実数の十進近似列が満たす性質2の証明

実数の十進近似列が満たす性質2

 実数r十進近似列の各項   


1 di /10i


r1[r]d1/10 = [r] Σ




i=1



 
 


[文献]

 赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.4(pp.242-243)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30):


2 di /10i


r2[r]d1/10+d2/100 = [r] Σ




i=1

  :


3 di /10i


r3[r]d1/10+d2/100+d3/1000 = [r] Σ




i=1




n di /10i

rn[r]d1/10+d2/100+d3/1000+…+dn/10n = [r] Σ


i=1
  :
 は、
  0≦r-r1<1/10  
  0≦r-r2<1/100
  0≦r-r3<1/1000
    :
  0≦r-rn<1/10n  
    :
 を満たす。


「十進近似列が満たす性質2」冒頭


 証明

 [step1] 
 ・実数rに随伴する数列を、a1,a2,a3,… とおくと、
  任意の自然数nに対して、 
    rrn+an+1/10n+1   つまり、r-rnan+1/10n+1 
  が成立する。
  このことは、数学的帰納法で示せる。
   [step1-1] n=1のとき、
        rrn+an+1/10n+1 つまり、r-rnan+1/10n+1の成立を示す。
   ・実数rに随伴する数列の第1項a1,第2項a2 は、
      a1=10(r[r]
      a2=10(a1[a1]) 
    と定義された。
    ということは、
      r[r]a1/10 
      a1[a1]a2/10  
    だから、
    二行目を、一行目に代入して、
      r[r] + ([a1]a2/10)/10 
       = [r][a1]/10 + a2/100  
   ・実数rに随伴する整数列の第1項d1は、
      d1[a1] 
    と定義されたので、
    上記の式は、
      r[r]d1/10 + a2/100   
    と書き換えられる。
   ・r1[r]d1/10 と定義されたので、
    上記の式は、
      rr1a2/100   
    と書き換えられる。    
   [step1-2] n=kのとき、
        rrn+an+1/10n+1 つまり、r-rnan+1/10n+1の成立を仮定すると、
        n=k+1のとき、 
        rrn+an+1/10n+1 つまり、r-rnan+1/10n+1が成立すること
        を示す。
   ・n=kのとき、rrn+an+1/10n+1 の成立を仮定すると、
         rrk+ak+1/10k+1      …(仮定)   
   ・実数rに随伴する数列の第(k+2)項 ak+2 は、
      ak+2 =10(ak+1[ak+1]) 
    と定義された。
    ということは、両辺を10で割ったうえで、移項すると、次の等式が得られる。
      ak+1[ak+1]ak+2/10     … (1-2-1)
   ・rkは、
     rk[r]d1/10+d2/100+d3/1000+…+dk/10k  … (1-2-2)
    と定義されのだった。
   ・(1-2-1) (1-2-2) を (仮定) に代入すると、
     r[r]d1/10+…+dk/10k+ ( [ak+1]ak+2/10 )/10k+1
      =[r]d1/10+…+dk/10k[ak+1]/10k+1ak+2/10k+2 … (1-2-3)
   ・実数rに随伴する整数列の第(k+1)項dk+1は、
      dk+1[ak+1] 
    と定義されたので、
    (1-2-3)は、
      r[r]d1/10+…+dk/10kdk+1/10k+1ak+2/10k+2  … (1-2-4) 
    と書き換えられる。         
   ・rk+1は、
     rk+1[r]d1/10+d2/100+d3/1000+…+dk/10kdk+1/10k+1 
    と定義されのだったから、
    (1-2-4)は、
     rrk+1 + ak+2/10k+2  
    と書き換えられる。
    これで、
    (仮定)のもとで、n=k+1のとき、 
      rrn+an+1/10n+1 つまり、r-rnan+1/10n+1
    が成立すること
    は示された。
    [→赤攝也『実数論講義』定理8.4.4のなかの証明(pp.242-243)]
 [step2] 
   随伴数列の性質「(nN) (0≦an<10)」より、
       an+1/10n+1 < 10/10n+1 =1/10n          
 [step3]  
   随伴数列の性質「(nN) (0≦an<10)」より、
      0≦ an+1/10n+1           

 [step4]  
   step1とstep2,step3より、
      0≦ r-rn<1/10n 




[文献]

 赤攝也『実数論講義』§8.4「10進小数」定理8.4.4(pp.242-243)
 ・加藤十吉『微分積分学原論』3.3有理数の稠密性(p.30):


「十進近似列が満たす性質2」冒頭