Violet
スミレの出てくる物語や詩・短歌・俳句などをご紹介しています。
スミレ科の多年草
〔花期〕3月〜4月
〔花言葉〕誠実・ひかえめ
日本各地の草原・林の中・高山などに自生する。外国から渡来したものや交配して作られた種類もある。黄色い花を咲かせるものも。
<古典>
『枕草子』 第六十五段
草の花は、なでしこ、唐のはさらなり、やまとのもいとめでたし。女郎花。桔梗。朝顔。……(中略)……壼菫、すみれ、同じやうの物ぞかし。……(後略)
<短歌・俳句>
春の野に 菫摘みにと 来し吾ぞ
野をなつかしみ 一夜宿にける (山部赤人/万葉集)
やまぶきの 咲きたる野辺の つぼ菫
この春の雨に 盛なりけり (高田女王/万葉集)
山路来て 何やらゆかし すみれ草 (芭蕉)
菫程な 小さき人に 生れたし (夏目漱石)
<詩>
古賀春江 「朗らかな春」
春は光線が膨らんで物体がみんな楕円形になる
おたまじやくしを見に行きませう
明るい水の中でのんきな栄華の夢を見てゐる所を。
金の喇叭を赤い紐で胸にかけてゐる村童は春の可愛い天使です。
魚は腹を仰向けて空の鳥等と日向で遊ぶし
芽立ちの草のステッキで燕の雛が巣立ちます。
川辺のスミレは人間を神様のやうに思ひ
人間はスミレを野の真珠と見る。
桃色のカーテンの向ふで野原の娘が
神話のランプに火をつける。
<小説>
ミルン 『プー横丁にたった家』 岩波書店
なにもすることがなかったプーは、なにかしようと思って、コブタの家に出かけた。
外は雪が降っていて、コブタの家にたどりついたのにコブタはおらず、プーはがっかりしてしまう。念のために、戸をドンドンたたいていると、急にいい歌がうかんできたプーはさっそく歌を歌い、家にもどってみると、コブタはプーの家にいた。
二人でイーヨーのところにいこうと思ったプーたちだが、外は雪ぶかく、小さいコブタはかなりまいってしまう。しばらく歩き、雪をよけられるところにたどりついたプーは、コブタに、イーヨーに家をたててやろうと提案するのだが……。
コブタは、その朝、スミレの花たばをつくろうと思って、早起きをしたのでした。そして、スミレをつんで、家のまんなかにあるつぼにさしたのですが、そのとき、きゅうに、だれもイーヨーにスミレの花たばをつくってやった者などいない、ということに気がつきました。 (p.289)
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パディントンシリーズと同じぐらいお気に入りの物語です。
作品の中に流れる時間がとても不思議。
川端康成 『古都』 新潮文庫など
もみじの古木にある小さな二つのくぼみに、それぞれ生えるすみれ。
そのすみれの花を見つけた千重子は、それぞれに咲くすみれが、お互いに相手を知っているのかと疑問に思う。
ある日、千重子は自分そっくりの娘に出会い……。
もみじの古木の幹に、すみれの花がひらいたのを、千重子は見つけた。(p.5)
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桜の花見シーンも大変に美しく、日本の四季や伝統文化を楽しめます。
山本渚 『吉野北高校図書委員会2』 メディアファクトリー
高二の冬、進路を考えなければいけない時期になって、、一(ワンちゃんと呼ばれている)は家族と初めてもめた。農業を継いでほしいという祖父の願い、自分の好きなことをしてかまわないという両親、もっとしっかりしてほしいという弟の意見。
一は周りが全然見えていなかったことに気づかされる。
体調が悪いのを我慢して授業に出ていた一は、保健室に行けと先生に言われ、穏やかな空気を求めて司書室へと向かう。ところが、司書の牧田先生の意外な姿を目撃してしまい……。
行夫を分かれた後、信号待ちをしていると、花屋の明かりが目について何気なく店内をのぞいてみると、ガラス戸の近くに紫色の鉢植えが沢山置いてあることに気付いた。どくんと僕の心臓がはねる。自転車を止めて、店内に入ってみるとやっぱりスミレの花の鉢植えだった。(p.157)
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登場人物たちの人間関係も少しずつ変わっていっているようです。