米化学会 ES&T サイエンス 2008年11月12日
可塑剤は男児の男らしさを損なうかもしれない
胎児期のフタル酸エステル類への暴露は
男の赤ちゃんに小さなペニスと不完全な睾丸降下をもたらすかもしれない

情報源 ES&T Science News - November 12, 2008
Plasticizer may make boys less masculine
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2008/nov/science/jp_phthalates.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年11月15日


 フタル酸として知られる化学物質はプラスチック、化粧品、香水などへの有用な添加剤である。ロチェスター大学生殖疫学センターのディレクターであるシャナ・スワンによる新たな研究によれば、それらはまた男の赤ちゃんの小さなペニス、不完全な睾丸降下(停留睾丸)、そして男らしさのひとつの指標である肛門と性器の距離の短縮と関連している。

 ”この研究は、胎児期のフタル酸エステル類への暴露は、最初はラットで定義されたヒトのフタル酸エステル症候群を引き起こすかもしれない新たな証拠を提供するものである”とスワンは述べている。子宮中でフタル酸エステルに暴露させたオスのげっ歯類は、短い肛門性器間距離(AGD)、小さな性器、不完全な睾丸降下、その他オス生殖器官系の変化をもって生まれる。影響を受けた動物が成熟すると、精液の質と繁殖能力が減少し 、場合によっては精巣腫瘍を起こすと彼女は述べている。スワンは、彼女の研究対象となった男の赤ちゃんたちが同じように後に障害が起きるかどうかはわからない。

 2008年10月2日に Environmental Research に発表されたスワンの論文(2008, DOI 10.1016/j.envres.2008.08.007)は、ミネソタ、ミズーリ、及びカリフォルニアの150人以上の妊婦とその子どもたちからなる集団を監視するために米EPAによって資金提供された将来の家族のための調査Study for Future Families)からのデータを使用した。研究者らは母親の血液と尿のサンプルを妊娠中及び妊娠後に採取し、男の赤ちゃんの尿を出生後に採取した。

 スワンは、母親の血中のフタル酸エステル類の中で最も生殖毒性の強いもののひとつであるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)の代謝物に特に関心をもった。出生後、研究者らは男児の生殖器官の詳細な検証を実施した。

 研究者らは、妊婦のDEHPのひとつまたはそれ以上の代謝物の高いレベルと、彼女らの息子の短い肛門性器間距離(AGD)、細いペニス、及び不完全な睾丸降下との間に有意な関連性を見出した。

 ”全国調査で、アメリカ女性の25%は、我々の研究における短い肛門性器間距離(AGD)やその他の変化と関連するレベルと同様なレベルのフタル酸エステル類を持っていた”と彼女は米国全国健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey)を参照しながら述べている。

 フタル酸エステル類は、ハウスダスト、屋内空気、食品、飲料水中に見出される。最も一般的なフタル酸エステルであるDEHPは塩化ビニル(PVC)に柔軟性を与えるために加えられれ、シャワーカーテンから医療器具にいたるまで無数の製品になる。

 8月にアメリカ政府は3種のフタル酸エステルを永久的に禁止し、12歳以下の子どものおもちゃ中の0.1%以上の他の3種を暫定的に禁止した。
ジャネット・ペレイ(JANET PELLEYEY)


訳注:フタル酸エステル類関連記事 訳注:フタル酸エステル類関連資料(日本)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る