9 ウォークマン
旅する冒険ライダー 坪井伸吾のページです

 

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1 アリゾナの風来坊
2 オカバンゴのフォックス
3 入墨屋のルソー
4 ルーマニアの自転車乗り
5 キリマンジャロのセラフィンとエリ
6 アラスカのジャックさん
7 アマゾンのナポレオン
8 パプアの村人たち
9 ウォークマン
10 エルサルバドルのコロー
11 エクアドルの警官
12 イランのホセイン
13 ヒンバ族
14 ザンビアの妖術師
15 国境警備隊
16 マサイの大男
17 ツルカナ族
18 メキシコのおじさん
19 巡礼船にて
20 牛をつれたおばさん

書店でWALKMANの本を見つけた。喜んで手に取ると、労災で死亡、享年二六才と書かれていた。信じられない再会だった。彼は北米、南米二万キロを三年かけて徒歩のみで旅した日本人だ。もしトラブルで他の交通機関を使っても、乗った場所に戻ってまた歩き出す。その信念を称して僕らは彼をWALKMANと呼んでいた。

彼に最初に会ったのは、チリのサンチャゴだった。彼はこれから冬のパタゴニアを歩くと言う。千五百キロの間に町が三つしかなく、あとは突風が吹いてるだけの酷寒の平原を目指すと言った。二回目に会ったのは南米縦断道路をサンチャゴから六百キロほど南下した道端だ。一本しか道はないからきっと会えると思ってた。僕が二日で来た距離を彼は一ヶ月かかって歩いていた。

バイクの修理に二ヶ月かかったことも、お金がなくて冷たい雨の中を野宿したことも、ボロボロの靴で黙々と歩き続ける彼の前では苦労でもなんでもなかった。「アフリカにも行ってみたい」と彼は言ってたから、またどこかで会えると思ってたのにもうそんな機会は永遠にない。

彼の本は日記をお父さんがまとめたものだ。その中には僕が彼を見つけるシーンもちゃんとある。その時、僕がやる気をだしたように彼も元気になったと書いている。彼は余計なことはしゃべらない人だった。それでも南米を思い出すときにはいつでも彼が出てくる。そして同じ頃に彼と出会った人達の記憶の中でも彼はきっと歩き続けているはずだ。

 

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