午前中の見学はこれくらいにし、いったん宿に戻ることにする。今日のお昼はあでりーがパスタを作ってくれるのだ。近くのスーパーに寄り、具材を買う。ナスが欲しかったがあまりに大きいため断念し、ズッキーニにした。その他、洋梨、赤ワイン、水などを購入し、宿に戻る。
パスタは、宿に置いてあった貝殻型のショート。ここにあるものはなんでも使っていいので嬉しい。あでりーが作っているあいだに、僕は洋梨をむき、サラダ等を準備する。洋梨はしゃきしゃきして新鮮な甘さだった。できあがったズッキーニのトマトパスタは、羊のチーズと相性ばっちりで美味しい。残っていたパンと共に頂く。しっかり食べてから、昨日の残りのケーキまで完食してしまった。
食後、ふたたび町中に出る。宿から町の中心部が近いため、手軽に行き来できるのがありがたい。近くの店でポストカードと切手を買う。ポストカードは10枚2.5ユーロなので20枚購入し、それに合わせて切手を20枚買おうとしたら、切手が1枚2.5ユーロもすると聞き、驚く。各国で切手を買っているが、こんなに高かったことはない。かなりの出費になるので、半分の10枚に減らして購入。
後から調べてみると、イタリアの郵便システムには、国営の郵便局と、民営のGPSという2種類があることがわかった。GPSのほうが料金が高く、投函できるポストも限られていて数が少ない。僕らはそれを知らず、このGPSの切手を買ってしまったのだ。しかも、郵便局よりも配達に日数がかかり、届かないこともあるらしい。
バディア・フィオレンティーナ教会が今日の午後しかやっていないので、行ってみることに。見つかったが、いつ開くのかよくわからず、断念。近くに、昨日僕が見つけたイノシシの像があるので、一緒に見に行く。観光客がたくさんいて、イノシシの鼻先を触っている。見ると、口にコインを入れて下にうまく落ちるかどうかというのをやっている。我々も鼻先に触る。
そこからヴェッキオ橋を渡ってアルノ川左岸を歩く。こちらは人が少なく、雰囲気もいい。サンタ・マリア・デル・カルミネ教会へ向かう。教会付属のブランカッチ礼拝堂が目当ての場所だ。料金は一人7ユーロ。ここでよく考えてみると、フィレンツェカードは72時間有効で、カード適用開始となったのは初日の午後だから、今日の昼過ぎまで使えるはずだった。もう少し早く来ていれば無料で入れたのに、と後悔するが、仕方がない。
ブランカッチ礼拝堂に入ると、祭壇スペースは若者の団体が占拠しており、授業のようなものが開かれていた。礼拝席に座って待ってみるが、教師らしき女性が延々と話しつづけ、一向に終わる気配がない。あでりーと二人、長いね〜、と言いながら待つ。聞いている生徒たちも飽きているようだ。あまりの長さに耐えかね、延々とレクチャーを垂れていた女性教師に文句を言う。「我々はずっとここで待っている。祭壇スペースは狭いからあなた達がいると入れない。いったん出てもらえないか」という感じで。すると女性は、「私はここで働いているのよ、フリースペースだから入ってくればいいじゃない」との返事。腹が立ったので、ずかずかと入り、狭いよ、とあからさまに文句を言いつつ、鑑賞を始める。抗議がきいたのか、しばらくして団体は去っていった。これでゆっくりと見られる。
すこし迷ったものの、ちゃんと抗議してよかったと思う。7ユーロ払って、脇からちょっと撮影するくらいでは割に合わない。授業でやっているのなら、逆に向こうが気を遣うべきだろう、とあでりーと話した。
見たかったのは、マザッチオのフレスコ画『貢ぎの銭』だ。この絵はすごく楽しみにしていたのだ。なにしろ、ダ・ヴィンチやボッティチェリなど多くの画家が手本にするため見に来たほどの作品だけあって、とても魅力的だ。かなり大きな絵だが、これでも全体の中の一部に過ぎない。入口には原罪の絵が描かれており、話の違うものが並んで描かれているんだなあと眺める。しっかり眺め、撮影をする。絵の中にボッティチェリに似た顔を発見した。
外に出て、隣にサンタ・マリア・デル・カルミネ教会本体があるはず、と思ってスタッフに聞くと、ここから5分歩いたところだという。なかなか教会が見当たらず、すぐ隣のはずだがなあと思いつつ歩く。しばらくして教会が出てきたが、明らかにこれは別の教会だ。まあブランカッチ礼拝堂が見られたから、これでいいことにする。
到着したのは、サルヴァトーレ・ロマーノ財団博物館というところ。かつての修道院の食堂だった場所らしい。ブランカッチ礼拝堂のチケットで入ることができた。古代の石像やドナテッロ帰属の聖母子像などを見る。中庭でクロウタドリが大きな声で鳴いていた。
その後、隣にあるサント・スピリト教会へ。教会本体は無料だが、隣にある聖具室は3ユーロの料金がかかる。見たかったのは、若きミケランジェロ作、木彫りの十字架像だ。まだミケランジェロ特有の筋肉もりもり造型ではないが、人体をしっかり写してある。
16時になったので、教会の聖堂へと移る。フィリッポ・リッピの絵があると書かれていたが、スタッフに聞いたところ、実はフィリッピーノだと判明した。祭壇近くにあるフィリッピーノの絵を発見する。(ここはすべて撮影禁止だったため、写真はない。)
これで今日の予定はほぼ完了だ。とりあえず近くにある、スイーツも美味しいと調べてあったカフェ「
Caffe degli Artigiani」に向かう。小さな入口を抜け、奥に進んでテーブルにつく。周りは学生らしき若者ばかりで、勉強をしている様子。僕はカプチーノ、あでりーはカフェ・コン・パンナを注文する。1個だけチョコケーキを頼むと、たっぷりの生クリームとベリーソース付きで出てきた。やや甘すぎるがまずまずの味だ。コーヒーはいつも通り美味しい。ここでしばらくあでりーと話し、ゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができた。観光客もりもりの右岸に比べ、左岸は落ち着いていて過ごしやすい。
料金を払ってみると、全部で6.8ユーロだった。安くて驚くが、もしかして間違えてバンコ料金だったかもしれない。1ユーロをチップに置いていく。
その後、ヴェッキオ橋を渡り、新市場あたりであでりーといったん離れ、別行動にする。僕は近くにある旅行会社へ赴く。ボルゲーゼ美術館の予約の件だ。いまだにうまく予約ができず、課題となって残ったままなのだ。
中に入って聞いてみたが、ローマの施設の予約はできない、と断られる。ふたたび昨日行った大聖堂そばの案内所に行き、ここで美術館の予約を代行してもらえないかと尋ねると、やはりそこまではできないとのこと。まあ予想はしていたのでしかたがない。念のため、メディチリッカルディ宮そばにあるもう一つの案内所に行ってみたが、既に閉まっていた。近くにタバッキがあったので、明日使うことになるバスチケットを買った。
そこからはぶらりと歩き、革製品の店にいくつか入ってみる。財布を探すが、どれも分厚いものばかりで、望む薄さのものがない。
歩いていると、ボードゲームの店を発見したので、入る。めぼしいものは見つからないが、見ているだけで面白かった。その後、キッチングッズの店をぶらりと覗き、アカデミア美術館のほうから戻る。宿に着くと、既にあでりーが帰っていた。ジョットの鐘楼に登ってきたらしい。クーポラを上から眺めて、とてもいい景色だったとのこと。あでりーもバスチケットも買っていたので、これで二回分が揃った。
夕食は昼の残りで充分おなかいっぱいになる。今日は煮だしコーヒーでカフェオレを作った。これとはちみつをまぜたものにパンをつけて食べると美味しいので、ついつい食べ過ぎてしまった。
あでりーは10時くらいに、僕も11時くらいに寝る。