MISTRAL
終章
「アンジェリーク!何をぐずぐずしてるの。今日は私が女王の座に就く日。なんで私が補佐官のあんたを迎えに来なくてはならないの?立場が逆でしょ、全く」
ロザリアは、中央の島に無事、建物を建てることが出来た。アンジェリークとの差はわずか十個である。
「御面なさい。どうもリボンが結べなくって…」
鏡とにらめっこしているアンジェリークを見て、ロザリアは溜め息をつく。
「貸しなさい、もう。クラヴィス様もこんなトロイ子のどこがいいんだか…」
鏡越しに見るとアンジェリークの顔は真っ赤だった。
「あら、真っ赤。もういいわ。あんたが幸せならね」
アンジェリークの頬を指でツンとつつき、ロザリアは嬉しそうに笑う。
ピンポーン。
「?どなたかしら。こんな日に…」
ロザリアは、まだもう少し準備のかかりそうなアンジェリークに代わって、扉を開けた。
「あら、クラヴィス様」
驚いてアンジェリークを振り返るが、彼女も”約束なんてしてない”という顔で首を振る。
「…私、先に行ってますわ。また後ほど…」
ロザリアは丁寧に御辞儀をして部屋を出ると、クラヴィスの後ろからちょこっと顔を出し、ウインクして見せた。
「…突然すまなかった。補佐官の任に就く前に、もう一度会っておきたかった。支度が出来たのなら、聖地まで送って行こう」
「はっ、はい」
「アンジェリーク。お前こそ、次代の女王に相応しかったのかもしれぬ。後悔はしていないのか?」
ずっと尋きたかったこと。でも今日まで尋けずにいた。
アンジェリークは、自分の右側に立つ闇の守護聖の腕にそっと触れた。
「…私らしくいたかったんです。女王って柄じゃないし、きっとどこかで無理が来ると思うから。ロザリアならきっと素晴らしい女王になります。私の自慢の親友だもの」
満面の笑みで見上げる少女の眼に嘘はない。
「私、女王候補に選ばれて、良かったです」
クラヴィスは眩しそうに眼を細め、自分の腕に少女の手を絡ませた。
「行くぞ。皆が待っている」
「はい。クラヴィス様」
(1999.1発行) 再録本”安らぎの天使”より
コメント
この作品は綾瀬が一年かけて連載したコピー本のお話です。
当時、一人で一冊作る自身が無かったので、友人にジュリアス様&リモージュのお話を書いてもらって二人で連載してました。全部で5冊ですが、話の切り方は今回のHPとちょっと違います。彼女は原稿を上げるのがかなり早くて、私が3冊目の原稿やってた時にはもう完結させてました(^^;
長編小説というのがなかなか書けない私は、話をまとめるのに苦労しました。
ゲームをやってない方にもキャラが分かるようにと思ってかなり詳しく書いていました。
ただ、台詞はゲーム中に出てくるものにかなり忠実に書いてあります。
この作品以外のお話は、綾瀬の趣味にかなり偏ってます。
どうやら綾瀬はクラヴィス様が殊のほか好きみたいで、クラヴィス&リモージュが多いです。