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■白の威力 2003-7-4(金)

日常のなかで、イメージの欠片みたいなものを拾い集めたりしていると、ふとしたことで一枚の絵のイメージが固まったりします。そういうイメージが出来た時に、描きたい気持ちが高まるのは当然のことなのですが、もうひとつ、非常に描く意欲が湧く状況があります。

何も描いていない、真っ白な画面を前にした時がそうです。白い画面の前に座ると不思議と気分が高揚し、これからやる作業が非常に楽しいものであるような気がしてきます。これは画面がある程度の大きさがあったほうがより強く感じるようです。

この状況はどんな時にでも描く気持ちが湧き上がるものなので、その有効な使い方としては、それまで描いていた絵がどうにも新鮮な気持ちで観ることが出来なくなり停滞してしまった時、新しい画面に切り換えて別の作品を始めてしまうのです。

白い画面に向かい、気持ちを高めて新たな作業を始めると、自然と前の作品の突破口を見つけられることも多いです。これはわたしにとって、手っ取り早く気持ちを奮起させる方法のひとつになっています。

◆日記&お仕事 2003-7-9(水)

久しぶりに風邪をひいたようで、なんだか熱っぽくふわふわしております。熱のせいなのか何なのか、いろんなイメージが浮かんでくるので取り留めなくいくつか「カキトメ」たりしています。

5月の個展に来ていただいた方から、出品していた「夜街−ヨルマチ−」IIIIIIの連作のどれかを、出版する本の装画として使いたいというお話を頂いておりました。多少トリミング等をして構図を変えてしまうかもしれないが、それでも構わないようだったら・・という内容だったのですが、自分の作品が出版物に使って頂けるなんて!と快諾しておりました。今日その本が家に届き、表紙を見たところ・・・「夜街−ヨルマチ− I」の絵が「縦構図」になってました(笑)
・・・あまりの予想外の使い方に見た瞬間吹き出しましたね。これ、トリミングって言うかしら?

使って頂けることが嬉しいので、わたし自身はこういう事も全く気にしないのですが、作家によっては承諾しない人もいるかもしれないですね。 建物という具体的なイメージでなく、より抽象的に見えるようにとのご判断だったようで、こういう風に自分の作品を観るとは思っていなかった為、なかなかおもしろい経験でした。

有斐閣 という出版社の「新しい金融理論」という、美術とは全く関係のない(笑)専門書です。本屋さんで見かけたら、縦構図になった絵を楽しんでみて下さい。勿論、金融関係の方はご購入くださっても。ちょっとお仕事報告でした。

■窓 2003-7-11(金)

こちら側と向こう側を結ぶ、窓や扉という場所は、二つの空間を繋ぐとても魅力のある所です。奥の世界への興味を湧かせたり、またその手前に窓ガラスがあれば更に別の場所が映り込んで複雑な空間が生まれたりと、絵のモチーフとしても非常に惹かれるものが多いです。

ここ数日、アクセス解析を見ていて気が付いたのですが、画帖に載せているある絵から、妙にトップページに飛んでくる率が高いことが分かりました。解析はトップページにしか付けていないのでなぜその絵だけから飛んでくるのか不思議に思い、一時的にその絵のページにも解析を付けてみました。それが「窓の森へ」という絵なのです。

わたしのように、窓に魅力を感じた人がリンクしてくれているのだろうか・・などと淡い期待を持っていたのですが、謎はすぐに解けました。勘のいい方はおわかりでしょうか。リンク元はすべて検索エンジン、検索ワードは「窓の森」。そう、WINユーザーにはお馴染みの「窓の杜」に行きたい方が辿り着いていた訳です。その中の何人かがトップページも覗いて見てくれ、解析に残ったのでした。

「窓」という、複数の空間を結ぶ場所を描いた絵を通して、ネットならではの空間を結ぶ力も発揮してしまった「窓の森へ」のお話。

■幻影絵画 2003-7-15(火)

デジカメを所有するようになってから、絵の制作に少し変化が加わりました。枚数を気にせず撮りためて、パソコン上ですぐ確認出来ることから、制作の過程をデジカメに収めることにしたのです。これまでも資料として普通のカメラで撮ってはいたのですが、ちょっと確認したい、というには手間がかかりすぎて、あまり活用出来ていなかったので、デジカメの機能はその点非常に痒い所に手が届く感じでとても役立っております。

途中経過を撮影すると、自分がその時々でどのような判断でその作業をしたのか確認することが出来ますし、特に初期段階の作業は、思い浮かんだイメージをストレートに画面に置いていくものなので、後半作業が煮詰まってきたときに見ると、随分頭が整理されたりします。

全て自分がしてきた作業であるとはいえ、今、目の前には存在しない自分の描いた絵を、パソコン上で確認できるというのはなんともおもしろいものです。プリントされた写真とはまた違った、完全にデータでしかない「絵画」。手に触れられるモノとして存在していることが絵画の魅力の一つだと考えているのですが、その存在感のないフワフワした「絵画」は、人が持つ記憶とか思い出に近いものなのかもしれません。

■私的画集 2003-7-17(木)

美術館での展覧会に行った際、気に入った作品が多かった時には迷わず図録を購入しますが、数点しか気に入るものがないことも多々あります。そんな時にわたしは、気に入った作品のポストカードを購入することにしています。最近のミュージアムショップは力を入れている所も多いので、出品されている代表的な作品のポストカードは大抵作られています。そして気に入ったカードだけ、ポストカードファイルにストックしておくのです。ある程度数が増えてくると、カードとはいえなかなか見応えのあるものに仕上がります。

これのおもしろい所は、ジャンルを問わずいろんな作家が一緒くたになることと、全体を通して、自分の嗜好のようなものが見えることです。気に入ったものだけで構成されている為、その作品を観た時のことも思い出されますし、自分にとって、なかなかいい画集となるのです。

よく展覧会で「○○コレクション」というタイトルで催されるものがありますが、それは○○さんの個人的嗜好で集めた作品群を観られるものです。先程のポストカードコレクションをしていると、自分が美術品のコレクターであるならこういうコレクションになるのか、という疑似体験も出来ます。

美術品コレクターになるのは難しくても、ポストカードでちょっとその気分を味わうのも悪くないですよ。勿論、本当にコレクターになった暁には、「川田綾子」もヨロシク。

■画題のチカラ 2003-7-22(火)

いつの頃からか、画題を付けるという作業にある程度の時間を使うようになってきました。そうなる前は作品を描き上げた後に無難な言葉を選んで付けるという、オマケのような作業に感じていたのですが、枚数を重ねていくうちに、画題という「言葉」の持つ力について段々と意識が変わってきました。

絵という視覚情報に比べ、より共通認識が持てる言葉というものが介在することで、それは観る側と作品との間を繋ぐ役割を担っているように思えます。その中継地点を通過することで、観る側のイメージがより拡がるものになればという想いで画題の言葉を選ぶようになりました。けして絵の説明文ではない、その短い言葉を添えることで、よりその世界に入り込めるようなもの、そんなことを考えつつ言葉を探します。

画題は描きながら浮かんでくることが多く、浮かんだ単語や漢字を書き留めておき、絵が仕上がった時にそのメモを見ながら考え決定します。絵を観る人の目の前にちょっと置いておく、そんな感覚に近いです。

■ある美大予備校でのオハナシ 2003-7-26(土)

美大予備校。そこは美術大学を目指す者が集まり、日夜、基本技術の習得に邁進する所であると共に、美術大学への夢や希望を持って集まった者が、最初に美大のニオイを感じられる場所であるとも言えます。特にそれを感じさせてくれる存在、それが予備校の講師である美大卒業生や美大生でした。

講師になるには、多く場合浪人を経験しているというのが条件であったりするそうで、わたしが通っていた予備校も、受験にえらく苦労した美大卒業生や美大生が何人も勤めており、講評会という名の独演会では、涙なくしては聞けないような苦労話を聞かされ、受験魂に火を付けさせられたものでした。それらの話から「ああ、苦労してるのは私だけじゃないんだ・・がんばろう・・!」と思ったり、「・・そんな苦労したくないから、とっとと合格しよう。がんばろう」と個人によって受け取り方は様々でしたが、得るものは大きかったように思います。

ところがある時、「浪人経験者」という慣例を破る講師が出現しました。美大の中でも群を抜いて競争率の高い、東京芸大の油絵科を現役合格したばかりのZ氏が加わったのです。彼の受験生時代の作品は予備校のパンフレットにもデカデカと載っており、そこに通っている人は誰もが知っていましたし、出身高校が全国東大合格率ベスト10に入るような高校だったこともあって、一体どんな話が聞けるのかとみんな興味津々でした。

待ちに待った講評会、 鳴り物入りで登場したZ氏が早速受験生の質問に答える時が来ました。

生徒「現役合格出来たのは何故だと思いますか?」

Z氏「早い段階で、自分の出来ること出来ないことを見極めて、出来ることを全面に押し出したことです」

生徒一同「(なるほどぅ・・・)」

Z氏「具体的に言うと、僕は細かい描写は得意だけど、量感(モノのボリューム感)を表現するのは人並みだったので、量感を一切画面から消し去りました」

生徒一同「(ん?一切消し去る・・・?)」

Z氏「そして絶対誰も真似が出来ないくらい徹底的に描き込む描写だけに専念しました。人物なら毛穴まで描きますよ」

生徒一同「(毛穴を描く・・・?)」

生徒「・・えーと、受験にあたって心がけていたことはなんですか?」

Z氏「とにかくずっと絵のことだけを考えていましたね」

生徒「Zさんとかだと、寝る以外はずっとというぐらいなんでしょうか?(笑)」

Z氏「いや、それだと疲れるので、ある一定の時間だけは考えないようにしようと思って、僕は歯磨きの時間だけは考えないという風に決めました」

生徒一同「・・・・・」

Z氏「あれ?受験勉強ってそういうもんでしょ?」

講師陣「ま、まあZ君は特別っていうか、そういう考え方もあるっていうか・・ね?」

Z氏「あ?何言ってるんですか?こんなの普通ですよ」

生徒講師一同「(これをどう参考にしろと・・・?)」

ある意味、期待を裏切らない彼の言葉に、浪人を経験した人を講師にするということについて、全員が納得した瞬間でした。彼はその後の講評会でも数々の名言(迷言?)を残したのですが、まだあの予備校に勤務しているのかは不明です。ただ、彼の言葉で受験生が思ったことは、「こういう人と同じ土俵で勝負するのか・・・がんばろう・・・・」確実にこれだけはしっかりと心に刻まれました。

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