定義:《実数の集合》の触点・接触点・閉包の点 adherent point , closure point, point of closure


ビギナー向け「触点」定義 

厳密な「触点」定義

  → 距離のみを用いた表現
  → 開区間を用いた表現
  → 近傍を用いた表現
  → 外点を用いた表現
  → 閉包を用いた表現 
  → 内点・境界点を用いた定義
  → 孤立点・集積点を用いた定義 
  → 数列を用いた定義 


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【ビギナー向け】 きわめて感覚的な「触点」定義

 「実数aが『点集合E触点接触点閉包の点である」とは、
  【ケース1】 実数aそのものが《Eに属す実数》である
 か、または、
  【ケース2】 実数aそのものは《Eに属さない実数》だが、
        実数aの隣に、《Eに属す実数》がある 〜実数aの直前か直後かその両方が《Eに属す実数》である〜   
 ということ。  

触点感覚が馴染んだところで、《厳密な触点定義》への即時アップグレード推奨。
 この定義には、決定的な不備[→下欄]があるので。

 






【上記の「触点」定義の曖昧さ】

 ・自然数や整数のなかで考えるときは、自然数nの「直前」「直後」「隣」は、ハッキリしている。
  たとえば、「3の直前」は2、「3の直後」は4、したがって、「3の隣」は2と4、というように。

 ・ところが、実数の範囲に広げて考えると、実数aの「直前」「直後」「隣」は、何を指すのか、不明確になってしまう。 

 ・たとえば、πの「直前」「直後」「隣」とは、何を指すのだろう? 
     ・3は、πの「前」にはあるけれど、
         3よりは、3.1のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.1よりは、3.14のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.14よりは、3.145のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.145よりは、3.1459のほうが、πの「直前」には相応しい。
     :
     :

 ・こんな具合で、
  実数aの「直前」「直後」「隣」は、確かにあるはずなのだけども、
  これだと思って捕まえようとした途端、もっと、実数aに近い「直前」「直後」「隣」が必ず現れてくるので、
  どこまでいっても、どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できなくなってしまうのだ。
  どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できないということは、
   実数aの隣(直前・直後)が、「Eに属す実数」なのかどうかも、明示できない。
  だから、上記の定義に照らし合わせて、
  「《Eに属さない実数aが『E触点である」がどうか判定しようとしても、
  その結果を明示することは出来ないということになる。

 ・こうした事態は、《切れ目がない》という実数の性質に起因する。
  実数には《切れ目がない》から、実数aの「直前」「直後」「隣」にあたる実数は?という発想が不適切になるのだ。
  ならば、
  実数aの「直前」「直後」「隣」ではなく、
  実数aの前後をカバーする《切れ目がない》ゾーンに着目すれば、
  もっと明確に「《Eに属さない実数aが『E触点である」ということを定義できるのではないか。
  この発想で組み立てられたのが、下段の厳密な「触点」定義になる。







 

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厳密的な「触点」定義 〜 アイデアだけ 

・「実数aが『点集合E触点接触点閉包の点である」とは、

 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどれだけ狭くとったときも、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、
  《Eに属す実数》が存在している
 ということ。

・杉浦『解析入門I』I§6定義1(p.50)は、
 「実数aが『点集合E触点接触点閉包の点である」とは、
     「実数aのどんな近くにも「点集合Eに属す点」が実在している」 [杉浦『解析入門I』I§6定義1(p.50)]
  つまり、
  実数aのどれだけ近くを見回しても、実数aの周囲に「点集合Eに属す実数」が実在している
 と定義。

操作化された厳密な「触点」定義

・上記アイデアの「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を、
 操作化したのが、下記触点定義。

  → 距離のみを用いた表現
  → 開区間を用いた表現
  → 近傍を用いた表現
  → 外点を用いた表現
  → 閉包を用いた表現 
  → 内点・境界点を用いた定義
  → 孤立点・集積点を用いた定義 
  → 数列を用いた定義 


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【集積点との違い】


・実数a点集合Eに属すならば、
 実数aのどれだけ近くを見回しても、実数aの周囲に、実数aそれ自体という「点集合Eに属す点」が実在しているので、
 実数a点集合Eに属すときはいつでも、実数aが『点集合E触点であると言える。
 実数a点集合Eに属さないならば、実数aが「点集合E触点」であるケースと、そうならないケースに分かれる。
   
・実数a点集合Eに属すならば、
 実数aのどれだけ近くを見回しても、実数aの周囲に、実数aそれ自体という「点集合Eに属す点」が実在しているので、
 実数a点集合Eに属すとき、
 実数aは、いつでも「点集合E触点」であるが、「点集合E集積点であるとは限らない。

 実数aのどれだけ近くを見回しても、実数aの周囲に実在している「点集合Eに属す点」は、実数aだけ! というときには、
 定義上「実数aが『点集合E集積点である」とは言えない。

 「実数aが『点集合E集積点である」とは言ってよいのは、
 実数aのどれだけ近くを見回しても、実数aの周囲には、実数aを除いた「点集合Eに属す点」が実在している場合だけ。

※触点と集積点を比較した解説が掲載されているテキスト
 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(b)Definition4.10(p.61):距離空間一般においてタイプ1近傍表現で定義
       "Notice that this is more restrictive than the definition of closure point because now the intersection of E and Uε(a) cannnot be just the point a itself.Points for which this is the case are called asolated points. Hence, closure points are either limit points or isolated points."(p.62)

【性質】
 →触点と内点・外点・境界点との関係 
 →触点・閉包と、集積点・孤立点 
 

【定義1・定義2・定義3の関係】

・上記「触点」の「近傍を用いた定義」・「閉包を用いた定義」は、同値。[松坂『集合・位相入門』第4章§1C(p.143);松坂『解析入門3』12.1(p.53)]


【用語】
 ・触点・接触点adherent point
      ・彌永『集合と位相II』§1.10閉包(p.167):触点adherent point   
 ・接触点adherent point
 ・閉包の点point of closure
 ・閉包の点closure point

【具体例】
(ex:Sに属さない点が、Sのadherent pointになるケース)
 ・1 is adherent to (0,1)
 ・0 is adherent to {1/n | n∈N}
(ex:Sに属す点が、Sのadherent pointになるケース)
 ・2 is adherent {2}.
 ・2 is adherent [0,1]∪{2}
(ex)
 ・S≠φ⇒ sup S is adherent to S .

[Lang, Undergraduate Analysis,Chapter2§2(p.39);Lang,ラング現代微積分学』2章§2(p.46)]

  図例を1ケースつくったら、そのなかに、内点・境界点・外点・触点・閉包・集積点・孤立点・・・すべてを書き入れた方が便利では?


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