一般のベクトル空間における次元 : トピック一覧
・定義:次元/零ベクトルのみからなるベクトル空間の次元
・定理:有限次元ベクトル空間における一次独立なベクトルの個数/拡大して得られる基底
基底に属すベクトルの個数/有限次元ベクトル空間の次元
※ベクトル空間関連ページ:ベクトル空間の定義/、部分ベクトル空間/線形従属・線形独立/基底
※一次写像関連ページ:一次写像−定義/一次写像と演算/一次写像の代数系/一次写像と線形独立/同型写像/同型写像と線形独立
※いろいろなベクトル空間の次元:一般の数ベクトル空間の次元/実ベクトル空間の次元/実n次元数ベクトル空間Rnの次元/実n次元数ベクトル空間Rnの部分空間の次元
※高校で習ったようなベクトルを扱う場合は、実n次元数ベクトル空間Rnの次元を見よ。
定義:次元 dimension
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
【定義】
Vの基底のとり方にかかわらず、Vの基底に属すベクトルの個数が一定である場合に、
Vの基底に属すベクトルの個数のことを、
K上のベクトル空間Vの次元と呼び、記号dim Vで表す。
【具体例】
有限次元ベクトル空間の次元/数ベクトル空間の次元/実ベクトル空間の次元/実n次元数ベクトル空間Rnの次元/実n次元数ベクトル空間Rnの部分空間の次元
※高校で習ったようなベクトルを扱う場合は、実n次元数ベクトル空間Rnの部分空間の次元を見よ。
【文献】
・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元:系1(p.45)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系1.3.8(p.23)
・『岩波数学辞典』210線形空間:C線形結合(p.571)
・志賀『線形代数30講』15講(p.97)
・酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.23)
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1.3(p.110)
・藤原『線形代数』4.2(p.95)
定義:ゼロベクトルのみからなるベクトル空間の次元
ゼロベクトルのみからなるベクトル空間Vには基底は存在しないが、
このようなベクトル空間Vにたいしては、
dim V = 0 と定義する。
【文献】
・斎藤『線形代数入門』4章§2例1(p.97)§3(p.104)
・永田『理系のための線形代数の基礎』1.5(p.32)
定理:m個のベクトルから生成されたベクトル空間の線形独立系に属すベクトルは最大m個。
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
W:K上のベクトル空間
v1, v2, …, vm:W上のベクトル。つまり、v1, v2, …, vm ∈W
a1, a2, …, am :スカラー。a1, a2, …, am ∈K
V:{ v1, v2, …, vm }から生成された「Wの部分ベクトル空間」
これは、{ v1, v2, …, vm }を含む最小の「Wの部分ベクトル空間」であり、
{ v1, v2, …, vm }が張る「Wの部分ベクトル空間」でもある。
【本題】
{ v1, v2, …, vm }から生成された「Wの部分ベクトル空間」Vの部分集合Sが線形独立系であるならば、
Sは有限集合であって、
Sには、m個よりも多くのベクトルが属さない。
【文献】
・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元:定理4(p.44)
定理:基底に属すベクトルの数と、線形独立になるベクトルの数。
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
U:Vの部分集合で、有限集合。つまり「Vに属すベクトル」を有限個だけあつめた集合。
u1, u2, …, ul をVに属すベクトルとすれば、 U={ u1, u2, …, ul } 。
【本題】
K上のベクトル空間Vに属すベクトルの有限集合{ u1, u2, …, ul }が、K上のベクトル空間Vの基底であり、
かつ、
K上のベクトル空間Vに属すベクトル v1, v2, …, vmが線形独立である
ならば、
m≦l
【証明】
永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22):数ベクトルの性質を、同型写像でうつす。
【文献】
・永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22)
定理:
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
U:Vの部分集合で、有限集合。つまり「Vに属すベクトル」を有限個だけあつめた集合。
u1, u2, …, ul をVに属すベクトルとすれば、 U={ u1, u2, …, ul } 。
【本題】
K上のベクトル空間Vに属すベクトルの有限集合{ u1, u2, …, ul }が、K上のベクトル空間Vの基底であり、
かつ、
K上のベクトル空間Vに属すベクトル v1, v2, …, vlが線形独立である
ならば、
{ v1, v2, …, vl }も、K上のベクトル空間Vの基底である。
【証明】
永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22):数ベクトルの性質を、同型写像でうつす。
【文献】
・永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22)
定理:拡大して得られる基底
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
U:Vの部分集合で、有限集合。つまり「Vに属すベクトル」を有限個だけあつめた集合。
u1, u2, …, ul をVに属すベクトルとすれば、 U={ u1, u2, …, ul } 。
【本題】
K上のベクトル空間Vに属すベクトルの有限集合{ u1, u2, …, ul } 、K上のベクトル空間Vの基底であり、
かつ、
K上のベクトル空間Vに属すベクトル v1, v2, …, vmが線形独立であり、
かつ、
m< l
ならば、
{ u1, u2, …, ul }から選んだ、ある(l−m)個のベクトルを{v1, v2, …, vm}に加えて、Vの基底とすることができる。
これを、{ v1, v2, …, vm }を拡大して得られる基底と呼ぶ。
【証明】
・永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22);→数ベクトルの性質を、同型写像でうつす。
・砂田『行列と行列式』§5.3-b定理5.47(p.175)→数ベクトルの同型写像を持ち出さない証明
【文献】
・永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.3.7(p.22);
・砂田『行列と行列式』§5.3-b定理5.47(p.175):証明付.
定理:有限次元ベクトル空間の基底に属すベクトルの個数。
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
【本題】
K上の有限次元ベクトル空間Vの基底に属すベクトルの個数は、Vの基底のとり方にかかわらず、一定。
すなわち、
任意の二つの「Vに属すベクトルの有限集合」{ u1, u2, …, ul }と { v1, v2, …, vm }について、
{ u1, u2, …, ul }も{ v1, v2, …, vm }もVの基底であるならば、
l=m。
【文献】
・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元:系1(p.45)
・永田『理系のための線形代数の基礎』系1.3.8(p.23)
・神谷浦井『経済学のための数学入門』定理3.1.5(p.113)
定理:有限次元ベクトル空間の次元 dimension
【舞台設定】
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V:K上の有限次元ベクトル空間
【定義】
K上の有限次元ベクトル空間Vの基底に属すベクトルの個数は、
Vの基底のとり方にかかわらず、一定。(→詳細)
したがって、K上の有限次元ベクトル空間Vの次元dim Vは、Vの基底に属すベクトルの個数のこと。
【文献】
・ホフマン『線形代数学I』2.3基底と次元:系1(p.45);
・永田『理系のための線形代数の基礎』系1.3.8(p.23)
・『岩波数学辞典』210線形空間:C線形結合(p.571);
・志賀『線形代数30講』15講(p.97)
・酒井『環と体の理論』1.6ベクトル空間(p.23)
・神谷浦井『経済学のための数学入門』§3.1.3(p.110)
・藤原『線形代数』4.2(p.95)
(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
【線形代数のテキスト】
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、15講基底と次元(pp.94-99):有限次元ベクトル空間のみ扱っている。
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.3基底と次元(pp.41-50)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.3-b(p.173).
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。線形従属・独立については、数ベクトルに限定?
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91)。 線形従属・独立については、数ベクトルに限定?
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§3基底および次元(pp.99-107)。
【代数学のテキスト】
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22):数ページしか触れていないが、逆に、一般の線形空間の理論の骨組みだけを浮かびあがってくるので、何が重要事項なのかを見極める上で便利。
【数理経済学のテキスト】
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.1ベクトル空間とは何か(p.105)。