ユークリッド空間Rnの基底の諸定義  : トピック一覧

・定義:直交系正規直交系直交基底正規直交基底  
・定理:基本ベクトルは正規直交系・正規直交基底の一例  
※計量実ベクトル空間Rn関連ページ:ノルム・ノルム空間の定義/内積・計量実ベクトル空間の定義
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定義:ユークリッド空間における直交系 orthogonal system 

  [永田『理系のための線形代数の基礎』4.2(p.116);布川『線形代数と凸解析』定義4.4(p.68);]

(舞台設定)
R  :実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積。これによって、n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d ):n次元ユークリッド空間  

(定義)
n次元ユークリッド空間において、

n次元数ベクトルv1,v2,, vk(ただし、v1, v2,, vk )が直交系orthogonal systemであるとは、  
 
v1,v2,, vkがいずれも零ベクトルではなく、  
 
v1,v2,, vkからどのように異なるn次元数ベクトルのペアをとっても、そのペアが直交することをいう。
つまり、
n次元ユークリッド空間においてn次元数ベクトルv1,v2,, vk直交系orthogonal systemであるとは、
    
v1,v2,, vk 
    
かつ
    
任意i,j=1,2,,kについて、ij ならば vivj =vi1vj1+ vi2vj2+ + vinvjn =0 
    となること 
をいう。       
直交系からの正規直交系のつくりかた 
 

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定義:正規直交系 orthonormal system 

 [永田『理系のための線形代数の基礎』4.2(p.116);斎藤『線形代数入門』4章§6(p.121);
  佐武『線形代数学』T§6(p.34);砂田『行列と行列式』§7.1-(b)(p.243);布川『線形代数と凸解析』定義4.4(p.68);]

(舞台設定)
R  :実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1,v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積。これによって、n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d ):n次元ユークリッド空間  

(定義)
n次元ユークリッド空間において、
n次元数ベクトルv1,v2,, vk正規直交系orthonormal systemであるとは、
次の
同値な条件のいずれかが満たされることをいう。  
 
P1 v1,v2,, vk直交系であり、かつv1,v2,, vkのそれぞれのユークリッドノルム1であること 
 
P2任意i,j=1,2,,kについて、ij ならば vivj =0 
   
かつ 
   
v1v2=…=vk1 」が満たされること 
 
P3任意i,j=1,2,,kについて、ij ならば vivj =vi1vj1+ vi2vj2+ + vinvjn =0 
   
かつ 
   
v1v1v2v2=…=vkvk1  つまり、i=1,2,,kについて、vi12+ vi22+ + vin2 =1  
   が満たされること
 
P4任意i,j=1,2,,kについて、vivj =δij  (δクロネッカーのデルタを表す) 

    
直交系からの正規直交系のつくりかた 
 

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定義:直交基底 orthogonal basis   

 [神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.2.4(p.125);永田『理系のための線形代数の基礎』4.2(p.116);]

(舞台設定)
R  :実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1,v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積。これによって、n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d ):n次元ユークリッド空間   


(本題)
n次元数ベクトルv1,v2,, vnn直交基底orthogonal basisであるとは、  
   ・
v1,v2,, vnがいずれも零ベクトルではなく、
   ・
v1,v2,, vn直交系であり、
   ・
v1,v2,, vnn次元数ベクトル空間Rn基底でもある
ことをいう。   
すなわち、
n次元数ベクトルv1,v2,, vn直交基底orthogonal basisであるとは、 
  ・
v1,v2,, vn  
  
かつ 
  ・「
任意i,j=1,2,,nについて、ij ならば vivj =0 」
  
かつ 
  ・「
v1,v2,, vnn次元数ベクトル空間Rn基底である」こと   
をいう。      
 

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定義:正規直交基底  orthonormal basis 

 [神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.2.4(p.125);永田『理系のための線形代数の基礎』4.2(p.116);  
  砂田『行列と行列式』§7.1-(c)(p.245).斎藤『線形代数入門』4章§6(p.121);志賀『固有値問題30講』9講(p.68);
  草場『線形代数』定義5.4(p.131)。]
(舞台設定)
R  :実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1,v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積。これによって、n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d ):n次元ユークリッド空間   
(本題)
n次元数ベクトルv1,v2,, vk(ただし、v1,v2,, vk )がn正規直交基底orthonormal basisであるとは、  
  ・
v1,v2,, vk正規直交系であり、かつv1,v2,, vkn次元数ベクトル空間Rn基底でもあること 
  すなわち、
  ・
任意i,j=1,2,,kについて、 vivj ==δij (δクロネッカーのデルタを表す) 
    
かつ 
  「
v1,v2,, vkn次元数ベクトル空間Rn基底である」こと   
をいう。  


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定理:基本ベクトルは、正規直交系、正規直交基底 の一例  

[神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.2.4(p.125);永田『理系のための線形代数の基礎』4.2(p.116);
 佐武『線形代数学』T§6(p.34);砂田『行列と行列式』§7.1-(c)例7.15(p.245);草場『線形代数』定義5.4(p.131)]
(舞台設定)
R  :実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1,v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積。これによって、n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d :n次元ユークリッド空間   
(本題)
n次元ユークリッド空間Rnにおいて、
  つまり、
自然な内積ユークリッドノルムが定義されたn次元数ベクトル空間Rnにおいて、  
基本ベクトルは、n正規直交系正規直交基底 の一例をなす
 
 

(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目341ヒルベルト空間C.正規直交系(pp.1006-7)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、4.1内積(p.114);。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.117)。
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、4章§6計量線形空間(p.121)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§7.1-(b)正規直交系 (c)正規直交基底 (pp.242-7).
草場公邦『線形代数(増補版)』(森毅、斉藤正彦責任編集『すうがくぶっくす』2巻)朝倉書店、1999年、5.2(p.131)。
解析学のテキスト
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1987年、I章§4(pp.33-38)。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.2.3(p.124)。
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年、4.1.1内積と直交(pp.65-70)。
 
 

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