被団協新聞

非核水夫の海上通信【2024年】

このコラムは、川崎哲氏(ピースボート地球大学)によるもので、
「被団協」新聞に2004年6月から掲載されています☆☆

2024年2月 被団協新聞2月号

核兵器禁止 日本政府の言い訳

 「核兵器禁止条約は核兵器のない世界の出口とも言える重要な条約だが、核兵器国は1カ国も参加しておらず、いまだ出口に至る道筋は立っていない」。これが日本政府の公式見解だ。
 だが核兵器の禁止は出口ではない、入口だ。生物・化学兵器、地雷やクラスター爆弾も、まず条約で禁止したことで廃絶への道が開かれた。核兵器国が入っていないことは日本が何もしない理由にならない。核兵器国はお互い、相手が持っているからこちらも持つのだと言い合っている。先月来日したICANのメリッサ・パーク事務局長はこれを「堂々巡りの循環論法」と批判し、悪循環を断ち切るリーダーシップが必要だと訴えた。
 中国や北朝鮮の脅威をあげて「厳しい安全保障環境」だから核抑止力が必要だとの声もある。だが逆だ。脅威があるからこそ軍縮が必要なのだ。軍拡競争は、緊張や危険をさらに高めるだけである。

2024年1月 被団協新聞1月号

締約国会議 核抑止論の危険性

 核兵器禁止条約第2回締約国会議の決定事項の中で注目されるのは「核兵器に関する安全保障上の懸念」についての協議プロセスを始めることだ。核兵器の非人道性とリスクに関する新しい科学的根拠に基づき「核兵器の存在および核抑止論」からもたらされる「安全保障上の懸念、脅威、リスク」を議論する。通常「安全保障上の懸念」というと軍拡や核保有を正当化する文脈で使われるが、核兵器や核抑止論そのものが「安全保障上の懸念」なのだという議論である。オーストリアが牽引し、2025年3月の次回締約国会議にまとめと提言を出す。
 協議は条約締約国と署名国の間で行なわれるが、赤十字やICAN、「その他の関係者や専門家」も関与する。日本政府は「賢人会議」の専門家らがこの議論に加わることを促してはどうか。核抑止に依存した安全保障がいかに危険かを客観的に論ずる好機である。