Rnにおける点列の収束・極限―定義:トピック一覧 |
・定義:点列/部分列/距離空間(Rn,d)での点列の収束・極限点/ユークリッド空間上での点列の収束・極限点/有界な点列 ・定理:点列の収束と座標ごとの収束の関係 ※Rnにおける点列の関連ページ:収束点列の極限とベクトル和・スカラー倍 ※列とその収束・極限の関連ページ:R上の数列/R2上の点列/点列一般 cf. n変数関数の極限定義 ※参考文献・総目次 |
Rn上の点列 | |
( はじめに読むべき定義)すべての自然数1,2,3,…の各々に対して、空間Rn上の点P1 , P 2 , P 3 ,…を定めたものを、 空間Rn上の点列と呼ぶ。 |
[ 文献]『岩波数学辞典』項目58D族列(p.158); 神谷浦井 『経済学のための数学入門』定義4.3.1(p.136); 小平 『解析入門I』p60; 杉浦 『解析入門I』I§4(p.38) |
( 厳密な定義)各項が空間Rn上の点である列、 つまり、「X⊆Rnとした、写像 ( 関数 )φ:N→ X 」を点列と呼ぶ。 |
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( 記法)![]() ![]() { Pi }i∈N { P1 , P2 , P3 , … } { Pi }i=1,2,3,… かなり略して、{ Pi } |
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( 意図) 数列をn次元へ拡張したものと理解すればよい。 |
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( ベクトルとの関連)「空間Rn上の点」とは、「実数をn個並べた組(x1 , x2 ,…, xn)」のこと。 したがって、「空間Rn上の点P1 , P 2 , P 3 ,…」とは、 実際のところ、「n個並べた組(x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n), (x31 , x32 ,…, x3n),…」であり、 これは、「実n次元数ベクトルx1=(x11 , x12 ,…, x1n), x2=(x21 , x22 ,…, x2n), x3=(x31 , x32 ,…, x3n),…」といっても同じ。 だから、「平面R2上の点列」は、「実n次元数ベクトルの列」に他ならない。 |
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( 他の点列) R上の数列、R2上の点列、点列一般 |
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Rn上の点列の部分列sub-sequence | ||||||||||
( はじめに読むべき定義)空間Rn上の点列{ P1 , P2 , P3 , …} が与えられているとする。 この点列の項P1 , P2 , P3 , P4 , P5 ,…(可算無限個)から、 その一部の項(可算無限個)を抜き出し、順序を保ったまま並べた点列 たとえば、 P1, P3, P5, P7,… P10, P11, P12, P13, P14, P15,… P0, P10, P18, P20, P45, P100,… など を、点列{P1,P2,P3,…}の部分列と呼ぶ。 |
[ 文献]『岩波数学辞典』項目58-D族・列(p.158); 矢野 『距離空間と位相構造』1.1.2点列の収束(pp.10-11); 神谷浦井 『経済学のための数学入門』4.3節(p.141); |
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( 少しかたい定義)点列{Pi}i∈Nの部分列とは、I⊂Nにたいする{Pi}n∈Iのこと。 |
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( 記法)点列{Pi}i∈Nの部分列は、 {Pi (k) } {Pik } などと表す。 kは、部分列のなかで何番目の項にあたるかを、 i (k) は、もとの点列で何番目の項だったのかを表している。 例えば、 |
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もとの点列: |
P 0 , |
P 1 , |
P 2 , |
P 3 , |
P 4 , |
P 5 , |
… |
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部分列: |
P 1 , |
P 3 , |
P 5 , |
P 7 , |
P 9 , |
… |
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↑ |
↑ |
↑ |
↑ |
↑ |
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Pi (1) , |
Pi (2) , |
Pi (3) , |
Pi (4) , |
Pi (5) , |
… |
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つまり、 点列{Pi}i∈Nの部分列{Pi(k) }の添数i(k)は、数列{ i k } k∈Nとなっており、この数列{ i k } k∈Nは、狭義単調増加i1 <i 2 <i 3 <…である。 |
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( 他の点列の部分列)数列の部分列、R2上の点列の部分列、一般の集合上の点列の部分列 |
→ [トピック一覧:Rnにおける点列]→総目次 |
er> |
距離空間(Rn,d)上の点列の収束と極限点 | ||||
※「距離空間(Rn,d)上の」の意味がわからない場合→ユークリッド空間上の点列の収束・極限を参照。 なにもことわらずに、「Rn上の点列」といえば、それは「ユークリッド空間上の点列」のこと。 なお、距離空間(Rn,d)は、ユークリッド空間の一般化。→距離空間のイントロダクション |
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( 直感的な説明) |
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点列{Pi}が、点Pに収束するとは、iが大きくなるにつれて、点列をなす各点Piが点Pに「近づく」ことである。 しかし、この「近づく」とは、どういうことなのか―よく考えてみると、はっきりしない。 これについて明確化するために、点列の収束は、次のように、少々面倒くさいかたちで定義されることになる。 |
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( はじめによむべき定義) |
[ 文献]『岩波数学辞典』項目166E(pp436); 矢野『距離空間と位相構造』1.1.2(p.10); 松坂『集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ; 高木『解析概論』p.14.; 小平『解析入門I』§1.6(p.60); 吹田新保『理工系の微分積分学』p.155 |
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空間Rnに距離dを定めて設定した距離空間 ( Rn, d ) 上の点列 {P1 , P2 , P3 , …}={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),… } が、点P (x1 , x2 ,…, xn)に収束するとは、 数列{ d ( P1 , P ) , d ( P2 , P ) , d ( P3 , P ) ,… }が0に収束すること、 すなわち、d ( Pi , P ) →0 ( i→∞ ) ![]() が成り立つこと を言う。 また、点列{P1 , P2 , P3 , …}が点Pに収束するとき、 Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
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( 厳密な定義) |
松坂『 集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ;斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』4.5.11(p.131); 神谷浦井『経済学のための数学入門』定義4.3.2(p.137) ; 杉浦『解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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空間Rnに距離dを定めて設定した距離空間 ( Rn, d ) 上の点列 {P1 , P2 , P3 , …}={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),… } が、点P (x1 , x2 ,…, xn)に収束するとは、 任意のε> 0に対して、ある自然数Nが存在し、 「N以上のあらゆるの自然数iに対して、d ( Pi , P ) <ε」 ないし「N以上のあらゆるの自然数iに対して、Pi が点Pのε近傍に属す」 を成立させるということ。 点列{P1 , P2 , P3 , …} が点Pに収束するとき、 Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
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( 論理記号による表現) |
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距離空間 ( Rn, d )上の点列{Pi}が、点P∈Rnに収束するとは、 ( ∀ε>0 ) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒ d ( Pi , P ) <ε) ( ∀ε>0 ) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) ( ∀Uε(P) ) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒ Pi∈Uε(P) ) 点列{ Pi }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
杉浦『 解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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( 記法) |
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Pi→ P (i→∞) ![]() と記す。 |
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※(はじめに読むべき定義)と(厳密な定義)は同じもの |
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(はじめに読むべき定義) d ( Pi , P ) →0 ( i→∞ )は、数列の収束の厳密な定義より、次のように言い換えても同じこと。 (∀ε>0) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒| d ( Pi , P )−0 |< ε) …(1) 距離dの定義より、d ( Pi , P )≧0だから、| d ( Pi , P )−0 |< ε⇔d ( PI , P )< ε したがって、(1)は、 (厳密な定義) (∀ε>0) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒ d ( Pi , P )< ε) に言い換えても同じこと。 |
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( 他の収束・極限概念) |
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数列の収束と極限値、R2上の点列の収束・極限、一般の距離空間上の点列の収束・極限 | ||||
n変数関数の極限定義 | ||||
[トピック一覧:Rnにおける点列] →総目次 |
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定義:ユークリッド空間 Rn上の点列の収束と極限点 |
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※ここでは、特に、距離がユークリッド距離で定義されたユークリッド空間Rnの上で、点列の収束について考える。 |
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( はじめに読むべき定義) |
[ 文献]『岩波数学辞典』項目92D(pp.254-255); 項目166E(pp436) 矢野『距離空間と位相構造』1.1.2(p.10); 松坂『集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ; 小平『解析入門I』§1.6(p.60); 吹田新保『理工系の微分積分学』p.155 |
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設定 |
ここでは、 という舞台の上で「点列の収束」の定義をみる。 |
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定義 |
ユークリッド空間(Rn,d)上の点列 { P1 , P2 , P3 , … }={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),… } が、点P(x1 , x2 ,…, xn)に収束するとは、 数列{ d ( P1 , P ) , d ( P2 , P ) , d ( P3 , P ) ,… }が0に収束すること、 すなわち、 ![]() が成り立つことをいい、 これを、 ![]() または、Pi→P (i→∞) で表す。 また、点列{ P1 , P2 , P3 , … }が点Pに収束するとき、Pを極限limit、極限点などと呼ぶ。 |
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( 厳密な定義) |
[ 文献]高木『解析概論』p.14.; 志賀『位相への30講』第2講(pp.10-15); 松坂『集合・位相入門』6章§1-C(pp.238-9) ; 斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』4.5.11(p.131); 神谷浦井『経済学のための数学入門』定義4.3.2(p.137) ; 杉浦『解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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設定 |
ここでは、 という舞台の上で「点列の収束」の定義をみる。 |
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定義 |
ユークリッド空間(Rn,d)上の点列{P1 , P2 , P3 , …}が、点P (x1 , x2 ,…, xn)に収束するとは、 任意のε> 0に対して、ある自然数Nが存在し、 「N以上のあらゆる自然数iに対して、 ![]() ないし 「N以上のあらゆる自然数iに対して、Pi(xi1 , xi2 ,…, xin)が点Pのε近傍 ![]() に属す」 を成立させることをいい、 これを、 ![]() または、Pi→ P (i→∞) で表す。 |
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( 論理記号による表現) |
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Pi →P (i→∞)![]() ⇔ (∀ε>0) (∃N∈N) (∀i∈N) ![]() ないし、 (∀ε>0) (∃N∈N) (∀i∈N) ![]() |
杉浦『 解析入門I』1章§4(pp.38-40) |
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(ベクトル表現) |
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設定 |
「 ユークリッド空間(Rn,d)上の点列{P1 , P2 , P3 , …}の収束」の定義は、ベクトルでも表現できる。ベクトルで表された「ユークリッド空間(Rn,d)上の点列{P1 , P2 , P3 , …}の収束」の定義は、 以下の手順で設定された舞台上でなされる。 Step1: n次元空間Rnを用意する。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 すなわち、「実数全体の集合R」のそれ自身へのn回の直積 R×R×…×R={ (x1 , x2 ,…, xn) | x1∈Rかつx2∈Rかつ…かつxn∈R } これは、実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 Step2:Rnにたいして、通例のベクトルの加法・スカラー乗法を定義して、実n次元数ベクトル空間Rnを設定。 Step3:実n次元数ベクトル空間Rnにたいして、「自然な内積(標準内積)・」「ユークリッドノルム‖‖」を定義して、 ノルム空間( Rn, ‖‖ )を設定。 Step4:ノルム空間( Rn, ‖‖ )にたいして、ユークリッドノルムから定めた距離d(x, y)=‖x−y‖を定義して、 ユークリッド空間(Rn,d)を設定。 Step5:ユークリッド空間(Rn,d)上の定点をP=(x1 , x2 ,…, xn) と名づける。 |
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定義 |
ユークリッド空間(Rn,d)上の点列 { P1 , P2 , P3 , … } = { (x11 , x12 ,…, x1n) , (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n) , … } が、点P (x1 , x2 ,…, xn) に収束するとは、 数列{ d ( P1 , P ) =‖P1 −P‖, d ( P2 , P )=‖P2 −P‖ , d ( P3 , P )=‖P3 −P‖ ,… }が0に収束すること、 すなわち、 ![]() が成り立つこと、をいう。 数列の収束の定義にまで遡ると、 ユークリッド空間(Rn,d)上の点列 { P1 , P2 , P3 , … } = { (x11 , x12 ,…, x1n) , (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n) , … } が、点P (x1 , x2 ,…, xn)に収束するとは、 ( ∀ε>0 ) (∃N∈N) (∀i∈N) ( i≧N⇒ d ( Pi , P )= ‖Pi −P‖<ε) |
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(図解 1) |
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以上は、 空間Rn上の点列の収束と極限点の定義における距離dに、ユークリッド距離を与えるだけで得られる。 |
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※ |
ユークリッド距離と位相的に同値である距離を R2に与えてつくった距離空間でどうなるか→志賀『位相への30講』第11講(pp.81-2) |
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[トピック一覧:Rnにおける点列] →総目次 |
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定理:ユークリッド空間 Rn上の点列の収束と座標ごとの収束の関係 |
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設定 |
この定理は、以下の手順で設定された舞台上で成立する。 * n次元空間Rnとは、 実数をn個並べた組 (x1,x2,…,xn ) をすべてあつめた集合。 すなわち、「実数全体の集合R」のそれ自身へのn回の直積 R×R×…×R={ (x1 , x2 ,…, xn) | x1∈Rかつx2∈Rかつ…かつxn∈R } これは、実n次元数ベクトルをすべて集めた集合でもある。 Step2:空間Rnにユークリッド距離を与えて、ユークリッド空間(Rn, d )を設定。 Step3:ユークリッド空間(Rn,d)上の定点をP=(x1 , x2 ,…, xn) と名づける。 Step4:ユークリッド空間(Rn,d)上の点列を{ P1 , P2 , P3 , … }と名づける。 、 *点列{ P1 , P2 , P3 , … }の各点Piはn個の実数の順序対( xi1 , xi2…, xin )を表す。 つまり、{ P1 , P2 , P3 , … }={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),… } とも書ける。 |
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定理 |
以下の二つの命題は 同値である。[命題1] 点列{ P1 ,P2 ,P3 ,…}={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),… }が、 点P=( x1 , x2 ,…, xn )へ収束する。 つまり、 ![]() [命題2] ・点列{P1,P2,P3,…}={(x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),…} の各点の第1成分だけを取り出して並べた数列{ x11 , x21, x31,… }が、 点Pの第1成分x1に収束し、 かつ ・点列{P1,P2,P3,…}={ (x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n) ,…} の各点の第2成分だけを取り出して並べた数列{ x12 , x22, x32,… }が、 点Pの第2成分x2に収束し、 かつ : かつ ・点列{P1,P2,P3,…}={(x11 , x12 ,…, x1n), (x21 , x22 ,…, x2n) , (x31 , x32 ,…, x3n),…} の各点の第n成分だけを取り出して並べた数列{ x1n , x2n, x3n,… }が、 点Pの第n成分xnに収束する。 つまり、 ![]() ※なぜ?→証明 |
高木『解析概論』p.14:R2上のユークリッド空間; 小平『解析入門I』§1.6-d(p.60) :R2上のユークリッド空間; 矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12) :Rnにおいて; 志賀『位相への30講』第13講(pp.91-2):Rnにおいて; 神谷浦井『経済学のための数学入門』定理4.3.1(p.138) :n次元ユークリッド空間において; 杉浦『解析入門I』1章§4定理4.5-1(p.38):n次元ユークリッド空間において; 吹田新保『理工系の微分積分学』p.155-6 |
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活用例: 点列のベクトル和の極限、点列と数列のスカラー積の極限 |
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※ |
ユークリッド距離と位相的に同値である 距離をRnに与えてつくった距離空間でどうなるか→矢野『距離空間と位相構造』例1.9(p.12) |
→ [トピック一覧:Rnにおける点列]→総目次 |
定義:「有界」な点列 |
・ 点列{Pn}の各点と原点O(0,0)との距離が、nによらない一定の実数を超えないとき、点列{Pn}は「有界」であるという。[ 小平邦彦『解析入門I』p. 65] ・点列{Pn}の各点の各座標が有界なるとき、点列が有界であるという。 [高木貞二『解析概論』p.14.] |
cf .有界, 空間Rnにおける「有界」な点集合 |
reference
日本数学会編集『
岩波数学辞典(第3版)』項目58関数D族・列(p.158);項目92距離空間(pp.253-256);項目166収束(pp436);項目409ユークリッド幾何学(pp.1225-1229)、項目410ユークリッド空間 (pp.1229-1230).
→ [トピック一覧:Rnにおける点列]→総目次 |