■ 2012年に読んだ本
  
2012年12月 「恋は底ぢから/中島らも」 (集英社・文庫)
中島らもさんの文章をしっかり読むのは初めてでした。僕にはあまり性が合わないようですね。酒飲んでりゃ偉い、という風潮はもうやめにしたらどうでしょう。
2012年10月 「グロテスク(上)/桐野夏生」 (文藝春秋・文庫)
エンタメ系の作家の中では文章の評価が高い桐野さん、しかも本作は、実際にあった東電OL殺人事件を元にし、女性のグロテスクさを描いた傑作と世評も高く、楽しみに読み始めました。うーん、僕にはなんだかライトノベルか少女漫画のように思えてしまいました。文章もこんなもんだったっけ……、という印象。評価が高すぎると思うなあ。
2012年10月 「グロテスク(下)/桐野夏生」 (文藝春秋・文庫)
2012年 9月 「でかい月だな/水森サトリ」 (集英社・文庫)
小説すばる新人賞受賞作。青春ものの中にオカルト的要素をまぶすというのは、恩田陸さんを思い起こさせます。最終的な着地が不安定なのは狙ったところだと思いますが、僕にはちょっと中途半端な感じがしました。
2012年 8月 「沖で待つ/絲山秋子」 (文藝春秋・文庫)
芥川賞受賞作。絲山さんの文章は、平易な割に文学性にあふれていて、とても好きです。本作は設定に惹かれて読み始めたものの、ちょっと肩すかしに終わった感じです。また他の作品も読んでみたいと思います。
2012年 7月 「ねにもつタイプ/岸本佐知子」 (筑摩書房・文庫)
僕の好きな書評家、豊崎由美さん超押しの一作でしたので、読んでみました。エッセイですが、実際のできごとを単純に書いているわけではなく、まったくの作り事も平気で忍ばせ、妄想のような世界が展開されます。僕はファンタジーやシュールに馴染みがあまりなく、読みづらさが目立ち、深くのめり込んで読むには至りませんでした。
いまやベストセラー作家となった海堂氏のデビュー作。評判も高く、読んでみたのですが、僕にはまったくピンと来ませんでした。トリック(と言えるかどうかさえ微妙)、動機、犯人の意外性、どれをとっても納得できる出来ではありません。キャラクター性が世に受けたのでしょうか。
2012年 5月 「断捨離のすすめ/川畑のぶこ」 (同文館出版・単行本)
いっときブームとなり、その後は反動で否定される局面もある断捨離ですが、僕は大いに賛同しています。著者もまた断捨離に影響を受け、その普及活動に力を入れてらっしゃいます。本業が心理療法士であるため、うまく要点を伝えることに長けているようで、本書は、少ない文量でありながらツボをしっかり押さえてある好著です。これを読めば、断捨離をやってみたくなりますよ。
映画好きにはたまらない一冊。淀川長治を筆頭に、正真正銘映画のプロ達による映画紹介には、浅薄でミーハーな映画論者達は尻尾を巻いて逃げ出すほかないでしょう。僕も最近は映画をよく観るようになりましたが、それでもここで紹介されているものの10分の1も見ていないことを知り、肩を落としました。精進します。
2012年 5月 「共犯者/山崎永幸」 (新潮社・単行本)
映画「冷たい熱帯魚」を観たあと、その原本となった本作を再読してみました。今では絶版となり、入手困難なようですね。文章が巧いわけではないのですが、迫力は伝わってきます。「ボディは透明」という恐ろしい言葉は、映画でも効果的に使われていました。それにしても映画では、さすがに屍姦は出てきませんでしたね。
前回読んだ時の感想
キューブラー・ロス先生による講演を文章化したものです。平易な内容の中に、生きることの真実、死というものの意味、そして、死を迎えるにあたって何をすべきかなど、大切なことが書かれています。深く感銘を受けました。死にゆく患者に対し、医師や看護師、それから家族はどう対応したらよいのか。そうした実践的な学びも与えてくれます。

もちろん、ベストセラーとなった名著「死ぬ瞬間」もお勧めなのですが、いかんせん文量が多く専門書的になるため、なかなか人に勧めにくいものです。いっぽう本書のほうは文量もすくないのですぐに読めます。万人にお勧めしたい一冊です。
犬の行動様式に関する考察において、もっとも有名な一冊です。医学的、行動心理学的にみてもかなり本格的で読み応えがあります。やや専門書的な様相も呈していますが、一般人にとっても有意義な書物だと思います。
2012年 4月 「ルージュの伝言/松任谷由実」 (角川書店・文庫)
先日、ユーミンのファーストアルバムのプロデューサー、村井邦彦氏が当時の様子を語るポッドキャストを聞き、久しぶりにユーミンを聞き直しました。このアルバムは、当時の最先端かつ最も優れた演奏家を集めて作られたすごい一作だったんですね。そして、ユーミン自身についてももっと知りたいと思い、ずっと昔に読んですっかり内容を忘れていた本作を読み返しました。自身の性体験など、けっこうあからさまに書いてあったりして驚きます。そうした日本人離れした行動様式もまた、他の人には決して真似のできない才能の片鱗なのでしょう。
2006年1月以来の再読です。前に読んだ時よりは、死に対する怯えのようなものを強く感じました。しかしこの雪降る街のイメージは、静謐ではあるけれど迫力さえ感じます。どこがいいのか明確に説明するのはなかなか難しい作品。理解するのではなく、感じるしかないようです。
2012年 4月 「天使の囀り/貴志祐介」 (角川書店・単行本)
こちらも、貴志祐介をもう一度読んでみようシリーズ。僕としては、初期の代表作だと思っている本作。ストーリー、展開の派手さ、ホラー性など、バランスが取れていてバラエティ溢れる好編です。それでもやはり、初読の時ほど感動するには至りませんでした。
2012年 3月 「オロロ畑でつかまえて/荻原浩」 (集英社・文庫)
小説すばる新人賞受賞作。ユーモア小説というくくりに入るのでしょうが、それほどセンスのあるユーモアだとは思えません。内容も、少し込み入ったドタバタ劇といったところでしょうか。
2012年 3月 「黒い家/貴志祐介」 (角川書店・単行本)
10年以上前に読んだものの再読です。貴志さんにとって本作がデビュー作となります。超常現象は起こらないのですが、著者の一連のホラー的作品群の中ではダントツに怖いのが本作です。生命保険業務にまつわる様々な厄介ごとを絡め、うまく恐怖の物語が構成されていきます。デビュー作らしい荒削りさも、底知れない薄気味悪さを演出する効果となっています。ただ、一時は大好きで読んでいた貴志作品、いま読み返してみると、かつてほどの輝きは感じられませんでした。
2012年 3月 「殺人鬼フジコの衝動/真梨幸子」 (徳間書店・文庫)
タイトルの迫力に負けて勝ってしまいました。文章が稚拙なのは何かの仕掛けなのかと思っていたら、最後までそのままでした。内容も、とてもリアルに楽しめるようなものではありません。ミステリーというジャンル全体が一段低く見られてしまいかねない作品ですね。
こちらは、ミステリの品を高めてくれる一冊。デビュー作としてはかなりの出来ではないでしょうか。謎解きは弱いものの、そこに至る過程など、じっくりと描いてあります。他の作品をどんどん読んでみたいと思わせる作家さんです。
2012年 2月 「田村はまだか/朝倉かすみ」 (光文社・文庫)
同窓会で集まったメンバーのうち、田村だけがなかなかやって来ない。田村はまだか、田村はまだか、と口々に言い合うなか、田村の思い出話が語られる。果たして、田村は来るのか――。

設定としてはこの上なく魅力的で、読ませる力抜群です。ただ、あまりに期待が大きすぎたせいか、読み終えた感想としては中途半端なものとなってしまいました。
「風に立つライオン」というのは元々、さだまさし氏の歌のタイトルです。アフリカに巡回医療に行くため恋人と別れる歌で、僕は昔からこの曲が大好きでした。カラオケでもよく歌います。歌の内容はフィクションなのですが、モデルとなったのは、宮崎医科大学の柴田先生というお医者さんです。本書は、地域医療に興味を抱く同大学の生徒さん達が、柴田先生やさだまさし氏、そのほか様々な方にインタビューをおこなった内容をまとめたものです。学生制作という拙さは如何ともしがたいものの、柴田先生の貴重なお話を知ることができる点は評価したいと思います。
なんと、この一冊でホームズもの全てを読破したことになりました。その意味でも感激の一冊です。内容はいつものホームズ節が健在で、安心して読むことができます。
2012年 1月 「夏と花火と私の死体/乙一」 (集英社・文庫)
乙一、初読です。まだ豊橋市に在住されているのでしょうか。文章は読みやすく、読みやすすぎてやはりライトノベルかと思ってしまうものの、死体が語り部という斬新さもあって読ませます。ブラックな落としどころも好みですね。作者は十代でこれを書いたらしく、人間として作家として成長したであろう、その後の作品も読んでみたいと思います。
2012年 1月 「殺したくないのに/バリ・ウッド」 (集英社・文庫)
思いがけず手に入れた念力により、憎い相手を殺してしまう女性を描いた悲劇。スティーブン・キングの「デッド・ゾーン」にも似た内容ですが、こちらはまったく頂けません。物語の構成がうまくないため、面白くなりそうなところで面白い方向に転がっていきません。
2012年 1月 「映画の英語がわかる本/齋藤兼司」 (小学館・文庫)
これは有用な本を読みました。常々、英語ができるように(主に聞き取りにおいて)なれたらいいなあと思いながら、どう実践したらいいのかわかりませんでしたが、本書には、英語の聞き取りができるようになるための具体的な方法が書かれています。本気でやるには重い腰を上げなければならないのですが、いつか実践してみようと思っています。