計量実ベクトル空間における直交系・直交基底と内積 : トピック一覧 

・定理:直交系の一次結合のあいだの内積 / 正規直交系の一次結合のあいだの内積 
・定理:直交基底の一次結合のあいだの内積 / 正規直交基底の一次結合のあいだの内積 


【関連ページ】
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定理:直交系の一次結合のあいだの内積  

 [永田『理系のための線形代数の基礎』問1(p.116);]
【舞台設定】
 R実数体R   
 V計量実ベクトル空間 
x,y〉:計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx,y内積   
 ‖x‖ :計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx内積により定まるノルム   
【本題】
ベクトルv1,v2,…, vkV直交系であって、
なおかつ、
ベクトルx,yが、ベクトルv1,v2,…, vk一次結合
 xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
 
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
として表されるならば
ベクトルx,y内積x,y〉は、
   x,yx1y1v12+x2y2v22++xkykvk2    
と表される。
※なぜ? 
 x,yx1v1+x2v2++xkvk , y1v1+y2v2++ykvk   
     =
x1v1 , y1v1+y2v2++ykvk+x2v2, y1v1+y2v2++ykvk++xkvk , y1v1+y2v2++ykvk 
                        ∵内積であるための要件1:線形性1 
     =x1v1 , y1v1+x1v1 , y2v2++x1v1 , ykvk+  
      
x2v2, y1v1+x2v2, y2v2++x2v2, ykvk+…    
      …
+xkvk , y1v1+xkvk , y2v2++xkvk , ykvk  ∵内積であるための要件1:線形性1  
     =x1y1v1 , v1+x1y2v1 , v2++x1ykv1 , vk+  
      
x2y1v2, v1+x2y2v2, v2++x2ykv2, vk+…    
      …
+xky1vk , v1+xky2vk , v2++xkykvk , vk  ∵内積であるための要件2:線形性2  
     =x1y1v1 , v1+x2y2v2, v2++xkykvk , vk    ∵ベクトルv1,v2,, vkV直交系 
     =x1y1v12+x2y2v22++xkykvk2     ∵内積により定まるノルムの定義より 



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定理:正規直交系の一次結合のあいだの内積  

 [永田『理系のための線形代数の基礎』問1(p.116);]
【舞台設定】
 R実数体R   
 V計量実ベクトル空間 
x,y〉:計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx,y内積   
 ‖x‖ :計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx内積により定まるノルム   
【本題】 
ベクトルv1,v2,…, vkV正規直交系であって、
なおかつ、  
ベクトルx,yが、ベクトルv1,v2,…, vk一次結合
 xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
 
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
として表されるならば
ベクトルx,y内積x,y〉は、
   x,yx1y1+x2y2++xkyk    
と表される。

※なぜ?   
 x,yx1y1v12+x2y2v22+…+xkykvk2   
         ∵v1,v2,…, vk正規直交系ならばv1,v2,…, vk直交系でもあるから、
           直交系の一次結合のあいだの内積を適用。    
     =x1y1+x2y2++xkyk      
     ∵v1,v2,…, vk正規直交系ならばv1,v2,…, vkそれぞれの内積により定まるノルムはすべて1。 



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定理:直交基底の一次結合のあいだの内積  

 [永田『理系のための線形代数の基礎』問1(p.116);斎藤『線形代数入門』4章§6(p.124);砂田『行列と行列式』§7.1-(c)内積 (p.245).]

【舞台設定】
 R実数体R   
 V計量実ベクトル空間 
x,y〉:計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx,y内積   
 ‖x‖ :計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx内積により定まるノルム   
【本題】
ベクトルv1,v2,…, vkV直交基底であるならば
Vに属す任意のベクトルx,yが、ベクトルv1,v2,…, vk一次結合
 
xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
 
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
として表せて、
ベクトルx,y内積x,y〉は、
   x,yx1y1v12+x2y2v22++xkykvk2    
となる。
※なぜ? 
 v1,v2,…, vkがVの直交基底であるならばv1,v2,…, vkはVの基底であり、
  したがって、Vに属す任意のベクトルを、v1,v2,…, vk一次結合
        xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
        
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
  で表せる。 
 よって、直交系の一次結合のあいだの内積を適用して、
    x,yx1y1v12+x2y2v22++xkykvk2としてよい。           



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定理:正規直交基底の一次結合のあいだの内積  

 [永田『理系のための線形代数の基礎』問1(p.116);斎藤『線形代数入門』4章§6(p.124);砂田『行列と行列式』§7.1-(c)内積 (p.245).]

【舞台設定】
 R実数体R   
 V計量実ベクトル空間 
x,y〉:計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx,y内積   
 ‖x‖ :計量実ベクトル空間Vにおけるベクトルx内積により定まるノルム   
【本題】
ベクトルv1,v2,…, vkV正規直交基底であるならば
Vに属す任意のベクトルx,yは、ベクトルv1,v2,…, vk一次結合
 xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
 
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
として表せて、
ベクトルx,y内積x,y〉は、
   x,yx1y1+x2y2++xkyk 
となる。
※なぜ? 
 v1,v2,…, vkがVの正規直交基底であるならばv1,v2,…, vkはVの基底であり、
  したがって、Vに属す任意のベクトルを、v1,v2,…, vk一次結合
        
xx1v1+x2v2++xkvk (x1,x2,,xk実数)    
        
yy1v1+y2v2++ykvk (y1,y2,,yk実数)     
  で表せる。 
 よって、正規直交系の一次結合のあいだの内積を適用して、
    x,yx1y1+x2y2++xkykとしてよい。         


(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、項目341ヒルベルト空間C.正規直交系(pp.1006-7)
線形代数のテキスト
ホフマン・クンツェ『線形代数学I』培風館、1976年。
永田雅宜『理系のための線形代数の基礎』紀伊国屋書店、1986年、4.2正規直交基底の存在と計量同型(p.116-);。
佐武一郎『線形代数学(第44版)』裳華房、1987年。
志賀浩二『数学30講シリーズ:線形代数30講』朝倉書店、1988年。
藤原毅夫『理工系の基礎数学2:線形代数』岩波書店、1996年。
斎藤正彦『線形代数入門』東京大学出版会、1966年、4章§6計量線形空間(p.121-)。
砂田利一『現代数学への入門:行列と行列式』2003年、§7.1-(c)内積 (p.245).

解析学のテキスト
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1987年、I章§4(pp.33-38)。
数理経済学のテキスト
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、§3.2.3(p.124)。