実数の十進近似列の具体例

 「随伴する数列」「随伴する整数列」「十進近似列」は、
  実数の小数表示の理論付け・定義づけのための準備として、しつらえられている。

 しかし、何をやっているのか、これだけでは、わかりづらい。

 そこで、順序はあべこべになるけれども、
  実数を小数として表示できることを前提してしまったとき、
   「随伴する数列」「随伴する整数列」「十進近似列」は、何を意味するのか?
 具体的な数値例を通して、みてみよう。

    [具体例]
     ・「有限桁の小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
     ・「有限桁の小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
     ・「循環小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない正の無理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない負の無理数」の十進近似列定義1/定義2


「十進近似列の具体例」冒頭 
十進近似列」冒頭



 -9/8 の十進近似列(定義1)  

・−9/8=−1.125=−2+0.875 に随伴する数列とは、以下の数列
    a1=10(−9/8−[−9/8])=10(−1.125−[−1.125])=10(−1.125 −(−2))=10・(2−1.125)=10・0.875=8.75  
                要するに、a1は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875を10倍して、一桁ずらしたもの。
    a2=10(a1[a1])=10(8.75−[8.75])=10(8.75−8)= 10・0.75=7.5
                要するに、a2は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第一位を消去したものを、100倍して、2桁ずらしたもの。
    a3=10(a2[a2])=10(7.5−[7.5])=10(7.5−7)=10・0.5=5
                要するに、a3は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第二位までを消去したものを、1000倍して、3桁ずらしたもの。。
    a4=10(a3[a3])=10(5−[5])=10(5−5)=0
                要するに、a4は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第三位までを消去したものを、104倍して、4桁ずらしたもの。
    a5=10(a4[a4])=10(0−[0])=10(0−0)=0
                要するに、a5は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第四位までを消去したものを、105倍して、5桁ずらしたもの。
    :
    an =「−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第(n−1)位までを消去したものを、10n倍して、n桁ずらしたもの」
    an+1=「−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第n位までを消去したものを、10n+1倍して、n+1桁ずらしたもの」
     :

  −9/8=−1.125=−2+0.875に随伴する整数列とは、以下の数列
    d1[a1][8.75]=8 つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第1位
    d2[a2][7.5]=7   つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第2位
    d3[a3][5] =5  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第3位
    d4[a4][0] =0  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第4位  
    d5[a5][0] =0  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第5位
     :
    dn =「−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第n位」 
    :      
  −9/8=−1.125=−2+0.875の十進近似列とは、以下の数列
    r1[r]d1/10        =[−1.125]+8/10      =−2+0.8 つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てたもの。
    r2[r]d1/10+d2/100    =[−1.125]+8/10+7/100   =−2+0.87    つまり、9−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てたもの。
    r3[r]d1/10+d2/100+d3/103[−1.125]+8/10+7/100+5/103=−2+0.875  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てたもの。
    r4[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104[−1.125]+8/10+7/100+5/103+0/104=−2+0.8750  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第四位まで表示したもの。
    r5[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104d5/105[−1.125]+8/10+7/100+5/103+0/104+0/105=−2+0.87500  つまり−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第五位まで表示したもの。
     :
    rn =「−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第n位まで表示したもの」 
    :      

   ここで、−9/8=−1.125=−2+0.875の十進近似列 の極限とは?−9/8の小数表示−2+0.875にほかならない。
   






     lim
 rn
 = [r] + 
Σ  di/10i  

n→∞

i=1


 
         =[−9/8]+d1/10+d2/100+d3/103+d4/104+d5/105+… 
          =−2 +8/10+7/100+5/103+0/104+0/105+…
          =−2 +0.87500…
          =−2 +0.875



  →[冒頭/結論] 

「十進近似列の具体例」冒頭 



 -9/8 の十進近似列(定義2)  
 ここでは、実数の十進近似列(定義2)の具体例として、
 −9/8=-1.125の十進近似列 r1,r2,r3,…を、定義2にしたがって、つくってみる。  
       cf.-9/8の十進近似列(定義1)  

 step1-1:d1とは?
    d1を、「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       r[r]=-9/8−[-9/8]=-1.125−[-1.125]=-1.125−(-2)=-1.125+2)=0.875だから、
       「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」d1とは、8。
    つまり、d1は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第1位。   
 step1-2:r1とは? 
     r1[r]d1/10=[-9/8]+8/10=-2+0.8   つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てたもの。
 step2-1:d2とは?
    d2を、「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr1=−9/8−(-2+0.8)=−1.125−(−1.2)=0.075だから、
       「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」d2とは、7。
    つまり、d2は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第二位。   
 step2-2:r2とは?
     r2[r]d1/10+d2/100=[−9/8]+8/10+7/100=-2+0.87  つまり、r2は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てたもの。
 step3-1:d3とは?
    d3を、「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr2=−9/8−(-2+0.87)=−1.125−(−1.13)=0.005だから、
       「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」d3とは、5。
    つまり、d3は、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第三位。   
 step3-2:r3とは?
     r3[r]d1/10+d2/100+d3/103[−9/8]+8/10+7/100+5/103=−2+0.875  つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てたもの。
 step4-1:d4とは?
    d4を、「d4/104rr3<(d4+1)/104」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr3=−9/8−(−2+0.875)=−1.125−(−1.125)=0だから、
       「d4/104rr3<(d4+1)/104」を満たす「0から9までの整数」d4とは、0。
    つまり、d4は、9−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第四位。   
 step4-2:r4とは?
     r4[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104[−9/8]+8/10+7/100+5/103+0/104=−2+0.8750   つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第四位まで表示したもの。
 step5-1:d5とは?
    d5を、「d5/105rr4<(d5+1)/105」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr4=−9/8−(−2+0.8750)=−1.125−(−1.1250)=0だから、
       「d5/105rr4<(d5+1)/105」を満たす「0から9までの整数」d5とは、0。
    つまり、d5は、9−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第五位。   
 step5-2:r5とは?
     r5[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104d5/105[−9/8]+8/10+7/100+5/103+0/104+0/105=−2+0.87500   つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第五位まで表示したもの。
 :
 step (n+1)-1:dn+1とは?
    dn+1を、「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rrn=−9/8−(−2+0.8750…0)=−1.125−(−1.1250…0)=0だから、
       「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」dn+1とは、0。
    つまり、dn+1は、9−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第(n+1)位。   
 step5-2:rn+1とは?
     rn+1[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104d5/105+…+dn+1/10n+1[−9/8]+8/10+7/100+5/103+0/104+0/105+…+0/10n+1=1.12500…0
         つまり、−9/8を−2+0.875と表したときの、0.875の小数点以下第(n+1)位まで表示したもの。
 :



「十進近似列の具体例」冒頭