定義:《実数の集合》の閉包 closure point, adherence

【閉包の定義】

  → 距離のみを用いた閉包定義の表現
  → 開区間を用いた閉包定義の表現
  → 近傍を用いた閉包定義の表現
  → 触点を用いた閉包定義の表現
  → 境界を用いた閉包定義の表現
  → 内点・境界点を用いた閉包定義の表現 
  → 内部・境界を用いた閉包定義の表現
  → 外点を用いた閉包定義の表現
  → 集積点を用いた閉包定義の表現 
  → 閉集合を用いた閉包定義の表現 
  → 数列を用いた閉包定義の表現   

閉包の性質
閉包の関連概念

《実数の集合》間の位置関係を表す概念一覧
→[トピック一覧:距離空間(R,d)]
総目次 

閉包の定義 : 距離表現

・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 下記【条件】のなかのaに代入することによって、下記【条件】を真にする実数を、
 あらゆる実数Rから、あつめ尽くした集合のこと。
 
 【条件】  
  εに設定した距離を変更して、《実数aからの距離ε以内のゾーン》の幅をどのように変えたときでも、
  《実数aから距離ε以内のゾーン》に、「Eに属す実数」が実在している

論理記号集合の記号で表すと、

   E
 (ないし cl E , [E] ) = { aR  | ∀ε>0 ∃xE |x-a|}
 
      「任意の正数ε>0に対して、ある実数xE{a} が存在して、|x-a|<εを満たす」を真にする実数aを収集した集合(真理集合)

【文献】
 見当たらない。
 上記は、触点を用いた閉包の定義のなかの触点・接触点を、その語義で上書きしたもの。

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2



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 →距離空間(R,d)
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閉包の定義 : 開区間表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 下記【条件】のなかのaに代入することによって、下記【条件】を真にする実数を、
 あらゆる実数Rから、あつめ尽くした集合のこと。
 
 【条件】 (a−ε, a+ε) の幅εをどのように変えたときでも、
       (a−ε, a+ε) に、最低一個以上の「Eに属す実数」の実在を確認できる

論理記号集合の記号で表すと、

   E
 (ないし cl E , [E] ) = { aR  | ε>0   (a−ε, a+ε) E≠φ }
                 「任意の正数ε>0に対して、(a−ε, a+ε)Eは、交わる」を真にする実数aを収集した集合(真理集合)
             = { aR  | ∀ε>0 ∃xE   x(a−ε, a+ε) }    
             = { aR  | ∀ε>0 ∃xR  xE かつ x (a−ε, a+ε)  }    
             = { aR  | ∀ε>0 ∃xR  x (a−ε, a+ε) E }  

【文献】
 見当たらない。
 上記は、
  触点を用いた閉包定義のなかの触点・接触点を、その語義で上書きしたもの
  ないし
  近傍を用いた閉包定義のなかの

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2



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閉包の定義 : 近傍表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 下記【条件】のなかのaに代入することによって、下記【条件】を真にする実数を、
 あらゆる実数Rから、あつめ尽くした集合のこと。
 
 【条件】 実数aの近傍Uε(a)半径εをどのように変えたときでも、
       Uε(a)に、最低一個以上の「Eに属す実数」の実在を確認できる

論理記号集合の記号で表すと、

   E
 (ないし cl E , [E] ) = { aR  | ε>0  Uε(a) E≠φ }


【文献】
 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)(p.60)
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』問題3.3.14(pp.108-109) 

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2


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閉包の定義 : 触点を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 「点集合E触点」を全部あつめた集合のこと。


【文献―触点を用いた定義】
 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)(p.60):距離空間一般について。closure pointをε近傍で定義し、closure pointをあつめた集合を、closureとして定義。{ a | ∀ε>0  Uε(a) (E)φ }
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5):R1。 近傍でpoint of closureを定義。point of closureをあつめた集合をclosure, もとの集合からclosureを除去した集合をboundaryと定義。{ x |∃y∈A ∀δ>0 |x-y|<δ}
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter6§5Exercises1(p.131):"Let S be a subset of a normed vector space E(ex. R), and let S~ the set of all points of E which are adherent to S. .. We call S~ the closure of S."closure の性質。
 ・佐久間『集合・位相―基礎から応用まで―』3.4(p.65)
 ・杉浦『解析入門I』I§6定義1(p.50)

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2

   

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閉包の定義 : 境界を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 Eと「E境界」の合併のこと。

・すなわち、

   E
 (ないし cl E , [E] ) = E E   



【文献―境界を用いた定義】
 ・黒田『微分積分』定義8.5の直前(p.273):境界との合併。
 ・小平『解析入門I』1.6-b(p.56):R2
 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1C(p.143)
 
  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2


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閉包の定義 : 内点・境界点を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

  「点集合E内点」「点集合E境界点」を全部あつめた集合のこと。

【文献】 
 ・黒田『微分積分』定義8.5の直前(p.273);
 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1C(p.143)]
 ・松坂『解析入門3』12.1(p.53)

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2
 


閉包の定義 : 内部・境界を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、
  
 「点集合E内部」と「点集合E境界」の合併のこと。

・すなわち、
   E
 (ないし cl E , [E] ) = int E ∂E    [de la Fuente2.4(a)式(3)(p.60)] 


【文献】 

・黒田『微分積分』定義8.5の直前(p.273);
・松坂『集合・位相入門』第4章§1C(p.143)
・松坂『解析入門3』12.1(p.53)
de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)式(3)(p.60)

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2

閉包の定義 : 外点を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 「点集合E外点でない実数を全部あつめた集合のこと。

【文献】 

 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1C(p.143);
 ・松坂『解析入門3』12.1(p.53)


  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2


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閉包の定義 : 集積点を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

 「点集合E集積点」を全部あつめて、
  点集合Eに付け加えた集合のこと。


【文献―集積点を用いた定義】
 ・高木『解析概論』第1章12(p.29) 
 ・志賀『位相への30講』第14講(p.102):距離区間一般。部分集合に、その部分集合の集積点をすべて付け加えて得られる集合。
 ・加藤十吉『微分積分学原論』定義19.1(p.238)Rnについて。志賀と同じ。
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter6§5Exercises13(p.132) :Rのみならず、ノルムベクトル空間全般。
 ・Lang,ラング現代微積分学』の6章§5練習問題(p.144)には、第13問は未収録。

Let S be a subset of a normed vector space E.
 An element v of S is called isolated in S if there exists an open ball centered at v such that v is the only element of S in this open ball.
An element x of E is called an accumulation point (or point of accumulation)of S if x belongs to the closure of the set S-{x}.
(a) show that "x is adherent to S" ⇔ "x is either an accumulation point of S or an isolated point of S"
(b) show that the closure of S is the union of S and its set of accumulation points.

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2

閉包の定義 : 閉集合を用いた表現


・「《R部分集合E》の閉包」  E
 ないし cl E ないし [E] 
 とは、

   点集合Eを含む閉集合すべての共通部分、

   点集合Eを含む最小の閉集合のこと。


【文献―閉集合を用いた定義】
 ・二階堂『現代経済学の数学的方法―位相数学による分析入門』§12(p.83):Eを含む最小の閉集合。
 ・斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』4.1.11(p.104):Eの閉包とは、Eを含む閉集合すべての共通部分。Eの閉包は、Eを含む最小の閉集合。
 ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264):記号cl
 ・松坂『解析入門3』12.1D命題3(p.54)閉集合を、自らの境界点がすべて自分自身に属している集合と定義。その性質として。

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2

閉包の定義 : 数列を用いた表現


 ・「点集合E閉包」とは、
       {x∈R| ∃xi∈E, i∈N; xi→x} [一楽]


【文献】 
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義3.3.4(p.108):閉包は点列で定義。;問題3.3.14(pp.108-109):ε近傍を用いた定義に一致することを証明。

  ※記号  E
 を採用するテキスト:
        ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.53)
        ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1U注1(p.5)   
  ※記号 cl E を採用するテキスト:
        ・奥野鈴村『ミクロ経済学I』数学付録2.C(p.264)       
  ※記号 [E] を採用するテキスト:
        ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56)脚注「閉包を表す定まった記号はない。ここでは高木貞治『解析概論』に従って[ ]を用いる」:R2


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《実数の集合》の閉包の性質

 
 ・点集合Eと、点集合E境界合併集合
  Eの閉包=int E ∂E   
    [de la Fuente2.4(a)式(3)(p.60)][一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』問題3.3.18(p.109)]
 ・int E EEの閉包》[de La Fuente2.4(a)式(1)(p.60)]
 ・《Aの閉包》の閉包=Aの閉包[黒田『微分積分』問8.1.3(p.275):Rn一般]
 ・ABならば《Aの閉包》《Bの閉包》 [小平『解析入門I』§1.6-b(p.56):R2] 

 →閉包と内部・外部・境界との関係 
 →閉包と、集積点・孤立点 

《実数の集合》の閉包の関連概念

・《実数の集合》の閉包の活用例:  
・《実数の集合》を拡 張・一般化した境界概念: R2の部分集合》の閉包 / Rnの 部分集合》の閉包 / 《距離空間一般の部 分集合》の閉包 / 位相空間一般における閉包

《実数の集合》−《実数の集合》間の位置関係を表す概念一覧内部/外部/境界/閉包/導集合   

実数−《実数の集合》間の位置関係を表す概念一覧内点/外点/境界点/触点・接触点/集積点/孤立点  

R上の位相概念間の関係一覧 

距離空間(R,d)における概念一覧     



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