定積分の計算1:解析学の基本定理 


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微分積分学の基本定理
  fundamental theorem of differential and integral calculus
解析学の基本定理
   fundamental theorem of calculus 


  
 関数f(x)閉区間I=[a,b]で連続なら、
 Iにおけるf(x)原始関数のなかの任意の一つG(x)を用いた以下の公式で、
 定積分を計算できる。
  

【意義】

 多くの場合の定積分を、微分の逆算(原始関数)として、求められるようになった。
   定積分は、微分の逆算として定義されているわけではないことに注意。
   定積分の一部が、解析学の基本定理によって、微分の逆算(原始関数)として求められるのであって、
   定積分が微分の逆算(原始関数)として定義されているわけでもなければ、
   全ての定積分が、微分の逆算(原始関数)として求められるわけでもない。

※f(x)が閉区間I=[a,b]で連続であることを要求しているのは、
 この定理を、連続性を要求する不定積分(積分関数)の微分から導出しようとしているため。

※なぜ?→証明:1/2/3

【文献】
 ・杉浦『解析入門I』232-233;
 ・小平『解析入門I』165
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』110



→[解析学の基本定理]
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(証明1)
[小平『解析入門I』165]
確認事項@
 不定積分(積分関数)の微分についての定理から、
 f(x)の不定積分
   
 は閉区間I上の任意の点で微分可能であり、閉区間I上でF'(x)=f(x) が成り立つ。
 つまり、F(x)は、f(x)の原始関数(の一つ)である。…@
確認事項A
 原始関数どおしの関係についての定理から、
 f(x)の閉区間I上の原始関数の任意の二つをF(x)、G(x)、とすれば、
   G(x)−F(x)=C
 となり、積分定数Cは、F(x)とG(x)との間では閉区間I上一定。…A
本論
 (仮定)
 f(x)の閉区間Iにおける不定積分をF(x)とおく。すなわち、
      …B
 f(x)の閉区間Iにおける原始関数の任意の一つをG(x)とする。
 (step1)
  
    =0    ∵向き付き定積分の定義 …C
 (step2)
 @より、F(x)もf(x)の原始関数(の一つ)であるから、Aより、
 閉区間I=[a,b]において、  G(x)−F(x)=C …D
 (step3)
 G(b)−G(a) =(F(b)+C)−(F(a)+C)  ∵D
      =F(b)−F(a)  
       ∵B
            ∵C


→[解析学の基本定理]
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(証明2)
  [杉浦『解析入門I』232-233] →定理・他の証明:1/3 
確認事項@
 不定積分(積分関数)の微分についての定理から、
 f(x)の不定積分
   
 は閉区間I上の任意の点で微分可能であり、閉区間I上でF'(x)=f(x) が成り立つ。
 つまり、F(x)は、f(x)の原始関数(の一つ)である。…@
確認事項A
 原始関数どおしの関係についての定理から、
 f(x)の閉区間I上の原始関数の任意の二つをF(x)、G(x)、とすれば、
   G(x)−F(x)=C
 となり、積分定数Cは、F(x)とG(x)との間では閉区間I上一定。…A
本論
 (仮定)
 f(x)の閉区間Iにおける不定積分をF(x)とおく。すなわち、
      …B
 f(x)の閉区間Iにおける原始関数の任意の一つをG(x)とする。
 (step1)
  
    =0    ∵向き付き定積分の定義 …C
 (step2)
 @より、F(x)もf(x)の原始関数(の一つ)であるから、Aより、
 閉区間Iにおいて、  G(x)−F(x)=C …D
 (step3)
 Dより、閉区間Iにおいて、G(a)−F(a)=C 
 Cを代入して、G(a)=C …E
 (step4)
 
      = G(b)−C ∵D
      = G(b)−G(a) ∵E  


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(証明3:リーマン和まで遡って)

  [吹田新保『理工系の微分積分学』110] →定理・証明:1/2 

設定0
 f(x)が閉区間I=[a,b]で連続であるとする。
 ゆえに、f(x)は閉区間Iで可積分である()。
 つまり、
  分割凾どのように取ろうが、
  それによってできた小区間
Ik (k=1,2,…,n)の代表点ζkをどのように取ろうが、
  
閉区間I分割凾限りなく細かくしていくと、
  
、{ζk }に関するfリーマン和は一定値(定積分)に収束することが[可積分の定義]
  既にわかっていることになる。
 だから、
  ここでは、
分割凾フ様々なとり方、小区間の代表点ζkの様々なとり方のなかから一つを選んで、
  
fリーマン和をつくり、
  
閉区間I分割凾限りなく細かくしていったときの、
  その
リーマン和を定積分として求める。
 このようにして求めた
リーマン和は、
 
、{ζk }について他のとりかたをして出来たリーマン和と、
 
分割凾限りなく細かくして行ったときに一致することが、
 わかっている
(f(x)閉区間I可積分であるから)
設定1
 
閉区間In等分割凾とる。すなわち、Iを、
  
I1=[a, x1], I2=[x1, x2],…,In=[xn1, b] (a=x0<x1<x2<…<xn=b)
 と
n個の小区間に分ける。
これによってできた各小区間の幅を
xk(k=1,,n)と置く。
設定2
 f(x)の閉区間Iにおける原始関数の任意の一つをG(x)とする。
 すなわち、閉区間Iにおいて、G'(x)=f(x) (原始関数の定義)
本論1
 G(x)は閉区間Iにおいて、設定2より微分可能とされているので、
 閉区間Iにおいて、連続でもある()。
 ゆえに、閉区間Iのなかの各小区間Ik=[xk1, xk]において、微分についての平均値定理が成立する。
 すなわち、
   
   をみたすζk(xk1, xk)内に少なくとも一つ存在する。
 両辺にxkを掛けると、
   
   をみたすζk(xk1, xk)内に少なくとも一つ存在する …@
 となる。
本論2
 
       
       ∵@によって存在が保証されているζkと、それが満たす等式を用いて。
 このとき、
 右辺は、@によって存在が保証されているζkを小区間の代表点として選んだリーマン和となっており、
 また、nをどこまで大きくしても、左辺は変わらない。
 設定0での考察を合せて考えると、
 
  

→[解析学の基本定理]
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reference

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分。
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、p.117.
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.110-113.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.82-88.
小平邦彦『解析入門I』 (軽装版)岩波書店、2003年 pp.165-175; 191:積分変数の変換。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、101;111-118.
青本和彦『岩波講座現代数学への入門:微分と積分1』岩波書店、1995年、135-7.
和達三樹『理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.96-7.
矢野健太郎・田代嘉宏『社会科学者のための基礎数学 改訂版』裳華房、p.110-112.
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、232-239:1変数関数の積分に特殊な性質(基本公式、変数変換公式、部分積分、…)。
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.1-11: ルベーク積分の前段階として単関数を用いて定義;pp.115-117。
神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、335-6.
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、95-112.変数変換。1変数関数から多変数関数へ。