レッドマン入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1995/3/21-26

Disc 1
[1] Jig-A-Jug
[2] My One And Only Love
[3] Count Me Out
[4] Second Snow
[5] Remember
[6] Dialogue
[7] St. Thomas

Disc 2
[8] Herbs And Roots
[9] Wait No Longer
[10] Beverend
[11] Just In Time
[12] Mt. Zoin
[13] Slapstick
[14] Lyric
Joshua Redman (ts)
Peter Martin (p)
Chiristopher Thomas (b)
Brian Brade (ds)
「Mood Swing」がシリアスでクールな緊張感のあるアルバムだったのに対して、こちらはクラブでのライヴとあって熱気あふれるムード。とにかくジョシュアのサックスが圧倒的に伸び伸びと歌っているのが印象的。しっかりと作り込まれたアコースティック・ジャズが「Mood Swing」、同じ編成でも自由に演奏したのがこのアルバム、この2枚で両面を味わうことができるのではないだろうか。僕はジョシュア・レッドマンはコルトレーンの影響がありつつも露骨にそれを見せないところに魅力を感じているんだけれど、ここはライヴということもあり、コルトトレーンの影響が結構表に出ている。ソプラノ・サックスのプレイはアトランティック時代のコルトレーンを連想させるほど。コルトレーンとお合わせてロリンズのテイストも交え、馴染みのスタンダードも自己流にしっかりと料理。共演者の演奏も、50〜60年代のジャズとはもちろん違うフィーリングで奔放なところが良くも悪くもこのアルバムの特徴。2枚組、約150分とボリュームが多く、まだ演奏に青さが見える時期ではあるけれど、バンド全体の演奏が活力に溢れた、いかにもライヴらしい熱い演奏をたっぷり聴ける。これぞジャズの醍醐味。(2024年2月11日)

YaYa3

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★
レッドマン入門度:★
評価:★★★
[Recording Date]
2002/Jan

[1] Slow Orbit
[2] Switchblade
[3] The Spirit Lives On
[4] One More Once
[5] Hometown
[6] Aeolio
[7] Two Remember, One Forgets
[8] The Scribe
[9] Confronting Our Fears
Joshua Redman (ts, ss)
Sam Yahel (org)
Brian Brade (ds)
便宜上このページに配置したこのユニット(ヤヤ・キューブドと読む)は元々、サム・ヤエル、ブライアン・ブレイドにピーター・バーンスタインというギタリストによるユニットだったそうで、バーンスタインの代役としてジョシュア・レッドマンがライヴに参加、その後、アルバムを制作するまでに発展したものらしい。曲はヤエルが5曲、レッドマンとブレイドが2曲ずつ提供。この3人のユニットは後にジョシュア・レッドマンのエラスティック・バンドへ発展するけれど、ここでのサウンドの感触はやや異なる。まず、サム・ヤエルがオルガンに徹しているところが最大の違い。ブライアン・ブレイドのドラムはジャズ・スタイルで貫いており、ヤエルのオルガンに合わせて時にフォービートも顔を出す。それでも伝統的なジャズとはムードが異なり、あくまでもこの時代相応のサウンドに仕上がっているところが面白い。ヤエル中心のプロジェクトでありつつオルガンでソロを弾きまくるということはなく、あくまでもバッキング的な演奏に終始、3人による民主的なユニットであることを主張している。曲がカッチリとしているエラスティック・バンドに対して、このユニットは曲はごく基本的な部分だけを決めてもっと自由に空間を使った演奏をしている感じで、それゆえにところどころ手探りに感じるところや緩さを感じるところもある。でも、その緩さがジャズらしくもあり、魅力でもある。ヤエルは現代のオルガン奏者としてもっと評価されてもいいと思う。(2007年2月13日)

Elastic

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★
レッドマン入門度:★★★★☆
評価:★★★★★
[Recording Date]
2002/Mar

[1] Molten Soul
[2] Jazz Crimes
[3] The Long Way Home
[4] Oumou
[5] Still Pushin' That Rock
[6] Can A Good Thing Last Forever?
[7] Boogielastic
[8] Unknowing
[9] News From The Front
[10] Letting Go
[11]-[12] The Birthday Song
Joshua Redman
              (ts, as, ss)
Sam Yahel (org, elp, p)
Brian Brade (ds)
このエラスティック・バンドはひとことで言ってしまうとフュージョン・グループ。若手の本格派ジャズ・テナー・サックス奏者として評価があった中、この路線に走ったことに落胆した人も多かったらしい。確かにアコースティック・ジャズを演っていたころとはまるでサウンドが違うから拒絶反応があったことは理解できる。しかし、そのサウンドは実にユニーク。サム・ヤエルのキーボードは、オルガン、エレピ中心の70年代の匂いがプンプンして、いまどきこんな音を出す人がいるのかと思うほど古臭い空気を発散している。ところが、そんなバッキングにジョシュアのテナーが乗ると聴いたことがあるようでない独特のサウンドになる。まさに古くて新しいフュージョン。曲も落ち着いたものから時にフリーキーでスリリングなものまで幅が広く、これまでにない音楽に挑戦している姿勢はもっと評価されてもいいんじゃないかと思う。特筆すべきはブライアン・ブレイドのドラム。ブレイドは良く言えばどんなスタイルでもこなせる、悪く言えばどの型が自分のスタイルなのかわからないタイプで、ウェイン・ショーターの「Footprints Live!」でバラバラかつ奔放なドラムを叩いているのと同じ人間とは思えないくらいシャープでタイトなドラミングをここでは披露している。クールだけど熱いジョシュアの個性も良く出た、ジャンルレスのトリオ・ミュージックを極めた1枚。(2007年2月19日)

Momentum

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★
レッドマン入門度:★★★★☆
評価:★★★★★
Released at 2005

[1] Soundcheck
[2] Sweet Nasty
[3] Just A Moment
[4] Shut Your Mouth
[5] The Crunge
[6] Riverside
[7] Creasy
[8] Lonely Woman
[9] Swunk
[10] Blowing Changes
[11] Double Jeopardy
[12] Put It In Your Pocket
[13] Showtime
Joshua Redman
     (ts, ss, org, synth)
Sam Yahel
     (synth, org, elp)
Brian Brade
 (ds [3][5]-[7][10][11])
Jeff Ballard
 (ds [1][2][4][8][9][13])

Flea (b [5] [10] [11])
Jeff Parker (g [6])
Meshell Ndegeocello
                     (b [7])
Stefon Harris (vib) [8] [9])
Kurt Rosenwinkel (g [9])
Peter Bernstein
                 (g [11] [12])
?uestlove (ds [12])
Nicholas Payton (tp [12])
エラスティック・バンド第二弾。サックス、キーボード、ドラムを基本とするところは変わっていない。サム・ヤエルはアナログなキーボードの味をそのままに隠し味的かつ効果的にシンセも織り交ぜる。タイプの異なる2人のドラマーを曲ごとに使い分け、それぞれが持ち味を十分発揮しているのがまた魅力。多彩なゲスト・ミュージシャンは「お客」の範疇に留まらず、ちゃんとバンドの一員として機能していて、ジョシュアの目指す音楽に昇華されているところは特筆できる。主役のサックスは前作以上に伸び伸びと歌っていて、実験的なユニットであるはずのこのグループの多様な音楽を、地に足が着いたものに感じさせてしまうほどの説得力を持っている。ベース入りが4曲(レッチリのフリーが3曲)、そしてヤエルのキーボード・ベースがより強調されていることによってグルーヴ感が増しているところが前作からの進化。グルーヴィなレッド・ツェッペリンの[5]も、現代的かつクールに料理したオーネット・コールマンの[8]も違和感なく聴けてしまう作品に仕上げたのはジョシュアの才能によるものだ。反面、トリオとしての可能性を追求したという意味では前作の方がチャレンジングだったかもしれない。とはいえ、ここにあるのは、ありそうでない、大衆的に見えて実はしっかりとした音楽性を持った独自のジョシュア・レッドマン・ミュージックということに疑いはない。これをフュージョンの一言で片付けるのではなく、自分の音楽観の枠にハマるかどうかという狭義な見方(思い込み)を抜きにして聴いてほしい。ジャズをバックグラウンドに持つだけでなくファンク、ロック系のミュージシャンまでもが集まって、このような柔軟な音楽を演っていることをもっと高く評価したい。(2007年2月20日)

Truth And Beauty / Sam Yahel Trio

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★
レッドマン入門度:★
評価:★★★
[Recording Date]
2005/Sep

[1] Truth And Beauty
[2] Man O'War
[3] Check Up
[4] Bend The Leaves
[5] Saba
[6] Night Game
[7] Child Watching
[8] A Paz
[9] Festinhas
Joshua Redman (ts)
Sam Yahel (org)
Brian Brade (ds)
名義はサム・ヤエル・トリオになっているものの、「YaYa3」の続編そのものと言える内容。「YaYa3」 は実質ヤエルのユニットだったことを考えれば当然といえば当然な流れではある。録音時期に3年半のギャップがあるにもかかわらず聴いての印象はほとんど変わらず、若干バンドとしてタイトになったかなあという程度。サウンドの中心は勿論ヤエルで、ジミー・スミスともソウル系のオルガンとも異なる個性は健在。ジョシュアは脇役に甘んじることなくいかにもジョシュアらしいフレーズでサポート、結構細かい小技を連発しているブライアン・ブレイドもさすが。アーシーな雰囲気とはまた違う2000年代のオルガン・ジャズ。(2007年4月22日)

Back East

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
レッドマン入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
2006/5/19-20
2006/6/18

[1] The Surrey With The Fringe On Top
[2] East Of The Sun
    (And West Of The Moon)
[3] Zarafah
[4] Indian Song
[5] I'm An Old Cowhand
[6] Wagon Wheels
[7] Back East
[8] Mantra #5
[9] Indonesia
[10] India
[11] GJ
[1][2][9]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier (b)
Ali Jackson (ds)

[8]
Joshua Redman (ss)
Chris Cheek (ss)
Larry Grenadier (b)
Ali Jackson (ds)

[10]
Joshua Redman (ts)
Dewey Redman (ts)
Larry Grenadier (b)
Ali Jackson (ds)

[11]
Dewey Redman (ts)
Larry Grenadier (b)
Ali Jackson (ds)

[3]
Joshua Redman (ss)
Christian McBride (b)
Brian Brade (ds)

[4]
Joshua Redman (ts)
Joe Lovano (ts)
Christian McBride (b)
Brian Brade (ds)

[5]-[7]
Joshua Redman (ts, ss)
Reuben Rodgers (b)
Eric Harland (ds)  
エラスティック・バンドで独自の音楽を追求してきたジョシュア・レッドマンが久しぶりにアコースティック・ジャズに戻ってきた。ピアノレス・トリオ編成でソリッドな演奏を目指すとともに、選曲も含めてかつてのサックスの巨人たちへのチャレンジの意味合いがあるようにも感じられる内容で、完成されたジョシュアのサックス・プレイをジャズの視点でピュアに堪能できる。それゆえに、やや真面目すぎる感じもそのまま出てしまっていて、表現の多様さやスケール感という意味ではソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンには及ばない。しかし、伝統的ジャズの再現を狙っていないのは確信的でもあり、あくまでも2000年代の感覚のジャズとして仕上げている。リズム・セクションは3組に分かれていて、クリスチャン・マクブライド+ブライアン・ブレイドのセッションが地味でやや面白みに欠けるものの、他の2組はアレンジもカッチリと決めてかなりリハーサルを積んだことを感じさせる緊密かつまとまりのある演奏。この編成だと当然重要性が高くなるドラムは、アリ・ジャクソン、エリック・ハーランドともに素晴らしいテクニックで聴き応え十分。彼らのタイトかつスリリングなドラムあってのこの企画と言ってもいいかもしれない。父親、デューイ・レッドマンのプレイ(右チャンネル)も衰えはなく、こうやって競演するとジョシュアと意外なほどスタイルが似ていることもわかる。(2007年5月10日)

Compass

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
レッドマン入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
2008/4/24-26

[1] Uncharted
[2] Fareway
[3] Identity Thief
[4] Just Like You
[5] hutchhiker's Guide
[6] Ghost
[7] Insonmmomaniac
[8] Moonlight
[9] Up Peu Fou
[10] March
[11] Round Reuben
[12] Little Ditty
[13] Through The Valley
[1]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier (b: left)
Reuben Rodgers (b: right)
Gregory Hutchinson (ds)

[2]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier (b)
Brian Blade (ds)

[3] [4] [8]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier
   (b: left-center)
Reuben Rodgers
   (b: right-center)
Brian Blade (ds: left)
Gregory Hutchinson
   (ds: right)

[5]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier (b)
Gregory Hutchinson (ds)

[6]
Joshua Redman (ss)
Larry Grenadier (b)
Brian Blade (ds)

[7]
Joshua Redman (ts)
Reuben Rodgers (b)
Gregory Hutchinson (ds)

[9] [11]
Joshua Redman (ts)
Reuben Rodgers (b)
Brian Blade (ds)

[10] [12]
Joshua Redman (ss)
Larry Grenadier
   (b: left-center)
Reuben Rodgers
   (b: right-center)
Brian Blade (ds: left)
Gregory Hutchinson
   (ds: right)

[13]
Joshua Redman (ts)
Larry Grenadier
   (b: center)
Reuben Rodgers (b: right)
Brian Blade (ds)
ピアノレス・トリオを基本としたソリッドなジョシュア流2000年代ジャズを聴かせた前作からの発展形とも言えるのが本作。ベースとドラムを二人ずつ擁し、曲によってその組み合わせと人数を柔軟に使い分けるという試みは取り立てて斬新とまでは言えないけれど、当たり前のアコースティック・ジャズをやっても面白くないというメッセージを感じる。ベートーヴェンの[8]を除いてジョシュア、あるいはメンバーとの共作というオリジナル曲で貫かれているところも前作と大きく違うところで、さらに人数が増えたことも関係して演奏は自由度を大幅に増した。その代わりにソリッドさはやや薄らぎ、冗長と思える部分も散見される。ジョシュアの生真面目な性格はここでもそのまま出ていてムード音楽とは異種のシリアスな演奏で占められているために安易に聴き流すのには向いていない。楽器の構成上、色彩感に乏しいから、BGMのように流していると地味なジャズに超えてしまう可能性もある。それでも演奏の質は高く、低音の迫力が良く伝わってくる優れた録音であるので、良いオーディオ環境で大きな音量で聴くとダイナミックかつ主張のあるジャズであることがよくわかる。(2009年1月24日)

James Farm

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
2010/8/26-29

[1] Coax
[2] Polliwog
[3] Bijou
[4] Chronos
[5] Star Crossed
[6] 1981
[7] I-10
[8] Unravel
[9] If By Air
[10] Low Fives
Joshua Redman (ts, ss)
Aaron Parks
(p, celeste, pump organ,
prophet-5, Rhodes,
Hammond home organ,
hums)
Mat Penman (b)
Eric Harland (ds)
ジョシュア・レッドマン名義ではなくJames Farmというグループ名義のアルバム。曲はすべてオリジナルでドラマーのエリック・ハーランドが1曲、他のメンバーが3曲ずつという民主的な振り分け、音楽の仕上がりも特に誰かが突出した感じがなく、グループとして音楽を表現することを意図していることがわかる。一時はエラスティック・バンドでフュージョン的な方向を進んだジョシュアも、その後は現代的でソリッドなピアノレス・ジャズに戻り、本作は更にオーソドックスなカルテット編成でジャズに向き合っている。音楽的にも特別奇をてらった内容ではなく2010年代のスタイルでの王道ジャズ。ここでは、気持ちは熱くても頭脳は冷静という今風なスタイルの熱演が聴ける。そもそも、ジャズというスタイルの音楽じたいがすでに形骸化している現代においてオーソドックスな編成で「今」のジャズを演ること、オリジナリティを出しながら聴き手を満足させるパフォーマンスを打ち出すことはある意味チャレンジであると言える。ジョシュアのテナーは高音を多用しつつどこかドライないつも通りの音で、グループとしてのサウンドの感触は、(ストリングス編曲のことは抜きにして)ブラッド・メルドーの「Highway Rider」のムードに近い。表面的な斬新さはなく、むしろ地味と言えるかもしれない内容だけれど、グループとしての表現に心を砕きつつ、ジャズの原点である演奏のクオリティで勝負しようという意欲を買いたい。(2011年4月30日)

Walking Shadow

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★
レッドマン入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
2012/9/27-29

[1]The Folks Who Live On The Hill
[2] Lush Life
[3] Stop This Train
[4] Adagio
[5] Easy Living
[6] Doll In Mine
[7] Infant Eyes
[8] Let It Be
[9] Final Hour
[10] Last Glimpse Of Gotham
[11] Stardust
[12] Let Me Down Easy
Joshua Redman (ts, ss)
Brad Mehldau
  (p except [4][10])
Larry Granadier
  (b except [3][5][9][10])
Brian Brade
  (ds except [5][9][10])
[1][5][11]がスタンダード、[3]がジョン・メイヤー、[4]はJ.S.バッハ、[7]ウェイン・ショーター、[8]レノン/マッカートニーという曲の選び方は、プロデューサーであるブラッド・メルドーのカラーが色濃く出ているように思える。他には[9][12]がジョシュアのオリジナル、[10]がブラッド・メルドーのオリジナル。メルドーの「Highway Rider」でアレンジを担当していたメルドーとダン・コールマンが施したストリングスのアレンジ(他にはパトリック・ズィメーリ、ジョシュア本人)、更に関わっている顔ぶれも「Highway Rider」とほぼ同じとなれば当然ながら音楽の雰囲気は似てくる。ややダークで屈折した、良くも悪くもただのムード・ミュージックになっていないのはジョシュアとメルドーの個性がそのまま出ているからでしょう。ただし、メルドーのアルバムよりこちらの方が親しみやすいのは、ジョシュアのサックスを音楽の中心に据えたが故か。そのサックスは力強さを控えており、彼独特の粘っこいリリカルなプレイも殆ど出てこないために、ジョシュア流のスタン・ゲッツ的表現になっているところがこのアルバムの聴きどころ。ストリングスが入っていたりいなかったり(入りは半分以下)して、選曲も幅広い構成は、ともすれば中途半端なものになりがちだけれど一本筋が通ったものになっているのは地力がしっかりしていることの証左。個人的には[7]のソプラノ・サックスによるプレイ、全編で脇役に回っているメルドーのプレイ([11]のごくオーソドックスなソロがなんと新鮮なことか)に耳を奪われる。[8]は後半のジョシュアのプレイ(このアルバムで一番力が入っている箇所)でなんとか面目を保っているものの、有名すぎる曲であることも手伝ってかなり安っぽいムードになってしまっていて企画倒れの印象。全体としてはジョシュアがこれまでやってこなかった方向性のアルバムなのでまずは新鮮味があるとは思うものの、何年か経ってからも繰り返し聴けるかどうはちょっと微妙かも。(2013年6月9日)

Trios Live

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
レッドマン入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
2009/Oct [1][5]-[7]
2013/Feb [2]-[4]

[1] Moritat(Mack The Knife)
[2] Never Let Me Go
[3] Soul Dance
[4] Act Natural
[5] Mantra #5
[6] Trinkle, Trinkle
[7] The Ocean
[1][5]-[7]
Joshua Redman (ts, ss)
Mat Penman (b)
Gregory Hutchinson (ds)

[2]-[4]
Joshua Redman (ts, ss)
Reuben Rodgers (b)
Gregory Hutchinson (ds)
バンド名義でのニュー・ジャズ、ストリングス入りアルバムなど、企画性の高いアルバムが続いた近年は新しいことに挑戦し続けるジョシュアの姿勢が見えたものだけれど、ここに来てもうひとつの活動ベースであるピアノレス・トリオ編成のライヴ・レコーディング音源をリリースしてきた。2009年の録音はワシントンDCのBlues Alley、2013年の録音はニューヨークのJazz Standardというクラブでのもの。曲構成としては、[1]超有名スタンダード、[2]がナット・キング・コールで知られたスタンダード、[3]-[5]がジョシュアのオリジナル、[6]がセロニアス・モンク、[7] がエラスティック・バンドでも取り上げていたレッド・ツェッペリンという構成。既に「Back East」「Copmass」でピアノレスのパフォーマンスは周知済みであり、そういう意味では新鮮味は薄い。実際に聴いてみても、細い高音域を多用するなどジョシュアのいつもプレイで、ライヴならではの自由度の高いパフォーマンスを楽しむことができる。注目はレッド・ツェッペリンの[7]をアコースティック編成で演っているところだけれど、遊び感覚で演っているようでなんとなく無理がある感じは否めない。特別な意図を持ったリリースというよりは、日常的なジョシュアの活動を楽しんでくださいという肩の力が抜けた企画であるように思う。ファンなら十分楽しめるはず。(2014年7月6日)

The Bad Plus Joshua Redman

曲:★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★
Released in 2015

[1] As This Movement Slips Away
[2] Beauty Has It Hard
[3] County Seat
[4] The Manding
[5] Dirty Blonde
[6] Faith Through Error
[7] Lack The Faith But Not The Wine
[8] Friend Or Foe
[9] Silence Is The Question
Joshua Redman (ts)
Ethan Iverson (p)
Reid Anderson (b)
David King (ds)
ジョシュア・レッドマンがリーダーのアルバムではなく、ザ・バッド・プラスとのコラボレーション・アルバム。全曲オリジナルで、リード・アンダーソンが4曲、イーサン・アイヴァーソンが2曲、ジョシュアが2曲、デイヴィッド・キングが1曲と民主的な配分。ザ・バッド・プラスは、一見ジャズ・ピアノ・トリオの体裁を採りながら、ロックから現代音楽まで貪欲に採り入れた自由な作風と演奏を得意とし、高度な音楽性とポップで俗っぽいところがごちゃまぜになっているところに魅力があるんだけれど、俗っぽさの部分があまりおもしろくなくて僕はアルバム1枚聴き通すとどうしても飽きてしまうところがある。そこにジョシュアが絡むとどうなるかという、誰もが注目するポイントについて言うと、良くも悪くも予想通りの音楽という印象。あくまでも主役はザ・バッド・プラスの方で、このピアノ・トリオの土俵でジョシュアが高音主体の抽象的なテナーで溶け込んだ内容になっている。とはいえ、アイヴァーソンの2曲とザ・バッド・プラスのデビュー・アルバム収録曲の再演である[9]におけるフリー・ジャズ的な展開ではジョシュアも躍動(しかしあくまでもクールに)していて、全体を通して飽きない内容になっているところが魅力。異端扱いされるザ・バッド・プラス、しかしこれは現代のジャズとしてとても筋が通ったアルバムに仕上がっていており、聴きやすいとは言えないものの、その分聴き応えがある。欲を言えばあともう少しだけ突き抜けた想定外のサプライズがあれば言うことなし。(2015年6月13日)

Nearness / Joshua Redman & Brad Mehldau

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
レッドマンまたはメルドー
入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
2011/11/12 (Spain)[1]
2011/11/16 (Switzerland)[2]
2011/11/14 (Netherlands)[3]
2011/11/24 (Germany)[4]
2011/11/23 (Germany)[5]
2011/7/7 (Norway)[6]

[1] Ornithology
[2] Always August
[3] InWalked Bud
[4] Mehlsancholy Mode
[5] The Nearness Of You
[6] Old West
Joshua Redman (ts, ss)
Brad Mehldau (p)
他の項目でも書いている通り、ロックやジャズの面白さとは3〜6人くらいのバンド構成でそれぞれのメンバーが自己主張し、うまくぶつかり合ったり融合したりする点にあると思っている。これより人数が多いとアンサンブル重視になって自由度が低くなるし、少ないと(即ち2名だと)絡みが1対1になっ別の意味で自由度が制限される。だから僕はデュオというのはあまり好きではない。更に言うと、ロックにもジャズにも強靭なビート感を求めるのでドラムがない編成はあまり興味が沸かない。そこに登場したのが、オールド・ジャズを愛好している僕が現役ジャズ・ミュージシャンで追いかけている2人の組み合わせによるこのアルバム。録音記録によると2011年に欧州ツアーをしたときのライヴらしい。聴いてみたらやはりちょっと僕には物足りない。しかし、2016年10月14日に日本でのライヴを観てかなり印象が変わった。やはりジョシュアのサックスの音色は素晴らしいし、上手い。メルドーのピアノもトリオのときと同じくらい魅力的。もちろん生で聴くという体験はCDでは得られない感動があるとはいえ、なんてことはない、CDをちゃんと聴いていなかっただけのこと。ベースとドラムがないため、ともすればBGM的に聴き流してしまいがちになってしまうけれど、この2人の音楽はじっくり向き合って聴くべきものだった。一度そういう魅力がわかるとCDの演奏まで輝きを見せ始める。もちろん、僕のようにビートをジャズに求める人には向いていないから今でもこれは最高だ、というつもりはないけれど、豊かな音楽性と聴きどころたっぷりの演奏であることは間違いない。(2016年10月15日)

Still Dreaming

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
レッドマン入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
2017/4/2,3

[1] New Year
[2] Unanimity
[3] Haze And Aspirations
[4] It's Not The Same
[5] Blues For Charlie
[6] Playing
[7] Comme Il Faut
[8] The Rest
Ron Miles (cornet)
Joshua Redman (ts)
Scott Colley (b)
Brian Blade (ds)
ジョシュア・レッドマンの自作が4曲、メンバーであるスコット・コリーが2曲、チャリー・ヘイデンとオーネット・コールマンの曲がそれぞれ1曲ずつという曲構成。編成からも予想がつく通り、ピアノレスのオーネット・コールマン・カルテットを下地にした、というかほとんどそのものと言えるサウンドになっている。硬質でありながら、ノンビリしたムードも漂い、どこか冷めたところがあったオーネット60年代カルテットの特徴をあえてそのまま受け継いだ印象。今、このサウンドを打ち出すことに何の意味があるのか、という疑問が頭をもたげないでもないけれど、父デューイ・レッドマンの人脈からもジョシュアのオーネットとのつながりは明白で、ファミリーで継承する音楽として、いつかはこの方向性でやってみたかったのかもしれない。オーネットが持っていた毒っ気はやや薄れ、現代的な表現での再生になっているのは確かで、演奏レベルも格段に上(というかオーネットのカルテットはかなり演奏が粗かった)。ブライアン・ブレイドのタイトなドラムが全体の底上げに貢献していて、オーネットの再現音楽だとしても十分楽しめるものに仕上がっているのはさすが。(2018年6月3日)

Come What May

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
2018/5/8,9

[1] Circle Of Life
[2] I'll Go Mine
[3] Come What May
[4] How We Go
[5] DGAF
[6] Stagger Bear
[7] Vast
CJoshua Redman (ts)
Aaron Goldberg (p)
Reben Rodgers (b)
Gregory Hutchinson (ds)
近年のアルバムを改めて振り返ってみると、ザ・バッド・プラスやブラッド・メルドーとのコラボ、ストリングス入り企画モノ、オーネット・コールマン・トリビュート的なカルテット、あとは自由気ままなトリオ編成のライヴが並んでいて、気がつけば自身のコアな音楽性を表現するスタジオ・アルバムとしては約10年ぶりとなる本作。また、短期プロジェクトだったJames Farmを除くと、久しぶりにピアノ入りのオーソドックスなワンホーン・カルテットでもある。全曲ジョシュアのオリジナルで、それを馴染み深い顔ぶれのメンバーで演奏するという趣向。2つの拍が同時進行する凝ったリズムで始まる[1]から最後まで、曲とアレンジはしっかり構成されており、音楽の方向性も一貫性があることから、入念に準備してレコーディングに臨んだ印象を受ける。時に複雑に、時に緩く、柔軟に展開される(フォービートはほとんど顔を出さない)リズム・セクションが印象的で、そうした現代的な要素をも備えながら、ジャズらしさをいささかも失っていないのは演奏技術の高さに溺れることのない自由度の高いジャズ・マインドを全員が持っているからでしょう。ジョシュアのテナーは従来どおり高音域を多用しているものの、かすれ気味のトーンで雑味を持たせるなど、あえてカッチリとした演奏を避けている感じもあり、以前ほどグイグイ力技で押そうとはしていない。練られた曲とアレンジ、それでも演奏は自由度が高いという相反する要素を両立させ、まだまだ新しいジャズ、鮮度の高いジャズというのは生まれるものなんだということを再認識させる好盤。(2019年5月21日)

Sun On Sand /Joshua Redman & Brooklyn Rider

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Release Date]
2015/4/29-5/1

[1] Flash
[2] Between Dog And Wolf
[3] Sun On Sand
[4] Dark White
[5] Soft Focus
[6] Through Mist
[7] Starbursts And Holes
[8] Between Dog And Wolf (Reprise)
Joshua Redman (ts)
Scott Colley (b)
Satoshi Takeishi (ds)

Brroklyn Rider:
Colin Jacobsen (vl)
Johnny Gandelsman (vl)
Nicholas Cords (viola)
Eric Jacobsen (cello)
ニューヨークのジャズ/現代音楽の作曲家/サックス・プレイヤーである(そしてジョシュアの「Walking Shadows」のアレンジも手掛けた)パトリック・ジマーリによる、作曲・アレンジの曲を全編に揃えた実験的なアルバム。ジマーリがテナー・サックス、ストリングス・カルテット、ベースとパーカッションの為に作曲した「Aspects Of Arknessand Light」から選り抜いた8曲とのこと。サックス、ベース、ドラムのトリオと、クラシックの定番フォーマットである弦楽四重奏が組み合わされた編成から、ジャズのピアノレス・トリオに装飾的にストリングス・カルテットが加わる音楽なのかと勝手に想像していたら、だいぶ雰囲気が違う。ドラムは通常のジャズ系ビートではなく、タムタムを小刻みに回し、ベースは抽象的にウネリ、ジョシュアの高音を多様したサックスが滑らかにフレーズを紡ぐ。その演奏は決して熱さを主張するものではなく、ストリングス・カルテットはクラシック的な表現とはまったく異なる、美しさやカタルシスとは異なるベクトルの編曲が控えめに曲を彩るという構成。決してわかりやすくはなく、そうかと言って前衛的でもない内省的な世界が淡々として続く。メロディや曲のムードに共通性はまったくないものの、オーネット・コールマンが70年前後に展開していた実験性と通じるものを感じる。ジョシュアのサックスは聴けるし、ジョシュアの名義でリリースされているとはいえ、音楽的には完全にパトリック・ジマーリのものなので、そこを楽しめるかどうかがポイント。(2019年11月17日)

RoundAgain / Redman Mehldau McBride Blade

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
2019/9/10-12

[1] Undertow
[2] Moe Honk
[3] Silly Little Love Song
[4] Right Back Round Again
[5] Floppy Diss
[6] Father
[7] Your Part To Play
Joshua Redman (ts, ss)
Brad Mehldau (p)
Chiristian McBride (b)
Brian Brade (ds)
若きジョシュア・レッドマンのリーダー・アルバム「Mood Swing」は、今思うと豪華メンバーだったことは周知の事実。同じ顔ぶれで26年ぶりに録音された本作は、メルドー自ら"It’s like playing with The Avengers"と言う通り、全員が中堅の大御所になった4人の再会で、近年のジャズ・アルバムとしては破格の話題作でもある。アルバム・リリースに先駆けてライヴ動画も公開され、自由奔放でありがながらしっかりとまとまりのある現代においてはオーソドックスなジャズであることはわかっていた。てっきりライヴ・アルバムとしてリリースされるのかと思っていたら、そのライヴだった9月7日、8日はリハサール・ギグであったことがクレジットされており、数日後にスタジオで録音されたのがこのアルバムということになる。動画で観ていた自由度の高いライヴ演奏と比べると、本作はやや抑えた、そして作り込まれた内容となっている。よって、スター4人がガツガツと自己主張したものではなく、グループ表現に注力された印象を持つ。硬軟取り混ぜた内容ながら、この4人なら曲と演奏のバリエーションをいくらでも広げることができたはずなのところ、45分という収録時間に凝縮しているところに単なるお祭り的な集まりではなく、やり過ぎ感のない、一定のまとまりを持ったアルバムとして残そうという意思が感じられる。見せびらかすようなことをせずとも個別のプレイはさすがのレベルにあって、細かいフレーズひとつひとつまで聴き逃がせない。求められる状況に応じて別人のようにスタイルを変えることができる職人ブライアン・ブレイドは、微妙にルーズさを漂わせながらスネアとシンバルの刻みが忙しいチック・コリア・トリオに近いスタイルでリズムを下支えしていて印象的。近年は自己陶酔が過剰な印象だったブラッド・メルドーが、サイド・ピアニストとして実直かつ、いかにもメルドーらしい個性的な演奏をしているところが白眉。でも、演奏はさすがと思わせるのに繰り返し聴いてももうひとつ心に残らないのはなぜなんだろう?(2020年12月9日)

LongGone / Redman Mehldau McBride Blade

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
2019/9/10-12 [1]-[5]
2017 [6]

[1] Long Gone
[2] Disco Ears
[3] Statuesque
[4] Kite Song
[5] Ship To Shore
[6] Rejoice
Joshua Redman (ts, ss)
Brad Mehldau (p)
Chiristian McBride (b)
Brian Brade (ds)
前作と同じセッションから5曲と、「Mood Swing」に収録されていた[6]の2007年サンフランシスコのジャズ・フェスティバルからのライヴという構成。各メンバーが持ち寄った曲を採用していた前作とは異なり、全曲ジョシュア・レッドマンのオリジナルで([1]はエラスティック・バンドの"Letting Go"の改作か)はあるけれど、同じセッションからとあって音楽の方向性、質はまったく変わらない。さて、前作を何度か繰り返して聴いてきた今、思うところは、たしかにこの4人は現在のジャズ界のスター集団であり、演奏の質もそれぞれに流石ではあるということ。しかし、何か特別なジャズになっているかというとそこまでではない。期待値を上げ過ぎると、「こんなものか」となるし、個性的な演奏に聴き入ると「流石」という評価になるんじゃないだろうか。音楽的にジョシュアの近作「Come What May」の方が惹きつけられる。肩の力を抜いて気ままにこの4人で作ってみました、というのは悪くはないけれど、[6]を聴くとライヴの方がずっと良さそうだと感じさせてしまうところが残念なところである。(2022年9月25日)

Where We Are

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Release Date]
2023/9/15

[1] After Minneapolis (face toward mo
[u]rning)
[2] Streets Of Philadelphia
[3] Chicago Blues
[4] Baltimore
[5] By The Time I Get To Phoenix
[6] Dou You Know It Means
    To Miss New Orleans ?
[7] Manhattan
[8] My Heart In San Francisco (Holiday)
[9] That's New England
[10] Alabama (intro)
[11] Star Dell On Alabama
[12] Alabama
[13] Where Are You
Josuha Redman (ts, ss)
Aaron Parks (p)
Joe Sanders (b)
Brian Blade (ds)
Gablielle Cavassa
 (vo except [1][4][10][12])
Kurt Rosewinwinkel (g [2]
Joel Ross (vib [3])
Novholas Payton (tp [6])
フィーチャリング・ガブリエル・カヴァッサと付く通り、ヴォーカル曲を中心とした新しい試み。そのヴォーカリスト、ガブリエル・カヴァッサの声質はアストラッド・ジルベルトに似たハスキーで気だるさを備えつつ、声の深みと豊かな発声と安定した音程でしっとりと歌う。ジョシュアは激しいフレーズは封印し、じっくり聴かせるフレーズを中心にしつつも[1][12]のように捩れたフレーズも織り交ぜ、出すぎず控えすぎずに歌に寄り添う様は伴奏奏者として一級品と呼ぶに相応しい。ゲスト参加の4曲がサウンドに彩りを与え([6]でのジョシュアとニコラス・ペイトンの絡みは実にお見事)、ゆったり調の歌モノでありながらムード音楽に陥ることがない味わい深さがある。アメリカの都市を歌った曲を並べるコンセプトを含め、ヴォーカル・アルバムとして完成度が極めて高い。控え目な演奏に徹するサイド・メンバーのツボを抑えたサポートも文句なし。(2023年11月7日)