Fuchsia Swing Song | ||
![]() 曲:★★★☆ 演奏:★★★☆ ジャズ入門度:★★★ 評価:★★★☆ |
[Recording Date] 1964/12/21 [1] Fuchsia Swing Song [2] Downstairs Blues Upstairs [3] Cyclic Episode [4] Luminou Monolith [5] Beatrice [6] Ellipsis |
Sam Rivers (ts) Jaki Byard (p) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) |
フリー・ジャズ系テナー奏者としてカテゴライズされているサム・リヴァースの初リーダー作。時期的にはマイルス・グループを脱退したばかりのころで、同志だったロン・カーターとトニー・ウィリアムスが参加、トニーと共にリヴァース同郷であるジャッキー・バイアードを従え全曲オリジナルを書き下ろしと力が入っている。そのあまり聞き慣れないピアニストは、新主流派的でありつつも素朴な演奏で、このアルバムの聴きやすさはこのピアノに負うところが大きいような気がする。主役は、確かにフリーキーなフレーズが入るものの、こちらも比較的オーソドックスなプレイ。ロンとトニーについてはいつもどおり高いレベルで安定した演奏。「オラオラ、新しいジャズだよ!」という力みが意外となく聴きやすい新主流派ジャズ。逆に言うと、旧来のジャズを超越してやろうという意気込みは特になく、勢いという点では物足りない。(2006年8月5日) |
Contours | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★☆ ジャズ入門度:★★★★ 評価:★★★★☆ |
[Recording Date] 1965/5/21 [1] Point Of Many Returns [2] Dance Of The Tripedal [3] Euterpe [4] Mellifluous Cacophony [5] Mellifluous Cacophony (alt take) |
Freddie Hubbard (tp) Sam Rivers (ts, ss, fl) Herbie Hancock (p) Ron Carter (b) Joe Chambers (ds) |
豪華メンバーを従えたリヴァースの快作。新主流派オールスターズと言える顔ぶれになっており、ジャズ・ファンからの認知度が一番低いのは、実はリーダーその人だったりする。フレディ・ハバードは時にフリーキーな匂いを漂わせながらバリバリ吹きまくり、ハービー・ハンコックはこの時代の彼にしか出せない浮遊感溢れるバッキングでサポート。バックが充実しているだけにリーダーが埋もれてもおかしくない状況の中、リヴァースもソプラノ、フルートを交えての怪演。似たようなメンバー構成であることが多いショーターやハンコックのリーダー・アルバムとの差別化に成功しており、それができてしまうリヴァースの才能はもっと評価されてもいいように思う。ドラムが弟子のトニー・ウィリアムスでなく重量感を押し出したフリー系のジョー・チェンバースであることもここでは吉と出ている。そしてこんなニュー・ジャズには欠かせない柔軟なベースを弾かせるのならやはりロン・カーターしかいない。リヴァースに対してマイルスのグループに一時的にいただけの地味な存在と思っている人に是非聴いてもらいたいし、新主流派系が好きな人なら間違いなく興奮できる充実した内容。日本盤が発売されたこともないだなんて信じられない。(2007年4月21日) |
A New Conception | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ ジャズ入門度:★★★ 評価:★★★ |
[Recording Date] 1966/10/11 [1] When I Fall In Love [2] I'll Never Smile Again [3] Detour Ahead [4] That's All [5] What A Difference A Day Make [6] Temptation [7] Secret Love |
Sam Rivers (ts, ss, fl) Hal Galper (p) Herbie Lewis (b) Steve Ellington (ds) |
このアルバムはいろいろな意味で地味。いや地味というよりは注目を浴びる要素に欠けると言った方が正しいのかも。曲を書く力がありパワフルかつフリーキーなフレーズを得意とするリヴァースがすべてスタンダードに取り組むという企画を、自作曲を書くことを推奨するブルーノートが行うという異色作。フリーな曲展開を見せる[6]を除くと聴きやすい曲と手堅いバッキングに支えられた、なるほどスタンダード集という趣。それでもリヴァースのフレーズはいつも通りで、曲中でも楽器を持ち替えてマルチリード奏者としての能力を遺憾なく発揮。しかし、裏をかいたつもりの「新しい概念」はニュー・ジャズが模索されていた66年という時代に理解されず不評だったのだとか。やはり、[6]が一番おもしろいと思える仕上がりであるところに中途半端さが現れてしまっているのかもしれない。演奏のレベルは水準をクリアしているし、カルテットでリヴァースのマルチ奏者ぶりを楽しむアルバムとしては面白い。(2014年9月20日) |
Dimensions And Extensions | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★☆ ジャズ入門度:★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1967/3/17 [1] Precis [2] Paean [3] Effusive Melange [4] Involution [5] Addlatus [6] Helix |
Donald Byrd (tp) Sam Rivers (ts, ss, fl) James Spaulding (as, fl) Julian Priester (tb) Cecil McBee (b) Steve Ellington (ds) |
マイケル・カスクーナによると、このアルバムの前に録音、リリースした「A New Conception」が不評だったことからリリースが11年も遅れたのが全曲リヴァースによるオリジナルで占められた本作だったらしい。続けて聴くとサウンドの質の違いは明白で、もちろん狙っているものが違うということはわかった上で、音楽としての鮮度はこちらに明らかに分があると感じる。主役がマルチリード奏者であるところにさらに3人の管楽器奏者を加え、ピアノは不在という変則構成。やや旧世代に属するドナルド・バードがこの新しいサウンドに適応しているところはちょっと予想外。リヴァースはこの編成でも吹きまくっており、サウンドも個性的。[4]ではリード奏者がフルート2本だけでクールな前衛を味わえる。フリーキーなサウンドが好きな人には是非聴いてもらいたい快作。この時代ならではの勢いとパワーがここにはある。(2015年9月8日) |