Rock Listner's Guide To Jazz Music


Jackie McLean


4, 5 and 6

曲:★★★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★★★★
マクリーン入門度:★★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1956/7/13 [1]-[3]
1956/7/20 [4]-[6]

[1] Sentimental Journey
[2] Why Was I Born?
[3] Contour
[4] Confirmation
[5] When I Fall In Love
[6] Abstraction
Bonald Byrd (tp) [3] [4] [6]
Hank Mobley (ts) [4]
Jackie McLean (as)
Mal Waldron (p)
Doug Watkins (b)
Art Taylor (ds)  
曲によって参加人数が異なり、それがそのままタイトルになったハード・バップ時期におけるマクリーンの代表作。ただし、基本はマクリーンのワン・ホーン。演奏はメンツを見ればそのまま音が想像できてしまうような身構えずに聴ける典型的なハード・バップで、奇をてらったところは一切なく、それこそがこのアルバムの良さでもある。堅実かつ軽快なアート・テイラーのドラムが地味にボトムを支え、それに乗るマクリーンのアドリブは好調で哀愁のマクリーン節をたっぷりと味わうことができる。マル・ウォルドロンはいつも通り朴訥と、ドナルド・バードもマイペース、1曲だけ参加のモブレーも例の脱力系フレーズで応酬。というわけでソツがなくアクもない実に聴きやすい内容でマッタリという言葉が実によく似合う。ちょっと気軽にハード・バップでも聴いてみようかというときに手が伸びてしまう、万人にお勧めできるアルバム。(2006年11月7日)

Swing Swang Swingin'

曲:★★★★
曲:★★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★☆
マクリーン入門度:★★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1959/10/2

[1] What's New
[2] Let's Face The Music And Dance
[3] Stablemates
[4] I Remember You
[5] I Love You
[6] I'll Take Romance
[7] 116th And Lenox
Jackie McLean (as)
Walter Bishop Jr. (p)
Jimmy Garrison (b)
Art Taylor (ds)
マクリーン初期の代表作。1曲を除きスタンダード、そして軽快な演奏で占められている。ワン・ホーンということもあり、マクリーンの青臭くも哀愁溢れるトーンをたっぷり堪能できる。59年という時期を考えるとこの種のハード・バップは既に時代遅れになりつつあったのかもしれないけれど、ノリ一発で一気に録音した感じの気軽さがいい。企画性、計画性でスペシャル感を打ち出すのがブルーノート、一方で時に本人のやりたいようにやらせるのもまたブルーノート。シリアスなムードが蔓延するフリー・ジャズやモード・ジャズもいいけれどこういうアルバムもまた良い(特に歳を重ねて行くと)。後のことを考えるとオーソドックスに演奏しているギャリソンの骨太なベースも光っている。(2006年9月10日)

Bluesnik

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
マクリーン入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1961/1/8

[1] Bluesnik
[2] Goin' Way Blues
[3] Goin' Way Blues (alt take)
[4] Drew's Blues
[5] Cool Green
[6] Blues Function
[7] Torchin'
[8] Torchin' (alt take)
Freddie Hubbard (tp)
Jackie McLean (as)
Kenny Drew (p)
Doug Watkins (b)
Pate La Roca (ds)
タイトル通り、ブルースにフォーカスした明快なコンセプトのアルバム。マクリーンはフレーズの基本こそ従来と変わっている感じがしないものの、そのサウンドは後の路線を連想させるフレッシュさと力強さがある。ハバードのフレーズも同様にフレッシュ、一方でブルースを演らせても一流であることがよくわかる。ドリューの洗練された軽快なピアノは、とかく重々しいと思わせるブルースのイメージを払拭。ここでは古株に属するダグ・ワトキンスの低重心ベースと、ピート・ラ・ロカのクセのないドラムが、サウンドに安定感をもたらす。全曲オリジナル(マクリーン2曲、ドリュー3曲、ハバード1曲)で構成し、演奏も60年代の感覚に満ちたものとなっているため安易なリラクゼーションを求めたブルース集になっていないところはさすがブルーノートといったところか。この時代のブルース・アルバムといえば「Coltrane Plays The Blues」というものもあり、旧来のジャズの基本であるブルースをリスペクトしながらもオリジナリティを確立しようとする意識の高さが見える点が共通、両者ともにその成果は素晴らしいものになっている。(2008年6月7日)

A Fickle Sonance

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
マクリーン入門度:★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1961/10/26

[1] Five Will Get You Ten
[2] Subdued
[3] Sandu
[4] Fickle Sonance
[5] Enitnerrut
[6] Lost
Tommy Turrentine (tp)
Jackie McLean (as)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
ハード・バップのフィーリングを残しつつ、テーマにせよアドリブにせよ従来の路線から抜け出そうとしているという点でマクリーン流の新主流派ジャズの出発点とでも言えるアルバム。アルト・サックスの音色は従来の哀愁味よりも鋭さが前面に出てきているのが特徴。とはいえ、後に確立したアグレッシヴでパワフルなスタイルと比べるとまだ新しくなりきれていない。トミー・タレンタインのトランペットはあまり新しさを感じさせないし、かといってオーソドックスな渋さがあるわけでもなく個性不足か。ベースとドラムはこの先もブルーノートを支える60年代のリズム隊ながら峠を過ぎたソニー・クラークという選択が微妙。これがブルーノート復帰後初の録音となったクラークのトーンは以前とあまり変わっていないのがうれしいと思う反面、クラーク・ファンの僕でもこのアルバムのサウンドにはあまり合っていない感じがする(クラーク重視なら「Leapin' And Loapin'」を)。あえて不協和音のようなテーマを与えた[4]をはじめ、意欲はわかるものの狙っている新しい音楽を消化しきれていない。過渡期の音楽というのは過渡期ゆえに面白いものができあがることがあるけれど、ここでは中途半端な印象に留まる。(2007年3月26日)

Let Freedom Ring

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
マクリーン入門度:★★
評価:★★
[Recording Date]
1962/3/19

[1] Molody For Melonae
[2] I'll Keep Loving You
[3] Rene
[4] Omega
Jackie McLean (as)
Walter Davis Jr. (p)
Herbie Lewis (b)
Billy Higgins (ds)
62年ともなればハード・バップの次を担う新しい感覚のジャズが主流になってきたころで、このアルバムもそういった流れに乗ったものになっている。それを実現させることのできるメンバーでサイドを固め、狙い通りのサウンドを得ており、マクリーンがニュー・ジャズ宣言をした作品としてこのアルバムは人気があるらしい。また、折りしもコルトレーンの存在が大きくなってきたころでもあり、もったいぶった始まり方の[1]や、随所に見られるアルトのフレージングにその影響が窺える。小気味良いヒギンズのビートに切れ込むマクリーンのシャープなアルトはなかなか良いんだけれど、前後の流れに関係なく唐突にフラジオ(裏声のように高音でピーと鳴らす奏法)を組み込む必然性はあまり感じられず、気持ちは最先端、でも表現がついて行っていないという印象。この後の作品の方が目指そうとしている新しいサウンドを消化できていると思う。でもマクリーンが好きな人は、そういう未成熟なところも魅力とのことなので、このアルバムは実はかなりマニアックにマクリーンを楽しむ人向けなのかもしれない。(2006年9月12日)

Vertigo

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
マクリーン入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1963/2/11 [1]-[5]
1962/6/14 [6]-[11]

[1] Marney
[2] Dusty Foot
[3] Vertigo
[4] Cheers
[5] Yams
[6] The Three Minors
[7] Blues In A Jiff
[8] Blues For Jackie
[9] Marilyn's Dilemma
[10] Iddy Bitty
[11] The Way I Feel
[1]-[5]
Donald Byrd (tp)
Jackie McLean (as)
Herbie Hancock (p)
Butch Warren (b)
Tony Williams (ds)

[6]-[11]
Kenny Dorham (tp)
Jackie McLean (as)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
所謂オクラ入り音源の1枚で、2回分のセッションを集約した2枚組のような構成。ニュー・ジャズを志向し始めた時期のセッションで、メンバーがまったく違っていながら共に同じ編成のオーソドックスなクインテットで、結果的にはそれぞれの味を楽しめる構成となっている。初めに結論めいたことを書いてしまうと、後にボビー・ハッチャーソンを迎えてからのサウンドの方がやはり斬新かつクールで価値が高いと思えてしまう。それでもやはりこの時期のマクリーンは充実しているのもまた事実で演奏の質は十分高い。前半は新進気鋭のハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムズのフレッシュな感覚が際立っており、当時のマクリーン・サウンドを強力に支えている。バードはこのサウンドには少々古い感じが否めないものの、グループとしてのまとまりという点ではこのくらいの中庸さがちょうど良いかもしれない。後半は、当時レギュラー・グループを組んでいたケニー・ドーハムとのコンビで、ソニー・クラークが参加しているのがポイント。グループのサウンドの鮮度がやや劣るのは、クラークとハンコックの違いによるところが大きいとはいえ、クラークの持ち味を愛する向きにはこちらの方が楽しめるに違いない。いつ聴いてもドーハムらしいプレイはここでも健在で、しかし、マクリーンとのコンビに特別なケミストリーと言えるほどのものは感じない。肝心の主役のプレイは両セッションを通じてブレがなく、アグレッシヴさを強めてきたこの当時のパフォーマンスを十分に楽しめる。そのブレない主役のプレイ故に、ピアノとドラムが際立つサウンド・バランスを持つ前半セッションと、常識的なカルテットのバランス感を持つ後半セッションとの違いを楽しめる良質な音源集。(2011年4月17日)

One Step Beyond

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
マクリーン入門度:★★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1963/4/30

[1] Saturday And Sunday
[2] Frankenstein
[3] Blue Rondo
[4] Ghost Town
Jackie McLean (as)
Grachan Moncur V (tb)
Bobby Hutcherson (vib)
Eddie Khan (b)
Tony Williams (ds)
トロンボーンであっても柔らかい音よりもシャープさで勝負するモンカー3世、クールに切れ込むハッチャーソン、テナー・サックスから転向したばかりの異色のキャリアの持ち主カーン、既に才能全開の17歳トニー・ウィリアムス、とピアノ・レス編成を新鋭で揃えた顔ぶれ。それにふさわしいフレッシュなサウンドにマクリーンの鋭いアルトが際立つ名作。マクリーンが2曲、モンカー3世が2曲とオリジナルで固め、アルバム・タイトルと凛々しいジャケットが示すように先を見据えた力漲るサウンドは聴き応え十分。ハイテンションでクールなサウンドは今聴いてもフレッシュ。[1][3]のアップ・テンポの曲は、特にトニーのドラムの切れ味が鋭い。[2]は後にアーチー・シェップも取り上げたトロンボーンの音が似合うテーマを持ったミドル・テンポの曲。[4]ではフリー・ジャズ的なムードも漂う。マクリーンがリーダーとして製作した60年代のアルバムの中ではサウンドのオリジナリティと力強さの点で屈指の1枚。(2006年9月19日)

Destination Out

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
マクリーン入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1963/9/20

[1] Love And Hate
[2] Esoteric
[3] Kahlil The Prophet
[4] Riff Raff
Jackie McLean (as)
Grachan Moncur III (tb)
Bobby Hutcherson (vib)
Larry Ridley (b)
Roy Haynes (ds)
「One Step Beyond」で新しいジャズのスタイルを固めたマクリーンの続編的アルバム。フロント・ラインは同じメンバーでベースとドラムが入れ替わるも、シャープでクールなサウンドに陰りはなく、トニー・ウィリアムスよりもロイ・ヘインズが好きな人にはむしろこちらの方が聴きやすいはず。この時期のマクリーンのアルバム、グイグイ惹きつけられる演奏がある反面、曲によってはあんまりパッとせず、要はデキ不出来が激しい。このアルバムは、同時期のアルバムに見られる超高速で疾走するエネルギッシュな曲がなく、じっくり聴かせる曲が多いために少々地味な印象がするものの、曲によるパフォーマンスのバラつきがなくアルバム全体のイメージに統一感があるところがいい。しかも、この時代ならではのマクリーンの音楽そのもので、ハッチャーソンのヴァイブがフレッシュでサウンドを引き締めていて本当にカッコいい。話題になることは少ないけれど決して難解ではないマクリーン流ニュー・ジャズを示す快作。(2010年10月10日)

It's Time

曲:★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
マクリーン入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1964/8/5

[1] Cancellation
[2] Das' Dat
[3] It's Time
[4] Revillot
[5] 'Snuff
[6] Truth
Charles Tolliver (tp)
Jackie McLean (as)
Herbie Hancock (p)
Cecil McBee (b)
Roy Haynes (ds)
ハード・バップから脱却してからのマクリーンの音楽はフレッシュで凛々しい。アルトのフレーズも従来からの独特のトーンがより鋭くなりアグレッシヴ。「Let Freedom Ring」ではまだ「新しいジャズを演らねば」というあせりのようなものを感じたけれど、モンカー、ハッチャーソン特務ようになってから方向性を確信したように見える。ここではチャールズ・トリヴァーを新たにパートナーに迎えオーソドックスなクインテット編成で臨む。トリヴァーとマクリーンでそれぞれオリジナル3曲を書き下ろし、音楽そのものはこの時代を反映した新主流派系の勢いを持ち込んだジャズとなっている。トリヴァーはプチ・フレディ・ハバードのような感じでやや個性に欠けるものの、バンドの目指す方向性には合っているしリズム・セクションのフィーリングも新しい。特筆すべきはハンコックで、イマジネーション溢れるバッキングは時にソロ奏者を食ってしまっているほど。アルバム全体としては、新スタイルの曲だけでなくブルースやバラードもソツなく収録しており、そこを散漫で中途半端と感じるか、幅広くバランスが良いと感じるかで評価が分かれるかもしれない。(2006年9月11日)

Action

曲:★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
マクリーン入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1964/9/16

[1] Action
[2] Plight
[3] Wrong Handle
[4] I Hear A Rhapsody
[5] Hoothan
Charles Tolliver (tp)
Jackie McLean (as)
Bobby Hutcherson (vib)
Cecil McBee (b)
Billy Higgins (ds)
前作「It's Time」からわずか6週間後の録音。チャールズ・トリヴァーはそのままにハービー・ハンコックからボビー・ハッチャーソンにスイッチ、オーソドックスなクインテット編成とは異質のシャープかつクールなムードを作ることに成功している。曲はマクリーンとトリヴァーが2曲ずつ、スタンダードが1曲という構成で、フレッシュで先進的(決して前衛的ではない)なマクリーン流ニュー・ジャズを展開。ハイテンションで疾走する[1]におけるハッチャーソンの鋭いプレイは特筆モノで、他の曲でもサウンドの核になっている。トリヴァーは前作同様さほど印象を残さないけれど、このムードには合っている。ビリー・ヒギンズのドラムは疾走感なら任せておけという感じ。マクリーンはここでも、アルト・サックスならではの音で力強く鋭いトーンを繰り出している。そんな代表的なトラックが[1]で、1曲目で「おおっ」と思わせて、その後、そのテンションがやや落ちていくところもマクリーンこの時期の特徴で、つまり、ミドル・テンポやスロー・テンポの曲で新しさを打ち出しきれていないことを意味する。あえて選んだオーソドックスなスタンダード[4]の解釈に斬新さがないところも痛い。それでもこのアルバムがフレッシュなテンションをそれなりに最後まで維持できているのはハッチャーソンのおかげ。新しいフィーリングを備えたブルース[5]のカッコよさもハッチャーソンあってこそ。(2007年3月21日)

Right Now!

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
マクリーン入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1965/1/29

[1] Eco
[2] Poor Eric
[3] Christel's Time
[4] Right Now
Jackie McLean (as)
Larry Willis (p)
Bob Cranshaw (b)
Clifford Jarvis (ds)
脱ハード・バップ後でワン・ホーン編成のものとなると「Let Freedom Ring」が人気盤。でも、アチラは時代の先端を走りたいけれど空回りしている印象が僕には強い。その点、このアルバムは新しいスタイルを着こなしたマクリーンをワンホーンで堪能できる。曲は[1]がマクリーン作、[2][3]がラリー・ウィリス作、[4]はチャールズ・トリヴァー作という構成。幻想的でクールなムードの中、マクリーン節が冴えるバラードの[2]、やや重いムードの[4]が印象的。マクリーンのフレーズはコルトレーンの影響が結構出ている感じで時代相応のピアノとキレのあるリズムのサポートを得てそれを上手く消化、クリーンでフレッシュなサウンドに仕上げているのはマクリーンの手腕と言えるでしょう(ただ、65年のコルトレーンはもっと遠くに行ってしまっている・・・)。サイド・メンが地味だからという理由で聴くのを控えるにはもったいない、エネルギッシュなマクリーンのアルトをワンホーン編成で満喫できるアルバム。(2006年9月19日)

Jacknife

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
マクリーン入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1965/9/24

[1] On The Nile
[2] Climax
[3] Soft Blue
[4] Jacknife
[5] Blue Fable
Charles Tolliver
               (tp [1] [3] [4])
Lee Morgan (tp [2] [3] [5])
Jackie McLean (as)
Larry Willis (p)
Larry Ridely (b)
Jack DeJohnette (ds)
ニュー・ジャズ道を邁進中だった時期の、お蔵入りだった1枚。チャールズ・トリヴァー作が2曲、リー・モーガン、ジャック・デジョネット、マクリーン作が各1曲という構成で、楽曲、演奏ともに新主流派らしいフレッシュな感覚に満ちてる。[1]の重いムード、まるでエルヴィン・ジョーンズのようなリズム・パターン、そこに乗るマクリーンの重々しいフレーズは明らかにコルトレーンの影響大で、しかしこれがマクリーンに似合っているかと訊かれると少々答えに窮してしまう。一転、デジョネットの重量級スピード感が炸裂するアグレッシヴな[2]からの方がこの時期のマクリーンらしい。モーガンのオリジナル[3]は自身のリーダー・アルバムに入っていてもおかしくない曲ではあるものの、ここでは少々古臭く感じる。この曲の印象のせいもあってか、トリヴァーをフィーチャーしている曲の方にむしろ勢いを感じる。ピアノのラリー・ウィリスも全体の鮮度に合ったフレッシュ管を備えた好プレイ。カッコいい60年代新主流派ジャズが好きな人には納得の、そしてブルーノートではありがちな、お蔵入りしていたのに質は決して低くないアルバムのひとつ。(2011年1月29日)

New And Old Gospel

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★
マクリーン入門度:★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1967/3/24

[1] Lifeline
 A. Offspring
 B. Midway
 C. Vernzone
 D. The Inevitable End
[2] Old Gospel
[3] Strange As It Seems
Ornette Coleman (tp)
Jackie McLean (as)
Lamont Johnson (p)
Scot Holt (b)
Billy Higgins (ds)
マクリーンのフリー・ジャズへの接近もここに極まり、ついにオーネット・コールマンと競演。アナログで言うA面をすべて使った[1]がマクリーンのオリジナル、妙にチープでポップな[2]と スローな[3]がオーネットのオリジナルという構成。[1]からオーネットのカラーが前面に出ているあたりは、誰と共演しても自分色に染めてしまうオーネットの面目躍如。超ハイ・テンションで突っ走る部分とアブストラクトな部分がうまく共存して、曲調や各メンバーの演奏はフリー・ジャズの流れに沿ったものでありながら決して聴きづらくない。トランペットに専念しているオーネットはお世辞にも巧いとは言えないけれど、そのトーンやフレーズにはアルトを手にしているときと同じムードが漂う。スコット・ホルトのピアノは明らかにフリー系のそれで全体のサウンドを印象付けるのに貢献。オーネットの盟友でもあるヒギンズは切れのいいリズムでバンド全体を強烈にプッシュ。そして主役のマクリーンはいつも以上にテンションが高く、ある意味これがベスト・プレイのひとつかもしれないと思わせる。全体に力強さが漲り、この場限りのエネルギーを見事に捉えた1枚。(2006年11月7日)

Demon's Dance

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
マクリーン入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1967/12/22

[1] Demon's Dance
[2] Toyland
[3] Boo Ann's Grand
[4] Sweet Love Of Mine
[5] Floogeh
[6] Message From Trane
Woody Shaw (tp)
Jackie McLean (as)
LaMont Johnson (p)
Scot Holt (b)
Jack DeJohnette (ds)  
「Bitches Brew」を連想させるようなジャケットのせいで、アヴァンギャルドなジャズなのかと勝手に想像してしまうけれど、これが実にオーソドックス。とはいっても67年の録音だから旧来のハード・バップであるはずはなく、あくまでも60年代のサウンドとしての話。フリー・ジャズへの接近を見せたりしたマクリーンは、もう達観して安定した着地点を探そうとしているのだろうか、と思えてしまう。コルトレーンが逝き、マイルスが黄金のクインテットを極限にまで仕上げた年だというのに、これ以前のマクリーンの作品に比べるとニュー・ジャズをやらねばという焦燥感のようなものを感じない。ウッディ・ショウも彼にしてはかなりオーソドックスだし、デジョネットも手数こそ多いものの奇抜さはなく他のメンバーの演奏にもクセがない。曲も意外性があるどころか、[2]のような甘いバラードや、今ではアルト・サックス奏者御用達スタンダードになっている[4]など極めてオーソドックス。曲の長さ(というか短さ)を含め、この聴き易さこそ本作の特徴で、肩の力が抜けた60年代のマクリーンを気軽に楽しむ作品。(2006年10月31日)