実数の十進近似列の具体例

 「随伴する数列」「随伴する整数列」「十進近似列」は、
  実数の小数表示の理論付け・定義づけのための準備として、しつらえられている。

 しかし、何をやっているのか、これだけでは、わかりづらい。

 そこで、順序はあべこべになるけれども、
  実数を小数として表示できることを前提してしまったとき、
   「随伴する数列」「随伴する整数列」「十進近似列」は、何を意味するのか?
 具体的な数値例を通して、みてみよう。

    [具体例]
     ・「有限桁の小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
     ・「有限桁の小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環小数で表せる正の有理数」の十進近似列定義1/定義2) 
     ・「循環小数で表せる負の有理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない正の無理数」の十進近似列定義1/定義2
     ・「循環しない無限桁の小数でしか表せない負の無理数」の十進近似列定義1/定義2


「十進近似列の具体例」冒頭 
十進近似列」冒頭



 π の十進近似列(定義1)  
       cf.πの十進近似列(定義2)  

 ・π=3.141592…に随伴する数列とは、以下の数列
    a1=10(π−[π])=10(3.141592…−[3.141592…])=10(3.141592…−3)==10・0.141592…=1.41592… 
                      要するに、a1は、πの整数部分を消去したものを、10倍して、一桁ずらしたもの。
    a2=10(a1[a1])=10(1.41592…−[1.41592…])=10(1.41592…−1)= 10・0.41592…=4.1592…
                      要するに、a2は、πの整数部分と小数点以下第一位を消去したものを、100倍して、2桁ずらしたもの。
    a3=10(a2[a2])=10(4.1592…−[4.1592…])=10(4.1592…−4)=10・0.1592…=1.592…
                      要するに、a3は、πの整数部分から小数点以下第二位までを消去したものを、1000倍して、3桁ずらしたもの。
    an=「πの整数部分から小数点以下第(n−1)位までを消去したものを、10n倍して、n桁ずらしたもの」
    an+1=「πの整数部分から小数点以下第n位までを消去したものを、10n+1倍して、n+1桁ずらしたもの」
  π=3.141592…に随伴する整数列とは、以下の数列
    d1[a1][1.41592…]=1  つまり、πの小数点以下第一位。
    d2[a2][4.1592…]=4   つまり、πの小数点以下第二位。
    d3[a3][ 1.592…] =1  つまり、πの小数点以下第三位。
     :
    dn =「πの小数点以下第n位」 
    :      

   π=3.141592…の十進近似列とは、以下の数列
    r1[π]d1/10        =[3.141592…]+1/10      =3.1   つまり、π=3.141592…の小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てたもの。
    r2[π]d1/10+d2/100    =[3.141592…]+1/10+4/100   =3.14  つまり、π=3.141592…の小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てたもの。
    r3[π]d1/10+d2/100+d3/103[3.141592…]+1/10+4/100+1/103=3.141  つまり、π=3.141592…の小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てたもの。
     :
    rn =「π=3.141592…の小数点以下第n位までを残し、小数点以下第(n+1)位以下を切り捨てたもの。」 
    :      

   ここで、π=3.141592…の十進近似列 の極限とは?π=3.141592…にほかならない。
   






     lim
 rn
 = [r] + 
Σ  di/10i  

n→∞

i=1


 
         =[π]+d1/10+d2/100+d3/103+… 
          =[3.141592…]+1/10+4/100+1/103+…
          =3.141592…
  →[冒頭/結論] 



「十進近似列の具体例」冒頭 



 9/8=1.125の十進近似列(定義2)  

       cf.πの十進近似列(定義1)  

 step1-1:d1とは?
    d1を、「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       r[r]=9/8−[9/8]=1.125−[1.125]=1.125−1=0.125だから、
       「d1/10≦r[r]<(d1+1)/10」を満たす「0から9までの整数」d1とは、1。
    つまり、d1は、9/8=1.125の小数点以下第一位。   
 step1-2:r1とは? 
     r1[r]d1/10=[9/8]+1/10=1.1  つまり、r1は、9/8=1.125の小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てたもの。
 step2-1:d2とは?
    d2を、「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr1=9/8−1.1=1.125−1.1=0.025だから、
       「d2/100≦rr1<(d2+1)/100」を満たす「0から9までの整数」d2とは、2。
    つまり、d2は、9/8=1.125の小数点以下第二位。   
 step2-2:r2とは?
     r2[r]d1/10+d2/100=[9/8]+1/10+2/100=1.12  つまり、r2は、9/8=1.125の小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てたもの。
 step3-1:d3とは?
    d3を、「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr2=9/8−1.12=1.125−1.12=0.005だから、
       「d3/103rr2<(d3+1)/103」を満たす「0から9までの整数」d3とは、5。
    つまり、d3は、9/8=1.125の小数点以下第三位。   
 step3-2:r3とは?
     r3[r]d1/10+d2/100+d3/103[9/8]+1/10+2/100+5/103=1.125   つまり、r3は、9/8=1.125の小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てたもの。
 step4-1:d4とは?
    d4を、「d4/104rr3<(d4+1)/104」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr3=9/8−1.125=1.125−1.125=0だから、
       「d4/104rr3<(d4+1)/104」を満たす「0から9までの整数」d4とは、0。
    つまり、d4は、9/8=1.125の小数点以下第四位。   
 step4-2:r4とは?
     r4[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104[9/8]+1/10+2/100+5/103+0/104=1.1250   つまり、9/8=1.125の小数点以下第四位まで表示したもの。
 step5-1:d5とは?
    d5を、「d5/105rr4<(d5+1)/105」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rr4=9/8−1.1250=1.125−1.1250=0だから、
       「d5/105rr4<(d5+1)/105」を満たす「0から9までの整数」d5とは、0。
    つまり、d5は、9/8=1.125の小数点以下第五位。   
 step5-2:r5とは?
     r5[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104d5/105[9/8]+1/10+2/100+5/103+0/104+0/105=1.12500   つまり、9/8=1.125の小数点以下第五位まで表示したもの。
 :
 step (n+1)-1:dn+1とは?
    dn+1を、「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」に、定める。
       rrn=9/8−1.1250…0=1.125−1.1250…0=0だから、
       「dn+1/10n+1rrn<(dn+1+1)/10n+1」を満たす「0から9までの整数」dn+1とは、0。
    つまり、dn+1は、9/8=1.125の小数点以下第(n+1)位。   
 step5-2:rn+1とは?
     rn+1[r]d1/10+d2/100+d3/103d4/104d5/105+…+dn+1/10n+1[9/8]+1/10+2/100+5/103+0/104+0/105+…+0/10n+1=1.12500…0   つまり、9/8=1.125の小数点以下第(n+1)位まで表示したもの。
 :



「十進近似列の具体例」冒頭