定義:《実数の集合》の集積点 accumulating point, accumulation point , point of accumulation  極限点 limit point , cluster point

ビギナー向け「集積点」定義 
厳密な「集積点」定義 
 →集積点の操作的定義─タイプ0:距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現/除外近傍を用いた表現  
 →集積点の操作的定義─タイプ1:距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現/触点を用いた表現/閉包を用いた表現 
 →集積点の操作的定義─タイプ2:距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現 
 →数列をつかった集積点の定義 
・厳密な「集積点」定義間の関係
 ・集積点定義タイプ0⇔集積点定義タイプ1/集積点定義タイプ0⇔集積点定義タイプ2/集積点定義タイプ0⇔数列をもちいた集積点定義  
 ・集積点定義タイプ1⇔集積点定義タイプ2/集積点定義タイプ2⇔数列をもちいた集積点定義 
・集積点と他の位相概念との関係
 →集積点と内点・外点・境界点との関係  
 →集積点と触点・閉包との関係  


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【ビギナー向け】 きわめて感覚的な「集積点」定義

・「実数aが『《実数の集合E》の集積点である」とは、

   (実数aそのものではなく)「実数aの隣」に、《Eに属す実数》がある

      〜つまり、実数aの直前か直後か、その両方が、《Eに属す実数》である〜 

 ということ。

・「実数aが『《実数の集合E》の集積点である」ということは、

 実数aそのものが、《Eに属す実数》であるか、《Eに属さない実数》であるか、という点に、何ら関わらない。

・だから、下記いづれのケースでも、「実数aは『《実数の集合E》の集積点である」と言ってよい。

 【ケース1】 実数a自体が《Eに属す実数》であって、実数aの直前か直後(ないしは、その両方)も、《Eに属す実数》であるとき 

 【ケース2】 実数a自体は《Eに属さない実数》だけれでも、実数aの直前か直後か(ないしは、その両方)が、《Eに属す実数》であるとき

・下記いづれのケースでも、「実数aは『《実数の集合E》の集積点」ではない。

 【ケース1】 実数a自体は《Eに属す実数》であるが、実数aの両隣が、《Eに属さない実数》であるとき (→Eの孤立点) 

 【ケース2】 実数a自体が《Eに属さない実数》であって、実数aの両隣も、《Eに属さない実数》であるとき (→Eの外点
   
集積点感覚が馴染んだところで、《厳密な集積点定義》への即時アップグレード推奨。
 この定義には、決定的な不備があるので[下記の吹き出しコラム]。

 






【上記の「集積点」定義の曖昧さ】

 ・自然数や整数のなかで考えるときは、自然数nの「直前」「直後」「隣」は、ハッキリしている。
  たとえば、「3の直前」は2、「3の直後」は4、したがって、「3の隣」は2と4、というように。

 ・ところが、実数の範囲に広げて考えると、実数aの「直前」「直後」「隣」は、何を指すのか、不明確になってしまう。 

 ・たとえば、πの「直前」「直後」「隣」とは、何を指すのだろう? 
     ・3は、πの「前」にはあるけれど、
         3よりは、3.1のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.1よりは、3.14のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.14よりは、3.145のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.145よりは、3.1459のほうが、πの「直前」には相応しい。
     :
     :

 ・こんな具合で、
  実数aの「直前」「直後」「隣」は、確かにあるはずなのだけども、
  これだと思って捕まえようとした途端、もっと、実数aに近い「直前」「直後」「隣」が必ず現れてくるので、
  どこまでいっても、どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できなくなってしまうのだ。

  どの実数実数aの「直前」「直後」「隣」なのか、明示できないということは、
   実数aの隣(直前・直後)が、「Eに属す実数」なのかどうかも、明示できない。
  だから、上記の定義に照らし合わせて、
  「実数aが『E集積点である」がどうか判定しようとしても、
  その結果を明示することは出来ないということになる。

 ・こうした事態は、《切れ目がない》という実数の性質に起因する。
  実数には《切れ目がない》から、実数aの「直前」「直後」「隣」にあたる実数は?という発想が不適切になるのだ。

 ・それでは、実数aの「直前」「直後」「隣」にあたる実数Eに属すかどうかを問うのをやめて、
  「実数aに限りなく近い実数」が、「Eに属す実数」かどうか問うことにすれば、
  事態は改善するだろうか?

 ・残念ながら、改善の見込みはない。
  やはり、
   どの実数が「実数aに限りなく近い実数」なのか、明示できない、
   したがって、「実数aに限りなく近い実数」が「Eに属す実数」なのかどうかも、明示できない。
  これでは、
  ネーミングが、
   実数aの「直前」「直後」「隣」から、
   「実数aに限りなく近い実数」に変わった
  というだけの話だ。

 ・いっそのこと、
  《切れ目がない》という実数の性質に逆らわず、
  《切れ目がない》という実数の性質に素直に従ってみたらどうだろうか。

  《切れ目がない》という実数の性質に逆らって、
  「aの直前・直後・隣」の実数、「aに限りなく近い実数」という、個々の実数に着目しようとするのはやめてにして、
  
  《切れ目がない》という実数の性質に身を任せて、
  実数aの前後をカバーする《切れ目がない》ゾーンに着目すれば、
  もっと明確に「実数aが『E集積点である」ということを定義できるのではないか。
  この発想で組み立てられたのが、下段の厳密な「集積点」定義になる。









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厳密的な「集積点」定義 〜 アイデアだけ 

・「実数aが『《実数の集合E》の集積点である」とは、

 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどれだけ狭くとったときも、
 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、
  「実数a以外の《Eに属す実数》」が存在している
 ということ。

・つまり、

 【case1】 実数aが、《Eに属さない実数》である場合

    →  【case1-1】 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどこまで狭くとっても、
              「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に《Eに属す実数》が実在。
                   → 実数aは『E集積点。このとき、実数aEの触点』でもある。

    →  【case1-2】 ある程度まで狭く「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
              「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」から《Eに属す実数》が消え失せる。
                   → 実数aは『E集積点ない。このとき、実数aは『Eの外点

 【case2】 実数aが《Eに属す実数》である場合

    →  【case2-1】 「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をどこまで狭くとっても、
              「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に《a以外のEに属す実数》が残る。
                   → 実数aは『E集積点。このとき、実数aEの触点』でもある。
    →  【case2-2】 ある程度まで狭く「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとると、
              「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」から《a以外のEに属す実数》が消え失せて、
              「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」にある《Eに属す実数》は、 実数a一個だけになる。
                   → 実数aは『E集積点ない。このとき、実数aは『Eの孤立点』であり、Eの触点』でもある。

操作化された厳密な「集積点」定義

・上記アイデアの「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」を、
 操作化したのが、下記集積点定義。

 →集積点の操作的定義─タイプ0距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現/除外近傍を用いた表現 
 →集積点の操作的定義─タイプ1距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現/触点を用いた表現/閉包を用いた表現 
 →集積点の操作的定義─タイプ2距離のみを用いた表現/開区間を用いた表現/近傍を用いた表現 
 →数列を用いた集積点の定義 

【上記4タイプの集積点定義は、同値】

 →集積点定義タイプ0⇔集積点定義タイプ1 
 →集積点定義タイプ0⇔集積点定義タイプ2 
 →集積点定義タイプ0⇔数列をもちいた集積点定義  
 →集積点定義タイプ1⇔集積点定義タイプ2 
 →集積点定義タイプ2⇔数列をもちいた集積点定義 


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【性質】

 ・《Aの集積点をすべてあつめた集合》 《Aの孤立点全体の集合》   [黒田『微分積分』問8.1.4(ii)(p.275):Rn一般]
 →集積点と内点・外点・境界点との関係  
 →集積点と触点・閉包との関係  


 ・無限集合・有限集合と集積点
   ・Lang,ラング現代微積分学』2章§1(p.43)は、Eを「数の無限集合」に限定して、集積点を定義している。
   これに対して、志賀『位相への30講』第4講(p.27)は、
   ・Eが「有限個の点からなる集合のときには、」Eの「集積点は存在しない」
 
 ・コンパクト集合と集積点   [斎藤5.2.28(p.152):位相空間全般において] 


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【具体例】

 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブッ ク[1変数関数編]』4.1.9数列との関連。ex4.1.7(p.139):
  (-1,4]∪{100}の集積点と孤立点
  (-1,2)∪(2,5)
  {1+1/n | n∈N}
  {q∈Q | 0<q<1}
  {1/2n | n∈N}
  {n+1/n | n∈N} 
  Z
  {x∈R | x2-2x>3 }
  { (-1)n (1-1/n)  | n∈N}

 ・ルディン『現代解析学』2.23例(p.34)
   (d) Z :  閉集合。開集合でない。完全集合でない。
   (e)1/n(n=1,2,3,…)からなる集合。この集合の元はどれも集積点ではないが、この集合は、集積点0をもつ。
           閉集合でない。開集合でない。完全集合でない。有界集合である。
   (g)開区間 :閉集合でない。開集合(R1の部分集合としては)。完全集合でない。有界集合である。

 ・吹田新保『理工系の微分積分学』1章§2例9(p.16)
  (0,1)の集積点全体からなる集合は、[0,1]。
  [0,1]の集積点全体からなる集合は、[0,1]。
  {q∈Q | 0<q<1}の集積点全体からなる集合は、[0,1]。

 ・高木『解析概論』第1章7.集積点(p.14);
   数列に含まれる数の集合Sの集積点。
   数列のなかに、同じ数aが無数に繰り返して出てくる場合:aが「Sの集積点」であるとは限らない。
   数列のなかに、同じ数が無数に含まれることがなければ、
   その数列がaに収束することは、Sが有界で、aがSの唯一の集積点であることと同等。
 ・志賀『位相への30講』第4講例1(p.27):
   {(-1)n (1-1/n) | n=1,2,3,… }