実数の10進小数展開 decimal expression :トピック一覧  

「実数に随伴する数列/整数列」「実数の十進近似列」の定義
「実数に随伴する数列/整数列」の性質  
実数の十進近似列が満たす性質 
実数の小数展開 

総目次


 
定義:実数に随伴する数列、実数に随伴する整数列、10進近似列


→ [定義1] / [定義1の別の表現]
→ [定義2] 
→ [定義1と定義2は同一]
→ [具体的な数値例を通して意味を探る]

性質
→ 応用としての実数の小数展開 


[活用例]

 ・実数指数の「べき」「累乗」定義






[文献]
 ・杉浦『解析入門I』定理3.9 (pp.30-31):任意の実数aに 対して、存在することの証明
 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定義 8.4.2〜定義8.4.4(pp.238-9) 
 ・加藤十吉『微分積分学原論』 3.3有理数の稠密性-命題3.8(p.30)
 ・上野健爾『岩波講座 現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(b)実数(p.58)(d)指数と対数(pp.69-71)。
 ・『岩波 入門数学辞典』「近似分数approximate fraction」(p.166);


 ・小平『解析入門I』§1.4-f (pp.34-5): 

[定義1] 実数に随伴する数列、実数に随伴する整数列、10進近似列

実数rに随伴する数列とは、
 数列 
  a1=10(r[r])  
  a2=10(a1[a1]) 
  a3=10(a2[a2]
  :
  an =10(an-1[an-1]
  an+1=10(an[an] )
   :
 のこと。





[文献]  


 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定義8.4.2〜定義8.4.4(pp.238-9)





実数rに随伴する整数列とは、
    実数rに随伴する数列 a1=10(r[r]), a2=10(a1[a1]), a3=10(a2[a2]), … , an=10(an-1[an-1]), an+1=10(an[an]),…
    に対して、
  d1[a1][ 10(r[r]]  
  d2[a2][ 10(a1[a1]]
  d3[a3][ 10(a2[a2]]      
  :
  dn[an][ 10(an-1[an-1]]
  dn+1[an+1][ 10(an[an] )]
   :
  
 と定めた数列のこと。
 →具体的な数値例を通して定義の意味を探る
 →別の表現
 →別の定義 
随伴数列/随伴整数列が満たす性質 


実数r10進近似列とは、
       実数rに随伴する整数列  
          d1[a1][ 10(r[r]]  
          d2[a2][ 10(a1[a1]] 
          d3[a3][ 10(a2[a2]] 
           :
          dn[an][ 10(an-1[an-1]]
          dn+1[an+1][ 10(an[an] )]
           :  
       を用いて、


r1[r]d1/10 = [r] + 

1
 di /10i 
 

Σ


i=1




2



r2r1d2/100 = [r]d1/10 + d2/100 = [r] + 
Σ
 di /10i



i=1





3  di /10i


r3r2d3/1000 = [r]d1/10 + d2/100 + d3/1000 = [r] + 
Σ


 

i=1

  :

rnrn-1dn/10n[r]d1/10 + d2/100 + d3/1000 + … + dn/10n = [r] + 
n  di /10i  
 

Σ



i=1


  :
 と定義した数列のこと。

具体的な数値例を通して定義の意味を探る
別の定義
実数rの10進近似列が満たす性質 


十進近似列」冒頭



[定義1の別の表現]  実数に随伴する数列、実数に随伴する整数列、10進近似列


・上記の
  実数rに随伴する数列a1,a2,a3,… 
  実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,…
  実数r10進近似列 r1,r2,r3,…
 の定義は、以下の数式でも表現できる。
       * an+1anのみで、dn+1an+1のみで表した先述の定義が、an+1,dn+1rnを用いた式で表現できる、という点がポイント。     


1 di /10i


a1=10(r[r]), d1[10(r[r])] , r1[r]d1/10 = [r] + 
Σ




i=1

 


2  di /10i


a2=100(rr1) , d2[100(rr1)] , r2r1d2/100 = [r] + 
Σ




i=1

 


3  di /10i


a3=1000(rr1) , d3[1000(rr2)] , r3r2d3/1000 = [r] + 
Σ




i=1

  :         :          : 

an=10n(rrn-1) , dn[10n(rrn-1)] , rnrn-1dn/10n = [r] + 
n  di /10i


Σ




i=1


an+1=10n+1(rrn) , dn+1[10n+1(rrn)] , rn+1rndn+1/10n+1 = [r] + 
n+1  di /10i


Σ




i=1

  :          :          : 

なぜ?  
 a2=10(a1[a1])=10(a1d1)  ∵ d1の定義
           = 10(10( r[r])d1) ∵ a1の定義
           = 100( r[r])−10d1 = 100( r[r]d1/10 )= 100(r([r]d1/10)
            =100(rr1)  ∵ r1の定義
  となるから、
  d2[a2] ∵ d2の定義
   =[ 100(rr1) ] ∵上記のa2の表現より。

 a3=10(a2[a2])=10(a2d2)  ∵ d2の定義
           = 10(100(rr1)d2) ∵上記のa2の表現より。  
           = 1000(rr1)−10d2=1000(rr1d2/100)= 1000(r(r1d2/100)
            =1000(rr2)  ∵ r1の定義 
  d3[a3]  ∵d3の定義
    =[ 1000(rr2) ]
  
 an+1=10(an[an])=10(andn)  ∵ dnの定義
             = 10(10n(rrn-1)dn) ∵上記のanの表現(省略されている)より。 
             = 10n+1(rrn-1)−10dn=10n+1(rrn-1dn/10n)= 10n+1r(rn-1dn/10n) )      
             =10n+1(rrn) ∵ rnの定義 
    
    



「十進近似列」定義1の別表現
十進近似列」冒頭


[定義2]10進近似列

 加藤十吉『微分積分学原論』(pp.30-31)は、
 実数rに随伴する整数列d1,d2,d3,…、実数rの10進近似列r1,r2,r3,…を、以下の手順で定義している。
step1-1:d1の定義
    d1を、「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
    [詳細に述べると…]
     ガウス記号の性質「任意の実数aに対して、0≦a[a]<1」より、0≦r[r]<1。
     ということは、
     実数r[r]は、区間[0,1)を十等分してできた10個の区間のどれか一つに属す
     つまり、r[r]は、
      [case0]  0/10≦r[r]<1/10 
      [case1]  1/10≦r[r]<2/10 
      [case2]  2/10≦r[r]<3/10 
      [case3]  3/10≦r[r]<4/10 
      [case4]  4/10≦r[r]<5/10 
      [case5]  5/10≦r[r]<6/10 
      [case6]  6/10≦r[r]<7/10 
      [case7]  7/10≦r[r]<8/10 
      [case8]  8/10≦r[r]<9/10 
      [case9]  9/10≦r[r]<10/10=1
      の、どれか一つのケースに〜たった一つのケースにだけ、しかし、必ず〜該当する。
      r[r]が、
       [case0]  0/10≦r[r]<1/10 に該当するならば、d1=0  
       [case1]  1/10≦r[r]<2/10 に該当するならば、d1=1  
       [case2]  2/10≦r[r]<3/10 に該当するならば、d1=2  
       [case3]  3/10≦r[r]<4/10 に該当するならば、d1=3  
       [case4]  4/10≦r[r]<5/10 に該当するならば、d1=4  
       [case5]  5/10≦r[r]<6/10 に該当するならば、d1=5  
       [case6]  6/10≦r[r]<7/10 に該当するならば、d1=6  
       [case7]  7/10≦r[r]<8/10 に該当するならば、d1=7  
       [case8]  8/10≦r[r]<9/10 に該当するならば、d1=8  
       [case9]  9/10≦r[r]<10/10 に該当するならば、d1=9  
      と定める。
step1-2:r1の定義 
     r1[r]d1/10  と定める。




[文献]
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性-命題3.8(p.30)の証明の中で唯一の十進近似列として示す。
   十進近似列を、その性質によって公理的に定義したうえで、それを満たす列は、唯一つしか存在しないとするが、
   その唯一つの十進近似列として彼があげているのは、これと同じ。


    (ただし、作り方が違う。ガウス記号を使わない。随伴数列を使わない。)







【関連リンク】

具体例を通した定義の意味を探る


十進近似列の別の定義

実数rの10進近似列が満たす性質






step1-3:rr1の性質 
     rr1は、「0≦rr1<1/10」という性質を満たす。
     なぜなら、
      ・ rr1r−([r]d1/10) ∵step1-2での「r1の定義」をそのまま代入 
          =(r[r])−d1/10
            <(d1+1)/10−d1/10 ∵step1-1で「r[r]<(d1+1)/10」を満たすようにd1を決めたから。
                =1/10
        すなわち、rr1<1/10
      ・ rr1r−([r]d1/10) ∵step1-2での「r1の定義」をそのまま代入 
          =(r[r])−d1/10
            ≧d1/10−d1/10  ∵step1-1で「d1/10≦r[r]」を満たすようにd1を決めたから。
               =0
        すなわち、0≦rr1  
step2-1:d2の定義
    d2を、「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
    [詳細に述べると…]
     step1-3「rr1の性質」より、0≦rr1<1/10。
     ということは、実数rr1は、区間[ 0, 1/10 )を十等分してできた10個の区間のどれか一つに属す
     つまり、rr1は、
      [case0]  0/100≦rr1<1/100 
      [case1]  1/100≦rr1<2/100 
      [case2]  2/100≦rr1<3/100 
      [case3]  3/100≦rr1<4/100 
      [case4]  4/100≦rr1<5/100 
      [case5]  5/100≦rr1<6/100 
      [case6]  6/100≦rr1<7/100 
      [case7]  7/100≦rr1<8/100 
      [case8]  8/100≦rr1<9/100 
      [case9]  9/100≦rr1<10/100=1/10 
      の、どれか一つのケースに〜たった一つのケースにだけ、しかし、必ず〜該当する。
      rr1が、
       [case0]  0/100≦rr1<1/100 に該当するならば、d2=0  
       [case1]  1/100≦rr1<2/100 に該当するならば、d2=1  
       [case2]  2/100≦rr1<3/100 に該当するならば、d2=2  
       [case3]  3/100≦rr1<4/100 に該当するならば、d2=3  
       [case4]  4/100≦rr1<5/100 に該当するならば、d2=4  
       [case5]  5/100≦rr1<6/100 に該当するならば、d2=5  
       [case6]  6/100≦rr1<7/100 に該当するならば、d2=6  
       [case7]  7/100≦rr1<8/100 に該当するならば、d2=7  
       [case8]  8/100≦rr1<9/100 に該当するならば、d2=8  
       [case9]  9/100≦rr1<10/100 に該当するならば、d2=9  
      と定める。

step2-2:r2の定義
     r2[r]d1/10+d2/100  と定める。

step2-3:rr2の性質 
     rr2は、「0≦rr2<1/100」という性質を満たす。
     なぜなら、
      ・ rr2r−([r]d1/10+d2/100) ∵step2-2での「r2の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/10)−d2/100
            =rr1d2/100        ∵step1-2での「r1の定義」をそのまま代入
             <(d2+1)/100−d2/100 ∵step2-1で「rr1<(d2+1)/100」を満たすようにd2を決めたから。
                =1/100
        すなわち、rr2<1/100
      ・ rr2r−([r]d1/10+d2/100) ∵step2-2での「r2の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/10)−d2/100
            =rr1d2/100        ∵step1-2での「r1の定義」をそのまま代入
            ≧d2/100−d2/100  ∵step2-1で「d2/100≦rr1」を満たすようにd2を決めたから。
               =0
        すなわち、0≦rr2
 
step3-1:d3の定義  
    d3を、「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
    [詳細に述べると…]
     step2-3「rr2の性質」より、0≦rr2<1/100。
     ということは、実数rr2は、区間[ 0, 1/102 )を十等分してできた10個の区間のどれか一つに属す
     つまり、rr2は、
      [case0]  0/103rr2<1/103 
      [case1]  1/103rr2<2/103 
      [case2]  2/103rr2<3/103 
      [case3]  3/103rr2<4/103 
      [case4]  4/103rr2<5/103 
      [case5]  5/103rr2<6/103 
      [case6]  6/103rr2<7/103 
      [case7]  7/103rr2<8/103 
      [case8]  8/103rr2<9/103 
      [case9]  9/103rr2<10/103=1/100 
      の、どれか一つのケースに〜たった一つのケースにだけ、しかし、必ず〜該当する。
      rr2が、
       [case0]  0/103rr2<1/103 に該当するならば、d3=0  
       [case1]  1/103rr2<2/103 に該当するならば、d3=1  
       [case2]  2/103rr2<3/103 に該当するならば、d3=2  
       [case3]  3/103rr2<4/103 に該当するならば、d3=3  
       [case4]  4/103rr2<5/103 に該当するならば、d3=4  
       [case5]  5/103rr2<6/103 に該当するならば、d3=5  
       [case6]  6/103rr2<7/103 に該当するならば、d3=6  
       [case7]  7/103rr2<8/103 に該当するならば、d3=7  
       [case8]  8/103rr2<9/103 に該当するならば、d3=8  
       [case9]  9/103rr2<10/103 に該当するならば、d3=9  
      と定める。

step3-2:r3の定義   
     r3[r]d1/10+d2/100+d3/103  と定める。
step3-3:rr3の性質  
     rr3は、「0≦rr3<1/103」という性質を満たす。
     なぜなら、
      ・ rr3r−([r]d1/10+d2/100+d3/103) ∵step3-2での「r3の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100)−d3/103
            =rr2d3/103        ∵step2-2での「r2の定義」をそのまま代入
             <(d3+1)/103d3/103 ∵step3-1で「rr2<(d3+1)/103」を満たすようにd2を決めたから。
                =1/103    
        すなわち、rr3<1/103
     ・ rr3r−([r]d1/10+d2/100+d3/103) ∵step3-2での「r3の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100)−d3/103
            =rr2d3/103        ∵step2-2での「r2の定義」をそのまま代入
            ≧d3/103d3/103  ∵step3-1で「d3/103rr2」を満たすようにd3を決めたから。
               =0
        すなわち、0≦rr3
  
   
step n-1:dnの定義  
    dnを、「dn/10nrrn-1<(dn+1)/10n」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
    [詳細に述べると…]
     step(n-1)-3「rrn-1の性質」より、0≦rrn-1<10n-1
     ということは、実数rrn-1は、区間[ 0, 1/10n-1 )を十等分してできた10個の区間のどれか一つに属す
     つまり、rrn-1は、
      [case0]  0/10nrrn-1<1/10n 
      [case1]  1/10nrrn-1<2/10n 
      [case2]  2/10nrrn-1<3/10n 
      [case3]  3/10nrrn-1<4/10n 
      [case4]  4/10nrrn-1<5/10n 
      [case5]  5/10nrrn-1<6/10n 
      [case6]  6/10nrrn-1<7/10n 
      [case7]  7/10nrrn-1<8/10n 
      [case8]  8/10nrrn-1<9/10n 
      [case9]  9/10nrrn-1<10/10n=1/10n-1 
      の、どれか一つのケースに〜たった一つのケースにだけ、しかし、必ず〜該当する。
      rrn-1が、
       [case0]  0/10nrrn-1<1/10n に該当するならば、dn=0  
       [case1]  1/10nrrn-1<2/10n に該当するならば、dn=1  
       [case2]  2/10nrrn-1<3/10n に該当するならば、dn=2  
       [case3]  3/10nrrn-1<4/10n に該当するならば、dn=3  
       [case4]  4/10nrrn-1<5/10n に該当するならば、dn=4  
       [case5]  5/10nrrn-1<6/10n に該当するならば、dn=5  
       [case6]  6/10nrrn-1<7/10n に該当するならば、dn=6  
       [case7]  7/10nrrn-1<8/10n に該当するならば、dn=7  
       [case8]  8/10nrrn-1<9/10n に該当するならば、dn=8  
       [case9]  9/10nrrn-1<10/10n に該当するならば、dn=9  
      と定める。
step n-2:rnの定義  
     rn[r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10n と定める。 
step n-3:rrnの性質  
     rrnは、「0≦rrn<1/10n」という性質を満たす。
     なぜなら、
      ・ rrnr−([r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10n) ∵stepn-2での「rnの定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100+d3/103+…+dn-1/10n-1)−dn/10n
            =rrn-1−−dn/10n        ∵step(n-1)-2での「rn-1の定義」をそのまま代入
             <(dn+1)/10ndn/10n ∵stepn-1で「rrn-1<(dn+1)/10n」を満たすようにdnを決めたから。
                =1/10n    
        すなわち、rrn<1/10n 
      ・ rrnr−([r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10n) ∵stepn-2での「rnの定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100+d3/103+…+dn-1/10n-1)−dn/10n
            =rrn-1dn/10n        ∵step(n-1)-2での「rn-1の定義」をそのまま代入
            ≧dn/10ndn/10n  ∵stepn-1で「dn/10nrrn-1」を満たすようにdnを決めたから。
               =0
        すなわち、0≦rrn
  
   
step(n+1)-1:dn+1の定義 
    dn+1を、「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
    [詳細に述べると…]
     step n-3 「rrnの性質」より、0≦rrn<10n
     ということは、実数rrnは、区間[ 0, 1/10n )を十等分してできた10個の区間のどれか一つに属す
     つまり、rrnは、
      [case0]  0/10n+1rrn<1/10n+1 
      [case1]  1/10n+1rrn<2/10n+1 
      [case2]  2/10n+1rrn<3/10n+1 
      [case3]  3/10n+1rrn<4/10n+1 
      [case4]  4/10n+1rrn<5/10n+1 
      [case5]  5/10n+1rrn<6/10n+1 
      [case6]  6/10n+1rrn<7/10n+1 
      [case7]  7/10n+1rrn<8/10n+1 
      [case8]  8/10n+1rrn<9/10n+1 
      [case9]  9/10n+1rrn<10/10n+1=1/10n 
      の、どれか一つのケースに〜たった一つのケースにだけ、しかし、必ず〜該当する。
      rrnが、
       [case0]  0/10n+1rrn<1/10n+1 に該当するならば、dn=0  
       [case1]  1/10n+1rrn<2/10n+1 に該当するならば、dn=1  
       [case2]  2/10n+1rrn<3/10n+1 に該当するならば、dn=2  
       [case3]  3/10n+1rrn<4/10n+1 に該当するならば、dn=3  
       [case4]  4/10n+1rrn<5/10n+1 に該当するならば、dn=4  
       [case5]  5/10n+1rrn<6/10n+1 に該当するならば、dn=5  
       [case6]  6/10n+1rrn<7/10n+1 に該当するならば、dn=6  
       [case7]  7/10n+1rrn<8/10n+1 に該当するならば、dn=7  
       [case8]  8/10n+1rrn<9/10n+1 に該当するならば、dn=8  
       [case9]  9/10n+1rrn<10/10n+1 に該当するならば、dn=9  
      と定める。

step(n+1)-2:rn+1の定義 
     rn+1[r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10ndn+1/10n+1  と定める。 
step(n+1)-3:rrn+1の性質 
     rrn+1は、「0≦rrn+1<1/10n+1」という性質を満たす。
     なぜなら、
      ・ rrn+1r−([r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10ndn+1/10n+1 )
                      ∵step(n+1)-2での「rn+1の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100+d3/103+…+dn/10n)−dn+1/10n+1 
            =rrndn+1/10n+1        ∵step n-2での「rnの定義」をそのまま代入
             <(dn+1+1)/10n+1dn+1/10n+1 
                ∵step(n+1)-1で「rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たすようにdn+1を決めたから。
               =1/10n+1    
        すなわち、rrn<1/10n+1 
      ・ rrn+1r−([r]d1/10+d2/100+d3/103+…+dn/10ndn+1/10n+1 ) 
                           ∵step(n+1)-2での「rn+1の定義」をそのまま代入 
           =r−([r]d1/1+d2/100+d3/103+…+dn/10n)−dn+1/10n+1 
            =rrndn+1/10n+1       ∵step n-2での「rnの定義」をそのまま代入
            ≧dn+1/10n+1−−dn+1/10n+1 
                ∵step(n+1)-1で「dn+1/10n+1rrn」を満たすようにdn+1を決めたから。
               =0
        すなわち、0≦rrn+1

  
   



「十進近似列」定義2
十進近似列」冒頭


[10進近似列 ― 定義1と定義2は同一]


 ・実数rに随伴する整数列d1,d2,d3,…、実数rの10進近似列r1,r2,r3,…についての定義1
 ・実数rに随伴する整数列d1,d2,d3,…、実数rの10進近似列r1,r2,r3,…についての定義2
は、表現がことなるだけで、実は同一。
以下、手順を一つずつ追って、見ていく。

step1-1:d1の定義 
  [定義2] 実数rに随伴する整数列第1項d1を、「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
 [定義1] 実数rに随伴する整数列第1項d1を、d1[a1][ 10(r[r]] と定める。 
 [比較]  「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」d1≦10(r[r])<d1+1」だから、
       「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす整数d1 
          =「d1≦10(r[r])<d1+1」を満たす整数d1 
           =[10(r[r])] ∵ガウス記号の定義   
        ここで、ガウス記号の性質より、任意の実数rに対して、0≦r[r]<1 だから、0≦10(r[r])<10  
        したがって、[10(r[r])]は、必ず、「0から9までの整数」となる。
       以上から、[定義2]のいう「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」d1
            [定義1]のいうrに随伴する整数列第1項d1[ 10(r[r]]とは
            同一だとわかる。     


step1-2:r1の定義 
  [定義1]でも、[定義2]でも、実数rの10進近似列第1項r1は、r1[r]d1/10 で定義されるから、
  step1-1より、同一になる。


step2-1:d2の定義
  [定義2] 実数rに随伴する整数列第2項d2を、「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
 [定義1] 実数rに随伴する整数列第2項d2を、
        d2[ 10(a1[a1]] ∵定義1
         =[100(rr1)] ∵定義1の別表現   
     と定める。
 [比較] 「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」d2≦100(rr1)<d2+1」だから、
      「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす整数d2 
      =「d2≦100(rr1)<d2+1」を満たす整数d2 
      =[100(rr1)] ∵ガウス記号の定義   
        ここで、 [定義2]のstep1-3より、任意の実数rに対して、0≦rr1<1/10 だから、0≦100(rr1)<10  
        したがって、[100(rr1)]は、必ず、「0から9までの整数」となる。
       以上から、[定義2]のいう「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす整数d2
            [定義1]のいうrに随伴する整数列の第2項d2[ 10(a1[a1]] =[ 10(a1d1] とは
            同一だとわかる。   


step3-1:d3の定義
  [定義2] 実数rに随伴する整数列第3項d3を、「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
 [定義1] 実数rに随伴する整数列第3項d3を、
        d3[ 10(a2[a2]] ∵定義1
         =[1000(rr2)] ∵定義1の別表現   
      と定める。
 [比較] 「d3/103rr2<(d3+1)/103d3≦103(rr2)<d3+1」だから、
      「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす整数d3 
      =「d3≦103(rr2)<d3+1」を満たす整数d3 
      =[103(rr2)] ∵ガウス記号の定義   
        ここで、 [定義2]のstep2-3より、任意の実数rに対して、0≦rr2<1/100 だから、0≦1000(rr2)<10  
        したがって、[103(rr2)]は、必ず、「0から9までの整数」となる。
       以上から、[定義2]のいう「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす整数d3
            [定義1]のいうrに随伴する整数列の第3項d3[a3][ 10(a2[a2]][1000(rr2)] とは
            同一だとわかる。     


step(n+1)-1:dn+1の定義
  [定義2] 実数rに随伴する整数列第(n+1)項dn+1を、「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
 [定義1] 実数rに随伴する整数列第(n+1)項dn+1を、
       dn+1[ 10(an[an] )] ∵定義1
         =[10n+1(rrn)] ∵定義1の別表現   
     とも書ける。
 [比較] 「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1dn+1≦10n+1(rrn)<dn+1+1」だから、
      「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす整数dn+1 
      =「dn+1≦10n+1(rrn)<dn+1+1」を満たす整数dn+1 
      =[10n+1(rrn)] ∵ガウス記号の定義   
        ここで、 [定義2]step n-3より、任意の実数rに対して、0≦rrn<1/10n だから、0≦10n+1(rrn)<10  
        したがって、[10n+1(rrn)]は、必ず、「0から9までの整数」となる。
       以上から、[定義2]のいう「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす整数dn+1
            [定義1]のいうrに随伴する整数列の第(n+1)項dn+1[an+1][ 10(an[an] )][10n+1(rrn)] とは
            同一だとわかる。 




「十進近似列」定義1と定義2は同一
十進近似列」冒頭


実数の十進近似列の具体例

随伴する整数列」「十進近似列」は、
 実数の小数表示の理論付け・定義づけのための準備として、しつらえられている。

しかし、何をやっているのか、これだけでは、わかりづらい。

そこで、順序はあべこべになるけれども、
 実数を小数として表示できることを前提してしまったとき、
  「随伴する整数列」「十進近似列」は、何を意味するのか?
具体的な数値例を通して、みてみよう。

   [具体例]
    ・「有限桁の小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
    ・「有限桁の小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
    ・「循環小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
    ・「循環小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
    ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない正の無理数」の十進近似列定義1/定義2
    ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない負の無理数」の十進近似列定義1/定義2







[文献]
 ・上野健爾『代数入門1』§2.3(b)実数(p.58)(d)指数と対数(pp.69-71)。 


 ・『岩波入門数学辞典』「近似分数approximate fraction」(p.166);





以上、あらかじめ、実数を小数表示できることがわかっているとすると、
・「正の実数aに随伴する整数列の各項は、実数aの小数点以下の各桁の数を表していること
 「正の実数a十進近似列の第n項は、実数aの小数点以下第n位まで残し、小数点以下第(n+1)位以下を切り捨てたものを表していること
・「負の実数aに随伴する整数列の各項は、「負の実数」aを、aを超えない最大の整数」+0.xxx… とあらわすときの、小数0.xxx…の小数点以下の各桁の数を表していること
 「負の実数a十進近似列の第n項は、「負の実数」aを、aを超えない最大の整数」+0.xxx…と表すときの、小数0.xxx…の小数点以下第n位までを残し、小数点以下第(n+1)位以下を切り捨てたものを表していること
がわかった。
しかし、実数に随伴する整数列の定義を見直すとわかるように、
 実数に随伴する整数列は、小数の概念を利用しないで、定義されている。
したがって、
 実数の小数表示ができることがわかっていないとき、
 実数の小数表示が定義されていないときでも、
 実数の随伴整数列は定義され、
 さらに、実数の随伴整数列の概念から、実数の小数表示を理論付け、定義することが可能となる。


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性質:随伴する数列,随伴する整数列

性質

実数rに随伴する数列 a1,a2,a3,… のすべての項は、
  0≦a1<10
  0≦a2<10
  0≦a3<10
    :
 を満たす。
 つまり、(nN) (0≦an<10)

・したがって、・実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,… のすべての項は、
 0から9までの整数(つまり、いつでも1桁)。




[文献]  


 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.1(pp.239-240);定理8.4.4の後(p.243)



性質

実数rに随伴する数列 a1,a2,a3,… の第nanについて、
    [an] =9 
 が成立するならば、
 第nan と 第(n+1)項an+1 は、  
    10−an=(10−an+1)/10 
 を満たす。





[文献]  


 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.2(p.240):証明付;定理8.4.4の後(p.243)




性質

実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,… の無限に多くの項は、8以下。

 つまり、無限に多くのnNに対して、 dn≦8





[文献]  


 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.3(pp.240-1):証明付






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実数の十進近似列が満たす性質

要旨


・以下に示す性質は、
 実数r十進近似列は、単調に増加してrに収束する有理数列になること
 を示している。



性質0

実数r十進近似列のあらゆる項は、有理数。


性質1

実数r十進近似列 r1, r2, r3, … は、単調増加列
  すなわち、任意の自然数nに対して、rnrn+1 

 なぜ?
 ・実数rに随伴する整数列の性質より、
  実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,… のすべての項は、
  0から9までの整数。
  だから、任意の自然数nに対して、dn+1≧0 。
  したがって、 任意の自然数nに対して、dn+1/10n+1≧0 。
 ・実数r十進近似列の定義より、
    
任意の自然数nに対して、  rn+1rndn+1/10n+1
   だから、任意の自然数nに対して、  rn+1rndn+1/10n+1
 ・上記二点より、
     任意の自然数nに対して、rn+1rn≧0
   すなわち、任意の自然数nに対して、rnrn+1      





[文献]
 加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30)
 ・上野健爾『代数入門1』§2.3(b)実数(p.58):証明なし;(d)指数と対数(pp.69-71):証明なし。
 ・『岩波入門数学辞典』「近似分数approximate fraction」(p.166); 







性質2

実数r十進近似列の各項   


1  di /10i


r1[r]d1/10 = [r] + 
Σ




i=1




2  di /10i


r2[r]d1/10 + d2/100 = [r] + 
Σ




i=1




3  di /10i


r3[r]d1/10 + d2/100 + d3/1000 = [r] + 
Σ




i=1

  :

rn[r]d1/10 + d2/100 + d3/1000 + … + dn/10n = [r] + 
n  di /10i


Σ




i=1

  :
 は、
  0≦r-r1<1/10  
  0≦r-r2<1/100
  0≦r-r3<1/1000
    :
  0≦r-rn<1/10n  
    :
 を満たす。
 なぜ?→証明 




[文献]
 赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.4(pp.242-243)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30):
 ・杉浦『解析入門I』定理3.9 (pp.30-31):任意の実数に対して、存在することの証明 









性質3

実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は、上に有界
  ※なぜ?
   性質2より、任意の自然数nに対して、 0≦r-rn
   したがって、任意の自然数nに対して、rnr     
実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は、下に有界
  なぜ?
   性質1より、任意の自然数nに対して、 r1rn
・上記二点より、
 実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は、有界



性質4

実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は、rに収束する
    このとき、無限級数d1/10+d2/100+d3/1000+…は収束する
 つまり、


n  di /10i


rn[r] + 
Σ
 → r  (n→∞) 


i=1


 無限級数収束・和の記号を用いて書き直すと、


 di /10i


[r] + 
Σ
 =r


i=1


 なぜ?
  ・性質1,3より、
   実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は、有界単調増加列だから、
   定理より、実数r十進近似列 r1, r2, r3, …は収束する。    
  ・性質2より、任意の自然数nに対して、 0≦r-rn<1/10n 
   だから、r-rn<1/10n …(1)
  ・1/10n0 (n→∞)(証明略)。
   これを、数列の収束の厳密な定義で書き下すと、
    (ε>0) (NN) (nN) ( nN| 1/10n −0|<ε)  
    つまり、
    (ε>0) (NN) (nN) ( nN| 1/10n |<ε)
    0<1/10n だから、
    (ε>0) (NN) (nN) ( nN 1/10n <ε) …(2)
    となる。
  ・(1)と(2)をあわせて考えると、
    (ε>0) (NN) (nN) ( nN r-rn<1/10n <ε) 
   要するに、
    (ε>0) (NN) (nN) ( nN r-rn <ε) 
   これは、「rnrn→∞)」の厳密な定義に他ならない。    
 




[文献]
 赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.4(pp.242-243)
      この証明の最後の部分(p.243)が、無限級数d1/10+d2/100+d3/1000+…の収束の証明にあてられている。
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30):
 ・杉浦『解析入門I』定理3.9 (pp.30-31):任意の実数に対して、存在することの証明 







→[トピック一覧:十進小数展開]
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実数の十進小数展開 decimal expression

定義

・「実数r十進小数展開」「実数r小数展開」「実数r小数表示」とは、
   実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,… を用いて、
   実数r
      [r].d1 d2 d3 …
   というかたちで表すことをいう。
・「実数r十進小数」「実数r小数」とは、
   実数rに随伴する整数列 d1,d2,d3,… を用いて、
   実数r
      [r].d1 d2 d3 …
   と表す表現のことをいう。

実数rが 「 [r] . d1 d2 d3 … 」と十進小数展開されるということは、


n  di /10i


rn[r] + 
Σ
r  (n→∞) 


i=1

 が成り立つということ、
 無限級数収束・和の記号を用いると、


 di /10i


[r] + 
Σ
 = r


i=1

 が成り立つということ
 を意味している(→十進近似列の性質3
 






[文献]
 赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.4(pp.242-243)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30)
 ・『岩波入門数学辞典』「近似分数approximate fraction」(p.166);「小数展開decimal expression」(p.278)
 ・上野健爾『岩波講座現代数学への入門7-8:代数入門1』§2.3(b)実数(p.58)(d)指数と対数(pp.69-71)。:
 ・杉浦『解析入門I』定理3.9 (pp.30-31):任意の実数に対して、存在することの証明
 ・吉田栗田戸田『高等学校 微分積分』1章4無限小数(pp.22-23) 

 ・小平『解析入門I』§1.1(pp.3-9);§1.2-c(pp.14-16);§1.4-f (pp.34-5): 











→[トピック一覧:十進小数展開]
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性質

・任意の整数と、**を満たす整数列に対して、
 それを整数部分、随伴整数列とする実数が存在する。





[文献]  


 ・赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.5;定理8.4.6(pp.244-245)
 



→[トピック一覧:十進小数展開]
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