ユークリッド空間Rn上の対称変換

・定義:対称変換 
・性質:対称変換の行列表示

計量ベクトル空間上で定義される〈一次写像の下位類型〉: ユークリッド空間Rn上の直交変換/計量実ベクトル空間上の対称変換/計量実ベクトル空間上の随伴写像/計量同型写像
線形代数目次総目次

定義:ユークリッド空間Rn上の対称変換 symmetric transformation


定義


・「
n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』が対称変換である」とは、
 
n次元ユークリッド空間Rn属す任意のn次元数ベクトル v1, v2にたいして、
   
f (v1 )v2 = v1 f (v2 )  
 が満たされること
  
v1Rn)(v2Rn)( f (v1 )v2 = v1 f (v2 )  
 をいう。
 
随伴写像という用語を用いると…
 「
n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f :RnRn』が対称変換である」とは、
  「『
f : RnRn』の随伴写像」が「f : RnRn」自身であること
 をいう。
 

[文献]
・斎藤『線形代数入門5章§3(p.149)
・永田『理系のための線形代数の基礎4.53(pp.123-4)

設定

なお、この定義がなされる舞台は、以下のように設定されている。
R 実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2n次元数ベクトル
   具体的に書くと、v11, v12, , v1nRとして、v1=( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積
     これによって、
n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム
           (
自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d):n次元ユークリッド空間  

[トピック一覧:対称変換]
[線形代数目次/総目次]

 

定理:ユークリッド空間Rn上の対称変換の行列表現 


定理


1.
次の二つの命題は同値
命題
P:「n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換
命題
Q:「標準基底に関する線型変換fの表現行列は、実対称行列

2. 次の二つの命題は同値
命題
P:「n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換
命題
R:「任意のRn正規直交基底に関する線形変換fの行列表示は、実対称行列


・「
n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換であるならば
 
標準基底に関する線型変換fの表現行列は、
 
実対称行列となる。  
・「
n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」の標準基底に関する表現行列が、
 
実対称行列ならば
 「
f : RnRn」は対称変換である。  

2.
・「n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換であるならば
 
任意のRn正規直交基底に関する線形変換fの行列表示は、
 
実対称行列となる。  
・「
n次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が
 ある「
Rn正規直交基底」に関して実対称行列で表現されるならば
 「
f : RnRn」は対称変換である。
  

[文献]
・斎藤『線形代数入門5章§3(p.149)証明なし・結論だけ。
・永田『
理系のための線形代数の基礎4.53(pp.123-4)

対称行列について:
 
対称行列の定義/対称行列の固有値/対称行列の対角化/  

設定

なお、この定理は、以下の舞台設定上で得られる。
R 実数体R  
Rnn次元数ベクトル空間 
v1, v2n次元数ベクトル縦ベクトル
   具体的に書くと、
v11, v12, , v1nRとして、v1=t( v11, v12, , v1n )n  
           
v21, v22, , v2nRとして、v2=t( v21, v22, , v2n )n  
v1v2n次元数ベクトルv1,v2自然な内積
     これによって、
n計量実ベクトル空間となる。 
v‖:計量実ベクトル空間Rnにおけるユークリッドノルム
           (
自然な内積を用いて定義される) 
d (v1,v2)ユークリッドノルムから定められたユークリッド距離  
Rn,d):n次元ユークリッド空間  

証明

1.
[
参照文献なし。自力。]
 命題Pn次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』が対称変換
 
v1Rn)(v2Rn)( f (v1 )v2 = v1 f (v2 )  ∵対称変換の定義  
 
 線形変換f : RnRnの標準基底に関する表現行列Aで表すと、
   
v1Rn)(v2Rn)( (Av1 )v2 = v1 (Av2 )   ∵一次変換の標準基底に関する行列表示 
 
 v1Rn)(v2Rn)( t (Av1 ) v2 = t v1 (Av2 )   ∵行列積を用いた自然な内積の表現  
 
 v1Rn)(v2Rn)( t v1 tA v2 = t v1 (Av2 )   ∵行列積と転置行列  
 
 v1Rn)(v2Rn)( t v1 tA v2 = t v1 A v2   ∵行列積の結合則  
 
   tA= A     
 
命題Q標準基底に関する線型変換fの表現行列A実対称行列」 

証明

2.
[
命題P命題R] [参照文献なし。自力。]
(step1)
{ p1, p2, , pn }は、任意のRn正規直交基底」を表すものとする。
・「『
Rn標準基底{ e1, e2, , en }』から任意のRn正規直交基底{ p1, p2, , pn }』への基底変換行列」をPとおく。
 つまり、その
1p1, その2p2, , そのnpnとするn次正方行列を、Pとおく。…(1-1)
基底変換行列の性質から、P正則行列になる。
{ p1, p2, , pn }は「Rn正規直交基底」だから、p1, p2, , pnは「n次元ユークリッド空間Rn正規直交系」をなす。
  したがって、
P各列は「n次元ユークリッド空間Rn正規直交系」をなすことになるから、
        Pは
直交行列である。
直交行列の性質により、P−1tP …(1-2)
(step2)
標準基底に関する線型変換fの表現行列Aとおく。…(2-1)
任意のRn正規直交基底{ p1, p2, , pn }に関する一次変換fの行列表示
  
P−1AP   ∵一次変換の行列表示に関する基底変換公式と、(1-1),(2-1) 
  =
(tP) AP   ∵(12)
(step3)
 命題Pn次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換
  
 「 (tP) APは、実対称行列」 
 なぜなら、
 ・
本定理-1.より、命題Pn次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換
          
命題Q標準基底に関する線型変換fの表現行列Aは、実対称行列」 …(3-1)
 ・t ((tP) AP) =(tP) ( tA) t (tP)  ∵行列積の転置行列  
        
= (tP) ( tA) P       ∵転置行列の転置行列  
          
= (tP) AP          ∵(3-1)より、A実対称行列
(step4)
 step3,4より、  
 命題
Pn次元ユークリッド空間Rn上の線形変換f : RnRn』」が対称変換
  
命題R任意のRn正規直交基底{ p1, p2, , pn }に関する一次変換fの行列表示(tP) APは、実対称行列」 

[命題R 命題P ] [参照文献なし。自力。]
命題R任意のRn正規直交基底に関する一次変換fの行列表示は、実対称行列
命題Q標準基底に関する線型変換fの表現行列は、実対称行列
命題P  ∵本定理-1.より。
よって、命題
R命題P  

[トピック一覧:対称変換]
[線形代数目次/総目次]