定義:《実数の集合》の内点 inner point


ビギナー向け「内点」定義 

厳密な「内点」定義

  → 距離のみを用いた表現
  → 開区間を用いた表現
  → 近傍を用いた表現

 【一般化】
  →R2における集合の内点 / Rnにおける集合の内点
  →距離空間一般における集合の内点


実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
トピック一覧:距離空間(R,d)
総目次 

【ビギナー向け】 きわめて感覚的な「内点」定義

・「実数aが『《実数の集合E》の内点である」とは、

   【条件1】 実数a自体が「Eに属す実数」であって、
   なおかつ 
   【条件2】 実数aの両隣(直前・直後の両方)も、「Eに属す実数」である 
       (実数aは、「Eに属す実数」に両隣から挟まれている)

 ということ。

内点感覚が馴染んだところで、下記《厳密な「内点」定義》への即時アップグレード推奨。
 この定義には、決定的な不備があるので[下欄]。




【一般化】 R2における内点/Rnにおける内点/距離空間一般における内点
【性質】 ・「Aの内点」は、すべて、Aに属す。[小平『解析入門I』§1.6-b(p.56):R2]  
    ・int AAAの閉包   [de la Fuente:2.4(a)(p.60);松坂『解析入門3』12.1-C(p.52;53)]
    →内点・外点・境界点の関係 


    →触点と内点・外点・境界点との関係 
    →内点・外点・境界点と集積点との関係


 






【上記の「内点」定義の曖昧さ】

 ・自然数や整数のなかで考えるときは、自然数nの「直前」「直後」「両隣」は、ハッキリしている。
  たとえば、「3の直前」は2、「3の直後」は4、したがって、「3の両隣」は2と4、というように。

 ・ところが、実数の範囲に広げて考えると、
   実数aの「直前」「直後」「両隣」は、何を指すのか、不明確になってしまう。 

 ・たとえば、πの「直前」「直後」「両隣」とは、何を指すのだろう? 
     ・3は、πの「前」にはあるけれど、
         3よりは、3.1のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.1よりは、3.14のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.14よりは、3.145のほうが、πの「直前」には相応しい。
     ・しかし、3.145よりは、3.1459のほうが、πの「直前」には相応しい。
     :
     :

 ・こんな具合で、
  実数aの「直前」「直後」「両隣」は、確かにあるはずなのだけども、
  これだと思って捕まえようとした途端、
  もっと、実数aに近い「直前」「直後」「両隣」が必ず現れてくるので、
  どこまでいっても、どの実数実数aの「直前」「直後」「両隣」なのか、明示できなくなってしまうのだ。

  どの実数実数aの「直前」「直後」「両隣」なのか、明示できないということは、
   実数aの両隣(直前・直後)が、「Eに属す実数」なのかどうかも、明示できない。

  だから、上記の定義に照らし合わせて、
  「実数aが『E内点である」がどうか判定しようとしても、
  その結果を明示することは出来ないということになる。
 ・こうした事態は、《切れ目がない》という実数の性質に起因する。
  実数には《切れ目がない》から、
   実数aの「直前」「直後」「両隣」にあたる実数 は?
  という発想が不適切になるのだ。
   ならば、
  実数aの「直前」「直後」「両隣」ではなく、
  実数aの前後をカバーする《切れ目がない》ゾーンに着目すれば、
  もっと明確に「実数aが『E内点 である」ということを定義できるのではないか。
   この発想で組み立てられたのが、下段の厳密な「内点」定義になる。







厳密的な「内点」定義 〜 アイデアだけ 

実数aが『《実数の集合E》の内点である」とは、

  実数aの前方から後方にかけて、
  「Eに属す実数」に満たされた《切れ目のないゾーン》が、
  カバーしている

ということ。

*高木『解析概論』第1章12(p.29)では、
  「a点集合Sに属する一つの点Pに十分近い点がすべてSに属するとき、PS内点という」
 と定義。 


操作化された厳密な「内点」定義

 上記アイデアの《実数aの前方》《実数aの後方》《切れ目のないゾーン》を、
 操作化したのが、下記定義。

 ・距離のみを用いて、《実数aの前方》《実数aの後方》《切れ目のないゾーン》を操作化
  → 距離を用いた内点定義   

 ・開区間 を用いて、《実数aの前方》《実数aの後方》《切れ目のないゾーン》を操作化
  → 開区間を用いた内点定義   

 ・近傍概念を用いて、《実数aの前方》《実数aの後方》《切れ目のないゾーン》を操作化
  → 近傍を用いた内点定義  




【一般化】 R2における内点/Rnにおける内点/距離空間一般における内点

【性質】
 ・「Aの内点」は、すべて、Aに属す。[小平『解析入門I』§1.6-b(p.56):R2]  
 ・int AAAの閉包   [de la Fuente:2.4(a)(p.60);松坂『解析入門3』12.1-C(p.52;53)]
 ・内点・外点・境界点の関係 / 触点と内点・外点・境界点との関係 / 内点・外点・境界点と集積点との関係 

【文献】
 ・高木『解析概論』第1章12(p.29):特にRの例をあげず、一般的に。「a点集合Sに属する一つの点Pに十分近い点がすべてSに属するとき、PS内点という」と定義。 
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1集合U開集合と閉集合-注1(p.5):R1において。
 ・小平『解析入門I』§1.6-b(p.56):R2"inner point"
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』pp.154-155;
 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1B(p.141);
 ・松坂『解析入門3』12.1-C集合の内部・外部・境界・閉包(p.52):
 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)Definition4.5(i)(p.59):距離空間一般において。
 ・ルディン『現代解析学2.20定義e(p.33):距離空間一般について。ε近傍で定義。「点pがEの内点とは、pの適当な近傍Nにたいし、N⊂Eが成立すること」 
 ・Lang, Undergraduate Analysis,Chapter6§5Exercises2(p.131)
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義3.3.3(pp.100-101) :Rnにおいて。内部の点として定義。
 ・能代『極限論と集合論7章3(p.131) :Rn
 ・笠原『微分積分学』1.3(p.18):R2
 ・杉浦『解析入門I』p.66:Rn
 ・加藤『微分積分学原論』定義19.1(p.238)
 ・瀬山『「無限と連続の数学」−微分積分学の基礎理論案内』定義2.6.3(p.153):Rにおいて。


 ・奥野鈴村『ミクロ経済学』数学附録T-2-B(pp.262-3)Rn上



内点トップ
実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
トピック一覧:距離空間(R,d)
総目次 


操作化された「内点」定義 : 距離を用いて操作化された表現

・「実数aが『《実数の集合E》の内点である」とは、

  《aからの距離ε》を、Eに応じた《ちょうどよい》値に設定することによって、 
 
   Eにすっぽり含まれるaからの距離ε以内のゾーン》を最低一個はつくれる
    つまり、《Eに属す実数》で埋め尽くした《aからの距離ε以内のゾーン》を最低一個はつくれる

 ということ。  

論理記号で表すと、

 「実数aが『R部分集合E内点である」とは、

 (1) ε>0 xR ( |x-a| xE )
 ないし
 (2) ε>0 xR ( x{ x'R | |x'-a|} xE )
 ないし
 (3) ε>0 { xR | |x-a|}E 
     「あるε>0に対して、《aからの距離ε以内のゾーン》E」「《aからの距離ε以内のゾーン》Eを満たす距離εが存在する」
 
  ということ。

【文献】

 目下、見当たらず。

 上記(3)は、「内点の定義−近傍表現」を、Uε(a){ xR | |x-a|}をつかって、書き換えただけ。  
 上記(3)から(2)は、の定義をつかって書き換えただけ。
 上記(2)から(1)は、命題関数P(x)の集合表現をつかって書き換えただけ。




内点トップ
実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
トピック一覧:距離空間(R,d)
総目次  

操作化された「内点」定義 : 開区間を用いて操作化された表現
・「実数aが『《実数の集合E》の内点である」とは、
 
  Eに応じた《ちょうどよい》値に、開区間 (a−ε, a+ε) の幅εを決めてあげることによって、
   Eにすっぽり含まれる  (a−ε, a+ε) を、最低一個はつくれる
   つまり、《Eに属す実数》で埋め尽くした (a−ε, a+ε)を最低一個はつくれる

 ということ。  

論理記号で表すと、

 「実数aが『《実数の集合E》の内点である」とは、

   ε>0 (a−ε, a+ε)E   

      「ある開区間 (a−ε, a+ε)に対して、(a−ε, a+ε)E」「(a−ε, a+ε)Eを満たす開区間 (a−ε, a+ε)が存在する」 
      「あるε>0に対して、(a−ε, a+ε)E」「(a−ε, a+ε)Eを満たす正数εが存在する」
 ないし

   ε>0 x(a−ε, a+ε)  xE 

  ということ。

【文献】

 目下、見当たらず。
 上記は、「内点の定義−近傍表現」を、Uε(a)(a−ε, a+ε)をつかって、書き換えただけ。  



内点トップ
実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
トピック一覧:距離空間(R,d)
総目次 
操作化された「内点」定義 : 近傍概念をもちいて操作化された表現

・「実数aが『R部分集合E内点である」とは、
 「実数aの適当な近傍が、Eの点ばかりからなるということ。[能代『極限論と集合論7章2定理3(p.131)。]

・操作的に言うと、

 「実数aが『R部分集合E内点である」とは、
 
  Eに応じた《ちょうどよい》値に、aのε近傍 Uε(a)の幅εを決めてあげることによって、
   Eにすっぽり含まれる Uε(a)を、最低一個はつくれる
    つまり、《Eに属す実数》で埋め尽くしたUε(a)を最低一個はつくれる

 ということ。  

論理記号で表すと、

 「実数aが『R部分集合E内点である」とは、

   ε>0 Uε(a)E  [松坂『解析入門3』12.1-C集合の内部・外部・境界・閉包(p.52)] 

      「あるUε(a)に対して、Uε(a)E」「Uε(a)Eを満たすUε(a)が最低一個は存在する」 
      「あるε>0に対して、Uε(a)E」[deLaFuente;高橋注1(p.5)]「Uε(a)Eを満たす正数εが最低一個は存在する」

   ε>0 xUε(a)  xE [上記をの定義をつかって、高木『解析概論』第1章12(p.29)風に書き換えてみた。]

 ということ。   


    R上の点集合の内点
    R上の点集合の内点ではない点の例
    R上の点集合の内点ではない点の例

【文献】

 ・能代『極限論と集合論7章2定理3(p.131)
 ・松坂『解析入門3』12.1-C集合の内部・外部・境界・閉包(p.52)
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1集合U開集合と閉集合-注1(p.5):R1において。
 ・de la Fuente, Mathematical Methods and Models for Economists,2.4(a)Definition4.5(i)(p.59):距離空間一般において。
 ・ルディン『現代解析学2.20定義e(p.33):距離空間一般について。ε近傍で定義。「点pがEの内点とは、pの適当な近傍Nにたいし、N⊂Eが成立すること」 


内点トップ
実数−《実数の集合》間の位置関係一覧
トピック一覧:距離空間(R,d)
総目次 

【メモ】
※ {1/n|nN}のようなRの部分集合も図示する必要。[岡田『経済学・経営学のための数学』4.3(p.163)]
        「点集合Eに属す点」と「点集合Eの内点」の異同。