ベクトル演算の一次写像 : トピック一覧
・定理:一次結合の像/零ベクトルの像/逆ベクトルの像
※一次写像関連ページ:一次写像―定義/一次写像の代数系/一次写像と線形独立/一次写像―全射・単射/階数/同型写像/同型写像と線形独立
定理:一次写像による一次結合の像
[志賀『線形代数30講』16講(p.100);]
(舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上のベクトル空間
V' :K上のベクトル空間
+:ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法
+:ベクトル空間V'において定義されているベクトルの加法
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:K上のベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法
および、K上のベクトル空間V'において定義されているスカラー乗法
f:V→V':K上のベクトル空間VからK上のベクトル空間V'への一次写像
(本題)
Vに属すベクトルv1, v2, …, vlとスカラーa1, a2, …, al による一次結合a1v1+a2v2+…+alvlを、
一次写像fがV'に写した像は、
「ベクトルv1, v2, …, vlを一次写像fがV'に写した像」と「スカラーa1, a2, …, al 」による一次結合となる。
(∀v1, v2, …, vl∈V)(∀a1, a2, …, al ∈K)( f (a1v1+a2v2+…+alvl)=a1 f (v1)+a2 f (v2)+…+al f (vl) )
(証明)
・体K上のベクトル空間Vにおいて定義されるスカラー乗法とは、
「体Kの任意の元aと、Vの任意の元vの組に対して、Vの元を一意的に定める演算」
のこと。
だから、
任意のa1, a2, …, al ∈Kと、任意の v1, v2, …, vl∈V に対して、
Vに定められたスカラー乗法をおこなった結果出てきたスカラー積a1v1, a2v2, …, alvlは、Vの元 である。
(そもそも、演算結果がVの元にならないなら、その演算はVに定められたスカラー乗法とは呼べない)
Vの元を「Vに属すベクトル」と呼ぶのだから、
任意のai ∈K, vi∈V に対して、Vに定められたスカラー乗法をおこなった結果出てきたスカラー積aiviは、
「Vに属すベクトル」となる。
以上をまとめると、
(∀v1, v2, …, vl∈V)(∀a1, a2, …, al ∈K)(a1v1, a2v2, …, alvl∈V) …(1)
・任意のv1, v2, …, vl∈Vと任意のa1, a2, …, al ∈Kに対して
f (a1v1+a2v2+…+alvl)= f (a1v1)+ f (a2v2)+…+ f (alvl) ∵(1)と一次写像の要件1より。
=a1 f (v1)+a2 f (v2)+…+al f (vl) ∵一次写像の要件2より。
定理:一次写像による零ベクトルの像
[永田『理系のための線形代数の基礎』1.3問1(p.20;208);]
(舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上のベクトル空間
V' :K上のベクトル空間
+:ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法
+:ベクトル空間V'において定義されているベクトルの加法
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:K上のベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法
および、K上のベクトル空間V'において定義されているスカラー乗法
f:V→V':K上のベクトル空間VからK上のベクトル空間V'への一次写像
(本題)
Vの零ベクトルの「一次写像f:V→V'による像」は、V'の零ベクトルに一致する。
定理:一次写像による逆ベクトルの像
[永田『理系のための線形代数の基礎』1.3問1(p.20;208);]
(舞台設定)
K:体 (例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
V :K上のベクトル空間
V' :K上のベクトル空間
+:ベクトル空間Vにおいて定義されているベクトルの加法
+:ベクトル空間V'において定義されているベクトルの加法
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:K上のベクトル空間Vにおいて定義されているスカラー乗法
および、K上のベクトル空間V'において定義されているスカラー乗法
f:V→V':K上のベクトル空間VからK上のベクトル空間V'への一次写像
(本題)
Vに属す任意のベクトルvの逆ベクトル−vの「一次写像f:V→V'による像」は、
vの「一次写像f:V→V'による像」の(V'で定義された)逆ベクトルに一致する。
(∀v∈V)( f (−v)=− f (v) )
(reference)
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目210線形空間(pp.570-576)
線形代数のテキスト
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年、16講線形写像(pp.100-105)。
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年、2.3基底と次元(pp.41-50)。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.3ベクトル空間(pp.14-6)。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年、Vベクトル空間§6ベクトル空間の公理化(p.115)。線形従属・独立については、数ベクトルに限定?
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年、4.1線形空間と写像(p.91)。 線形従属・独立については、数ベクトルに限定?
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第4章§2線形空間(p.96):実線形空間・複素線形空間のみ;附録V§2体(p.249)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§5.3-a(p.164).
代数学のテキスト
本部均『新しい数学へのアプローチ5:新しい代数』共立出版、1969年、5.2-Aベクトル空間(p.132)。
酒井文雄『共立講座21世紀の数学8:環と体の理論』共立出版、1997年、1.6ベクトル空間(p.22)。:数ページしか触れていないが、逆に、一般の線形空間の理論の骨組みだけを浮かびあがってくるので、何が重要事項なのかを見極める上で便利。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門