1変数関数の逆関数 :トピック一覧 ・はじめに読むべき「逆関数の存在」「逆関数」の定義と逆関数の存在条件 ・写像・逆像を用いた「逆関数の存在」「逆関数」の定義と、逆関数の存在条件 【1変数関数全般】 → 定義:1変数関数とその属性・類型 【逆関数全般】 → 2変数関数の逆関数/n変数関数の逆関数/実数値関数一般の逆関数/ベクトル値関数の逆関数 → 写像一般の逆関数(逆写像) * 総目次 |
・「Dで定義された1変数関数y=f(x)に逆関数が存在する」とは、
「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を返す「対応規則」
つまり、 「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、 その「fによる逆像f-1(y)」(「y=f(x)の定義域D」の部分集合であることに注意) を返す「対応規則」 x = f-1(y) とは、 y =f (x)=「xの式」 をxについて解くことによって得られた「x=『yの式』」に、 「y=f(x)の定義域D」「y=f(x)の値域f(D)」という範囲への考慮を加味したもの。 * 具体例:一次関数の逆関数 /二次関数の逆関数 |
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・「Dで定義された1変数関数y=f(x)に逆関数が存在しない」とは、 「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、 その「fによる逆像f-1(y)」を返す「対応規則」 x = f-1(y) がf(D)で定義された関数の定義を満たさないこと。 つまり、 少なくとも一個以上の「『y=f(x)の値域』に属す実数y」について、 実数yの「fによる逆像f-1(y)」に属す実数が複数個となる (∃y∈f(D))(f-1(y)=「複数個の実数が属す集合」) こと。 ・なお、 「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、 その「fによる逆像f-1(y)」(「y=f(x)の定義域D」の部分集合であることに注意) を返す「対応規則」 x = f-1(y) とは、 y =f (x)=「xの式」 をxについて解くことによって得られた「x=『yの式』」に、 「y=f(x)の定義域D」「y=f(x)の値域f(D)」という範囲への考慮を加味したもの。 |
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・「Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数」とは、 「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を返す f(D)で定義された関数のこと。 |
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「Dで定義された1変数関数y=f(x)に逆関数が存在する」ことの必要十分条件は、 fが単射(1対1)であること。 |
※狭義単調ならば単射となって逆関数が存在[→詳細]。 |
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step1:「Dで定義された1変数関数 y=f (x)=『xの式』」をxについて解いた「x=『yの式』」に、 「y=f(x)の定義域D」「y=f(x)の値域f(D)」という範囲への考慮を加味することによって、 「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則を表す式 x = f -1 (y) を作る。 (ex) (−∞,∞)で定義されたy=f(x)=x2 について。 ・「fの値域」f (D)は、[0,∞) 。 ・「 y=f (x)=x2」をxについて解くと、「x=±√y」。 「x=±√y」 は、このまま、 「y=f(x)の値域f(D)」=[0,∞)に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則を表している。 「y=f(x)の定義域D」=(−∞,∞) だから。 ・つまり、x = f -1 (y)=±√y (ex) [0,∞)で定義されたy=f(x)=x2 について。 ・「fの値域」f (D)は、[0,∞) 。 ・「 y=f (x)=x2」をxについて解くと、「x=±√y」。 ・しかし、「y=f(x)の定義域D」=[0,∞)だから、 「x=±√y」 は、このままでは、 「y=f(x)の値域f(D)」=[0,∞)に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則を表さない。 (「fによる逆像f-1(y)」とは、「y=f(x)の定義域D」の部分集合であって、 Dからはみだしていたら、「fによる逆像f-1(y)」に数えない点に注意) ・「y=f(x)の定義域D」=[0,∞)を考慮に入れると、 「y=f(x)の値域f(D)」=[0,∞)に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則は、 x = f -1 (y)=√y である。 step2:「『y=f(x)の値域f(D)』に属す実数yに対して、その『fによる逆像f-1(y)』を対応付ける規則」x = f -1 (y) がf(D)で定義された関数の定義を満たすかどうかチェックする。 つまり、 [case1] どの「y=f(x)の値域f(D)」に属す実数yに対しても、 その「fによる逆像f-1(y)」に属す実数が、1個だけ となるのか、 [case2] 少なくとも一個以上の「『y=f(x)の値域』に属す実数y」について、 実数yの「fによる逆像f-1(y)」に属す実数が複数個となる となるのか、 チェックする。 [case1]であれば、「『y=f(x)の値域f(D)』に属す実数yに対して、その『fによる逆像f-1(y)』を対応付ける規則」x = f -1 (y) が、 Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数である。 [case2]であれば、Dで定義された1変数関数y=f(x)に逆関数は存在しない。 (ex) (−∞,∞)で定義されたy=f(x)=x2 について。 ・「y=f(x)の値域f(D)」=[0,∞)に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則 x = f -1 (y)=±√y は、[case2]にあたるので、Dで定義された1変数関数y=f(x)に逆関数は存在しない。 (ex) [0,∞)で定義されたy=f(x)=x2 について。 ・「y=f(x)の値域f(D)」=[0,∞)に属す実数yに対して、その「fによる逆像f-1(y)」を対応付ける規則 x = f -1 (y)=√y は、[case1]にあたるので、これがDで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数である。 |
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step3:記号x,yの入替の問題 ・「Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数」x = f -1 (y)=『yの式』 について、x,yを入れ替えて y =『xの式』 という形にするのが慣例。 ※注意 ・この、「x,yの入れ替え」は、あくまでも慣例なので、 「あえて行わない」というのもアリ。 ただし、 「x,yの入れ替え」をしたもののみを逆関数と呼ぶテキストもあるので、注意。 この「x,yの入れ替え問題」が、逆関数定義に、混乱をもたらす! ・「x,yの入れ替え」という慣例に従うかどうかで、 y=f (x)の逆関数のグラフは変わってくる。 ・記号x,yを入れ替えずに、x = f -1 (y) として表した場合、 「y=f (x)の逆関数のグラフ」は、「y=f (x)のグラフ」と同じものである。 ・記号x,yを入れ替えて、y=『xの式』というかたちで 「y=f (x)の逆関数」を表した場合、 「y=f (x)の逆関数のグラフ」は、 直線y=xについて、y=f (x)のグラフと線対称となる。 ※疑問:でも、これは、逆関数をとった結果というよりは、 記号x,yを入れ替えた結果にすぎないのではないの? [詳しい説明] ・関数の定義域を動く側の変数(独立変数)をx、 その関数の値域を動く側の変数(従属変数)をy、 として表すのが、慣例。 ・そこで、 「Dで定義された1変数関数 y=f (x)=『xの式』」における 「f の定義域D上を動く変数x」、「値域f(D)上を動く変数y」 とは別に、 新たな記号として、 「Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数」の定義域(=f(D))を動く変数x、 「Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数」の値域(=f の定義域D)を動く変数y を用意して、 もとの記号x,yを用いた表記 「Dで定義された1変数関数y=f(x)の逆関数」x = f -1 (y)=『yの式』 を、 新たな記号x,yを用いた表記 y=g(x)=『xの式』 に書き換える。 。 |
[文献―逆関数提示の際の記号x,yの入替について][x,yの入替を必須とする文献]・啓林館『昭和62年3/31検定済 高等学校数学I新訂版』5章6(pp.142-3)。 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』p39:図解つき。x,yの入替。 [x,yの入替をおこなわないものを逆関数とする文献] ・岡田章『経済学・経営学のための数学』1.4(p.24):入替ない ・小平『解析入門I』§2.2-c (p.87) ・青本『微分と積分1』§1.4(b)(pp.33-5) [x,yを入れ替えても入れ替えなくてもよいとする文献] ・松坂『解析入門1』3.2-E(pp.111-3): ・加藤十吉『微分積分学原論』4.0 (p.32)4.2-4.3(pp.35-39)。 入替は、もとの関数とは別に、逆関数を一個の関数として扱う場合(p.37)。 ●黒田『微分積分学』3.1.3(pp.89-91): 逆関数を使うとき、x,yの取替えから混乱が生じやすいこと、 取替えの有無によって、グラフが変わってくることなど、 丁寧な注意。 ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章3.(pp.54-55;pp.56-8): 関数の独立変数の側をxと称してグラフの横軸に書く習慣 (単なる習慣なのだ!)にしたがって、 逆関数のx,yを入替えたものを逆関数と呼ぶことが多いこと、 そのグラフの注意点、 このような入替が意味をなすのは、一変数関数だから、 定義域も値域もR上にあるという事情ゆえであって、 そうでなければ、意味をなさない(pp.56-8) ********** ・吹田・新保『理工系の微分積分学』pp.17-8: p18:問20で、yとxの入替後はじめて、 関数とその関数のグラフがy=xについて対称になると明示。 |
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写像を用いた「1変数関数の厳密な定義―タイプA」を採用した場合の
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f:D→R (D⊂R)のみをD上で定義された1変数(実数値)関数と定義した場合 つまり、 『f:D→R』のみがD上で定義された1変数(実数値)関数であって、 『f:D→S』(D,S⊂R)全般を、D上で定義された1変数(実数値)関数と呼ぶべきではない という立場を選んだ場合、 D上で定義された1変数(実数値)関数の逆関数の定義は、 以下のように表現される。 |
[文献―「1変数関数の厳密な定義―タイプA」に準じた]・松坂『解析入門1』3.2-E(pp.111-3):・逆関数の存在条件:「f:S→f(S)」が全単射であること。 すなわち、「f:S→R」が単射であること。 ・黒田『微分積分学』3.1.3(pp.89-91) ・赤攝也『実数論講義』§1.7(p.25);定義6.5.2(p.194) ・加藤十吉『微分積分学原論』4.0 (p.32)4.2-4.3(pp.35-39)。 逆関数が存在することを「可逆」と命名、 可逆の必要十分条件は、単射であることだと主張。 [一般化] ・集合間の写像の逆写像 |
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定義 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在する」 とは、 [条件1] 写像gの対応規則は『f:D→R』と同一 (∀x∈D) (g(x)=f(x)) [条件2] 写像gの定義域も『f:D→R』と同一で、D [条件3] 写像gの終集合は、『f:D→R』の終集合Rではなく、『f:D→R』の値域f(D) を満たす写像gに、逆写像が存在すること。 ・つまり、 「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在する」 とは、 任意の実数x∈Dに対してg(x)=f(x)を満たす写像『g:D→f(D) 』の逆対応「g-1:f(D)→D」が、 写像の定義を満たすこと。 ※だから、 『f:D→R』に逆写像が存在しないのに逆関数は存在するということがありえる。 逆写像の定義と逆関数の定義とのズレ。 [→赤攝也『実数論講義』§1.7-注意2(p.25)] 例:任意の実数x∈(0,∞)に対して f(x)=x2 となる『f:(0,∞)→R』は、 値域f(D)=(0,∞)となって全射にならないから、fの逆写像は存在しない。 しかし、 任意の実数x∈(0,∞)に対して g(x)=f(x)=x2 満たす写像『g:(0,∞)→f(D)』の、 逆対応「g-1:f(D)→(0,∞)」は、写像の定義を満たすので、 fの逆関数は存在する。なお、g-1(y)=√yとなる。 |
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定義 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在しない」 とは、 [条件1] 写像gの対応規則は『f:D→R』と同一 (∀x∈D) (g(x)=f(x)) [条件2] 写像gの定義域も『f:D→R』と同一で、D [条件3] 写像gの終集合は、『f:D→R』の終集合Rではなく、『f:D→R』の値域f(D) を満たす写像gに、逆写像が存在しないこと。 ・つまり、 「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在しない」 とは、 任意の実数x∈Dに対してg(x)=f(x)を満たす写像『g:D→f(D)』の逆対応「g-1:f(D)→D」が、 写像の定義を満たさないこと。 |
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定義 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』の逆関数inverse function」とは、 (「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』の逆写像ではなく) 任意の実数x∈Dに対してg(x)=f(x)を満たす写像『g:D→f(D)』の逆写像 のことをいう。 |
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定理 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在する」ための必要十分条件は、 [条件1] 写像gの対応規則は『f:D→R』と同一 (∀x∈D) (g(x)=f(x)) [条件2] 写像gの定義域も『f:D→R』と同一で、D [条件3] 写像gの終集合は、『f:D→R』の終集合Rではなく、『f:D→R』の値域f(D) を満たす写像gが、 〜 つまり、任意の実数x∈Dに対してg(x)=f(x)を満たす写像『g:D→f(D) 』が 〜 全単射であること。 ・上記の「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』に逆関数inverse functionが存在する」ための必要十分条件は、 「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→R』が、単射であること」 と同値。 ※狭義単調ならば単射となって逆関数が存在[→詳細]。 |
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「f:D→S (D,S⊂R)」をD上で定義された1変数(実数値)関数と定義した場合 つまり、 『f:D→S』(D,S⊂R)全般を、D上で定義された1変数(実数値)関数と呼んでよい という立場を選んだ場合、 D上で定義された1変数(実数値)関数の逆関数の定義は、 以下のように表現される。 |
[文献―「1変数関数の厳密な定義―タイプB」に準じた] ・青本『微分と積分1』§1.4(b)(pp.33-5) ・笠原皓司『微分積分学』1.4(p.24)逆関数の存在条件「全単射」 ・ラング『ラング現代微積分学』3章§3(p.81):狭義単調関数のケース。 ・『解析演習ハンドブック1変数関数編』1.1.20(p.5) [一般化] ・集合間の写像の逆写像 [1変数関数の具体例における逆関数]
・y=x / y=x2/ y=x3 / y=1/x →べき関数 |
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定義 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→S』(D,S⊂R)に逆関数が存在する」 とは、 「f:D→S」に逆写像が存在すること、 すなわち、「f:D→S」の逆対応「f-1:S→D」が、 S上で定義された1変数(実数値)関数の定義を満たすこと。 |
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定義 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→S』(D,S⊂R)に逆関数が存在しない」 とは、 「f:D→S」に逆写像が存在しないこと、 すなわち、「f:D→S」の逆対応「f-1:S→D」が、 S上で定義された1変数(実数値)関数の定義を満たさないこと。 |
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定義 |
・D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→S』(D,S⊂R)の逆対応「f-1:S→D」も、 S上で定義された1変数(実数値)関数の定義を満たす場合、 D上で定義された1変数(実数値)関数「f:D→S」((D,S⊂R))の逆対応「f-1:S→D」を 「関数fの逆関数inverse function」 と呼ぶ。 ※[0,∞)で定義され、f(x)=x2 という規則に従う 「f:[0,∞)→[0,∞)」という1変数(実数値)関数は、逆関数が存在する。 しかし、f(x)=x2 という同じ規則に従っていても、 f(x)=x2 という規則に従う「f:[0,∞)→R」という1変数(実数値)関数には、 逆関数は存在しない。 逆対応「f-1:R→[0,∞)」はR上で定義された1変数(実数値)関数の定義を満たさないから。 このことは、 f-1(-1)=φとなることからわかる。 | ||
定理 |
・「D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→S』(D,S⊂R)に逆関数が存在する」 ための必要十分条件は、 D上で定義された1変数(実数値)関数『f:D→S』が全単射であること。 | ※狭義単調ならば単射となるから、 「f:D→f(D)」が狭義単調ならば、 「f:D→f(D)」は全単射となって、 「f:D→f(D)」には逆関数が存在[→詳細]。 |
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関数としての逆関数が存在するためにはfが1対1であればよいが、 |
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性質 | |||
一般化 |