父親の顔も母親の顔も知らずに、ホムラの郷で育った少年。
何も知らされないままに、眠っていた力は少しずつ目覚め始めていた。
そしてある日、自分が何者かを知り、歩くべき道を示す物が少年の手に…
国が荒れていた。民意は離れ、王もまた国への興味が失せてしまったかのようだった。
再三に渡る朔の進言は通らず、その言葉も王の心を揺るがす事はない。
現実から逃避するかのような王、蒼月の振る舞いにも、朔は成す術がなかった。
久しぶりに朝議の場に姿を現した蒼月に、居並ぶ大官達は驚きと戸惑いを露わにする。
あいかわらず政に無関心な王に大将軍ホウエン、禁軍将軍ヒリュウの二人が動く。
武官二人の行動の真意はどこにあるのか? そんな中ザインの元に一人の男が現れた。
見慣れぬ正装で歩く禁軍将軍の姿に、城内のあちらこちらから声がかかる。
その声は昔から自分を見守る温かい眼差し。視線を背に受けて向かうのは王の下。
久しぶりに呼んだその名に、寂しげな王から、懐かしい微笑みが漏れる。
どこか様子のおかしい親友を気遣い、部屋で他愛もない話をするザイン。
帰り際に残した言葉になぜか不安と焦燥を覚え、ザインも独自に動き始める。
ただひたすらに答えを探して、夜が明けるまで調べものを続けるが……。