・ 連続性の定義:点での連続性/点集合上連続/連続関数/一様連続性・連続関数の性質:多変数関数の連続性への言い換え/開集合の逆像への言い換え/点列の収束への言い換え ・連続関数一般の性質:ベクトル値関数のベクトル和の連続性/スカラー倍の連続性/合成関数の連続性 ・有界閉集合上の性質:連続関数による有界閉集合の像は有界閉集合/有界閉集合上連続な関数は有界/ 関数f (x)を有界閉集合D上で連続とすると、fはDにおいて一様連続 ・連結な集合上の性質:連続関数の連結不変性 |
※ ベクトル値関数の諸概念:ベクトル値関数の定義と諸属性/極限/極限の性質/連続性/※ベクトル値関数の連続性の具体例:1変数関数の連続性/ 2変数関数の連続性/ n変数関数の連続性/ ※ベクトル値関数の連続性の一般化:距離空間上の写像/位相空間上の写像 →総目次 |
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定義:ベクトル値関数が点 Aで連続 |
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はじめに |
「 ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn )は、点( a1 , a2 , … , an )で連続continuousである」 とは、 次の3条件がすべて満たされることを言う。 (1) f (a1,a2,…,an) が定義されていること (2) ( x1 , x2 , … , xn ) → ( a1 , a2 , … , an )で、 f (x1 , x2 , … , xn)が収束すること。 つまり、 ![]() が存在すること。 (3) ( x1 , x2 , … , xn ) → ( a1 , a2 , … , an )で、 f (x1 , x2 , … , xn)→ f (a1 , a2 , … , an) となること。 ![]() が成立すること。 ※上記条件の一つでも満たされていないとき、 f は点Aで不連続であるdiscontinuous、 ないしは、f は点A(a1,a2,…,an)で不連続であるという。 |
[ 具体例]1変数関数の連続性/2変数関数の連続性/多変数関数の連続性[ 一般化]距離空間上の写像/位相空間上の写像[ 文献]杉浦『解析入門I』定義5(p.55-56); 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』3.4.16 (p.90); 木『解析概論』10連続函数(p.26) |
設定 |
厳密には、「 ベクトル値関数 f は点Aで連続」の定義は、以下の手順で設定された舞台上でなされる。 Step1: n次元空間Rn 、m次元空間Rmを用意する。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 * m次元空間Rmとは、 実数をm個並べた組 (y1,y2,…,ym ) をすべてあつめた集合。 実m次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 |
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Step 2: n次元空間Rnに距離dnを定めて、距離空間(Rn,dn)を設定。*普通は、 n次元空間Rnにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 m次元空間Rmに距離dmを定めて、距離空間(Rm,dm)を設定。 *普通は、 m次元空間Rmにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 Step3: n次元空間Rn上の点集合のひとつを選んで集合Dと名づける。 つまり、「D⊂Rn」 *Dは、「実n次元数ベクトルの集合」でもある。 Step4: n次元空間Rnの点集合D上の各点Pにたいして m次元空間Rm上の点を対応づけるベクトル値関数f を用意。 つまり、 f : D→Rm (D⊂Rn ) ないし ( f1 (x1,x2,…,xn), f2 (x1,x2,…,xn) ,…, fm (x1,x2,…,xn))= f (x1,x2,…,xn) *fはそれぞれ「Dに属す各実n次元数ベクトルから実m次元数ベクトルへの対応付け」だとも言える。 |
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Step 5:「 n次元空間Rnの点集合D」に属す動点を、P= (x1,x2,…,xn )と名づける。つまり、「P∈D⊂Rn」 *Pは、「Dに属す実n次元数ベクトル」でもある。 Step 6:「 n次元空間Rnの点集合D」に属すある定点を、A=(a1,a2,…,an)で表す。つまり、A=(a1,a2,…,an)∈D⊂Rn *Aは、「Dに属す実n次元数ベクトル」でもある。 |
[ 文献]杉浦『解析入門I』命題6.5-b(p.55-56); 黒田『微分積分学』8.2.3(p.278); 松坂『集合・位相入門』4章§1-G(p.149); 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』3.4.16 (p.90); 入谷久我『数理経済学入門』補助定理5.5(p.122); ルディン『現代解析学』4.5(p.83):一般の距離空間上で。 布川谷野中山『線形代数と凸解析』定義6.8(p.123):ノルムを使って。 |
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厳密な |
「 ベクトル値関数 f は、点Aで連続であるcontinuous」とは、任意の正数εに対して、ある正の実数δが存在して、 任意の点Pに対し「 dn( P, A )<δ ならば dm( f (P), f (A) )<ε 」 を成り立たせる、ということ。 この定義を、論理記号で表せば、 (∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈Rn)( dn( P, A )<δ⇒ dm ( f (P), f (A) )<ε) * dn( P, A )は、 n次元空間Rn上での点Pと点Aとの距離を、 dm ( f (P), f (A) )は、 m次元空間Rm上のf (P)と f (A) との距離を表す。 * 「P→Aのときf(P)が収束する」の定義では、 0<dn( P, A )<δ であった。つまり、関数の「極限」では、P=Aを除外して考えたが、 「連続」ではP=Aを除外しないことになる。 |
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※ユークリッド距離が定められたユークリッド空間 Rn,Rmにおける連続概念ベクトル値関数(f1 (x1,x2,…,xn),f2 (x1,x2,…,xn),…,fm (x1,x2,…,xn)) = f (x1,x2,…,xn)について、 すなわち「『 n次元空間Rnの部分集合』から『 m次元空間Rm』への写像」を扱う際には、 特別な目的がない限り、 n次元空間Rn上の距離をn次元ユークリッド距離で定めて、 n次元空間Rnをユークリッド空間Rnとし、 m次元空間Rm上の距離をm次元ユークリッド距離で定めて、 m次元空間Rmをユークリッド空間Rmとする 設定のもとで 考えるのが普通。 この設定下では、 Rn上の点P= (x1,x2,…,xn )と、点A=(a1,a2,…,an)に対して、 ![]() Rm上の点 f (P)=f (x1,x2,…,xn )=(f1 (x1,x2,…,xn),f2 (x1,x2,…,xn),…,fm (x1,x2,…,xn ) ) と、 点 f (A)=f (a1,a2,…,an )=(f1 (a1,a2,…,an),f2 (a1,a2,…,an ),…,fm (a1,a2,…,an )) に対して、 dm ( f (P), f (A) ) ![]() だから、 「ベクトル値関数(f1 (x1,x2,…,xn),f2 (x1,x2,…,xn),…,fm (x1,x2,…,xn)) = f (x1,x2,…,xn)は、 点A=(a1,a2,…,an)で連続である」の定義は、 具体的には ┌任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して、 | 「 ![]() | ならば | ![]() └を成り立たせる (∀ε>0)(∃δ>0)(∀x1,x2,…,xn ∈R ) ( ![]() ⇒ ![]() となる。 |
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※ n次元数ベクトル空間,m次元数ベクトル空間の上に定義されたユークリッド空間Rn,Rmにおける連続概念・ n次元空間Rnに ベクトルの加法・スカラー乗法・自然な内積(標準内積)・ユークリッドノルム‖‖nが定義されており、 n次元空間Rnを実n次元数ベクトル空間・計量実ベクトル空間・ノルム空間として扱える場合、 任意の実n次元数ベクトルx, y∈Rnのユークリッド距離は‖x−y‖n と表せる。 このユークリッド距離を定義したユークリッド空間Rnのもとでは、 dn( P, A )=‖P−A‖n ・ m次元空間Rmに ベクトルの加法・スカラー乗法・自然な内積(標準内積)・ユークリッドノルム‖‖mが定義されており、 m次元空間Rmを実n次元数ベクトル空間・計量実ベクトル空間・ノルム空間として扱える場合、 任意の実m次元数ベクトルx', y'∈Rmのユークリッド距離は‖x−y‖m と表せる。 このユークリッド距離を定義したユークリッド空間Rmのもとでは、 dm( f (P), f (A) )=‖f (P)−f (A)‖m ・したがって、 「ベクトル値関数 f (P) は、点Aで連続である」の定義は、 「任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して、 『 ‖P−A‖n<δ ならば ‖f (P)−f (A)‖m <ε』 を成り立たせる」 (∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈Rn)(‖P−A‖n<δ⇒‖f (P)−f (A)‖m<ε ) と表せる。 ただし、上記のPは、「点P(x1,x2,…,xn )」を表す実n次元数ベクトル (x1,x2,…,xn ) 、 上記のAは、「点A(a1,a2,…,an)」を表す実n次元数ベクトル (a1,a2,…,an) である。 |
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厳密な |
「 ベクトル値関数 f は点Aで連続であるcontinuous」とは、点f (A)の任意の「Rm上のε近傍 Uε(f (A))」に対して(でも)、 ある「Rn上の点Aのδ近傍Uδ(A)」が存在して、 f ( Uδ(A) ) ⊂ Uε(f (A)) を満たす ということ。 この定義を別の表現でいうと、 任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して、 「 f ( Uδ(A) ) ⊂ Uε(f (A)) 」 すなわち「 P∈Uδ(A) ならば、f (P) ∈Uε(f (A)) 」 を成り立たせる、 ということ。 この定義を、論理記号で表せば、 (∀ε>0)(∃δ>0)( f ( Uδ(A) ) ⊂ Uε(f (A)) ) (∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈Rn)( P∈Uδ(A) ⇒ f (P) ∈Uε(f (A))) となる。 |
[ 文献]杉浦『解析入門I』命題6.5-c(p.55-56); 松坂『集合・位相入門』4章§1-G(p.149); 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』3.4.16 (p.90) |
活用例 |
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[トピック一覧:ベクトル値関数の連続性] →総目次 |
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定義:ベクトル値関数が点集合 D上で連続 |
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はじめに |
「 ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn ) は点集合D上で連続continuousである」 とは、 ベクトル値関数( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn )が 点集合Dに属す各点で連続であること をいう。 |
[具体例]1変数関数の区間連続性/2変数関数が集合上連続/ n変数関数が集合上連続 [ 一般化]実数値関数/距離空間上の写像/位相空間上の写像[ 文献]杉浦『解析入門I』I章§6定義5(p.55);W章§4定義1(4.2):一様連続との比較。 黒田『微分積分学』8.2.3(p.278); 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』3.4.16 (p.90); |
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設定 |
厳密には、「 ベクトル値関数 f は点Aで連続」の定義は、以下の手順で設定された舞台上でなされる。 Step1: n次元空間Rn 、m次元空間Rmを用意する。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 * m次元空間Rmとは、 実数をm個並べた組 (y1,y2,…,ym ) をすべてあつめた集合。 実m次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 |
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Step 2: n次元空間Rnに距離dnを定めて、距離空間(Rn,dn)を設定。*普通は、 n次元空間Rnにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 m次元空間Rmに距離dmを定めて、距離空間(Rm,dm)を設定。 *普通は、 m次元空間Rmにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 Step3: n次元空間Rn上の点集合のひとつを選んで集合Dと名づける。 つまり、「D⊂Rn」 *Dは、「実n次元数ベクトルの集合」でもある。 Step4: n次元空間Rnの点集合D上の各点Pにたいして m次元空間Rm上の点を対応づけるベクトル値関数f を用意。 つまり、 f : D→Rm (D⊂Rn ) ないし ( f1 (x1,x2,…,xn), f2 (x1,x2,…,xn) ,…, fm (x1,x2,…,xn))= f (x1,x2,…,xn) *fはそれぞれ「Dに属す各実n次元数ベクトルから実m次元数ベクトルへの対応付け」だとも言える。 |
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厳密な |
「 ベクトル値関数 f は、点集合D上で連続であるcontinuous」とは、点集合Dに属す点Aをひとつ選んで固定した上で、 任意の正数εに対して、ある正数δをとると、 任意の点Pに対し「 dn( P, A )<δ ならば dm( f (P), f (A) )<ε 」 …(1) が成り立ち、 これが、すべての点A∈Dについてもいえるということ。 この定義を、論理記号で表せば、 ( ∀ A∈D )(∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈D)( dn( P, A )<δ⇒ dm ( f (P), f (A) )<ε) * dn( P, A )は、 n次元空間Rn上での点Pと点Aとの距離を、 dm ( f (P), f (A) )は、 m次元空間Rm上のf (P)と f (A) との距離を表す。 ※ここで、(1)を満たすδを全てのA∈Dに対して共通に選ぶ必要はないことに注意。 「f(P)がD上で連続」と言った場合、A∈Dの選び方で(1)を満たすδが変わってもよい。 これに対して、 (1)を満たすδを全てのA∈Dに対して共通に選べる、 A∈Dの選び方によらず、εだけに対応して (1)を満たすδを一様に選べることを意味する概念は、 一様連続性。 |
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→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn ) が 定義域Dに属する全ての点で連続であるとき、 ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn ) を連続関数と呼ぶ。 |
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→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
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定理 |
次の命題 P,命題Qは互いに言い換え可能である。つまり、命題P⇔命題Q。 命題 P:距離空間(Rn,dn)上の点集合Dが開集合であり、 かつ ベクトル値関数 f :D→Rm は、点集合D上で連続。 命題 Q:距離空間(Rm,dm)上の任意の開集合Omに対して、 Omの fによる逆像 f-1( Om )は、距離空間(Rn,dn)上の開集合となる。 ※ なぜ?→証明:松坂『集合・位相入門』4章§1-G-定理5(p.150). |
位相空間における連続写像定義 距離空間のあいだの連続写像と開集合の逆像 [ 文献]松坂『集合・位相入門』4章§1-G-定理5(p.150):証明付; |
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舞台設定 |
この定理は、以下の手順で設定された舞台上でなりたっている。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 * m次元空間Rmとは、 実数をm個並べた組 (y1,y2,…,ym ) をすべてあつめた集合。 実m次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 |
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Step 2: n次元空間Rnに距離dnを定めて、距離空間(Rn,dn)を設定。*普通は、 n次元空間Rnにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 m次元空間Rmに距離dmを定めて、距離空間(Rm,dm)を設定。 *普通は、 m次元空間Rmにユークリッド距離を与えたユークリッド空間を考える。 Step3: n次元空間Rn上の点集合のひとつを選んで集合Dと名づける。 つまり、「D⊂Rn」 *Dは、「実n次元数ベクトルの集合」でもある。 Step4: n次元空間Rnの点集合D上の各点Pにたいして m次元空間Rm上の点を対応づけるベクトル値関数f を用意。 つまり、 f : D→Rm (D⊂Rn ) ないし ( f1 (x1,x2,…,xn), f2 (x1,x2,…,xn) ,…, fm (x1,x2,…,xn))= f (x1,x2,…,xn) *fはそれぞれ「Dに属す各実n次元数ベクトルから実m次元数ベクトルへの対応付け」だとも言える。 |
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→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
n変数関数の連続性」への言い換え | ||
次の命題 Pと命題Qは互いに言い換え可能である。つまり、命題P⇔命題Q。 命題 P:ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn )は、点( a1 , a2 , … , an )で連続。 命題 Q:ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn )を、m個の n変数関数の組 y1 = f1 ( x1 , x2 , … , xn ) y2 = f2 ( x1 , x2 , … , xn ) : ym =fm ( x1 , x2 , … , xn ) として表したときに、 f1 , f2 , … , fm は、どれも点( a1 , a2 , … , an )で連続。 すなわち、 y1 = f1 ( x1 , x2 , … , xn ) は、点( a1 , a2 , … , an )で連続。 かつ y2 = f2 ( x1 , x2 , … , xn ) は、点( a1 , a2 , … , an )で連続。 かつ : かつ ym =fm ( x1 , x2 , … , xn ) は、点( a1 , a2 , … , an )で連続。 ※ なぜ?「ベクトル値関数の極限」の「n変数関数の極限」への言い換えによる。 |
杉浦『解析入門I』I章§6定理6.8-2(p.60); ルディン『現代解析学』4.5(p.83):距離空間上で定義されたベクトル値関数について。 黒田『微分積分学』8.2.3(p.278); 入谷久我『数理経済学入門』定義5.7(p.122); 西村『経済数学早分かり』3章§1.2連続関数(p.107); |
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→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
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具体例: 1変数関数の連続の、数列の収束への言い換え / 2変数関数の連続の、点列・数列の収束への言い換えn変数関数の連続の、点列・数列の収束への言い換え 一般化: 距離空間の間の写像の連続の、点列の収束への言い換え |
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定理 1 |
次の命題 P,命題Qは互いに言い換え可能である。つまり、命題P⇔命題Q。 命題 P:ベクトル値関数 ( y1 ,y2 , …, ym )=f ( x1 , x2 , … , xn ) は、 点A( a1 , a2 , … , an )で連続。 |
[ 文献]入谷久我『数理経済学入門』補助定理5.4(p.122); 加古『自然科学の基礎としての微積分』定義6.1(p.91); 西村『経済数学早分かり』3章§1.2連続関数(p.107); |
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命題 Q:どんなRn上の点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,…}={ (x11,x12,…,x1n), (x21,x22,…,x2n) , (x31,x32,…,x3n) ,…}についてであれ、 その点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,…}={ (x11,x12,…,x1n), (x21,x22,…,x2n) , (x31,x32,…,x3n) ,…}が 点A( a1 , a2 , … , an )に収束する限り、 その点列の各項 P1 , P2 , P3,…をベクトル値関数f によりRm上に写した像の点列 { f ( Pn ) }={ f ( P1 ) , f ( P2 ) , f ( P3 ) ,… }={ f ( x11,x12,…,x1n ) , f ( x21,x22,…,x2n ), f ( x31,x32,…,x3n ),… } は、 点A( a1 , a2 , … , an )をベクトル値関数f によりRm上に写した像 f ( A )=f ( a1 , a2 , … , an ) に収束する。 つまり、 任意のRn上の点列{ Pn }={ P1 , P2 , P3,…}について、 Pn→A (n→∞) ならば、f (Pn) →f ( A ) (n→∞) 論理記号で表すと、 (∀{ Pn })(( Pn→A (n→∞) )⇒( f (Pn) →f ( A ) (n→∞))) ※なぜ? 関数の収束の定義と、関数の連続性の定義を見比べたうえで、 関数の収束と点列の収束の関連性についての定理を、関数の連続性向けに修正。 |
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活用例 |
→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
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uniformly continuous | |||
設定 |
「 ベクトル値関数の一様連続性」の定義は、以下の手順で設定された舞台上でなされる。 Step1: n次元空間Rn 、m次元空間Rmを用意する。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 * m次元空間Rmとは、 実数をm個並べた組 (y1,y2,…,ym ) をすべてあつめた集合。 実m次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 Step2-1: n次元空間Rnに距離dnを定めて、距離空間(Rn,dn)を設定。 *普通は、 n次元空間Rnにユークリッド距離を与えた ユークリッド空間を考える。 Step2-2: m次元空間Rmに距離dmを定めて、距離空間(Rm,dm)を設定。 *普通は、 m次元空間Rmにユークリッド距離を与えた ユークリッド空間を考える。 Step3: n次元空間Rn上の点集合のひとつを選んで集合Dと名づける。 つまり、「D⊂Rn」 *Dは、「実n次元数ベクトルの集合」でもある。 Step4: n次元空間Rnの点集合D上の各点Pにたいして m次元空間Rm上の点を対応づける ベクトル値関数fを用意。 つまり、 f : D→Rm (D⊂Rn ) ないし ( f1 (x1,x2,…,xn), f2 (x1,x2,…,xn) ,…, fm (x1,x2,…,xn))= f (x1,x2,…,xn) *fは 「Dに属す各実n次元数ベクトルから 実m次元数ベクトルへの対応付け」だとも言える。 Step5:「 n次元空間Rnの点集合D」に属す2点を、 P= (x1,x2,…,xn )、A = (a1,a2,…,an )と名づける。 つまり、「P, A∈D⊂Rn」 *P, Aは、「Dに属す実n次元数ベクトル」といってもよい。 |
cf .点での連続性[具体例]1変数関数の一様連続性/2変数関数の一様連続性/ n変数関数の一様連続性 [一般化]実数値関数の一様連続性/距離空間のあいだの写像の一様連続性 [ 文献]斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』3.4.17 (p.90) 杉浦『解析入門I』W章積分§4連続関数の可積分性-定義1(p. 225).; ルディン『現代解析学』4.18(p.88):距離空間一般上。 |
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定義 |
ベクトル値関数f (P)=f (x1,x2,…,xn)が、点集合D上で一様連続uniformly continuousであるとは、 任意の正数εに対して、ある正数δが存在して、 「dn (P, A)<δを満たす限りで任意の『Dの元』」P,Aについて、dm ( f (P) , f (A) )<εが成り立つ ということ。 論理記号で表せば、すなわち、 ( ∀ε>0 ) ( ∃δ>0 ) ( ∀ A∈D ) ( ∀ P ∈D ) ( dn ( P, A )<δ ⇒ dm ( f (P) , f (A) )<ε) ※δが、各A∈Dに対して一様にとれることを意味している点が、重要。 |
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性質 |
・ ベクトル値関数f が点集合D上で一様連続ならば、f は点集合D上で連続。・一般には、ベクトル値関数f が点集合D上で連続だからといって、点集合D上で一様連続だとは限らない。 ・点集合Dが有界な閉集合ならば、ベクトル値関数f が点集合Dで一様連続であることと連続であることは同値 →詳細 |
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否定命題 |
「 ベクトル値関数f (P)=f (x1,x2,…,xn)が、点集合D上で一様連続でない」とは、( ∃ε>0 ) ( ∀δ>0 ) ( ∃A∈D ) ( ∃ P ∈D ) ( dn (P, A)<δかつ dm ( f (P) , f (A) )≧ε) [杉浦『解析入門I』W章積分§4連続関数の可積分性-定理4.1証明(4.4)(p. 226)] |
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→ [トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]→総目次 |
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(
reference)『
岩波数学辞典(第三版)』項目441連続関数 (pp.1329-1331).神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.148-160.高木貞治『
解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、pp. 26-8.小平邦彦『
解析入門II』(軽装版)岩波書店、2003年、pp.260-264.和達三樹『
理工系の数学入門コース1・微分積分』岩波書店、1988年、pp.115-6.吹田・新保『
理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.160-1。杉浦光夫『
解析入門』岩波書店、1980年、pp.55-56;74-75. 極限の定義が特殊なので注意。高橋一『
経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.144-146.ルディン『
現代解析学』共立出版、1971年、4.5-4.24(pp.83-91)。一般の距離空間の上で論じている。斉藤正彦『
数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第3章§4数空間Rn-連続写像3.4.16-19 (p.90-92)→
[トピック一覧:ベクトル値関数の連続性]