定義:《実数の集合》の境界点 boundary point


ビギナー向け「境界点」定義 

厳密な「境界点」定義

  → 距離のみを用いた表現
  → 開区間を用いた表現
  → 近傍を用いた表現
  → 内点・外点を用いた表現 
  → 内点・補集合を用いた表現

 【一般化】
  → R2における境界点/Rnにおける境界点 
  → 距離空間一般における境界点
実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
→[トピック一覧:距離空間(R,d)]
総目次 

【ビギナー向け】 きわめて感覚的な「境界点」定義

・「実数aが『《実数の集合E》の境界点である」とは、

 【ケース1】
 実数aが《Eに属す実数》ならば、
  実数aの隣に《Eに属さない実数》がある
   〜実数aの直前か直後かその両方が、《Eに属さない実数》である〜

 【ケース2】
 実数aが《Eに属さない実数》ならば
  実数aの隣に《Eに属す実数》がある
   〜実数aの直前か直後かその両方が、《Eに属す実数》である〜

 ということ。

境界点感覚が馴染んだところで、《厳密な境界点定義》への即時アップグレード推奨。
 この定義には、決定的な不備があるので。




【一般化】 距離空間一般における境界点/R2における境界点/Rnにおける境界点  
【活用例】 境界の定義/閉包の定義 
【 性質】  内点・外点・境界点の関係/触点と内点・外点・境界点との関係/内点・外点・境界点と集積点との関係



   ※ 松坂『集合・位相入門』第4章§1B(p.142)「aにどれほど近いところにも必ずEの点もEに属さない点も存在すること」(記号のみ調整)]

 






【上記の「境界点」定義の曖昧さ】

 ・自然数や整数のなかで考えるときは、自然数nの「直前」「直後」「隣」は、ハッキリしている。
  たとえば、「3の直前」は2、「3の直後」は4、したがって、「3の隣」は2と4、というように。

 ・ところが、実数の範囲に広げて考えると、実数aの「直前」「直後」「隣」は、何を指すのか、不明確になってしまう。 
  たとえば、πの「直前」「直後」「隣」とは、何を指すのだろう? 
     ・3は、πの「前」にはあるけれど、
         3よりは、3.1のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.1よりは、3.14のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.14よりは、3.145のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.145よりは、3.1459のほうが、πの「直前」には相応しい。
     :
     :
  こんな具合で、
  実数aの「直前」「直後」「隣」は、確かにあるはずなのだけども、
  これだと思って捕まえようとした途端、もっと、実数aに近い「直前」「直後」「隣」が必ず現れてくるので、
  どこまでいっても、どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できなくなってしまうのだ。
  どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できないということは、
   実数aの直前・直後が、《Eに属す実数》なのか《Eに属さない実数》なのかも、明示できない。
  だから、上記の定義に照らし合わせて、
  「実数aが『E境界点である」がどうか判定しようにも、
  その結果を明示することは、そもそも出来ない相談だということになる。

 ・こうした事態は、《切れ目がない》という実数の性質に起因する。
  実数には《切れ目がない》から、実数aの「直前」「直後」にあたる実数は?という発想が不適切になるのだ。
  ならば、
  実数aの「直前」「直後」ではなく、
  実数aの前後をカバーする《切れ目がない》ゾーンに着目すれば、
  もっと明確に「実数aが『E境界点である」ということを定義できるのではないか。
  この発想で組み立てられたのが、下段の厳密な境界点定義になる。








厳密的な「境界点」定義 〜 アイデアだけ 

・「実数aが『《実数の集合E》の境界点である」とは、

 【ケース1】

 実数aが《Eに属す実数ならば
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどれだけ狭くとったときも、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、
  《Eに属さない実数》が存在している

 【ケース2】

 実数aが《Eに属さない実数ならば
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどれだけ狭くとったときも、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、
 《Eに属す実数》が存在している

 ということ。

   厳密には?→【距離表現】/【開区間表現】/【近傍表現】

・上記二つのケースをまとめて言ってしまうと、
 「実数aが『《実数の集合E》の境界点である」とは、

 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどれだけ狭くとったときも、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、
  《Eに属す実数》《Eに属さない実数》の両方が存在している

 ということ。

   厳密には?→【距離表現】/【開区間表現】/【近傍表現】








能代『極限論と集合論7章3(p.131)は、
実数aE境界点である」を、
   実数aのいかなる近傍にも、
   《Eに属す実数》と《Eに属さない実数》とが
   同時にはいってくるということ。
と定義。








操作化された厳密な「境界点」定義

・上記アイデアの「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を、
 操作化したのが、下記境界点定義。

 ・距離のみを用いて、「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を操作化
  → 距離を用いた境界点定義   

 ・開区間 を用いて、「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を操作化
  → 開区間を用いた境界点定義  

 ・近傍概念を用いて、「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を操作化
  → 近傍を用いた境界点定義  

内点の概念外点の概念を用いて、境界点の定義を簡潔に表現することもできる。
  → 内点を用いた表現

内点の概念・補集合の概念を用いて、境界点の定義を簡潔に表現することもできる。
  →  




【一般化】 距離空間一般における境界点/R2における境界点/Rnにおける境界点  
【活用例】 境界の定義/閉包の定義 
【性質】  内点・外点・境界点の関係/触点と内点・外点・境界点との関係/内点・外点・境界点と集積点との関係 

【文献】
 *小平『解析入門I』§1.6-b(p.56):R2
 *松坂『解析入門3』12.1-C集合の内部・外部・境界・閉包(p.52):
 *de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)Definition4.5(iii)(p.59):距離空間一般において。
 *能代『極限論と集合論7章3(p.131):Rn「のいかなる近傍にも、《Eに属す点》と《Eに属さない点》とが同時にはいってくる」
 *黒田『微分積分』8.1.4(8.1.7)(p.272)内点でも外点でもない
  ・吹田・新保『理工系の微分積分学』』6-§1(pp.154-155):R2
   [近傍概念を用いた定義]・Pのすべての近傍が、Eの点もEに属さない点も含む。
   [近傍概念を用いた定義]・Pの任意の近傍U(P)に対して、U(P)∩E≠φ かつ U(P)∩Ec≠φ 
   [内点・外点の概念を用いた定義]・Eの内点でも外点でもない点。
 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1B(p.142)
   「Rnの点でMの内点でも外点でもない点をMの境界点とよび、Mの境界点全部の集合Rn−(Mi∪Me)をMの境界という。本書ではそれをMfで表す。定義から明らかに、aがMfの点であることは、aにどれほど近いところにも必ずMの点もMに属さない点も存在すること、もっと正確に言えば、どのような正数εをとっても、B(a;ε)∩M≠φ,B(a;ε)∩Mc≠φが成り立つことを意味する。」
   [直感的な定義] aにどれほど近いところにも必ずMの点もMに属さない点も存在すること  
   [近傍概念を用いた定義]どのような正数εをとっても、Uε(a)∩E≠φ かつ Uε(a)∩Ec≠φ 
   [内点・外点の概念を用いた定義]・Eの内点でも外点でもない点。
 ・笠原『微分積分学』1.3(p.18;19):R2
   [内点・外点の概念を用いた定義]「点aがAの内点でも外点でもないとき、aはAの境界点であるという。」
   [近傍概念を用いた定義] 「境界点とは、どんなε>0をとっても、Uε(a)∩A≠φ かつ Uε(a)∩Ac≠φとなるような点である」
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter6§5Exercises2(p.131)
   [近傍概念を用いた定義]"a boundary point of S is a point v∈E such that every open set U which contains v also contains an element of S and an element of E which is not in S" 
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義3.3.3(pp.100-101) :
   [内点・外点の概念を用いた定義]Rnにおいて。Aの境界点とは、Aの内点でも、Aの補集合の内点でもない点のこと。
 ・杉浦『解析入門I』U章§8定義3(p.150):Rn 
  [近傍概念を用いた定義] 「すべてのε>0に対し、Uε(a)∩D≠φ かつ Uε(a)∩Dc≠φとなる点である」
 ・加藤『微分積分学原論』定義15.6開集合DのDに属さない集積点の全体を∂Dと書き、Dの境界という。(p.191);定義19.1(p.238):Rn;「Kの閉包−Kの内部」を、Kの境界という。


 ・奥野鈴村『ミクロ経済学』数学附録T-2-B(pp.262-3)Rn上
   [近傍概念を用いた定義] 「どんな数ε>0をとっても、Uε(a)∩A≠φ かつ Uε(a)∩(R-A)≠φとなるならば、集合Aの境界点boundary pointである」





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境界点の定義 : 内点・外点を用いた表現 

・「実数aが『《実数の集合E境界点である」とは、

 実数aが、「《実数の集合E》の内点」でも「《実数の集合E》の外点」でもないということ。

【文献】
 ・松坂『解析入門3』12.1-C-定義c(p.52)
 ・黒田『微分積分』8.1.4(p.271):Rn一般



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総目次 

境界点の定義 : 内点・補集合を用いた表現 

・「実数aが『《実数の集合E境界点である」とは、

 実数aが、「《実数の集合E内点」でも「《実数の集合E補集合内点」でもないということ。

【文献】
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義3.3.3(pp.100-101):Rnにおいて。

境界点の定義 : 内点・補集合を用いた表現 

・「実数aが『《実数の集合E》の境界点である」とは、

   「《実数の集合E》の内部「《実数の集合E》の外部
   の補集合
  
    (int E ext Ec
   
 のこと。
               
【文献】
 ・松坂『解析入門3』12.1-C(p.52)



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