実行列の標準形と階数rank

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上位概念:「体上の行列」一般における標準形と階数 

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定義:実行列の標準形、実行列の階数rank


設定


R実数をすべて集めた集合実数体) 
A(m,n)型実行列 


[文献]
・斎藤『線形代数入門2章§4定理4.2(pp.50-51);
・砂田『行列と行列式』§4.2定理4.11(p.144);  
・永田『
理系のための線形代数の基礎』定理1.7.4(p.41).

実行列実ベクトル空間から実ベクトル空間への線形写像を表す。(→一次写像の行列表示)  
 だから、ここで、論じられる
実行列の操作も、
     
線形写像の何らかの操作を、表しているはずである。
 では、
実行列の標準化は、線形写像についてのいかなる操作を表すのか?
    →実ベクトル空間の基底の取り直しによる、一次写像の行列表示の標準化

 

本題1.

[標準形への変形可能]


(m,n)型実行列Aは、どのようなものでも、基本変形のみを用いて、
次に示す
標準形D(m,n,r)に変形できる。  
     
 これは、
(1,1)成分, (2,2)成分, , (r,r)成分というr個の成分だけが1、  
     そのほかの
成分はすべて0   
 という行列。   
 
本当?→証明    
 
他の表現→基本行列を用いた表現/正則行列を用いた表現      

本題2.

[標準形の具体例] 



r=0とした際の標準形D(m,n,)零行列であり、
m=n=rとした際の標準形D(m,m,m)は、単位行列Imである。


本題3.

[階数]


実行列実ベクトル空間から実ベクトル空間への線形写像を表す。(→一次写像の行列表示
 
実行列の階数は、線形写像の階数を表している()。 


上記の行列D(m,n,r)上にある1の個数rを、A階数rankと呼び、
rank Arank(A)などで表す。

本題4.

[階数の一意性]



Aの階数rank A=rは、Aのみによって決まり、基本変形の順序・やりかたなどには依存しない。  
  
本当?→証明








 


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本題1の、基本行列の積を用いた表現)  
 任意の(m,n)型実行列Aにたいして、 
   ある有限個の
m基本行列をかけあわせた行列積Pmと、  
   ある有限個の
n基本行列をかけあわせた行列積Pnと、   
   ある「0を含めた自然数」
rが存在し、  
 
Pm A Pn =D(m,n,r)  
      
 を満たす。 
[砂田『行列と行列式』§4.2定理4.8(p.140);定理4.11(p.144);定理4.13(pp.145-6);]  
  
本当?→証明  

本題1の、正則行列を用いた表現)  
 任意の(m,n)型実行列Aにたいして、 
    ある
m次正則行列Pmと、あるn次正則行列Pnと、  
    ある「0を含めた自然数」
rが存在し、  
 
Pm A Pn =D(m,n,r)  
     
 を満たす。 
[砂田『行列と行列式』§4.2定理4.8(p.140);定理4.11(p.144);定理4.13(pp.145-6);] 

 なぜ? 
 ・ある有限個の
基本行列を掛け合わせた行列積はすべて、正則行列である()。 
 ・逆に、
正則行列はすべて、ある有限個の基本行列を掛け合わせた行列積として表せる()。 
 ・上記
2点より、「基本行列行列積」と「正則行列」は、言換え可能であるから、
  (
本題1の基本行列の積を用いた表現)のなかにあらわれる「基本行列行列積」を、
  「
正則行列」を言いかえてよい。 


→[トピック一覧:行列の標準形と階数]
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(reference)
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目83行列D行列の階数(p.220)
線形代数のテキスト

・斎藤正彦『
線形代数入門』東京大学出版会、1966年、第2章§4行列の基本変形・階数(pp.50-51);4章§5線形写像とくに線形変換(pp.115-7)
・永田雅宜『
理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、1.7行列の階数と基本変形:定理1.7.4-1.7.6(pp.41-42)
・砂田利一『現代数学への入門:
行列と行列式2003年、§4.2行列の階数と標準形(pp.140-7).
・藤原毅夫『理工系の基礎数学2線形代数』岩波書店、1996年、2.3行列の基本変形と階数(p.42);4.3線形写像の階数と行列の階数(pp.102-7).
・志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30』朝倉書店、1988年、21講線形写像の核と行列の階数(pp.132-7)

数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§5.2.6行列の階数(p.186)