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個展報告:03年5月

■最初のひとり 2004-8-20(金)

高村光太郎展を観に行きました。というよりも、今回は妻、智恵子の「紙絵」も展示されると知って足を運んでみました。

彼女の「紙絵」を知ったのは『智恵子紙絵』(ちくま文庫)という本を偶然書店で見つけたのがきっかけでした。それまで智恵子抄の人というイメージしかなく、彼女自身も油絵等の制作をしていたのを知ったのは、この本のなかでの高村光太郎の文章を読んでからです。

「紙絵」とは、亡くなる前の智恵子が入院中に制作した切り絵のことで、上記の本には千数百枚という作品のうちの一部がカラーで掲載されています。これらの作品を観た時、あまりの形の美しさと色合わせのセンスに、こんな瑞々しい感性を持った女性がこの時代にいたのかと驚きました。光太郎がただの切り絵ではなく、わざわざ「紙絵」と命名したのも理解できます。それだけ作品としての完成度が高いのです。

これらの「紙絵」は発表を目的に創られたものではなく、見舞いに来る光太郎にだけ見せるものとして創られました。出来上がった作品を一番観てもらいたい人に見せるという事は、おのずと作品の完成度を高めることに繋がると思います。自分の最大限の力を発揮したものを見せたいと自然と思うからです。

世界中で愛されている児童文学も、最初は自分の子どもに聞かせる為に創られたように、自分の最大の理解者であり批評家である具体的な誰かの存在というのは、モノを創る人にとってかけがえのない存在となります。そしてその存在がある限り、制作が続けていけるということもあります。

モノ創りは孤独な作業と言いますが、確かに制作をしている時は一人で立ち向かい続けるものです。けれども、そうして創り上げたものは自分以外の他者と繋がる為のものでもあるのです。そしておそらくは、目に見えない千人の支持よりも、目の前の一人の言葉のほうが、心の支えとして残り続けていくもののような気がします。

出品されていた紙絵は少数でしたが、智恵子がいかに集中してこの制作に取り組んでいたかを観ることが出来ます。興味のある方は上記の本と合わせてご覧になってはいかがでしょうか。


損保ジャパン東郷青児美術館

■高村光太郎展 8月29日(日)まで

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