経絡治療について 治療の流れ 道具について 副作用について 治療後の過ごし方 WHO認定の適応症

鍼灸について

西洋医学では治らない病気も
 鍼灸治療は紀元前5世紀頃の中国が発祥であり、日本へは5~6世紀頃に伝わり、本場とは違う日本人の体質にあった優しい鍼灸として独自の進化をとげました。「胃が痛むときに足のスネを擦ってみたら楽になった」「手の甲を押してみたら歯の痛みが軽くなった」「逆子のときに足の小指を刺激したら治った」等、不思議な体験を積み重ねツボが発見されました。ツボへの刺激として「はり・きゅう」が最適であると分かってから今日まで何千年と研究が続けられ体系化され、西洋医学とは病気の見方も考え方も全く違う独自の医学として発展してきました。
 病院や接骨院、整体、カイロプラクティックなどは全て西洋医学です。西洋医学では治らない症状であっても、東洋医学である鍼灸なら改善できるということが多々あります。病気の診かた、考え方が西洋医学とは全く違うためです。東洋医学と呼べるものは鍼灸と漢方だけです。ただ鍼灸と看板を出していても、脈も腹も舌も診ない場合は、西洋医学に基づく鍼灸の可能性が高く東洋医学ではありません。


鍼灸は3種類
日本で行われている鍼灸は大きく分類すると①中国式②日本式③西洋式の3種類あります。一般に中国式は鍼が太く長く、日本式は細く短いです。日本人の身体は繊細で痛みに敏感なため、日本人に合うように変化したのだと思われます。本場は中国なので中国式が一番正統のようですが実際は違います。1966年からの文化大革命で中国伝統医学は破壊され西洋医学と融合し変わってしまったのです。この症状には誰にでもこのツボを使うと画一化されています。脈とか腹とかツボの状態とか一人一人違うはずなのにお構いなしです。
 日本式は経絡治療学会が主となって伝統医学を復興、普及する活動を行っています。似たような症状でも人によって違いがあるのが当然です。その違いを四診といって、目で見る(望診)、耳で聞き鼻で嗅ぐ(聞診)、触る(切診)、話を聞く(問診)と、五感をフル活用して診断、治療するのが伝統医学であり日本式です。感覚の医学ともいえます。中国でも昔はそうでした。日本式は脈診一つとっても、施術者の鋭敏な感覚が重要になってきますので習得するのに時間が掛かるのが欠点で、途中であきらめる人も多く、多数派とはなっていません。でも西洋医学に対し東洋医学と呼べるだけの理論体系となっています。西洋医学と理論が違うから病気の見方も違うため全く異なる治療ができるのです。
 西洋式は西洋医学理論をもとに治療道具として鍼灸を用いるだけですので東洋医学ではありません。
副作用がない
 鍼灸は手術のようなリスクや薬物のような副作用なく治療を行うことができます。そのため妊娠期や授乳期など薬をなるべく摂取しないほうが良い場合の様々な症状(つわり、風邪、腰痛、逆子、流産癖、乳汁不足)にも問題なく治療でき、逆にお腹の赤ちゃんを元気にする作用すらあります。治療効果が高いのに安全であるため、現在ではWHO(世界保健機構)でも認められ世界各国に普及してきている古くも最新の医術といえます。日本よりも欧米で鍼灸は効果があるという認知度が高まってきています。
自然治癒力をアップ
 病気の原因を気・血・水の流れの停滞・不足と考えるのが東洋医学の特徴です。流れを回復することで内臓の働きを活性化させ、人間が本来持っている自然治癒力(病気を自分で治す力)を高めます。自然治癒力は産まれもって弱い場合もありますが、そうでなくとも年齢とともに衰えます。寝ても疲れが抜けない、あちこち痛くなる、食欲がない、風邪が長引く、気力がでない等の症状は、その現われであり、治療により衰えを防止し老化を遅らせることができるのです。

経絡治療について

■慰安でなく治療へ
 昭和初期の頃の鍼灸治療は視覚障害者が慰安目的に施術するといったイメージでした。このままでは本来の素晴らしい治療効果を持つ鍼灸治療が廃れてしまう!と、岡部素道先生を中心に中国伝統医学を復興し、西洋医学にも負けないくらいの東洋医学として体系化されたのが経絡治療です。脈診を主として五臓六腑の弱りや滞りを診断し、内臓を活性化し病気の根本治癒を目指します。経絡とは気血という生命エネルギーの流れるルートで、ツボとツボを結んで内臓につながっています。腰痛のツボは膀胱経とか腎経が多いので腰痛を治療したら便秘や排尿も良くなったという現象が起こることがあります。身体全体を治すので思わぬ副作用(良い意味で)があるのです。これがクスリとの大きな違いです。クスリは強力なクスリほど副作用(悪い意味で)も強いです。昔は草で楽になるから薬という漢字でしたが、今はクスリで、逆から読むとリスクとなります。
 経絡治療は脈診という手首の脈で五臓六腑の状態を診るという診断法を主体としています。指先の鋭敏な感覚と努力研究が必要とされ習得が難しく時間も掛かります。そのため途中で挫折する人が多いのが欠点です。経絡治療学会は鍼灸の学術団体としては最大規模の会員数を誇り、全国に支部があります。東北支部は仙台にあって毎月勉強会が行われて共に技術の研鑽をしています。

治療の流れ

①予診表の記入
 記入項目がたくさんありますが治療に有効なツボを選ぶのに全て必要な情報です。正確な記載が的確な治療につながりますので、ご協力ください。
②治療室で脱衣
 鍼灸治療は皮膚に直接施しますので衣服が診断・治療の妨げになります。
肌着などの薄着(血流を妨げない弛めのもの)になってお待ちください。
③診察・徒手検査
病気の状態を把握するためベッド上で問診、腹診、脈診、舌診、徒手検査などを行います。
④治療(約1時間)
鍼灸治療はその怖そうなイメージとは全く逆で、身体をリラックスさせるため眠くなる方がほとんどです。独特の心地よさを感じながら眠ってください。

治療に用いる道具について

鍼(はり)について
「はり」は髪の毛程度の細さで、痛みはほとんどなく、恐怖感がある方も独特の心地よさを実感できます。特別に細い鍼も用意してあります。安心してお受けください。

灸(きゅう)について
「きゅう」は体力のない方、慢性症状、冷えの強い方には最適で身体の芯から温める効果があります。当院は温灸といって熱くなく温かく気持ちがいいお灸をメインに用いていますのでご安心ください。

小児はりについて
刺すような針ではなく太い棒状の金属で、皮膚を撫でさするものです。
刺すわけではないので痛みは全くありません。

※当院では一番上の太いものを使用しています。

副作用について

メンゲン反応
 治療後一時的に症状が悪化したかのように感じる場合があります。これは停滞していた血の流れが回復したために起こるものであり、症状が良くなる前ぶれで好転反応です。多くは治療当日だけで、翌日にはスッキリ楽になるので心配はいりません。東洋医学ではこれを「メンゲン反応」といいます。
ぐっすり眠れる
 また疲れのたまっている人ほど「だるさ」「眠気」「ふらつき」が出たりします。これは休息したいという身体の欲求です。無理をせずゆっくり休みましょう。治癒力が高まっているため、ぐっすり眠れるはずです。治療を続けて体力がついてくると出現しなくなります。
デトックス効果
 また治療後に大便、小便、汗など身体にとって不必要な悪いものが溜まっている場合に排出しようとするデトックス効果もあります。

治療後の過ごし方

どのような治療法でも養生が必要です
守れない場合は治るのに時間がかかります!!

1. 睡眠は充分取ること
人は寝てる時に回復に力を回せるので、寝ないことには自然治癒力が存分に働けません。

2.入浴は治療後3時間以上あけること
ぎっくり腰は入浴厳禁です。

3.アルコール類は控える事
肝臓がアルコールの分解疲れると治癒力が低下します。

4.長時間同じ姿勢、ストレッチ、運動、マッサージなどしないこと
良かれと思って間違った健康法を行っていたりしますのでご注意ください。

5.ストレスを溜めないこと
ストレスは治癒力を低下させます。

その他、必要に応じてアドバイス致しますが、一番重要なのは、あなた自身が真剣に病気を治そうとする心構えです。
   

WHO認定の鍼灸適応症

神経系疾患
★神経痛(坐骨神経痛・肋間神経痛・三叉神経痛など)・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛めまい・不眠・神経症
ノイローゼ・ヒステリー
運動器系疾患
★腰痛★頚肩腕症候群(手の痺れ)★頚椎捻挫後遺症(ムチウチ)
★五十肩・関節炎・腱鞘炎・外傷の後遺症(骨折、打撲、捻挫)
循環器系疾患
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧・低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患
風邪および予防・気管支炎・喘息
消化器系疾患
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・痔疾・肝炎
胆嚢炎・肝機能障害・胃十二指腸潰瘍
代謝内分泌系疾患
★リウマチ・バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
生殖、泌尿器系疾患
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・インポテンツ
婦人科系疾患
更年期障害・逆子・不妊症・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性
耳鼻咽喉科系疾患
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・蓄膿症・扁桃炎
眼科系疾患
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
小児科疾患
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

★印の疾患は、鍼灸の健康保険の適用が認められています。
医師の同意書(用紙は当院にあります)が必要です。

こんな症状に!