相談のまど

相談活動

「被団協」新聞に掲載されている「相談のまど」よりご紹介します。

<2024年2月号より>
介護保険の介護認定 状態が変化したら
「要介護」の場合は区分変更申請を
「要支援」の場合は改めて申請を

 【問】私は、昨年夏入院した時に介護保険の申請をするように言われて申請し「要支援2」となりました。特にサービスは利用していません。その後、歩行が危なっかしくなりました。外出時は車いすを使用し、家の中ではトイレや食卓に移動するときに歩行車を使わないと移動できなくなりました。私の動きをみて息子が慌てて車いすも歩行車も購入してくれました。息子と二人暮らしですが、「要支援2」では必要なサービスが受けられないのではと思い、このままでは息子に負担をかけるばかりです。今の私のような状態では「要支援2」でしかたがないのでしょうか。

*  *  *

 【答】昨年夏から少しずつ筋力や全身状態が低下してきたのでしょう。「要支援2」で認定期間中だと思いますが、今のあなたの状態から見て改めて介護認定の申請ができると思います。
 「要介護」認定を受けていて状態が変化した場合には、認定期間中でも区分変更申請をしますが、「要支援」の場合には改めて介護認定申請をすることになります。自治体の介護保険課か地域包括支援センターに申請をしてください。
 改めて主治医意見書を書いてもらうことになりますので、主治医には今のあなたの状態を詳しく話しておくことが大事です。訪問調査時には息子さんも同席して状態をきちんと説明してもらうようにしてください。特に移動動作が難しくなっていることで、リハビリパンツや尿取りパットなどを使っているのであれば、恥ずかしがらずにきちんと伝えてください。訪問調査では認知症状や排せつなどについて重視します。
 なお、「要支援2」でも必要であれば車いすや歩行車などを福祉用具サービスとして利用できます。利用者本人の状態にあった機種を選定できますし、保守管理や状態に合わせて変更もできます。まずは要介護認定の申請をしてください。

<2024年1月号より>
被爆者の介護手当
窓口担当者もまちがうことがあります

 【問】1年前に「脳血管障害」を発症し、回復期リハ病棟でリハビリを受け、何とか退院しました。「右片麻痺」が残り身体障害者2級の手帳を交付されました。一人暮らしですが、退院後はデイサービスに通いながら近くに住む娘が泊まり込んだり、通ってきて介助してくれていますし、近所の友達の援助で何とか生活をしています。
 杖をついても転びやすく、衣服の着脱にも介助が必要なことが多いため被爆者の介護手当が受給できないかと主治医に相談し、診断書を書いてもらって申請しました。ところが保健所の担当者に「家族介護手当は重度障害でないと受給できない」と言われました。「家族介護」ではないと思うのですが。

*  *  *

 【答】介護保険では24時間365日支援を受けるわけにはいきません。特に、ヘルパーの生活援助の制限は著しく、どうしても別居している家族や友人、知人、または介護保険外で専門家の援助を受けないと暮らしは成り立ちません。
 あなたの場合、娘さんの介助ということで担当者が家族介護手当の対象と判断したようです。家族介護手当の対象は重度障害のみ。これは家族が介護するのは当たり前という、日本の介護観によるものでしょう。
 別居している家族が通ってきたり、時には泊まり込んで介護している場合は、家族介護ではなく費用介護に該当します。たとえ肉親でも、交通費をかけて通い、自分の生活や家族の協力で介護にかかわることができているのですから、十分でなくても対価は支払いたいと思うのが常識です。
 費用介護の対象になる障害には、中等度と重度があります。あなたの場合は主治医が中等度と判断して診断書を書いてくれたと思いますので、その旨をきちんと担当者に話してみてください。
 被団協では各県の窓口の対応について問題がある場合には厚労省に改善するよう具体的に申し入れています。ただ、先日の厚労省要請で「介護保険サービスは質の高いサービスを提供しているので、それを優先して」という回答がありました。これには納得できません。被爆者の介護手当は介護保険とは別の制度です。1968年に制度化されたもので、被団協が勝ち取ってきた制度です。
 私たちも被爆者援護の独自の制度は介護保険と並立で利用できることをしっかり確認しておく必要があります。

<2023年12月号より>
通院が困難になったら訪問診療を利用しましょう

 【問】私は80代半ばでひとり暮しです。シルバーカーで何とか家の周りは歩いていますが、「要介護1」の認定を受け週1回ヘルパーとデイサービスを利用しています。
 整形外科をはじめとして3つの病院にかかっていますが、通院のたびに知り合いに付き添いを頼んで同行してもらっています。受診のあと薬局にも寄ってもらいます。タクシーを利用し、いくばくかのお礼もしているので、負担になってきています。何かいい手立てはないでしょうか。

*  *  *

 【答】3つの病院を受診するたびに付き添いをお願いするとなると大変ですね。あなたのようにひとりでの通院が難しくなってきた場合には、自宅を定期的に訪問して診療を行なう「訪問診療」を受けることをお勧めします。
 在宅支援診療所と言われる医療機関で、次のような要件を満たして認可を受けています。@患者を直接担当する医師、または看護師と24時間連絡が取れる体制を維持する A患者の求めに応じて24時間往診ができる体制がある B担当する医師の指示のもとに訪問看護ができる訪問看護ステーションと連携する体制がある C緊急時に連携する医療機関で検査・入院時のベッドを確保しており円滑な情報提供ができる、などです。
 このような体制がきちんとしていて、かかりつけ医として一元的に療養の管理に責任をもって行なえる診療所です。あなたのように3カ所の病院にかかっている場合でもそれぞれの担当医からの情報提供を受けて診療にあたります。必要な場合には相談、連携して診療にあたります。訪問は月2回が原則ですが、熱発した時や体調が悪い時には夜間でも訪問してくれます。医療費は被爆者健康手帳により助成されますので自己負担はなく、お車代のみ負担します。
 転倒に気を使いながらタクシー代を支払って受診するより、どんなにか安心です。いま受診中の病院かケアマネジャーに相談して訪問診療を紹介してもらってください。
 また、薬が処方されますが、あなたは「要介護1」なので介護保険サービスの居宅療養管理指導により薬剤師が訪問して届けてくれます。飲み方の相談や、飲み忘れを防止するために投薬カレンダーなどを利用して配薬もしてくれます。こちらの費用も被爆者健康手帳による助成があるので自己負担なしです。
 訪問診療は寝たきりにならないと利用できないと思っている方も多いようですが、通院が難しいと思ったら早めに利用することをお勧めします。

<2023年11月号より>
デイサービスの利用料
被爆者手帳で助成されます

 【問】夫婦二人暮らしです。私は被爆者健康手帳を持っていますが、妻は持っていません。
 私は今年に入り介護認定を受けてデイサービスに通い始め、妻も最近通うようになりました。ところが妻には事業所から食費や雑費以外に利用料の請求書がきて支払っています。同じようにデイサービスに通っているのに私には昼食代と雑費だけの請求です。妻が通うようになるまでは気にならなかったのですが、いつかまとめて支払えと請求書が来るのではないかと、とても不安です。どういうことでしょうか。

*  *  *

 【答】お二人でデイサービスに通われているのですね。あなたには介護保険の利用料の自己負担分が請求されない、ところが奥さんが同じようにデイサービスに通うようになって、利用料の自己負担というのがあると気づかれたのですね。
 あなたが広島で被爆していて被爆者健康手帳をお持ちだということで請求が来ないのです。
 被爆者援護施策により介護保険サービスの医療系サービスのすべてと、福祉系サービスの一部(訪問介護・訪問入浴等は対象外)に助成が行なわれているため、利用料の自己負担がないのです。あとからまとめての請求などありませんので安心してください。ただし、助成は利用料の自己負担分のみで、食事代や雑費などは支払う必要があります。
 なお、訪問介護サービスの場合、非課税世帯については「訪問介護利用被爆者助成受給者資格認定書」の申請をして認定を受けた場合には、利用料助成が行なわれます。

<2023年10月号より>
特別障害者手当
支給要件に該当すれば受給できますが介護手当と調整されます

 【問】母は関東で一人暮らしをしており、いずれ特別養護老人ホーム(特養)に入所するつもりの様です。資料を取り寄せたら食事代や居住費を取られるが、広島の被爆者の施設は無料のようだと、広島に行って入所したいと言います。
 広島の施設の入所要件等を教えてください。

*  *  *

 【答】被爆した広島や長崎の特養に入所したいという希望はよく聞きます。被爆者どうし気がねなくおしゃべりできるとの思いもあるようです。
 広島には原爆養護ホームと言われる施設は4か所あり、1か所は養護老人ホームで、特養は神田山やすらぎ園、倉掛のぞみ園と矢野おりづる園の3か所です。入所対象者は、広島県内に住所があること。さらに、身体上もしくは精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難で入院治療を必要としない、という条件があります。介護保険の認定は不要ですが、担当課が入所に該当するかどうかを判定します。手続きは広島市内に住所があれば住所地の地域支え合い課、広島県内の場合は広島県被爆者支援課に相談します。
 費用は食費と居住費の負担が必要で、世帯の所得や預貯金の額等により5つの区分で負担額が決められています。この点は、他の地域の特養入所と同じです。なお3カ所のうち矢野おりづる園はユニット個室のため、居住費が他の2つより高くなっています。
 また、神田山やすらぎ園と倉掛のぞみ園では、入所者の前年度の公的年金等の収入額とその他の合計所得金額の合計額が0円の場合、居住費と食費が免除される制度があります。
 日本被団協も厚労省に被爆者のための福祉施設を各地につくってほしいと長年要請してきましたが地域にある福祉施設を利用するようにと回答されています。
 お母さんに広島の被爆者のための特養の入所条件を知らせてよく話し合ってみてください。

<2023年9月号より>
広島の原爆養護ホームへの入所
県内居住者等の条件あり

 【問】母は関東で一人暮らしをしており、いずれ特別養護老人ホーム(特養)に入所するつもりの様です。資料を取り寄せたら食事代や居住費を取られるが、広島の被爆者の施設は無料のようだと、広島に行って入所したいと言います。
 広島の施設の入所要件等を教えてください。

*  *  *

 【答】被爆した広島や長崎の特養に入所したいという希望はよく聞きます。被爆者どうし気がねなくおしゃべりできるとの思いもあるようです。
 広島には原爆養護ホームと言われる施設は4か所あり、1か所は養護老人ホームで、特養は神田山やすらぎ園、倉掛のぞみ園と矢野おりづる園の3か所です。入所対象者は、広島県内に住所があること。さらに、身体上もしくは精神上著しい障害があるために常時介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難で入院治療を必要としない、という条件があります。介護保険の認定は不要ですが、担当課が入所に該当するかどうかを判定します。手続きは広島市内に住所があれば住所地の地域支え合い課、広島県内の場合は広島県被爆者支援課に相談します。
 費用は食費と居住費の負担が必要で、世帯の所得や預貯金の額等により5つの区分で負担額が決められています。この点は、他の地域の特養入所と同じです。なお3カ所のうち矢野おりづる園はユニット個室のため、居住費が他の2つより高くなっています。
 また、神田山やすらぎ園と倉掛のぞみ園では、入所者の前年度の公的年金等の収入額とその他の合計所得金額の合計額が0円の場合、居住費と食費が免除される制度があります。
 日本被団協も厚労省に被爆者のための福祉施設を各地につくってほしいと長年要請してきましたが地域にある福祉施設を利用するようにと回答されています。
 お母さんに広島の被爆者のための特養の入所条件を知らせてよく話し合ってみてください。

<2023年8月号より>
生活保護費の計算、被爆者の健管手当は収入認定されません

 【問】一人暮らしで、健康管理手当を受給しています。国民年金の受給額が少ないので生活保護の申請をして受給するようになりました。ところが生活保護の支給額が1万円ほどです。家賃の基準額を超える1万円を自分で負担して払っているので、これでは生活ができません。

*  *  *

 【答】生活保護基準額は生活保護1類(個人の食費・その他)+2類(光水熱費等)に住宅扶助の合計です。あなたのお住いの住所が1級地の1にあたるので、1類が3万3750円、2類が4万5320円、住宅扶助の基準限度額5万3700円を足した額が基準額です。ここから国民年金額を引いた額が支給されますが、計算してみると健康管理手当が収入認定されているようです。
 以前にも同様の相談があり、「被団協」新聞2020年12月号(503号)の「相談のまど」に掲載しました。被爆者援護に関わる諸手当のうち原爆症認定患者に支給される医療特別手当の一部と特別手当は収入認定の対象となりますが、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当や保健手当と葬祭料は収入認定の対象外です。当時、その旨の通知を、改めて厚労省の担当部署から各県に出してもらいました。
 生活保護課に行って、健康管理手当を収入認定から外して計算をやり直してもらいましょう。地元の被爆者の会の相談員に一緒に行ってもらうと良いと思います。そして、昭和36年4月1日厚生省発社第123号が各都道府県知事、各指定都市長あて厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領」として出され、収入認定の認定指針が示されていることを承知しているか、担当者に聞いてみてください。この通知は、以降金額以外変更されていません。
 いま、物価高騰で私たちの暮らしは大変厳しくなっています。生活保護を受けているからと肩身の狭い思いをすることなく、国民の権利として言うべきことはきちんと訴えましょう。

<2023年7月号より>
 介護保険で「サービス外」とされる電球とりかえなどの生活支援
 地域の有償ボランティアなどの利用を

 【問】介護保険でヘルパーがきてくれますが、電球の取り換えやエアコンのフィルター掃除などをお願いすると「そうしたことはできない」と言われます。そういうこともやってもらわないと困るのですが、頼めないことなのでしょうか。

*  *  *

 【答】電球の取り換えやエアコンのフィルター掃除、カーテンの取り外しなど生活していくうえでは雑事と思われることが案外多いものです。高齢になるとこうした作業は危険も伴います。
 ところが介護保険制度ではこうした仕事はサービス外とされていて、ヘルパーさんには頼めないことになっています。
 そこで、自治体の社会福祉協議会の有償ボランティアや生活協同組合、地域の民医連などの協同組織で助け合いをやっているところがあるので、連絡してみてはいかがでしょうか。
 社会福祉協議会の有償ボランティアは、庭の掃除や植木の剪定、大きなものの買い物など広範囲に対応してくれるところもあり、必要な時、あるいは毎週何曜日などと決めて依頼できるようです。費用は地域ごとに決められています。
 生協では、組合員に対して支援を行なっているようです。
 民医連の協同組織での取り組みは、今のところ実施地域が限定されているようです。
 いずれにしてもお住まいの地域でそれぞれ問い合わせてみてください。
 こうした生活上の困りごとは、被爆者だけの問題ではありません。一人の相談が取り組みを始めるきっかけになり、相互扶助が組織されるかもしれません。地域の被爆者の会や支援者とともに申し入れをすることも大事だと思います。

<2023年6月号より>
デイサービスでの入浴介助を断られました。どうすれば…

 【問】被爆者である夫は「要介護4」で寝たきりに近い状態です。最近まではデイサービスで週2回入浴をさせてもらっていましたが、職員の手もギリギリで入浴介助は無理と断られました。
 夫はもともとお風呂が大好きだったので、断られたことをとても残念がり元気もなくなってきてしまいました。訪問入浴を頼みたいのですが利用料が高額です。被爆者健康手帳での助成はないのでしょうか。

*  *  *

 【答】暑くなる季節を迎えて、入浴は身体の清潔を維持するだけでなく気持ちよく過ごすためには必要なことです。
 デイサービスでは事業所によっては機械浴を導入して介護度の重い利用者の入浴も受け入れているようですが、すべての事業所ではありません。人手不足や職員の高齢化もあり、介護度の重い方の入浴目的の利用を減らしてきているのかもしれません。
 自宅での入浴は介護する人には大変な負担です。ヘルパーの支援は病状や利用者の状態によっては難しく、訪問看護による入浴介助という手もあります。一度ケアマネジャーに訪問看護で入浴介助が受けられないか相談してみたらいかがでしょうか。それも無理という場合は訪問入浴サービスを利用することになります。訪問入浴の報酬は高額で(地域により自己負担額は異なりますが)、週2回の利用で月額1万円を超えます。
 しかし、今のところ訪問入浴は被爆者健康手帳での助成はありません。
 被団協では厚労省に訪問入浴利用料への助成を要請しています。
 引き続き、訪問入浴利用料への助成を厚労省に迫っていきたいと考えていますので、皆さんの声を日本被団協中央相談所までお寄せください。

<2023年5月号より>
「訪問介護利用被爆者助成受給者資格認定証」は、
自治体ごとの総合事業となる「要支援」でも使うことができますか?

 【問】会員さんから相談がありました。介護保険の「要介護1」だったのが「要支援2」になったそうです。週1回デイサービスに通い、週1回ヘルパーが来てくれるようです。本人の状態は良くなった様子もなく一人暮らしで日々大変な様子です。「要介護1」の時にも同様のサービスを受けていましたが、デイサービスは被爆者健康手帳で費用負担なし、ヘルパーの費用については非課税世帯なので「訪問介護利用被爆者助成受給者資格認定証」をもらい、こちらも負担なしでした。「要支援」になると総合事業になるので、「受給者資格認定証」や利用料負担がどうなるかとても心配しています。
(県被爆者の会相談員)

*  *  *

 【答】これまでと状態が変わらないのに「要支援」になったという話をよく耳にします。総合事業は全国一律ではなく、自治体の責任でサービスが行なわれます。“多様な”サービスということでボランティアなどによるサービスが導入されました。ヘルパーサービスでは、訪問介護相当から訪問型サービスA・B・C・Dまであります。デイサービスも同様です。被爆者健康手帳による助成が行なわれるのは、訪問介護相当と通所介護相当サービスのみです。ご相談の会員さんの場合は訪問介護とデイサービスですから、利用料は被爆者健康手帳による助成が行なわれます。ヘルパーの費用については「訪問介護利用被爆者助成受給者認定証」が使えます。
 もし、サービスの内容が訪問型サービスAとかBとなった場合は被爆者健康手帳による助成はなくなります。
 総合事業は国ではなく自治体の責任なので、同じ支援をしても訪問介護事業所や通所介護事業所に支払われる報酬が8割とか、自治体によっては半分になり、事業者が引き受けなくなったという話も多く聞きます。

<2023年4月号より>
介護手当
介護者が子どもでも複数でも費用介護手当が受けられます

 【問】90歳の母が一人暮らしを続けています。私たちとの同居をすすめていますが、ずっと暮らしてきた家がいいと応じません。認知症が少しずつ進んできているため、介護保険サービスをうけながら、私たち姉妹が母の介護に交代で通っています。被爆者健康手帳を持っているので介護手当が受けられるのではないかと聞きました。介護者が子どもで、3人交代で介護に通っている場合でも受けられますか。また手続きはどのようにすればいいのでしょうか。

*  *  *

 【答】お母さんにしたら住み慣れたところで暮らしたい、という思いが強いのでしょうね。子どもが引き取ったら急速に認知症が進んで施設に入れたという話も多く聞きます。ごきょうだい3人が交代で介護に通うのも大変ですが、できるだけお母さんの希望に寄り添ってあげたいですね。
 被爆者援護の介護手当には費用を支払って受ける介護手当(費用介護)と同居の家族が介護している場合に受けられる家族介護手当があります。子どもが介護をしているのだから家族介護手当ではないかと思われるかもしれませんが、子どもであっても、近所に暮らしていても、住民票が別で通って介護をしている場合は費用介護手当の支給対象になります。
 費用介護の場合、介護を受ける人の障害の程度によって、中等度と重度の二種類の支給限度額が決められています。3人合算で限度額まで受給できます。書類は3人それぞれが行なっている介護の内容と時間などを記入し、それぞれが領収書を作成します。交通費なども含めると高額になると思いますが、手当としては中等度の場合7万520円まで、重度の場合は10万5800円までが、介護を受ける被爆者に支給されます。
 医師による診断書は1年または状態により3年ごとに提出します。介護内容と領収書は毎月提出します。あなたの場合は3人分の書類をそろえて提出することになります。支給はお母さんの口座に振り込まれますので、振り込まれたらお母さんから受け取ることになります。3人でよく話し合って申請手続きをしてみてください。
 介護内容や領収書の書き方については、コピーして使えるような書式を中央相談所で用意していますのでお問い合わせください。

<2023年3月号より>
デイサービス
行く気にさせるには?

 【問】介護認定を受けている母を介護しています。掃除、洗濯や食事の準備で体を休める暇もないのに、母は外に出たがらず家にいて私になにかと注文をつけます。
 デイサービスにせめて週1回でも行ってくれれば、私もホッとする時間ができて助かります。ケアマネジャーにも相談しているのですが、本人が行きたがりません。
 デイサービスが楽しくてたまらないという人の話も聞いています。母を行く気にさせるにはどうしたらいいでしょうか。

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 【答】お母さんにしてみたら、今さら幼稚園児でもあるまいしと思っているかもしれません。ケアマネジャーと相談し、いくつかのデイサービスをお母さんと一緒に見に行くことをおすすめします。気にいるところが見つかるはずです。
 通い始めて1カ月くらいは誰でも“帰りたい症候群”に陥るようです。自分が大事にされている、怒られない、ここに居ていいんだと安心できるまでには1〜2カ月かかります。おしゃべり相手ができれば、進んで通うようになると思います。家族には「行くのは嫌」と言っていてもお迎えの車が来ると表情が変わり、いそいそと車に向かいます。認知症が進むまでコーラスのサークルに参加していた方は、デイサービスに通ううちに「歌のお稽古にいってくる」と前日から準備をするようになったとの話も聞きました。絵手紙や書道、カラオケなどデイサービスで趣味の世界を広げた方もいます。将棋、囲碁、麻雀などは脳の刺激に、歌は嚥下(えんげ)訓練に、またスタッフの動きを眺めているだけでも心が動きます。
 ケアマネジャーや事業所のスタッフと連携して、とにかく週1回から始めてみてはいかがでしょう。

<2023年2月号より>
訪問診療について教えてください

 【問】被爆者の母を3カ月に1度受診に連れて行っていますが、待ち時間が長くて帰宅するとぐったりしています。コロナ感染の検査を求められてテントで長時間またされることもありました。主治医からは毎月受診するようにと訪問診療を勧められました。
 訪問診療は、寝たきり状態でないとお願いできないのではないか、また訪問診療をしている医療機関を探すのにどこに相談したらいいか、などいろいろ不安です。

*  *  *

 【答】体が不自由な方や高齢者を医療機関に連れていくのは、車の乗り降りにも気を使い、介助者が一緒に転倒して骨折するなどの危険も伴います。通院が困難と感じたら訪問診療に切り替えると良いでしょう。
 訪問診療を専門に扱う「在宅療養支援診療所」という医療機関があります。毎月定期的に自宅を訪問して診療するほか、急に具合が悪くなったとか熱発した時にも24時間対応してくれます。今かかっている病院の相談室や地域包括支援センターで紹介してくれます。
 現在の主治医に紹介状をもらってご家族が(患者の同伴も可)診療所を訪ね、契約手続きをします。そこで訪問日や急に具合が悪くなったときの対応、入院が必要になった場合の連携病院などを確認してください。医療費は被爆者健康手帳による助成があるので、車代のみの負担となります。契約時に確かめておくといいでしょう。
 既に介護保険を利用している場合は、介護保険サービスによる訪問看護との連携や薬剤師、ケアマネジャー等との情報交換も行なわれます。これらの費用も被爆者健康手帳で助成されるので自己負担はありません。
 訪問診療や訪問看護サービスを利用していると相談の電話を夜中でもできるので安心です。電話だけでなく訪問して状態を見て必要であれば入院の手配をしてくれます。
 訪問診療では医師が患者の生活をわかってくれるので、介護保険の要介護認定の診断書や、被爆者の介護手当の診断書も書いてもらいやすくなります。早めの切り替えをお勧めします。

<2023年1月号より>
妻の介護と慣れない家事…
健康維持のためにも気分転換を

 【問】夫婦ともに被爆者です。私も高齢になり自分の身の回りのことをするのがやっとの状態です。最近、妻が体調を崩して介護保険サービスを利用するようになり、週1回のデイサービスにやっと行くようになりました。妻は自分が家事などもできていると思っているようですが、家の中のことは私が慣れないながらもしています。そのため妻とはしょっちゅう口喧嘩です。妻の介護をするのが嫌なわけではありませんが、気分転換をすることもなく、このままいけば私も倒れるのではないかと不安です。

*  *  *

 【答】多くの男性は、仕事を頑張ってきて家の中のことは妻任せ、第一線から身を引いても変わりなく過ごされてきたと思います。でも、いま頑張って家事などをされているのは本当に素晴らしいことだと思います。
 介護することで、男性でも女性でも自分の時間が少なくなってしまいます。身体的にも精神的にも頑張りすぎて気を抜く時間が持てないという声も聞きます。女性が介護をしている場合は買い物ついでにおしゃべりをしたりできるようですが、男性はそういう時間を持つのが苦手の場合が多いようです。
 ケアマネジャーと相談してデイサービスの回数を増やすとか、毎月一週間くらいショートステイを利用されたらいかがでしょうか。
 奥さんがデイサービスに出かけたときに囲碁や将棋など趣味の場を持つことはできませんか。時には被爆者の会の事務所に出かけて何か雑務の手伝いや、おしゃべりをするのもいいでしょう。
 被爆者健康手帳をお持ちなので、デイサービスやショートステイの利用料負担には助成があります。共倒れになっては困るからと、奥さんともよく話し合ってみたらいかがでしょうか。あなたの健康維持を第一に考えられたらいいと思います。

<2022年12月号より>
老々介護で不安いっぱい
訪問看護24時間対応の利用を

 【問】夫婦ともに被爆者です。妻が介護認定を受け、私が介護しています。妻は少しずつ認知症の症状もでてきました。訪問介護を受けていますが1日のうちごく短い時間なので、家事は私がやっており私の方が倒れそうです。
 認知症のためか本人は「何でもできている、薬もきちんと飲めている」と言い張りますが、薬の飲み忘れも多く、私が飲ませています。先日、妻が急に動けなくなりました。これからも度々こういう事態になるかもしれないと思い、不安でいっぱいです。どうしたらいいでしょうか。

*  *  *

 【答】夫婦どちらかが介護が必要となった時の介護負担は、身体的にも精神的にも本当に大変です。単身世帯か夫婦二人世帯が多くなり、老々介護が当たり前の状況で、認知症があると一層厳しくなります。
 さて、急に動けなくなったとのことですが、主治医かケアマネジャーと相談して、介護計画に訪問看護の指示をお願いしたらいいと思います。
 訪問看護サービスの内容は、@療養上の世話(清拭・洗髪・入浴介助・食事や排せつ介助と指導・爪切り) A病状の観察(病気や障害の状態・血圧・体温・脈拍などのチェック) B医師の指示による医療処置(点滴の管理など) C在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器の管理 D床ずれ防止の工夫や指導・床ずれの手当など E在宅でのリハビリテーション F緊急時の対応 G家族などへの介護方法のアドバイスや相談、そして主治医・ケアマネジャー・薬剤師や歯科医師との連携などです。
 訪問回数は利用者の状態などにより週1〜2回あるいは月に2回などと計画されます。
 訪問看護の契約時に24時間対応の契約をしておきましょう。急に熱を出したり急に動けなくなったりしたときに訪問看護事業所に連絡すると、電話での相談や訪問をしてくれます。訪問看護師は様子をみて主治医と連絡をとり相談・指示を仰ぎます。そして不安な思いでいるあなたや奥さんの気持ちに寄り添って話を聞いてくれたりします。今のあなたにとって訪問看護は必要なサービスと思われます。
 訪問看護は医療系サービスなので、被爆者健康手帳を提示することで負担はありません。

<2022年11月号より>
被爆者の葬祭料
コロナ感染で死亡の場合の支給は?

 【問】肝硬変の治療のため入院されていた会員さんのご家族からの相談です。入院治療中にコロナに感染し、亡くなられたとのこと。この場合、葬祭料は支給されるでしょうか。(県相談員)

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 【答】コロナ感染の第7波では、コロナ感染での重症化はなくても基礎疾患のある高齢者が急変して亡くなり、これまでになく死亡者数が多いといわれています。
 入院中の感染で亡くなるとは、ご本人もご家族も思いもよらなかったでしょう。
 被爆者が亡くなった場合、葬祭をおこなった人に対して葬祭料が支給されます。ただし、死因が被爆以前からの病気、交通事故、天災など原子爆弾の傷害作用の影響によらないことが明らかな時には請求できないとされています。 
 しかし、厚生省の昭和44年衛発第五四三号第三通知では、自殺や交通事故などでもその原因が原子爆弾による病気やけがによる時は支給する、としています。
 「コロナ感染による死亡」ということだけをみると、原爆の傷害作用とは関係ないと判断してしまいそうですが、ご相談の会員さんの場合は肝硬変治療のために入院されていたとのことなので、この通知が適用されると思います。死亡診断書に「肝硬変で入院治療中」だったことを記載してもらってください。
 コロナ感染が広がってから亡くなられた被爆者の中にはこうしたケースがあると思われます。被爆者の会として、地元の行政担当者と話し合っておくことが大切です。

<2022年10月号より>
介護保険サービス
室内での安全確保に福祉用具レンタルを

 【問】先日、ひとり暮らしで右半身に障害がある会員さんを訪問しました。話が終わって立ち上がる様子を見ていると椅子が低すぎるのか、とても不安定でした。室内移動もつかまり歩きです。転倒して骨折したら、寝たきりになってしまいます。立ち上がりや室内移動をするのに安全にできる方法はないものでしょうか。(県相談員から)

*  *  *

 【答】介護保険サービスの福祉用具を利用して本人に必要な椅子等を借りることが出来ます。福祉用具貸与(レンタル)と言えば介護用ベッドや車いすが思い浮かぶと思いますが、ほかにも多くの福利用具が対象です。
 立ち上がりが困難という場合には「立ち上がり補助昇降椅子(商品名は独立宣言ツイスト)」があります。安定感があり、レバーを押せば自由に高さ調整が出来ます。たとえば、こたつに入って暖を取る生活でトイレに行くとか外出するときに介助が必要な人でも自力で立ち上がれます。
 また、テーブルから移動したい場合、椅子の座面が左右に90度回転する「立ち上がり補助電動昇降椅子」もあります。キャスターがついているので移動もできますが、安定感を担保するために重量はあります。
 室内の移動が不安な場合、室内用の小回りの利く車いすもありますからケアマネジャーとよく相談して本人に合ったものを利用するといいと思います。
 福祉用具貸与の場合被爆者健康手帳による助成がなく利用料の負担が生じますが、介助の手を借りることなく安全に日常生活を送るために積極的に利用するといいと思います。
 現在使っている椅子が不安定だからと慌てて介護用品売り場に出かけて購入するのではなく、ケアマネジャーに相談し、介護保険で利用できるか検討してからの購入をお勧めします。

<2022年9月号より>
被爆者の子への医療費助成
東京、神奈川ほかで実施

 【問】東京で働く息子が「がん」と診断され、抗がん剤で様子をみるか手術するか検討中です。東京都は被爆者の子どもの医療費が助成されるとのことですが、詳しいことを教えてください。息子は一人暮らしなので、私のところ(広島)で療養させたいと考えていますが、その場合、医療費助成は適用されますか。

*  *  *

 【答】息子さんの病気のことは心配ですね。被爆者の子どもの医療費助成を求める声が大きくなっていますが、国の施策としてはまだ実現していません。現在実施しているのは東京都、神奈川県、大阪の摂津市と吹田市です。
 被爆者の運動に押されて東京都は1975年に「東京都原子爆弾被爆者等援護に関する条例」を行し、被爆者の子どもの医療費助成について規定しました。対象者は東京都内に居住し「健康診断受診票」の交付を受けた人で11の障害に伴う疾病にかかり、6カ月以上の医療を必要とする場合です。11の障害とは、被爆者の健康管理手当受給対象障害です。@造血機能障害 A肝機能障害 B細胞増殖機能障害 C内分泌腺機能障害 D脳血管障害 E循環器機能障害 F腎臓機能障害 G水晶体混濁による視機能障害(白内障) H呼吸器機能障害 I運動器機能障害 J潰瘍による消火器機能障害。ただし感染症、寄生虫病、中毒または事故による病気等は対象外です。
 医療保険が適用された医療費の自己負担分が助成されます。入院中の食事代等は助成外です。
 申請に必要な書類は、医療費助成認定申請書、医療費助成用診断書(申請から1カ月以内に作成されたもの、検査データは3カ月以内のもの)、健康診断票の写し、健康保険証の写し、の4点。居住地の保健所または東京都保健福祉部の担当課に提出します。医療費助成の開始は窓口で受け付けた月の1日からです。医療券が交付されますが1〜2カ月かかるので、その間の医療費は還付請求できます。
 あなたが希望されるように東京都以外の実家などで療養する場合には、いったん医療機関の窓口で支払ったあと償還払いになります。償還払いに必要な書類は都の窓口に請求してください。

<2022年8月号より>
生活保護を受けています。
医療特別手当は収入認定されますか?

 【問】私は年金などの収入がなく、生活保護を受けています。このたび原爆症の認定を受け医療特別手当がもらえることになりました。手当月額14万1900円は収入認定されるのでしょうか。生活保護は引き続き受けられるのか心配です。

*  *  *

 【答】生活保護を受給している場合、何らかの収入があると福祉事務所に収入の額を届け出ることになっています。生活保護受給者の保護基準から収入を差し引いた額が保護費として支給されるのが基本です。
 医療特別手当受給の場合、全額が収入認定されるわけではなく、次のような仕組みになっています。医療特別手当額14万1900円から3万7220円(2022年4月現在)を引いた10万4680円が収入認定されます。生活保護基準は年齢と居住地によって6つの「級地」が決められていて基準額が異なります。東京23区に居住して81歳一人暮らしでは、1類(食費等の個人的費用)3万2470円、2類(水光熱費等の費用)4万3280円、住宅扶助5万3700円(東京都の特別基準)の合計が12万9450円になります。さらに医療特別手当受給の場合には放射線障害者加算4万3760円があり、合計17万3210円が生活保護基準額になります。この額から前述の10万4680円を差し引いた額が、生活保護費として支給されます。
 認定疾病が治癒したとみなされて医療特別手当から特別手当にかわったときは、1類+2類+住宅扶助に放射線障害者加算2万1880円の合計が生活保護基準となり、特別手当額は全額収入認定されます。

<2022年7月号より>
認知症の夫の介護で私の体も限界…何かいい方法は?

 【問】夫(被爆者)が認知症の診断を受け、在宅で介護をしていますがもう限界です。
 現在、平日はデイサービスを、週末だけ1泊のショートステイを利用しています。夫は徘徊することはないのですが、意思表示が全くできないので、すべてに介助が必要です。「要介護3」ですが特別養護老人ホームにも入所できそうにありません。このままでは私の体がもちそうにありません。なにかいい方法はないでしょうか。

*  *  *

 【答】意思表示もできなくなったご本人もつらいと思いますが、すべてくみ取って介護しなければならないのは、ひと時も気が抜けなくて大変だと思います。平日のデイサービスと週末だけのショートステイとのことですが、あなたの体を休める時間がなく疲労が蓄積するばかりです。介護するあなたが健康でないと介護を受けるご主人もつらいと思います。
 思い切ってショートステイの利用期間を長くして、あなたが体を休める時間を作ることをおすすめします。
 ショートステイは連続して30日間を超えない利用で、要介護認定の有効期間の半分が目安となっています。ケアマネジャーに、あなたの体調などをきちんと伝えて相談してみてください。少し長めのショートステイ利用を繰り返しながら、特別養護老人ホームへの入所を待ってみたらいかがでしょうか。特別養護老人ホーム併設のショートステイの場合は、入所についても配慮してくれると思います。

<2022年6月号より>
補聴器の購入に被爆者手帳での補助はありますか?

 【問】私は被爆者健康手帳を持っている者ですが、最近耳の聞こえが悪くなり、耳鼻科を受診したところ補聴器専門店を紹介されました。
 補聴器の購入には被爆者健康手帳が使えますか。また他にも補助制度があるでしょうか。

*  *  *

 【答】被爆者健康手帳を持っていても補聴器購入費への補助はされません。またほかの制度でも身体障害者手帳に該当しなければ、補助はありません。
 身体障害者手帳指定を受診して1級から6級ある等級に該当した場合、「補聴器購入養給付申請書」と「補聴器購入費用給付診断書または意見書」に補聴器見積書を添付して、市区町村の福祉課に提出します。該当すると「補装具費支給賢」が交付され、自己負担額が決まります。
 最近では補聴器助成を求める住民運動が各地で取り組まれ、自治体での助成が進んでいるようなので、お住まいの自治体に問い合わせてみるといいでしょう。
 補聴器は高価で、使いこなすのも大変です。せっかく補聴器を買ったのにうまく使いこなせず、雑音ばかりで肝心の話声などが思ったように聞こえない、といって放置する方もいるようです。補聴器の購入後は自分の耳に合うように何度も耳鼻科医か補聴器購入店に出向いて調整してもらうことが必要です。補聴器にもリハビリ訓練が伴います。面倒だと思わずに気持ちよく聞こえるまで、そして管理できるまで通い続けてください。
 なお、医師の指示書があれば、購入費は所得税の医療費控除の対象になります。

<2022年5月号より>
介護度「要支援2」の判定を受けました
訪問介護やデイサービスを利用できますか

 【問】介護度が「要支援2」になりました。ヘルパーさんの訪問や、デイサービスを利用できますか。その場合の費用負担はどうなりますか。

*  *  *

 【答】これまで「要支援1」「要支援2」だった介護予防については2017年から3年間かけて介護保険から分離する形で各自治体が責任を持つ「総合事業」になりました。これはボランテイアの力を借りながら地域住民の互助・共助の仕組みを作り、「要支援」や特定高齢者(まだ元気な高齢者)の支援に取り組んでもらうということのようです。地域の元気な高齢者などに自治会単位の交流サロンの場や声掛け・家事援助の協力を得ようということです。
 「要支援」の訪問介護と通所介護は「従来型」「訪問型サービスA」「訪問型サービスB(住民主体によるサービス)」「通所型A」などに分けられています。総合事業の単価は自治体ごとに算定をして良いので、介護保険サービスの単価に比べて低く設定している自治体が多く、そのため要支援の利用者を引き受ける事業所が減ったと聞いています。通所介護を引き受けた事業所も、送迎しない、入浴はなし、半日のみなど、利用者や家族にとって負担が大きくなっているようです。また、コロナ感染拡大という中で事業の中止あるいは事業所の閉鎖などの事態も起きています。
 費用負担は、被爆者施策では従来型については助成があります。非課税世帯で「訪問介護利用被爆者助成受給資格認定証」の手続きをして交付されていれば、従来型サービスの場合は使えます。利用者側からすると受けているサービスが「従来型」なのか、その他のサービスなのか判別しにくいと思いますので、必ず確かめてください。

<2022年4月号より>
貯金もなくなり、国民年金と健康管理手当では暮らせません

 【問】夫と2人暮らしの被爆者です。夫の国民年金、月5万円と私の健康管理手当で暮らしています。私はかつて厚生年金に入っていましたが、退職するときに脱退手当金をもらったので無年金です。夫は被爆者ではなく医療費が毎月1万円、受診のためのタクシー代が2千円かかります。今は貯金も使い果たし、この歳まで生きるのではなかった、あの時、原爆で父とともに死んでいれば…と思うばかりです。

*  *  *

 【答】国民健康保険料は現在月額1万6600円、40年間未納することなく納めて受け取る年金が月額6万5416円。何かの事情で納付できない期間があればもっと少ない額になります。
 あなたの場合、生活保護の申請をされたらいかがでしょうか。「生活保護は受けたくない」と思っている方もいますが、最後のセーフテイネットと言われています。
 生活保護は住んでいる地域によって支給額が決められています。個人が使う1類と光熱費等世帯単位で負担する2類、それに住宅扶助や医療扶助、介護扶助があります。
 夫婦とも80歳代で2人暮らし、お住まいの地域からいって受給の基準額は次のようになります。1類が1人3万720円で2人分、2類が4万5640円、家賃を支払っているなら住宅扶助として4万5000円、この合計が基準額です。家は持ち家とのこと、資産価値がない場合は売却する必要はないようです。したがって、1類と2類の合計額が10万7060円。ここから国民年金の5万円を引いた額が支給されます(2021年4月基準)。後期高齢者保険料や介護保険料の負担はなくなり、夫の医療費や介護サービス料も自己負担がなくなります。
 被爆者の健康管理手当は収入とみなされず、保護費から引かれることはありません。

<2022年3月号より>
差額ベッド代やおむつ代は被爆者も自己負担になります

 【問】被爆者である父が救急車で搬送され入院しました。退院後、病院からの請求書を見ました。母はそのまま支払ったそうですが、被爆者手帳を持っているのにこんなに請求されるとは納得できません。請求書には、差額ベッド代と思われる項目や、おむつ代などがありますが、すべて自己負担なのでしょうか。

*  *  *

 【答】被爆者健康手帳での公費負担は健康保険が適用される医療費のみが対象です。健康保険法の改訂などで「被爆者健康手帳があれば医療費は大丈夫」という時代ではなくなりました。
 差額ベッド代(室料差額)とおむつ代は健康保険の適用外なので、全額自己負担になります。
 ただし、差額ベッド代は徴収してはいけない場合が決められています。
 @同意書による同意の確認が行なわれていない場合 A患者本人の「療養上の必要」により特別療養環境室に入院させる場合 B病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合で患者の選択によらない場合、の3つです。
 しかし実際に救急車で搬送された場合、患者さん本人はもとより家族も混乱状態で病院から室料の事で説明されても落ち着いて判断できる状態ではなく、同意書に署名してしまいがちです(同意したとしても同意書に署名がない場合には室料差額は請求できません)。今後の入院には十分注意し、室料差額のない部屋をとしっかり伝えることが大切です。
 おむつ代の負担も大変です。病院での紙おむつの処理は、非感染の場合は一般廃棄物として処理され、感染がある場合は医療廃棄物として処理することになり費用もかさみます。業者と直接契約して1日一定額支払う方法や、病院指定の紙おむつを使用した枚数分だけ支払う方法などが取られています。なお、おむつ代は主治医の証明書があれば、所得税控除の対象になります。

<2022年2月号より>
有料老人ホームの費用負担が大変です。何か良い方法は?

 【問】夫は長崎の被爆者で、原爆症の認定も受けています。要介護3の介護認定を受け在宅で介護していましたが、「ヘルパーを2人派遣しないと」と事業所から言われるほど体が大きいうえ自分では何もできず、おむつ交換も大変で、私一人で介護するのに疲れてしまいました。私も80歳をすぎているため在宅介護は無理となり、特別養護老人ホームに申し込んでいましたが待ちきれず、有料老人ホームに入所させました。
 ところが月額40万円の請求が来ました。有料老人ホームの基本料金と介護保険の特定施設生活介護の利用料がかかることがわかりました。利用料負担が3割ということもあり、このままでは私の生活費も出なくなります。被爆者の援護で何か支援はないでしょうか。

*  *  *

 【答】おひとりでの介護大変でしたね。
 しかし、有料老人ホームが介護保険で請求する特定施設居宅介護は、被爆者の援護制度からの助成はありません。また、現行法で支給される介護手当も、施設入所者は対象になりません。
 考えられることが二つあります。一つは、有料老人ホームに入所しながら特別養護老人ホームの申し込みをして待機するという方法です。同様のケースを多く見てきました。介護の厳しさを自治体の担当課に訴え続けてください。
 もう一つは、被爆者としての助成が受けらる在宅に戻して、ヘルパーやデイサービス、訪問看護、ショートステイを利用する方法です。できれば介護度の区分変更をしてもらいましょう。デイサービス、訪問看護、ショートステイには被爆者健康手帳による助成があります。ヘルパーについては介護手当を申請することができます。デイサービスでの入浴介助や、訪問看護による清拭などを利用すると清潔も保たれると思います。
 おひとりで悩まずに地域包括支援センターや自治体の担当課にも相談しながら、ご夫婦どちらにもいい方法を選び出してください。

<2022年1月号より>
家族介護手当
高齢の妻に渡すお金があまりにも少額です

 【問】長崎駅の近くで被爆し、足を骨折しました。今では身体障害者手帳1級を持つ身となりました。私は90歳を超え、88歳の妻と2人暮らしです。私は「要介護3」で毎朝ヘルパーがきて採尿パックの処理をしてもらい、週2回デイサービスに行っています。ベッドからおりるのも人の手を借りなければならず、一人では何もできません。
 妻がすべての家事と私の世話をしてくれています。申請して家族介護手当を受給していますが、一生懸命世話をしてくれている高齢の妻への手当てが月2万2320円ではあまりにも少額だと思います。この年まで生きてきましたが、今は生きるのがしんどいです。

*  *  *

 【答】おふたりで一生懸命に生きてこられたのですね。
 家族介護手当は重度障害で介護が必要な場合に支給すると決められています。重度障害ということは24時間365日の介護が必要ということです。家族は精神的にも身体的にも休まることがありません。おっしゃる通り家族介護手当の額はあまりにも低すぎます。家族の介護負担が当たり前という風潮に安んじた額と思われ、家族の犠牲を強いるものです。
 家族介護手当の額が介護に従事している家族の負担に即していないと考え、日本被団協は国(厚労省)に手当額の引き上げを要請しています。
 国にみなさんの声を届け、手当額の増額を認めさせるよう引き続き頑張ります。

<2021年12月号より>
長崎8キロで被爆 原爆症認定申請できますか

 【問】2歳の時に長崎の爆心地から8キロで被爆、小さい時から体が弱く学校の体育の時間は休んでいました。今年「肺がん」と診断され手術したばかりです。主治医は「原因がわからない」と言っています。原爆症の認定申請はできますか。

*  *  *

 【答】原爆症の認定については、日本被団協の原爆症認定集団訴訟の結果、「新しい審査の方針」が出されました(最終改訂2013年)。
 その中で「悪性腫瘍(固形がんなど)」については「積極的に認定する範囲」として 「ア、被爆地点が爆心地より3・5キロ以内である者 イ、原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2キロ以内に入市した者 ウ、原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下後より約2週間以内の期間に、爆心地から約2キロ以内の地点に1週間程度以上滞在した者」となっています。
 あなたの場合、「8キロで被爆」というだけでは積極認定の要件には該当しません。しかし、ご両親に連れられて爆心地近くまで入市したということがあれば該当すると思います。ご兄弟などに聞いて確認してみてください。また、審査の方針では「申請者の被ばく線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して個別にその起因性を総合的に判断する」とも言っていますので、被爆時の状況、被爆後の急性症状やその後の健康状態などを詳しく書いて申請されてもいいでしょう。
 「原爆症認定制度の在り方に関する日本被団協の提言」の中で、「いのち、からだ、こころ、くらし」の被害に対する償いとしての援護を求めています。引き続き、声を上げていくことが大切なことと思います。

<2021年11月号より>
大学病院等への紹介状がないときの初診時自己負担、被爆者も支払う?

 【問】大学病院の眼科に行ったところ「紹介状がなければ5500円負担していただく」と言われました。ふだんはあまり医者にかかっていません。被爆者健康手帳と健康保険証をもって行けば無料だと思っていたので驚きました。これは支払わなければいけないのでしょうか。

*  *  *

 【答】1996年の健康保険法「改正」により「選定医療費」というのが設定されました。@一定の病床数(200床以上)の病院にかかるとき紹介状がないと初診時に選定医療費として徴収 A医療機関が標榜する時間以外に受診した場合の費用徴収 B入院に関わる特別の療養環境の提供費用(差額ベット料)の徴収の3つで、保険外での患者負担となります。
 あなたの場合は@にあたります。再診時にも同様に費用徴収しても良いことになっています。
 200床以上の医療機関にかかる場合は、ふだんかかっている主治医に相談して紹介状を書いてもらうことが必要です。
 しかし厚労省は、200床以上の病院に初診でかかる場合の選定医療費について次のような通知を出しています。「国の公費負担医療制度の受給対象者については初診に係る特別の料金の徴収を行うことは認められない」(平22年3月26日、保医発0326第2号)。
 被爆者健康手帳は国の公費負担制度なので紹介状がなくても医療機関は自費での請求はできません。このことを病院の窓口で伝えてください。
 なお、Aの時間外診療の費用徴収も、被爆者健康手帳の場合は認められません。昨年、厚労省から各県に周知徹底するよう通知が出ています。

<2021年10月号より>
介護手当の申請
主治医への説明、介護内容の書き方などを教えてください

 【問】会員被爆者の娘さんからの相談です。
 癌で手術をした母親(被爆者)が先月下旬に退院してからベッドの上で全介助の状態で、近くに住む娘さんが毎日介護に通っているそうです。世帯が別のため、費用介護手当を申請したいとのこと。相談は、主治医が介護手当の診断書を書いたことがなく、どのように説明して書いてもらえば良いか。また、介護している娘さんが介護の内容や時間などを何に書いて県に提出すれば良いか、の2つです。県にも問い合わせましたが今の担当者は初めて扱うとのこと。相談員の私もよく理解できていません。
 (被爆者の会相談員)

*  *  *

 【答】被爆者の平均年齢が84歳に迫り介護の必要な方が多いと思いますが、介護手当の受給は全国的に少なく、費用を支払っての介護手当はゼロの県もあります。厚労省としても「必要な人は申請を」と、診断書を作成する医師向けにリーフレットも作成しています。
 主治医には、在宅になってからの本人の状況と介護の内容をきちんと伝えることが大切です。診断書には食事・排泄・洗顔・入浴・洗髪など具体的に「要介助」などと記入する欄があります。そのため、介護している内容を具体的に丁寧に説明することです。診断書の裏面に手当の対象となる障害の程度が、別表2と別表3として記載されています(中央相談所発行の『相談のための問答集・介護編』の22〜23ページに掲載)。ベッドの上でほとんど寝たきりという場合、中等度障害では別表2のが17、重度障害では別表3の10が該当します。
 介護の内容を何にどう書けば良いか。こちらは介護の期間・日数・内容の記載見本と領収書見本を同じく『相談のための問答集・介護編』の24〜25ページに掲載しています。「中央相談所講習会教材」にはA4サイズで掲載していますので、そのまま何枚かコピーして日々記入していくと月末になって慌てることもなくなると思います。領収書は、介護を受けて支払いをする母親宛に娘さんが出す形になります。
 県の担当者にも問答集や講習会教材を見てもらい、参考にしてもらったらいかがでしょうか。
 『相談のための問答集・介護編』は1部400円+送料。講習会教材は講習会参加者に無料配布しますが、希望者には1部150円+送料でお送りします。

<2021年9月号より>
施設入所の食費と居住費
8月から収入と預金額により負担増

 【問】夫婦2人、わずかな年金と被爆者の健康管理手当で生活しています。妻が特別養護老人ホームに入所中で、利用料は被爆者健康手帳のおかげで無料ですが、食費や居住費、雑費は支払っています。住民税が非課税で貯金額も少ないので軽減措置を受けています。
 私は自宅で介護保険のサービスを利用して、何とか暮らしています。
 最近、ホームから連絡が来て8月分から支払額が高くなるような話をされました。電話で聞いてもよくわかりません。負担が増えたら生活ができなくなります。不安で不安で夜も眠れません。

*  *  *

 【答】奥さんが特別養護老人ホームに入所される際に「補足給付」という低所得者の食費・居住費の負担軽減制度を利用されたのだと思います。
 もともと介護保険制度では施設入所の場合、食費・居住費の自己負担はありませんでした。ところが2005年に「在宅でも食事代はかかるし家賃も支払っている、施設に入所している者が負担しないのはおかしい」という議論があり、食費・居住費が保険から外され自己負担となりました。その時に低所得者の軽減措置として補足給付制度が設けられたのです。2017年には資産等も含めての負担見直しがあり、一律1割だった介護サービス利用料の自己負担割合が2割、3割負担の人が出てきました。
 施設入所の場合、預金額が1人1000万円、夫婦2人なら2000万円あると住民税非課税世帯でも補足給付から外されました。そのため1日の食事代が300円だった人が1380円の負担になったのです。
 そして今年8月1日からさらなる負担が強いられることになりました。これまで単身の場合1000万円の預金が認められていたのに650万円、あるいは500万円以上で補足給付から外されたのです(年金収入等が80万円以下の場合は650万円、同じく80万円から120万円までは500万円)。夫婦2人の場合は1650万円、あるいは1500万円になります。食費の負担限度額も1392円から1445円に変わり、毎月の負担増は多い人で4万円とも言われています。
 対象施設は特別養護老人ホーム、老人保健施設や療養型医療施設、介護医療院。ショートステイの食費も同じように負担限度額が変わります。
 食費と居住費の負担が重くのしかかり、ホームを退出せざるを得ないという声も聞かれます。

<2021年8月号より>
サービス付高齢者住宅
「介護付き」の場合、注意が必要

 【問】私は2年前にアパートの契約更新ができなくなり、紹介されてサービス付き高齢者住宅に入居しました。たまには買い物などで外出できていたのですが、今年に入り庭にも出てはいけないと言われました。そういえば3月に書類を持ってきてここにサインをと言われ、よくわからないままサインしましたが。外出は2カ月に1回病院に受診するときだけです。介護タクシーで往復4000円支払っての外出で、帰りに買い物をすることもできません。入居するときはこんなつもりでなかったのに、納得できません。

*  *  *

 【答】サービス付き高齢者住宅(サ高住)は2011年に国土交通省管轄で高齢者の居住の安定確保を目的に創設されました(高齢者住まいる法)。その後介護の問題も生じてきたため厚労省との共管制度になり現在に至っています。住居はトイレ・洗面設備を含む個室、バリアフリーが基準で安否確認と生活相談サービスの提供が条件となっています。創設当初、介護は外部の介護事業所と契約してヘルパーサービスやデイサービスを受ける仕組みでしたが、最近は「介護付き」として建物内に常駐するスタッフから介護サービスを受ける「特定施設」がふえてきました。「特定施設」は介護保険制度上の「特定施設入居者生活介護」の指定をうけるもので、サ高住としての費用の上に介護サービス利用料の自己負担分を支払うことになります。
 サ高住に入居し外部の介護事業所で受けるサービスの利用料の自己負担分は、被爆者援護による助成の対象ですし、必要な場合には介護手当の申請の対象ですが、施設が「特定施設入居者生活介護」の指定を受けると、利用料の助成も介護手当も対象外になります。
 あなたが入居されているサ高住も「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたのでしょう。それで3月に書類を渡されサインをする結果になったと推察します。
 今後のことはじっくり考えて決められるといいと思います。
 まず、これからの生活をどう送りたいかを考えます。そして、施設入所だけしか選択肢がないのか、地域の介護サービスや社会資源なども調べて決めていくことが大事だと思います。施設入所を考える場合には、費用だけでなく、施設の種類とサービスの内容を詳しく確認しましょう。

<2021年7月号より>
原爆症認定申請
1歳被爆で当時の記憶がなく
どう書けば良いのでしょうか

 【問】1歳の時、爆心地から2・2キロの自宅で被爆した被爆者です。咳が長く続き痰も出るようになったため受診し、検査をうけたところ「肺がん」との診断を受けました。「胸腔鏡」というので切除して組織検査を行なうとのことで、先日入院しました。今後は経過を診ながら治療をするということです。
 原爆症の認定申請はできますか。被爆時の状況は覚えていませんし、両親も被爆時のことは話すことがありませんでしたので、原爆症認定の申請書類にどのように記入したらいいかわかりません。どうすればいいでしょうか。

*  *  *

 【答】原爆症認定について現在運用されている「新しい審査の方針」では、悪性腫瘍(固形がんなど)で積極的に認定する範囲の一つに「被爆地点が爆心地より3・5km以内である者」という規定があり、あなたはこれにあてはまりますからすぐに原爆症認定申請をされるといいでしょう。
 また、認定申請書に記載する被爆状況については、被爆者健康手帳を取得する際の申請書類に記載した事項が分かればいいと思います。手帳取得の申請書は、本人または一部の家族には開示請求が認められているので、請求してみてください。
 被爆時年齢が幼くて申請書の記載内容が少ない場合、申請書を受理した都道府県の担当部署が手帳取得時の申請書類を参考にします。手帳取得の自治体が認定申請時と異なる場合は、役所の責任で問い合わせをすることになっています。覚えていることが少ないから原爆症認定はむずかしいとあきらめないで、積極的に申請しましょう。

<2021年6月号より>
認知症グループホーム等利用料
被爆者への助成、当面は償還払い
都道府県担当課に問い合わせを

 【問】私の母は2年前から認知症グループホームで生活しています。認知症グループホームの費用負担は月額で20万円近くかかり、母の年金額が少ないため私たち兄弟が援助してきました。グループホームで母は皆さんと仲良くしており、元気です。ただ、私たちも年金生活になり援助するのが厳しくなってきていたところ、「被団協」新聞で今年の4月から利用料が助成されるとの記事を読みました。被爆者健康手帳を提示すれば、すぐにでも利用料負担はなくなりますか。

*  *  *

 【答】認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の利用料助成がやっと今年4月から実現しました。
 特別養護老人ホームが「要介護3」以上でないと入所対象にならないのと違って認知症グループホームは「要支援2」から利用する事ができますが、費用負担が大きいという問題がありました。利用料の他に家賃、光熱費、食費やその他でお母さんが負担しているように月額20万円というのが相場のようです。地域によっては生活保護基準の家賃で15万円位で済むところもありますが、数が少ないようです。認知症グループホームは施設系でないため、所得が低くても捕捉給付(低所得者の食費・居住費の負担軽減)の対象にならず支払金額が大きいのです。
 今回、助成の対象になりましたが、グループホームの担当者に被爆者健康手帳を提示しても4月からすぐに現物給付とはいかなくて、一時的に償還払い(一度支払ってから申請し還付を受ける)の対応になりそうです。厚労省が各県に出した通知では、保険請求との関係で、利用料の窓口負担がなくなるのは9月からとのことです。
 自治体における事務的対応の問題がありますので、各都道府県の担当課に問い合わせて何時から現物給付になるのか、また、償還払いの手続きについても聞いてみてください。4月からの領収書は償還払いの手続き時に必要になるので、なくさないよう大事に保管しておいてください。

<2021年5月号より>
80歳を越えたふたり暮らし
これからのことが心配です

 【問】80歳を越えた夫婦ふたり暮らしです。妻は被爆者ではありませんが私は被爆者健康手帳を持っています。
 私は障害者手帳をもらっており、介護保険の「要介護1」でヘルパーさんに来てもらっています。左膝を曲げることが出来なくてベッドからの移動もヘルパーさんに介助してもらう状況です。
 妻も介護を受けているため私の世話をすることは大変です。もうしんどくてしんどくて、夫婦ふたりでどうしたらいいだろうと話していますが、とても不安です。妻にこれ以上負担をかけたくはありません。

*  *  *

 【答】おふたりとも介護が必要な状態なのに、奥さんは無理してあなたのお世話をなさっているのでしょうね。そのことに心を痛めているあなたのやさしさに、心打たれます。
 あなたの状態をお聞きするかぎり、介護度がもう少し上がるのではないかと思います。ケアマネジャーと相談して、まずは介護認定の区分変更をされることをお勧めします。介護度が上がると、もう少しヘルパーサービスや他のあなたに必要なサービスを増やすことができるでしょう。介護の限度額を超えてヘルパーにサービスに入ってもらうこともできます。その場合は費用全額が自己負担となりますが、被爆者援護施策の「介護手当」を申請・受給して、その費用にあてることができます。
 「介護手当」は、@介護を受ける被爆者の障害が重度で同居家族が介護している場合、A同居家族以外の人に費用を払って介護をしてもらう場合、の2種類あります。
 Aは障害の程度が中等度と重度の2段階に分かれていて、中等度の場合は月額7万360円を上限として、重度の場合は月額10万5560円を上限として支給されます。
 あなたの場合、障害が中等度に該当すると思われるので、Aが利用できるのではないでしょうか。ケアマネジャーに、サービスを増やしたいこととこの手当について相談してみてください。奥さんの介護負担を少しでも減らすことができると思います。
 介護手当の手続きは、住所地の保健所または県の被爆者担当課に問い合わせて、介護手当申請書類(申請書、診断書等)を入手してください。申請書は本人が記入し、診断書は主治医に記入してもらい、申請します。認められれば、毎月領収書を添付して請求すると手当が支給されます。

<2021年4月号より>
リハビリ病院に入院中の自宅訪問は退院への準備

 【問】87歳になる母が大腿骨頚部骨折で入院、手術をうけました。その後回復期リハビリ病院に転院、リハビリを受けています。本人は自宅で暮らしたいと言い、私たち家族も本人の希望通り在宅でと思っていますが、骨折後、家の中での歩行も大丈夫かと案じていたところ、病院から日時を指定され「本人を連れて自宅に行きます」と言われました。突然のことで何のために来るのかわからず不安です。

*  *  *

 【答】そうですね。病院のスタッフも一緒というのは何事かと身構えてしまいます。
 これは、退院を想定して、自宅での生活が安全におくれるようにするために、理学療法士が同行して自宅の状況を確認するための訪問です。
 病院では退院前に主治医、看護師、理学療法士などセラピストと、家族やケアマネジャーなど在宅サービスにかかわるスタッフとで、退院に向けて話し合いの場を持ちますが、その前に必要なのが自宅確認です。
 玄関の段差が高すぎないか、トイレに行く廊下に手すりが必要か、トイレの中や浴室に手すりがあるか、寝室とベッドは安全か、などをチェックします。それぞれの手すりの位置も、患者に合わせて決めていきます。
 自宅訪問の結果を見て退院前に必要な住宅改修や、入浴補助用具や玄関ステップなどの福祉用具について、ケアマネジャーと相談します。介護保険が適用されれば、購入でも貸与でも費用負担が少なくて済みます。退院が近づいたからとあわてて知り合いの大工さんに頼んで手すりを付けてもらったけれど役に立たなかった、費用もすべて自己負担だった、という話も聞きます。そういうことがないように、本人に合ったものを介護保険サービスを活用して準備するということです。
 ですから、自宅訪問の際にはご本人が使用している部屋から食堂やトイレ、浴室などへの移動経路、またつまずきやすかった場所もきちんと伝えることが大事です。気になることや不安な点も聞いて確認してください。

<2021年3月号より>
高齢の夫婦二人ぐらし
介護保険の活用を

 【問】高齢の両親が夫婦ふたり暮らしをしています。父は被爆者で病気を抱え、足腰も弱ってきています。母が転倒し腰椎圧迫骨折の診断を受けました。布団から起き上がるのもやっとで痛みがあり辛そうです。認知機能もちょっと混乱してきていますし、食も細くなり近くのコンビニで買ってくる小さなお弁当を昼・夕食に分けて食べている状況です。
 今は父が頑張って介護していますが、このままでは共倒れになりそうです。どういう手立てがありますか。

*  *  *

 【答】これまでおふたりで頑張ってこられたのですね。まずは介護保険の要介護認定を受ける手続きをしてください。お母さんの方が介護度は高いと思います。お父さんは要支援という結果がでるかもしれませんが、おふたりとも受けてください。訪問調査時にはあなたが同席して、認知機能の状態や排せつにかかわることをきちんと、話しづらければメモで調査員に伝えてください。お母さんが布団からの起き上がりができないことを伝えておくと、要介護1でも介護用ベッドが借りられます。今のままでは介助しているお父さんと一緒に転倒の危険もありますし、お母さんも起きることが不安になって寝たきりになりかねません。
 介護保険サービスの内容はケアマネジャーと相談してということになりますが、福祉用具や訪問リハビリまたは訪問看護サービスを利用することをお勧めします。幸い主治医の先生が長年のお付き合いとのこと、よく相談してご両親に必要なサービスを決めていけばいいと思います。特に訪問看護を受けていると不安な思いにも丁寧に相談にのってもらえます。
 高齢になっても「自分はまだ大丈夫」と、なかなか介護申請をしないものです。この機会にぜひ手続きをお勧めします。
 入院したり体の具合が悪くなったとき、骨折、腰・膝や足首を痛めて歩行や動きが困難になった時が、介護認定を受けるいい機会です。介護保険は医療保険と違って保険証を持っていけばすぐにサービス開始とはなりません。認定調査など介護度が出るまで1か月くらいかかります。
 ただし、お母さんのようにすぐに必要な場合、申請後に暫定で介護サービスが利用できます。

<2021年2月号より>
有料老人ホーム入所後、介護認定うけ負担増に

 【問】被爆者である母はひとり暮らしが難しくなり、有料老人ホームに入所しました。入所当時は自分で身の回りのことも何とか出来、外出したりしてホームでの生活を楽しんでいましたが、昨年春ごろから自室で過ごすことが多くなり介護が必要になりました。ホームの方で介護保険の介護認定の手続きをしてくれて「要支援2」となりました。
 「要支援2」となったら、これまで納めていた毎月の費用の他に介護保険の利用料が請求されました。有料老人ホーム入所の場合、被爆者健康手帳による助成はないのでしょうか。

*  *  *

 【答】有料老人ホームには、介護付き施設と外付けの介護サービスを利用する施設があり、ほとんどが「介護付き」と銘打っています。
 有料老人ホームは一定の基準を満たしていれば介護保険の対象となり「特定施設入居者生活介護」「介護予防特定施設入居者生活介護」として介護保険のサービスが受けられますが、その費用は毎月の入居料とは別に請求されます。お母さんの場合も「要支援2」となったため「介護予防特定施設入居者生活介護」という名目の費用請求がされたのだと思います。在宅の場合はヘルパーサービスを受けたからいくらという請求ですが、施設入居の場合はそれとは違って介護度によって定額で請求されます。
 介護付き有料老人ホーム入所者に対する被爆者援護による助成は行なわれていません。また、介護手当も請求が認められていません。
 「介護付き」でなく外付けサービスを利用する有料老人ホームでは、ケアマネジャーも必要なサービスもすべて外部の事業者と契約することになるので、被爆者健康手帳による医療系・福祉系サービスへの助成が受けられますし、介護手当も請求できます。

<2021年1月号より>
ケアマネジャー
被爆者のことがわかる人を紹介してもらえませんか?

 【問】「要介護4」の母を介護しています。いろいろな介護サービスを利用したいのですが、ケアマネジャーに被爆者である母のことをなかなか理解してもらえません。被爆者健康手帳の事がわかるケアマネジャーを紹介してもらえませんか。

*  *  *

 【答】介護保険制度を利用するときケアマネジャーは扇の要といわれ、コーディネーターとして重要な役割を持っています。しかし、被爆者を理解し、被爆者援護について精通しているケアマネジャーを見つけることは至難のワザです。
 被爆者は医療依存度が高いので主治医や訪問看護とのネットワークが作れる人、一人ひとりの生き方や暮らし方を尊重し被爆者を理解しようと努め、親身に相談にのってくれるケアマネジャーを選ぶことが大切です。本人や家族の話に耳を傾け、毎月の訪問の時間を大切にしてもらい、じっくり話し合う中で理解を深めてもらいましょう。
 ケアマネジャーは一度契約したらずっとその人でないとダメということはありません。同じ事業所での変更も、事業所を変えることもできます。気になることがあれば契約書に記載されている苦情窓口に相談できます。
 一方、ケアマネジャーは被爆者の助成制度を知る機会がほとんどない状況におかれています。制度などを知ってもらうためにも日本被団協中央相談所発行の問答集bR1「介護編」を手元においてご家族も読み、ケアマネジャーや事業所にも知ってもらい、理解を深めてもらいましょう。

<2020年12月号より>
生活保護と被爆者の手当
健康管理手当は収入認定されません

 【問】体調が悪くなり国民年金だけでは生活できないと思って、生活保護の申請をしました。生活保護の受給は決まったのですが、受け取った保護費がほんの数千円。これでは生活できないと福祉事務所の担当者に話したら、国民年金と健康管理手当を収入認定したので、この額になったとのことです。
 被爆者の健康管理手当は収入認定されるのでしょうか。

*  *  *

 【答】大変でしたね。生活保護を受給した場合に収入認定の対象となるのは、被爆者の諸手当の中では医療特別手当と特別手当だけ(後述)で、健康管理手当や保険手当などは収入認定しないことになっています。
 「生活保護法による保護の実施要領」で収入認定の認定指針が、昭和36年4月1日の厚生省発社第123号の各都道府県知事・各指定都市長あて厚生事務次官通知として出されていて、今も金額以外は変更されていません。この通知の認定指針(3)で「次にあげるものは収入認定しないこと」として「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律により支給される医療特別手当のうち3万7290円並びに同法により支給される原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保険手当及び葬祭料」と明確にしています。
 この通知を担当ケースワーカーに見せてこれまで収入認定されていた健康管理手当分の返還を求めてください。
 原爆症の認定を受けていて医療特別手当や特別手当を受けている場合には次のようになります。医療特別手当は、3万7290円を残して収入認定され、放射線障害者加算として4万3830円が加算されます。特別手当は全額が収入認定され、放射線障害者加算額として2万1920円が加算されます。

<2020年11月号より>
原爆症認定被爆者
介護保険と別枠での訪問看護

 【問】私は肝臓がんと大腸がんで原爆症の認定を受けています。7月に何回目かの肝臓の塞栓術を受けましたが、今年の夏の暑さはことのほか体への負担が大きく体調を崩してしまいました。主治医から在宅で点滴をと指示されましたが、訪問看護の費用負担が大きくことわりました。
 介護保険の「要支援2」で週2回の訪問看護を受けていますが、点滴の針刺しと針抜きで1日に2回訪問看護を受けなければならず、「要支援2」では限度額をこえるため1日1万円近く自費になるといわれたのです。
 これから先、訪問看護を受けなければならないことが多くなりますが、自己負担を考えると困ってしまいます。何か援助はありますか。

*  *  *

 【答】大変な思いをされましたね。認定された介護度によって介護保険サービスの利用限度額が決まります。限度額を超えた費用は被爆者健康手帳があっても自費負担になります。
 しかし、あなたのように原爆症認定被爆者が認定疾病のために訪問看護が必要な場合は、介護保険とは別枠で全額国の負担で受けられます。(平成12年3月31日健医企発第12号)。介護保険とは別に、主治医が原爆症認定疾病を管理する上で必要と判断し訪問看護指示書を出せば、自費負担が生じることはありません。一度、主治医とよく相談されてみてはいかがでしょうか。
 定期的な全身管理のためだけでなく、状態が急に悪くなった場合には特別訪問看護指示書が出されます。特別訪問看護指示書が出された場合、週4回以上の訪問看護、1日に複数回の訪問看護が認められます。原爆症認定疾病を管理してもらっている医師と日常管理の主治医が違うようでしたら、連携を取った対応をしてもらいましょう。

<2020年10月号より>
時間外診療費
緊急の受診の場合、支払う必要はありません

 【問】先日夜間に急に具合が悪くなって受診しました。被爆者健康手帳を持っているのですが、「時間外だから」と5000円請求されました。時間外に受診した時は自費で支払わなければならないのでしょうか。

*  *  *

 【答】被爆者健康手帳と保険証を提示すれば医療費の自己負担がないのが原則です。ただ、1996年の健康保険法「改正」で「選定療養費」が設定され、@入院医療にかかわる特別の療養環境の提供(差額ベット)の場合費用を徴収できる、A200床以上の大病院に初診でかかる場合主治医の紹介状がないと診療費の他に5000円以上の金額(+消費税)を徴収することを義務化、B医療機関が表示する診療時間外に受診した場合は選定療養費を徴収してもよい、などが導入されました。被爆者健康手帳は国の公費負担制度なのでAに関しては紹介状がなくても自己負担はありません。
 あなたのご質問はBの時間外に受診した時の費用負担にあたりますが、厚労省が、次のような通知を出しています。
 「保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診療(以下単に「時間外診療」という)に関する事項として (1)本制度は国民の生活時間帯の多様化や時間外診療に係るニーズの動向をふまえ創設されたものであり、したがって本制度の対象となるのは緊急の受診の必要性はないが患者が自己の都合により時間外診療を希望した場合に限られ、緊急やむを得ない事情による時間外の受診については、従来通り診療報酬点数表上の時間外加算の対象となり、患者からの費用徴収は認められないものであること」(平成22年3月26日保医発0326号第2号、太字筆者)。
 あなたは具合が悪くなって受診されたとのことなので、請求された5000円は支払う必要はありません。

<2020年9月号より>
認知症の家族の介護
訪問看護の24時間対応の契約を

 【問】夫と二人暮らしです。夫はメマイを度々起こして倒れることもあり、気になっていたのですが最近認知症の症状が出てきました。幻視や幻覚もあるようで目を離すことができず、不安な毎日です。このままでは私の方が倒れかねません。できれば在宅で暮らし続けたいのですが、どうしたらいいでしょうか。

*  *  *

 【答】まず病院を受診してご主人の状態を伝えて診断を受け、対応を相談してみてください。
 自宅での生活を続けるためには、あなたがご主人の病状を理解したうえで、状態に応じた介護が必要になります。主治医と相談して介護認定を受け、訪問看護を利用するのがいいでしょう。
 訪問看護師は専門的な目で見守り、ケアや助言をし、家族からの相談にも24時間365日対応してくれます。サービスの中身は@療養上の世話(清拭・洗髪・入浴介助・食事や排せつ会場と指導・爪切り)A病状の観察(病気や障害の状態・血圧・体温・脈拍などのチェック)B医師の指示による医療処置(点滴の管理等)C在宅酸素や人工呼吸器などの医療機器の管理D床ずれ防止の工夫や指導・床ずれの手当などE在宅でのリハビリテーションF認知症介護の相談や助言Gガン末期や終末期を自宅で過ごせるようお手伝いH家族等への介護方法のアドバイスや相談、などです。あなたの場合AやFが、介護する上で助かると思います。夜間に状態に変化が起きたり高熱を発したりという場合に備え、訪問看護の契約時に24時間対応の契約をしておくとよいでしょう。急な状態の変化時には緊急訪問して主治医との連絡・指示を仰ぎ緊急入院の手立ても取ってくれます。診察時だけではつかみきれない利用者の状態を主治医に報告し助言を受けて対応してくれたり、家族の不安や悩みも聞いてくれるなど、家族にとってはとても心づよい存在です。
 訪問看護は医療系サービスなので、利用者本人が被爆者の場合利用料の自己負担はありません。

<2020年8月号より>
介護度の変更はできますか?

 【問】昨年末に「要支援2」(1年間)の介護認定を受けた父が、急に体力が落ち、歩行もおぼつかず、寝ていることが多くなりました。トイレは介助でやっと、食事は枕元に持っていけば食べる状態で、家族の介護ではとても無理です。「要支援2」ではあまりサービスを受けられないのではと不安です。介護度の変更はできますか。

*  *  *

 【答】介護度の認定期間が1年でも、状態が変われば変更手続き(区分変更申請)ができます。お父さんのように認定期中に状態が変わった時や入院となった場合や、介護認定の結果が本人の状態に合わず軽く出た場合にも申請できます。
 手続きは、担当のケアマネジャーがいれば相談してください。そうでない場合は介護保険課か地域包括支援センターで手続きをします。主治医意見書の提出と訪問調査が行なわれますので、主治医にきちんと最近の状況を伝えておくこと、訪問調査時にも、同様に伝えることが大切です。

<2020年7月号より>
介護型療養病院への入所
食費と居住費が自己負担に

 【問】母(被爆者)が入院していましたが、長くはその病院にいられないとのことで療養型に移ることになりました。転院について説明を受けたところ10万円を超える費用がかかると言われ、療養型に移っても3カ月くらいで、どこか転院先を見つけるか在宅に、とも言われました。娘の私が働いて生活を維持してきましたが、毎月それだけの費用を支払う余裕はありません。被爆者健康手帳で医療費の負担がなかったので入院させることができたのですが、これからは、高齢で介護も必要な母を看てくれるところはこんなにもお金がかかるのでしょうか。

*  *  *

 【答】かつて病院は長期間の入院を受け入れてくれましたが、医療行政の変化により急性期入院は2週間まで、リハビリが必要でも、疾患により発症後1〜2カ月以内でないと回復期リハビリ病院に転院できないことになっています。回復期リハビリも疾患によって入院日数が決まっているうえ、医療上やむを得ない場合でないと長く入院できなくなり、自宅での療養・介護が基本になりました。
 「療養型に転院を」と言われたとのことですが、療養型にも医療と介護型の2種類あります。医療の場合は、人口呼吸器をつけているとか中心静脈栄養など、常に医療処置が必要な状態が対象になります。お母さんの場合、長期にわたり医学的管理を必要とする状態ではないようなので、介護型療養への転院を進められたのだと思います。
 介護型療養病院(または病棟)に入所したときは介護保険の対象ですから、利用料の自己負担分は被爆者健康手帳の福祉系サービスとして助成されます。しかし、食費と居住費については自己負担となるため10万円を超える負担がかかると言われたのでしょう。
 一般的には食費が1日1392円で30日分では4万1760円。居住費はユニット型個室、多床室など部屋の種類により1日2006円から377円、30日分では6万円余から1万1310円まで幅があります。
 世帯全員が非課税であるなどの経済状態よっては補足給付という減額制度がありますが(『問答集(介護編)』を参照)、あなたが働いているので補足給付の対象にはならないと思われます。できるだけ負担が少なくなるよう、相談してみてください。

<2020年6月号より>
介護保険の訪問介護サービス利用料
住民非課税の被爆者に助成

 【問】両親ともに被爆者健康手帳をもっています。高齢のため日々の生活にも手助けが必要になり、介護保険の申請をして父は「要介護2」母は「要支援2」との認定を受けました。ふたりともデイサービスは嫌だ、自宅で過ごしたいと頑張ります。ケアマネジャーさんと相談して、いずれはデイサービスに行くことを勧めながら当面は訪問介護を受けることにしました。父は週3回、母は週1回で様子を見ることにしましたが、利用料負担が大変です。両親とも国民年金で、ふたり合わせても月10万円にとどきません。
 被爆者健康手帳での助成はないのでしょうか。

*  *  *

 【答】被爆者健康手帳では介護保険サービスの中の医療系サービスと福祉系サービスについて助成制度があります。訪問介護(ヘルパー)については福祉系サービスの中に含まれていると思われがちですが、今のところ対象となっていません。
 ご両親が利用されるヘルパーの回数を経済的理由で減らすことは、在宅での生活を壊すことになってしまいます。
 おふたりとも国民年金のみとのことなので住民税が非課税かと思います。住民税非課税世帯の場合、都道府県に申請して「訪問介護利用被爆者助成受給者資格認定証」(自治体により名称が異なる場合があります)の交付をうけて、介護事業者に提示すれば訪問介護の利用料については負担がなくなります。
 手続きは、最寄りの保健所に次の書類を添えて申請します。@訪問介護利用被爆者助成認定証交付申請書 A介護保険証 B健康保険証 C世帯全員の住民票 D住民税の非課税証明書(生活保護を受給している場合は受給者証)
 手続き後、県から「訪問介護利用被爆者助成受給者資格認定書」が届きますので、訪問介護事業所に提示すると介護保険サービス利用料負担がなくなります。

<2020年5月号より>
ショートステイ 居住費と食事代は自己負担
条件によって軽減措置も

 【問】被爆者である父が心臓疾患で入院し、近く退院予定です。父は母と二人暮らしなので、退院後はショートステイの利用を考えています。ショートステイを利用した場合、被爆者健康手帳による何らかの援護施策があるのでしょうか。

*  *  *

 【答】お父さんが退院されたあと、ショートステイ(短期入所介護)の利用を考えていらっしゃるとのこと、高齢で二人暮らしのご両親の場合、ショートステイを上手に利用すれば、お母さんの介護負担軽減につながると思います。
 ショートステイには短期入所療養介護と短期入所生活介護があります。医療依存度が高い場合には短期入所療養介護を利用することになり、医療機関等への入院になるので医療系サービスになります。介護を目的とした場合は短期入所生活介護になり、これは福祉系サービスとなります。
 お父さんの場合には後者にあたるかと思いますが、利用料の自己負担分は被爆者健康手帳の助成の対象です。
 ただし、助成されるのは利用料の自己負担だけで、居住費や食事代は自己負担となります。
 居住費は、ユニット型個室だと1日1970円ですが、従来型個室や多床室によって負担額が変わりますし、食事代が1日1380円と、自己負担額はかさみます。
 お父さんの世帯が非課税世帯、あるいは年金収入が80万円〜120万円の場合などには、補足給付ということで居住費や食事代の軽減措置が受けられます。ただし、一人当たりの貯蓄額が1000万円以下の場合です。(軽減措置の所得制限等は『相談のための問答集〈介護編〉』の54ページを参照してください)。
 手続きは自治体の介護保険課に行ないます。この手続きをしておくと特別養護老人ホームや老人保健施設等を利用する場合にも該当しますので、今後役立つと思います。

<2020年4月号より>
介護保険でデイサービス利用
被爆者手帳で助成されます

 【問】父は被爆者健康手帳を持っています。デイサービスに週3回ほど通っていて、事業所からの請求が思った以上にかかります。被爆者健康手帳で、医療費のように助成制度はないのでしょうか。

*  *  *

 【答】事業所からの請求書には利用料負担額と昼食代やおやつ代、諸雑費が書かれていると思います。利用料の欄に請求額が記載されているかどうか確認してください。利用料負担については、介護保険証に「1割」「2割」と負担の割合が記入されていますので、それも確認してださい。
 被爆者の援護施策では介護保険サービスについて医療系サービスと福祉系サービスで利用料の助成があります。(医療系・福祉系サービスについては『問答集介護編』参照)お父さんが通われているデイサービスは福祉系サービスの一つで利用料の助成があります。請求書の利用料欄に請求額が記載されていたら、被爆者健康手帳所持者の場合本人請求はないことを事業所に伝えてください。これまで支払った費用については5年前まで県に還付請求ができます。
 県によっては、本人が事業所に一旦支払った後に県に請求して還付される「償還払い制」をとっていましたが、最後まで残っていた6県のうち、青森を除く5県が2019年4月から厚労省の指導で本人請求がなくなりました。
 介護保険と被爆者健康手帳の併用で公費請求できることを知らない事業所もあります。千葉県友愛会では県に要求して、県内すべての介護支援事業所とケアマネジャーにあてて、介護保険に関する被爆者援護施策と介護手当についてのお知らせを県から出させています。各県被団協でもこうした対応をするよう県に要望することも大切なことと思います。

<2020年3月号より>
介護保険で福祉用具を借ります。
被爆者への助成はありますか?

 【問】昨年末に退院して在宅医療を受けている夫のことでお伺いしたいことがあります。
 今回、ケアマネジャーと相談して、ベッドなどの福祉用具を介護保険を利用して借りることにしました。週1回利用しているデイサービスの利用料は被爆者健康手帳を持っているので窓口負担がありません。福祉用具についても負担はないのでは、と話しましたら、福祉用具の利用料は負担するように言われました。
 被爆者健康手帳を持っていても使えないのでしょうか。

*  *  *

 【答】ご主人の様子から、ベッドだけでなく車いすなど複数の福祉用具を借りることになると思われます。借りるものが多くなると支払う額も多くなりますね。
 介護保険サービスで被爆者健康手帳による助成が行なわれているのは、訪問看護や通所リハビリなどの医療系サービスと通所介護(デイサービス)などの福祉系サービスに限られています。おたずねの福祉用具レンタル料については、助成はありません。費用の1割または2割を利用料として自己負担することになります。
 『被爆者相談のための問答集〈介護編〉』をお持ちの方は、「問19」(34ページ)にレンタルできる用具の種類など詳しく載っていますのでご覧ください。

<2020年2月号より>
グループホームの利用料も助成対象になりませんか

 【問】認知症が進み、介護する家族も高齢で限界に近い会員さんのことで相談します。
 この方は現在「要介護1」です。足腰がしっかりしているので家族が目を離したすきに徘徊を繰り返し、警察のお世話にもなりました。特別養護老人ホームに入所できればいいのですが、「要介護3」からしか申し込みができません。社会的要因での入所も大変厳しく、近くにある認知症のグループホームに入所できないかと相談していますが、利用料を含めた費用負担が困難です。
 被爆者援護の福祉系サービスとして、グループホームの費用も助成されないものでしょうか。(青森県相談員)

*  *  *

 【答】日本被団協の厚労省交渉で、特別養護老人ホーム入所について特別の配慮をと求めても、一般の高齢者の扱いに準じてとの回答です。認知症は要介護認定時に配慮していると言われていますが、実際には要介護度が軽く出てしまいがちで介護している家族の負担が大きくなっています。
 認知症対応型居宅介護(グループホーム)は要支援2から対象になっていて、入所できれば家族にとって経済的な負担を除けば大変助かると思います。介護度が上がれば特別養護老人ホームに申し込んでおいて、当面グループホームという選択肢もあります。
 ところが被爆者援護施策の福祉系サービスの対象にはなっていません。厚労省交渉で、グループホームの利用料も福祉系サービスとして助成対象にしてほしいと申し入れました。実現はまだですが、今後も繰り返し要求していきます。
 地域で直面したことから要望があれば、ぜひ日本被団協・相談所に寄せてください。すぐに実現は難しくても厚労省には要求として申入れます。

<2020年1月号より>
被爆者手帳、保険証、お薬手帳の3点セット。いつも持参を

 【問】先日、フランシスコ教皇さまのミサに参加したいと思い長崎まで出かけました。天候も悪かったためか途中で具合が悪くなり、近くにある病院で受診して、無事ミサには参加できました。
 この時、健康保険証はコピーを持っていたのですが被爆者健康手帳を持っていませんでした。病院での支払い時に、はじめは「自費扱い」と言われましたが何とか保険証はコピーを認めてもらって一割負担をしました。
 被爆者健康手帳を受診した病院に届けないと、自己負担分は戻りませんでしょうか。(福岡・被爆者)

*  *  *

【答】フランシスコ教皇のミサに無事参加できてよかったですね。被爆者健康手帳を持参しなくて自己負担分が請求されたとのことですが、受診した病院まで行かなくても償還払いの手続きをすれば戻ります。居住地の保健所に「一般疾病医療費支給申請書」がありますので、必要事項を記入、捺印し、領収書を添付して申請してください。少し時間がかかりますが支給されます。
 高齢になると出先で急に具合が悪くなることもよくあります。外出する際には被爆者健康手帳と健康保険証、それにお薬手帳を忘れずに携帯するようにしましょう。
 健康保険証も以前とは違って一人に一枚ずつカード化されているので、コピーでなく実物を持つようにしましょう。
 お薬手帳には、処方されている薬が記載されているので、初めて受診する病院でもどんな薬を飲んでいるか確認してもらうことができ、診断にも役立ちます。また、重複して処方しないような配慮もしてもらえます。
 いつも持ち歩いているカバンに「被爆者健康手帳」、「健康保険証」と「お薬手帳」をまとめて入れておくようにすることが大切です。

<2019年12月号より>
被爆者の介護手当の申請に介護保険の認定は必要ですか

 【問】現在、在宅で介護を受けている被爆者の介護手当申請についておたずねします。
 10年前に脳梗塞を発症しリハビリを受けて杖歩行までできていたのですが、3年ほど前から寝たり起きたりの生活です。本人と家族の希望で、介護保険の認定申請をしていません。妻の介護だけでは無理になり、結婚した娘さんや息子の奥さんが交替で世話に来ています。介護手当を受給できれば娘さんも息子の奥さんも助かると思うのですが、介護保険の申請をしていないと手当の申請はできないのでしょうか。
(県被爆者の会)

*  *  *

【答】ご家族で在宅での介護に頑張っていらっしゃるのですね。
 被爆者の介護手当は1974年に被爆者援護施策として開始された制度で、介護保険とは別の制度です。本人が他人を家に入れるのが嫌だとか、家族の介護の手があるからといって介護保険の認定申請はしないという方でも、該当すれば被爆者施策の介護手当を受けることができます。厚労省通知には、介護手当申請に必要な書類一覧に介護保険に関する書類は入っていません。東京都では介護保険証の写しを添付するようになっていますが、制度そのものは別なので、お問い合わせの方の場合も介護手当の申請はできます。
 別世帯の娘さんや息子の奥さんが通ってきて介護を手伝っているので、いくらかでも金銭的な支払いをすることによりお互いに楽な気持ちになると思います。ぜひ、主治医と相談して介護手当の申請手続きをしてください。申請に必要なことは「問答集・介護編」を参照してください。

<2019年11月号より>
死亡後献体した場合も葬祭料は支給されます

 【問】先日亡くなった被爆者のご家族から葬祭料の申請の件で相談がありました。
 生前、献体の手続きをしていて、死亡確認後、遺体は大学病院に移送したそうです。葬祭料支給申請書と死亡診断書を添えて、娘さんが申請者として保健所に手続きをしたところ、「葬儀をしていないので葬祭料は支給しない」と言われたとのことです。
 献体した場合は葬祭料が支給されないのでしょうか。(県被爆者の会)

*  *  *

 【答】死後献体をする人が多くなり、通夜や葬儀をしないで火葬にする直葬も増えています。葬祭料について、あらためて厚労省に問い合わせてみました。
 回答は、「葬祭料の支給は、葬儀をしたかどうかは問うていない。被爆者のうけた精神的なこと対して支給するものである」とのことでした。葬祭料に関する通知(昭四四衛発五四三号)では、次のように規定されています。「特別被爆者は放射能を多量に浴び、その影響により、負傷し又は疾病にかかり易く、また、負傷又は疾病が治ゆしにくい等の事情があり、日ごろから死に対する特別な不安感をいだいている。(略)今なお、このような不安な日常生活を余儀なくされている特別被爆者への国家的な関心の表明として、(略)その葬祭を行なう者に対し、葬祭料を支給することにより、これらの特別の状態にある被爆者の精神的不安をやわらげ、もってその福祉を図ることとしたものである」。(1969年当時の「特別被爆者」制度は現在はありません。「被爆者」と読み替えてください)。
 ここでは支給対象者は「葬祭を行なう者」としか書かれていません。
 自治体の葬祭料申請についての説明では、申請者が葬祭を行なったことがわかる書類(会葬御礼のはがき・葬儀社からの領収書)となっていて、私たちは、お金をかけて葬儀を行なった人が申請できる、と思い込んでいました。厚労省は、葬祭料申請の手続きは@申請書 A死亡および死因を確認出来る書類等 B葬祭を行なう(行なった)人を確認できるもの、を提出する、Bの書類については都道府県の判断による、との回答でした。
 お問い合わせの方については、亡くなった被爆者と申請者との関係が分かる物を提出すれば、葬祭料は支給されるとのことです。

<2019年10月号より>
もの忘れが多く怒りっぽくなった…
専門医や包括支援センターに相談を

 【問】昔から一緒に会の活動をしていた友人のことです。一年ほど前から会議に遅れたり、出てこないことが多くなりました。欠席の理由をたずねると「会議があることを知らなかった」とか「時間がわからなかった」といいます。会議の日程を決めるときに手帳に書き込んでいるのですが。
 また、会議やその他の集まりでも急に怒りっぽくなり、周りの人に迷惑をかけることが多くなりました。一人暮らしで寂しいのか毎日のように電話をかけてきて同じ事を話します。なにかと気をつけてきましたが私もくたびれて、話につきあえなくなってきました。
 こういう場合、どこに相談したらいいのでしょうか。

*  *  *

 【答】長年のお友達ですから気にかかることも多いでしょう。もの忘れや怒りっぽくなったとのこと、一度、病院の「もの忘れ外来」に一緒に行って受診させることも必要かと思います。地域の内科医でも「もの忘れ外来」を開設するところがあります。認知症なのかどうか診断し、場合によっては専門医につなげてくれます。
 また、地域の地域包括支援センターに相談してみてください。職員が自宅を訪問して生活状況などの様子を見て、専門医と相談して対応してくれます。自分の事を心配してくれるところがある、とわかるだけで安心するのではないでしょうか。
 ご自分で何もかも背負い込まず、こうした地域支援を活用しながら、友人が落ち着いて生活できるように支援してあげてください。

<2019年9月号より>
医療特別手当から特別手当に
納得できないときは不服審査請求を

 【問】私は平成25年に「咽頭がん」で原爆症の認定を受けました。地元の病院では難しいと言われ東京の国立がんセンターで手術を受けました。声が出にくくなり、会話も困難です。現在は地元の病院で経過観察しながら副作用で発症した「甲状腺機能低下症」の治療でチラーヂンを服用しています。
 今回、医療特別手当の更新手続きをした結果、特別手当に変更という通知がきましたが納得できません。このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか。

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 【答】医療特別手当の支給要件である「要医療性」は、受診状況が「定期的に受診し、現在治療中の場合」となっています。受診状況が「定期的に受診し、経過観察中」と「定期的な受診をしていない」場合は、@悪性腫瘍、白血病については再発したとの所見がない場合には手術等の根治的治療から概ね5年以内 Aただし、乳がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がんその他再発の可能性が特に長期にわたる疾病については概ね10年以内 B末期の悪性腫瘍などで治療が困難な状況にあることが認められる場合、以上の条件のときは支給を継続して差し支えないとしています。
 あなたの場合、@の「再発したとの所見がなく手術等の根治療法から概ね5年」が経過したと判断されたようです。
 あなたが困難をかかえながら療養生活を送るなかでこの決定に納得できないのであれば、行政不服審査請求をしてみたらいかがでしょうか。決定通知を確認した日から3カ月以内に申し立てをしてみてください。

<2019年8月号より>
原爆症認定申請
「肺気腫」で申請できますか

 【問】私は1945年5月生まれです。広島に原爆が投下された翌日、母の背中におぶわれ祖父と叔母の安否をたずねて猫屋町、県庁、鍛冶屋町を歩きまわりました。
 最近「肺気腫」との診断を受け治療を開始しました。私の場合入市したのが100時間以内なので、認定申請はできないものでしょうか。

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 【答】2011年までたたかわれた原爆症認定集団訴訟の結果、厚労省は「新しい審査の方針」を決めました。その中に「100時間以内」という文言が出てくるのですが、その部分は下記のようになっています。―積極的に認定する範囲として悪性腫瘍(固形がん)、白血病、副甲状腺機能亢進症の場合に@被爆地点が爆心地より約3・5キロ以内である者、A原爆投下より100時間以内に爆心地から2キロ以内に入市した者、B原爆投下より100時間経過後から約2週間以内の期間に爆心地から約2キロ以内に1週間程度以上滞在した者―。
 呼吸器系疾患では今のところ固形がんである「肺がん」のみが対象とされていて、「肺気腫」は対象となっていません。それでも認定申請をということであれば、主治医と相談して手続きをしてみてください。
 日本被団協では集団訴訟終結後、「原爆症認定制度のあり方に関する提言」を出し、運動しています。「提言」では、司法と行政の判断の乖離に真摯に向き合おうとしない厚生労働省に対し、誠意をもって取り組むことを要求しています。そして、原爆被害を総合的にみなければならないとして、原爆症認定制度と諸手当の制度を見直し、すべての被爆者に『被爆者手当』を支給し障害を持つ者には加算することを求めています。

<2019年7月号より>
入院中の妻の今後
施設への入所か― 在宅での介護か―

 【問】今年に入って妻の具合が悪くなり、介護認定を行なって「要介護2」と決定されましたが今月になり体調が急変、入院し主治医から「腎臓が悪く手の施しようがない。時間の問題」と説明を受けました。以前から二人で延命処置は受けないと話し合っていましたので、主治医にはその旨を伝えました。ところが病院のほうから「どこか施設に移るように」と言われ、いくつかの施設の名前を教えられました。予後は長くないと言われているので施設に移るのか、それとも自宅につれて帰って在宅介護にしようか迷っています。介護するのは私一人ですが、在宅で介護できる体制は作れるでしょうか。

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 【答】入院して病状・予後の説明を受け、今後の治療について家族の要望を聞かれたと思ったら転院の話とは――もっと丁寧に家庭の状況や本人・家族の思いを聞いてくれるとよかったですね。奥さんが家に帰りたい気持ちを少しでも持っているのなら在宅介護を検討してみてください。
 今年初めの「要介護2」よりも状態が悪くなっているはずですから、介護認定の「区分変更」手続きをします。そして、近くの介護支援事業所のケアマネジャーと契約して訪問診療をしている医師と訪問看護ステーションを紹介してもらい、合わせて訪問介護につなげて貰ってください。
 在宅介護は、訪問診療と訪問看護で24時間、必要な対応が可能です。24時間対応の契約をしておけば、発熱や様子がおかしいとき、不安になったときに訪問看護師に電話での相談や訪問して貰うことができます。被爆者の場合、訪問診療も訪問看護も医療系サービスなので、被爆者健康手帳により自己負担は車代程度です。また介護用ベッド類も福祉用具貸与で利用でき、奥さんの状況に合わせたマットレスが借りられます。入浴させたいと思えば訪問入浴を利用することもできます。
 介護するのがあなた一人ということで不安を感じていらっしゃるようですが、あなたは見守りと話し相手をすれば良いと思います。訪問介護(ヘルパー)におむつ交換などをお願いし、サービスの限度枠を超える場合には被爆者の介護手当を利用すれば、経済的にも大きな負担にはならないと思います。
 これまでお二人で「延命治療」などについて話し合われていたとのことなので、奥さんの気持ちは分かっていると思います。在宅介護を選択するとなると病院は、関係者を集めてカンファレンスを開きます。そこで必要な話し合いがおこなわれ意思統一できますので、不安にたじろぐのではなく一歩進めてください。

<2019年6月号より>
介護施設利用料 被爆者手帳が使えます
支払った分は償還払い手続を

 【問】百歳になる父は長崎で被爆しました。2年余り病院に入院していましたが、長くなりすぎるということで同一敷地内の介護施設に移り1年以上になります。
 病院に入院中は医療費について被爆者健康手帳により自己負担がありませんでした。ところが施設に移ってから毎月17万円あまり請求され支払っています。高額介護サービス費とかで一定額以上の負担額はもどってきていますが、これ以上の負担には耐えられません。被爆者健康手帳による助成はないのでしょうか。

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 【答】長期にわたる費用負担は大変ですね。
 お父さんの入所されている施設は介護老人保健施設か介護療養型医療施設でしょうか。どちらも介護保険サービスにおける被爆者援護施策では医療系サービスということで、利用料の自己負担分が被爆者健康手帳により助成されます。ただし、食費や居住費は利用者が負担します。食費は1日1380円、居住費は従来型個室で1日1650円です。これらの費用に加えて雑費などの負担があります。
 これまで支払った費用の中に利用料の自己負担分があると思われますので、被爆者援護による償還払いの手続きをしてください。都道府県の被爆者担当課又は最寄りの保健所で介護保険利用被爆者助成金支給申請書類をもらいます。これに領収書、サービス提供明細書と高額介護サービス費の支給に関する書類を添付して、都道府県に請求してください。この手続きは5年で時効になりますので気をつけて早めにおこなってください。今後については、施設側に制度を伝えて手続きをとってもらいましょう。食費や居住費については、所得による軽減措置がありますから、該当するようであれば役所で手続きをして施設に提示してください。
 介護保険サービス利用料の自己負担分に関する被爆者健康手帳の助成制度は十分周知されておらず、事業所によっては制度を知らず、手帳を提示しても請求しているところもあるようです。中央相談所発行の『問答集―介護編』を施設側に示して読んでもらうと良いと思います。

<2019年5月号より>
認知症すすむ親の介護
共倒れにならないために

 【問】被爆者である義母は昨年脳梗塞を発症し退院後、介護保険の要介護1で通所リハビリに通っています。
 最近少しずつ認知症の症状が進んできたようです。主治医の前ではしっかりしてしまい「認知症ではない」と言われるのですが、衣服は前後や裏表を逆に着るのでその都度着替えさせていますし、先日もお金がないといって大騒ぎしました。また一人で外出して自宅に帰れなくなったこともあります。
 息子である夫は義母のいうことをまともに受けて激しくやり合っています。私も仕事と子どもをかかえて疲れ切っています。義母は自宅で暮らしたいようですが、このままでは共倒れになりそうです。何か方法はありませんか。

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 【答】働きながら介護するのは身体的にも精神的にも負担は大変大きいものです。本人の希望に沿いながら共倒れにならないで介護を続けていくために、次のサービスの利用を検討されたらいかがでしょうか。
 @ショートステイを定期的に利用する――1〜2カ月に1週間程度入所できるサービスです。
 A小規模多機能型居宅介護事業所の利用――デイサービスや時には1〜2泊の宿泊ができます。
 @とAの利用料は被爆者健康手帳で助成され、自己負担はありません。
 B認知症が進んできたら認知症グループホームに入所する――「認知症」という診断書がだされれば要支援2以上で入所できます。ただし、費用については被爆者健康手帳の助成対象になっていないので全額自己負担になります。特別養護老人ホームの入所要件(要介護3以上)と違って『介護度』での制約がないので、経過的な方法としてはいいかもしれません。
 いずれにしろケアマネジャーとよく話し合ってみてください。
 被爆者の家族介護手当申請については、お義母さんの今の状況からするとむずかしいと思われますが、主治医に家庭での状況などを詳しく報告しながら相談してみてください。

<2019年4月号より>
美術館や博物館の入場料
被爆者手帳での減免の決まりはありますか

 【問】私は美術館や博物館によく出かけます。その際に被爆者健康手帳を提示すると、入場料の割引がある所、本人プラス介助者も割引する所、また全く割引がない所など、その対応はまちまちで、美術館等に行くたびにひやひやハラハラしています。
 被爆者の場合、身体障害者に準じた対応になるのでしょうか。それとも被爆者健康手帳で無料や割引と決められているのでしょうか。また、きちんと明文化されているのでしょうか。

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 【答】美術館や博物館の多くは、身体障害者手帳所持者や65歳以上に入場料の割引があり、被爆者健康手帳にも適応されることがあります。
 国立美術館については「独立行政法人国立美術館観覧料減免規則」の第4条に「身体障害者手帳等の所持者」についての規定があり、被爆者健康手帳所持者の観覧料は無料、付き添い者1名についても無料とされています。
 しかし、美術館や博物館は国立だけでなく自治体や民間による運営もあり、すべてに国立美術館の規定が適用されるわけではありません。ほかには法律などの明文化された規定はなく、入場料の減免についてはそれぞれの美術館、博物館で決めているようです。
 多くの美術館、博物館で、被爆者健康手帳の提示で入場料無料あるいは割引を行なっており、介助者についても行なっているところもあります。
 めんどうでも、入場券を購入するときに被爆者健康手帳を提示して確認してみましょう。

<2019年3月号より>
特別養護老人ホームの利用料
被爆者手帳所持者には、介護保険利用料の自己負担分が公費負担に

 【問】特別養護老人ホームの職員です。利用者の家族の方が被爆者の会から送られてきたというピンク色の「被爆者のしおり」を持参し、相談にこられました。「しおり」によれば、特別養護老人ホームの利用料は被爆者健康手帳で自己負担がないとのこと。施設ではそのことを知らず、入所された平成26年から利用料を請求していました。「しおり」に書かれているように利用料は被爆者健康手帳で助成されるのでしょうか。

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 【答】特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の利用料の自己負担分について被爆者は、介護保険の福祉系サービスとして公費で助成されています。ただし、居住費や食費、その他雑費は助成の対象になりません。
 施設としては今月分から公費併用で保険請求していただくと助かります。請求コードがあるので自治体の介護保険課に確認してください。
 これまで支払われた利用料については、利用者本人が償還払いで県に請求できます。償還払い請求の時効は5年です。平成26年入所ということであれば今年が5年になります。県庁の担当課または住所地の保健所で書類をもらい、領収書を添付します。遡っての領収書を処分してしまっていることもあるかと思いますが、その場合は領収したという証明書を作成してご家族に渡していただければ助かります。

 岐阜県原爆被爆者の会が、「生活・健康相談会」開催を知らせる手紙と共に「被爆者のしおり」を、県の協力を得て県内の被爆者健康手帳所持者全員に送りました。届いた「しおり」をみてご家族が、施設に相談に行かれたようです。

<2019年2月号より>
所得税の控除は受けられますか?
扶養している両親が被爆者で要介護認定を受けています

 【問】両親とは同居はしていませんが、毎月仕送りをしています。私も定年を目前に経済的には厳しくなっています。両親ともに被爆者で、3年前から介護認定を受けて介護保険サービスを利用しています。被爆者健康手帳や介護認定を受けていることで税金の優遇措置はないでしょうか。

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 【答】被爆者は、手帳を持っているだけでは控除の対象にならず、原爆症の認定を受けている場合のみ障害者控除の対象になります。
 ご両親は介護認定を受けておられるので、自治体の措置によって障害者控除を受けられる可能性があります
 国税庁では、障害者控除の対象になるのは精神または身体に障害のある65歳以上の人で、障害の程度が知的障害者または身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人、などとしています。こうしたことを受け多くの自治体で介護認定を受けている人を障害者控除の対象として認定しています。
 適用を受ける年の12月31日現在における身体状況によって特別障害者に準ずるか、障害者に準ずるかの認定をします。自治体によって対象や基準が違いますので、該当するかどうか、自治体の介護保険課に問い合わせてみてください。
 該当する場合は「障害者控除認定書」が交付されます。5年前までさかのぼることができるので、該当する年の「障害者控除認定書」の交付を受けて手続きされるとよいでしょう。
 同居していなくても生計を援助していることがはっきりしていれば適用されます。

<2019年1月号より>
「セカンドオピニオン」は自費診療の場合も ― 慎重に検討しましょう

 【問】私は脳神経内科と整形外科にかかっています。「頚椎症」「脊柱管狭窄症」と診断され、整形外科で手術を勧められました。脳神経内科の主治医と相談して手術はしないで経過を見ることにしましたが、念のため大学病院の医師の意見を聞いてみて最終的判断をしようかということになり、紹介状や検査結果、MRI画像などを持参して大学病院で受診しました。保険証と被爆者健康手帳を提示していたのですが、会計で「その他項目」という名目で2万円の支払いを請求されました。いったいどういうことでしょうか。

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 【答】主治医の意見だけでなく別の視点や角度から診断や治療法について理解を深め納得するために、セカンドオピニオン(第二の意見)を求めるための受診ができるようになりました。まずかかりつけの主治医に、現在の病状やその治療をなぜ進めるのかを聞いてきちんと理解をしておくことが大事です。そのうえでセカンドオピニオンを受けたいという考えを伝え、紹介状(診療情報提供書)や検査結果、CTやMRIの画像などを準備してもらいます。
 ガン医療では予約制の「セカンドオピニオン外来」を設置している病院が多いようです。これは健康保険がきかず自費診療なので、被爆者健康手帳が使えません。30分の相談で1万円とか2万円など、病院によって費用が異なります。費用負担も大きいので本当に必要なのか、慎重に決めることが大切です。

<2018年12月号より>
薬の容器代など保険外部分は被爆者も自己負担になります

 【問】薬局で目薬を受け取るときに容器代が請求されました。いったん支払ったのですが、被爆者健康手帳を提示したのに、なぜ請求されるのか納得できません。

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 【答】被爆者健康手帳での医療に関しては「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」第14条で「指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による」とされています。ですから医療機関では、被爆者の診療にあたっても健康保険の診療方針や診療報酬に基づいて治療をしています。こうした診療方針や診療報酬については、厚生労働省が通達として出しているものです。
 入院時の差額ベッド料(4人部屋でも請求されることがあります)や「保険外サービスの自己負担の導入」も1984年の「健康保険法改正」とあわせて、当時の厚生省が認めたものです。国民には十分な説明をしないまま、保険診療から外された自費部分が広がってきました。被爆者は医療機関で受診した時、被爆者健康手帳と医療保険証を提示すれば無料と思っていたのが、気がつかないうちに次々と自己負担が導入され、その範囲が広がってきたのです。
 ですから、点眼薬や塗り薬など外用薬の容器代が請求されるとか、包帯などの治療材料も「薬局で買ってね」と言われるようになったのです。
 被爆者も国民と共に命を守る運動に参加することが求められています。

<2018年11月号より>
保健手当から健康管理手当へ
対象疾病にかかっていればきりかえることができます

 【問】保健手当を受給している会員さんのことでお伺いします。
 これまで会の集まりなどに参加していたのですが、最近「足が悪くて、タクシーを使わないと外出が難しく、会の集まりに出られなくてすみません」と言われました。よく聞いてみると、膝関節が悪くて手術も検討されているそうです。通院にもタクシーを使うことが多く経済的にも大変になってきているとのことです。この場合健康管理手当に切り替えることができますか。

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 【答】高齢化にともなって、これまで比較的お元気だと思われていた方もあちこち具合が悪くなってきています。ご相談の方については、保健手当の加給には該当しないようですので、健康管理手当への切り替えをすすめてみてください。膝関節が悪くて手術も検討とのことですから、健康管理手当の11の対象疾病のうち運動器機能障害(変形性関節症・変形性脊椎症)に該当します。主治医に相談して手当診断書を作成してもらいましょう。その時、診断書の「今後治療を必要とする期間」を「3年」と記入されると、更新が必要になります。疾病が「固定している」となれば更新手続きは必要ありませんので、主治医とよく相談してください。
 健康管理手当の更新手続きの要・不要については、『問答集』bR0(改訂版)に詳しく載せてあります。主治医にも読んでいただくと良いと思います。
 この方以外の会員さんの中にも、保健手当(月額1万7270円)のままになっている方がいるかもしれません。身障手帳3級程度の障害、ケロイドが残っている、一人暮らし、のいずれかに該当する人は加給され、健康管理手当(月額3万4430円)と同額になります。被爆者の中には健康管理手当の対象疾病で治療している方が増えていると思われますが、その場合は切り替えができます。ぜひ働きかけてみてください。

<2018年10月号より>
原爆症認定の病気の診察を、近くの診療所や在宅で受けるには

 【問】私は原爆症認定患者です。最近は足腰が弱り家の中の移動だけでも大変な状況になってきました。認定病名での診察は認定疾病医療機関指定の病院で受けなければなりませんが、それが難しくなりました。主治医に事情を話して年に2回程度の受診です。それ以外は近くの診療所でみてもらって、認定病名を管理してくれている先生と連携をとってくださっています。
 今後、年2回の受診も困難になると思います。そうした場合、今もらっている医療特別手当は受けられなくなりますか。

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 【答】被爆者の平均年齢も82歳を超え、原爆症認定被爆者の多くの方が同じような不安を抱えているのではないかと思います。日本被団協の厚生労働省交渉でも、医療特別手当の更新手続きをなくしてほしいという声がだされています。しかし厚労省は、「今の法制度では検討の余地はない」と答えています。
 受診そのものが困難になり、在宅診療をうけなければならない事態が生じた時、在宅診療を担当している医療機関が認定疾病医療機関の指定を受けていることは少ないと思われます。こうした場合について厚労省は「在宅診療を担当している医療機関に認定疾病医療機関の指定を受けてもらうように」といいます。
 近くの診療所や在宅診療の医療機関に、認定疾病医療機関の指定を受けるよう、お願いしてください。なかなか言い出しにくいとは思いますが、原爆症認定と医療特別手当を受け続けるために指定医療機関でないと困ることを訴えて、相談してみてください。
 認定疾病医療機関の指定を受けるには、一般疾病医療機関の指定を受けていることが必要です。その上で認定疾病医療機関の手続きをすることになります。
 日本被団協としても、在宅診療を担当している診療所等が指定を受けることが難しくないよう、厚生労働省に要請していきたいと思います。

<2018年9月号より>
一人暮らしの被爆者
目につく所に手帳や連絡先を

 【問】自宅で倒れ緊急入院した、一人暮らしの被爆者の後見人をしている者です。
 近所の人がたまたま訪問して、倒れているのを発見し入院。本人の経済的情報がわからず、入院と同時に生活保護が開始され、回復期リハビリ病院など3カ所の病院をへて施設入所となり、その時点で後見人を任されました。
 自宅を整理する中で被爆者健康手帳と多額の残高がある貯金通帳がみつかり、福祉事務所から医療費の全額返還を求められました。どうこたえたらいいかわかりません。

*  *  *

 【答】一人暮らしで突然倒れると情報がなく、困ってしまいます。何も見つからなければ生活保護受給で終わったかもしれませんが、被爆者健康手帳と多額の貯金が見つかったことで問題が生じたようですね。
 生活保護の場合医療費は「他法優先」なので、被爆者は生活保護を受けていても被爆者健康手帳により請求することになっています。
 この方の場合、入院して1年近くになり3カ所の病院での医療費の請求が終わっています。ですがご本人に医療費の請求がないように、福祉事務所から各病院の請求事務担当者に、生活保護で請求した医療費の返戻手続きと被爆者健康手帳での再請求をお願いして貰ってください。
 被爆者で一人暮らしの方は、次のことに特に気をつけてください。
 @目につくところに緊急の連絡先を貼っておきましょう。そこに、被爆者の会の連絡先も加えておきましょう。
 A被爆者健康手帳と保険証、お薬手帳をまとめて、目につくところに置くようにしましょう。

<2018年8月号より>
母がショートステイで骨折
事業所の説明に納得できません

 【問】90歳の母はショートステイを定期的に利用しています。今回も1週間の予定で入所しました。3日目に「足が紫色になり腫れていて受診する必要があるので至急来るように」との連絡があり、結局「大腿部骨折」で入院手術をしました。どうやら、入浴の際に脱衣場で転んだようです。事業所からはどうしてこのようなことになったのか、詳しい説明がなく納得できません。

*  *  *

 【答】高齢になるとちょっとした段差などにつまずいて転倒したり、目を外した際に転んだりすることがあります。介護保険ではこうした事故対応について、家族への経過の説明責任と、保険者(市区町村)への報告義務(最終的にどういう形で解決したかまで)が法的に課されています。ですからあなたが事業所の説明に納得できない思いをきちんと事業所側に伝え、説明の場をもってもらうように話してみてください。それでもらちが明かない場合は、保険者である市区町村の担当課に報告書が出されているか確認してみてください。最終的には国民健康保険連合会の苦情窓口に相談することになります。電話番号は契約書または重要事項説明書に記載されています
 本人や家族が経過説明を聞きたいというのはあたりまえのことです。多くの介護事業所、介護施設や医療機関では、ミスや事故に対してどんな小さなことでも報告書を提出し、大きな事故につながらないように研修を行なうなど、リスク管理には力を入れています。事業所として経過説明をきちんとすることは従業員を守り、力量を上げていくことにつながります。

<2018年7月号より>
介護保険サービスと被爆者
ショートステイの利用料が請求され、支払った場合は?

 【問】「要介護5」の夫がショートステイを毎月、利用するようになりました。はじめて利用する際に被爆者手帳を介護保険証と一緒に提示し、「わかりました」と言われました。
 最初は短期間の利用だったものですから請求額も少なく気にしていませんでした。ところが先月分の請求が20万円を超えて、さすがにおかしいと思い請求書を確認したところ、居住費と食事代と共に介護保険の利用料が請求されていました。
 事業所に被爆者手帳を提示していますし、福祉系サービスも窓口払いはないと聞いていたのですが、どういうことでしょうか。

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 【答】「要介護5」の夫さんの介護、たいへんですね。うまくショートステイを利用して介護負担を少しでも軽減できると本当に助かりますね。
 介護保険サービスの事業者の中には、介護保険上のことはわかるけれども被爆者援護との関係については十分知らされていないし、わかっていない、というところも多いようです。
 県の被爆者援護課に連絡して、これまで支払われた負担分は償還払いの手続きを行なうと共に、事業者に県から指導してもらうように話してください。
 また、県の被爆者の会にも連絡して、被爆者の会から県に対し、介護保険サービス事業者への指導を徹底するよう申し入れるように話をしてみてください。
 せっかく、みんなの力で医療系サービスだけでなく福祉系サービスへの助成も勝ち取ったのですから、きちんと活かされるようにしてほしいですね。

<2018年6月号より>
国立医療センターでの時間外受診
公費負担受給者と緊急の時は無料

(厚労省通知「保医発0326第2号」)

 【問】先日、急に具合が悪くなり、かかりつけ医の先生にと思ったのですが夜遅い時間だったので、国立医療センターで受診しました。保険証と被爆者健康手帳を提示したのですが5400円請求されました。後で県に請求すればと思って支払って帰り、後日県に請求したところ「保険外だから支払い対象ではない」とのことでした。納得できません。

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 【答】被爆者手帳を提示すればほとんどの医療費は自己負担がありませんが、今は、自己負担することも増えてきています。1996年の健康保険法「改正」時に、選定医療費という名の保険外負担が設定されました。選定医療には、@200床以上の病院に受診する際にはかかりつけ医の紹介状が必要。紹介状がなければ2000円から5000円程度自費請求できる A保険医療機関が表示する診療時間外に受診した場合は、自費で医療機関が決めた額を請求できる B入院に際し特別の療養環境を提供する場合は自費請求できる(差額ベッド料)などです。他に歯科の義歯に関する項目もあります。
 あなたが時間外に紹介状なしで受診したため、国立医療センターでは自費請求したのだと思います。県が「対象外」というのも、選定医療は保険外負担ですから被爆者健康手帳の適用外となったのです。
 ただし、厚労省は通知(保医発0326第2号)で、「国の公費負担医療制度の受給対象者は紹介状がなくても初診に関わる特別の料金を徴収することは認めない」としています。また、時間外の特別料金の徴収について「緊急やむを得ない事情による時間外受診は従来通り診療報酬点数上の時間外加算の対象で患者からの費用徴収は認めない」としています。
 あなたの場合は、公費負担受給者であること、緊急であること、のどちらにも該当します。国立医療センターに払い戻しの交渉をしてください。

<2018年5月号より>
ショートステイ利用時の「食費」「居住費」の負担額

 【問】夫が先月下旬からショートステイを利用しています。先日、請求書が届きました。「利用者負担額」という項目と「介護サービス費」という項目があって、さらに請求金額があります。どれを支払えばいいのかわかりません。

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 【答】利用料の請求明細書には介護サービス費と食費や雑費などの利用者負担とがあります。被爆者の場合、介護サービス費は、被爆者健康手帳により自己負担はありません。請求明細書に介護報酬単位が書かれていても支払いはありません。
 「食費」と「居住費」について、何日分で合計いくらという金額だけを支払うことになります。その額と請求金額が同じになっていると思います。確かめてみてください。食費は1日1380円です。居住費は多床室やユニット型準個室、個室など種類により負担額が違います。どんな部屋に入所しているかで決まります。
 食費や居住費は所得による軽減措置もありますが、貯蓄額が一人1千万円、夫婦では2千万円以上あると、軽減の対象にはなりません。

<2018年4月号より>
老人保健施設への入所

費用が毎月20万といわれました。被爆者手帳は使えませんか?

 【問】夫が倒れ、入院しました。今は回復期リハビリ病棟にいます。あと2カ月で自宅に退院するか、老人保健施設に移るように言われました。家族は私一人なので「要介護5」の夫の介護はとても無理です。老人保健施設にと考えていますが費用が毎月20万円くらいかかると言われ、困っています。夫も私も被爆者手帳をもっていますが、なにか援助が受けられますか。

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 【答】急な入院、そして回復期リハビリ病院への転院とお一人での対応は大変でしたね。
 老人保健施設への入所にあたり月額20万円と言われたとのことですが、介護保険の利用料の自己負担分は医療系サービスとして被爆者健康手帳を呈示することにより負担はありません。ただし、居住費や食事代その他雑費は全額自己負担となります。居住費は多床室で1日370円、従来型個室だと1日1640円、ユニット型個室で1日1970円、食費は1日1380円かかります。
 捕捉給付として、低所得者の負担軽減制度がありますが、2015年8月から、預貯金等が一人あたり一〇〇〇万円、夫婦2人で二〇〇〇万円あると、住民税が非課税世帯でも対象から外されました。
 老人保健施設の入所期間は基本的に3カ月なので、その後どうするか、長期的なことも考えておきましょう。

<2018年3月号より>
亡くなった父の被爆者手帳 手元に残したいのですが…

 【問】父(被爆者)が90歳で亡くなりました。被爆者健康手帳を返さないといけないと聞きました。家族としては持っていたいと思いますが、返さないとダメなのでしょうか。

*  *  *

 【答】お父さんにとっては大切な品ですし、ご家族にとってもお父さんにつながる思い出の品ですね。
 被爆者が亡くなったときは、14日以内の届け出が必要です。手続き時に@被爆者健康手帳 A死亡診断書 B支給されていた手当証書(原爆症と認定されていた場合は認定証書)を提出することになっています。
 被爆者死亡後の手帳の返却について厚生労働省は以前、日本被団協からの「遺族が手元に置けるように」との要請に対し「被爆者健康手帳の扱いは都道府県知事であり、国としていえないところもある。遺族に返している県もあるようだ。無効印を押して返すことも可能」と回答しています。
 窓口の担当者に「手元に置いておきたい」と申し出てみてください。それでも返却するよう指導された場合には、コピーや写真をとるなどされるといいかもしれません。

<2018年2月号より>
被爆者の介護手当
申請のしかたや手当額についてくわしく教えてください

 【問】介護手当について「相談のまど」欄で知りました。申請について詳しく知りたいのですが。また、支給される手当額も教えてください。

*  *  *

 【答】介護手当には、同居している家族が被爆者を介護する場合の家族介護手当と、家族ではない人に費用を支払って介護を受ける場合の手当があります。区別するために後者を他人介護手当として、それぞれについて説明します。

◇家族介護手当
 書類は@介護手当支給申請書 A医師の診断書(介護手当用)で1カ月以内に作成されたもの B介護人の申立書 C介護手当継続支給申請書(引き続き介護が必要な場合)です。まず保健所等で書類を受け取り、記入するなど整えて、同じ窓口に提出します。
 手当額は月額2万1870円です。

◇他人介護手当
 書類は@介護手当支給申請書 A医師の診断書(家族介護手当と同じ B領収書です。領収書は決められた様式はなく次の事項を記載します。領収金額、介護の内容(食事づくり、通院介助など)、介護の期間および日数、支払者名(介護を受けた被爆者)、介護人の住所と氏名、領収年月日。初回申請月以降は医師の診断書以外の書類を毎月提出します。
 手当額は重度障害の場合月額10万5130円以内、中等度障害では月額7万80円以内です。
 なお、東京都ではそれぞれの手当額に上乗せがあります。

<2018年1月号より>
有料老人ホームに入居しながら介護保険サービスを受けるとき

【問】有料ホームに夫婦で入居しています。入居時に多額の一時金を支払い、ほかに毎月12万円の支払いをしています。
 このたび90歳を超えた夫が介護保険の要介護認定を受け介護サービスを受けるにあたって、毎月の支払いの上に介護利用料を支払うことになり、経済的に負担になっています。被爆者関係でこの利用料を助成してくれる施策があるでしょうか。

*  *  *

【答】介護付き有料老人ホームの場合、介護保険では「特定施設入居者生活介護」としてサービスを受けることができ、その利用料の1割又は2割(所得による)を自己負担します。
 特定施設入居者生活介護の場合、介護保険の福祉系サービスに対する被爆者健康手帳による助成の対象になっておらず、また、被爆者の介護手当からも外されています。
 したがってあなたの場合、被爆者施策での助成を受けるのは難しいと思います。
 有料老人ホームでも、介護スタッフが常駐していない「住宅型」の場合は、外部の事業者と契約して介護保険サービスを受けるため、福祉系サービスの助成も受けられますし、介護手当の対象にもなります。